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コラム

遺伝子組換え生物とは何なのか…

簡単に言うと…
  • 光る熱帯魚を飼育・販売していたことを理由に、遺伝子組換え生物使用規制法違反で、被疑者らが逮捕されるなどした旨の報道があった。
  • 遺伝子組換え生物については、自然界への悪影響を防ぐため、使用方法が厳格に定められている。
  • 遺伝子組換え生物と知らずに購入した場合などには、「故意」の有無の判断に困難を伴うことも考えられ、十分な弁護活動が必要となる。
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弁護士
岡本 裕明
ニュースで報道はされていたものの、弁護士でもあまり聞きなじみのない法律です。どのような内容なのでしょうか。

 使用方法が2つに分けられており、第二種が分かれば第一種はそれ以外の使用方法だととりあえず理解できそうです。
 熱帯魚の飼育自体は、水槽で行われることになる訳ですから、そのままでは自然界に影響を与える可能性はなさそうです。
 先日、珍しい法律に違反した容疑で、複数名の被疑者が逮捕されたというニュースを目にしました。具体的には、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(通称「カルタヘナ法」というようです)違反の容疑とのことで、具体的には、遺伝子が組み換えられた熱帯魚を不正に飼育していた容疑ということです。
 問題となった熱帯魚を販売していた熱帯魚店の関係者が逮捕され、同店舗から当該熱帯魚を購入して飼育していた顧客も、同じ容疑で書類送検したとのことでした。
 私自身は縁日ですくった金魚しか飼育経験がなく、熱帯魚についての知識は全くないのですが、熱帯魚店で購入した熱帯魚が、よく分からない法律に違反していたため、その熱帯魚を飼育していたことで罪を犯すことになってしまったら大変です。
 また、遺伝子の組換えについては、熱帯魚だけに問題となる訳ではないハズです。インターネットを検索した限りでは、同法違反で逮捕や起訴された事例は見当たりませんでしたが、今後問題が生じる可能性は否定できません。
 例えば、「遺伝子組換え」と聞いてまず何を想像されるでしょうか?私は、納豆などを購入する際に、この文字列をよく目にしますから、大豆を想像します。
 「遺伝子組換え」というと、現段階では動物ではなく植物を想像される方が多いのではないでしょうか。青いバラが遺伝子組換えの結果として生まれたという話を聞いた方も多いかもしれません。
 では、そのような「遺伝子組換え」生物については、何らかの許可なく取り扱った場合、全て刑罰の対象になってしまうのでしょうか?
 今回は遺伝子組換え生物使用規制法について、刑事的な側面から解説させていただこうと思います。あくまで、一般の方が同法に抵触してしまう危険性の有無や程度に関する内容になりますから、「遺伝子組換え」に関する研究等に伴って生じる問題についてまで掘り下げられていない点については御容赦ください。

1.遺伝子組換え生物使用規制法とは

弁護士
岡本 裕明
まずは、今回報道されていた事件との関係で問題となる条文だけでも、内容を確認してみましょう。

 私は刑事分野についての専門性しかありません。そこで、遺伝子組換え生物使用規制法全体ではなく、刑罰が問題となる罰則規定についてのみ解説をさせていただきたいのですが、どのような行為が規制されているのか、罰則規定のみ読んだのでは分かりません。
 そこで、まずは遺伝子組換え生物使用規制法がどのような法律なのかということを簡単に確認してみたいと思います。

遺伝子組換え生物使用規制法

(定義)
第2条
3項 この法律において「使用等」とは、食用、飼料用その他の用に供するための使用、栽培その他の育成、加工、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為をいう。
5項 この法律において「第一種使用等」とは、次項に規定する措置を執らないで行う使用等をいう。
6項 この法律において「第二種使用等」とは、施設、設備その他の構造物(以下「施設等」という。)の外の大気、水又は土壌中への遺伝子組換え生物等の拡散を防止する意図をもって行う使用等であって、そのことを明示する措置その他の主務省令で定める措置を執って行うものをいう。

 まずは、定義規定の中で「使用」という文言が、2つに分けて定義されています。今回報道されていた事例は、販売のために飼育していた訳ですから、第2条の「育成」に該当することになりそうです。
 そして、この法律は、 「生物の多様性の確保を図る」ことを目的としています。遺伝子組換え生物が既存の生態系に悪影響を及ぼすことがないように規制しているのです。したがって、「使用」を「第一種使用等」と自然界に拡散しないように閉鎖された環境での「使用」を意味する「第二種使用等」に分類しているのも、「第一種使用等」は、拡散されても自然界に悪影響を及ぼさないことが確認できた後に許可されるものだということが、この段階で想像できそうです。

2.「第二種使用等」とは

弁護士
岡本 裕明
使用方法が2つに分けられており、第二種が分かれば第一種はそれ以外の使用方法だととりあえず理解できそうです。

 しかしながら、「第二種使用等」にあたると認めてもらうためには、「遺伝子組換え生物等の第二種使用等のうち産業上の使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(産業利用二種省令)」の中で、使用、保管及び運搬のそれぞれの段階で、拡散防止措置を執る必要があります。
 単に水槽の中で飼育していたというだけでは、「第二種使用等」に該当することは考えられません。ペットとして飼育していた魚類を放流してしまった結果、もともとその水域に生息していた在来種が大幅に減少してしまったというニュースはよく目にする機会があると思います。
 そのような可能性がある以上、拡散防止措置が執られていると評価されることはあり得ないのです。

3.罰則規定の内容

弁護士
岡本 裕明
どのような行為に罰則が設けられていて、どれだけ重く処罰されてしまうのでしょうか。確認してみましょう。

 ここで、本題である罰則規定の内容を確認してみましょう。

遺伝子組換え生物使用規制法

第38条
 第10条第1項…に違反した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第39条
 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1号 第4条第1項の規定に違反して第一種使用等をした者
2号 偽りその他不正の手段により第4条第1項又は第9条第1項の承認を受けた者
(遺伝子組換え生物等の第一種使用等に係る第一種使用規程の承認)
第4条1項
 遺伝子組換え生物等を作成し又は輸入して第一種使用等をしようとする者その他の遺伝子組換え生物等の第一種使用等をしようとする者は…主務大臣の承認を受けなければならない。
(第一種使用等に関する措置命令)
第10条1項
 主務大臣は、第4条第1項の規定に違反して遺伝子組換え生物等の第一種使用等をしている者又はした者に対し…遺伝子組換え生物等の回収を図ることその他の必要な措置を執るべきことを命ずることができる。

 罰則の対象となる行為として、遺伝子組換え生物使用規制法は様々な行為を定めていますが、基本となりそうなものが上述の内容です。
 つまり、遺伝子組換え生物等を「第一種使用等」する場合には、主務大臣の承認が必要であり、承認を得ずに「第一種使用等」する場合には、第39条によって6月以下の懲役刑に処されることになりますし、主務大臣の命令に違反した場合には、より重い1年以下の懲役刑に処されることになります。  
 そうだとすると、何の手続も経ることなく、遺伝子組換え生物等である熱帯魚を飼育する場合にも、この規程が適用されることになりそうです。

4.弁護活動

弁護士
岡本 裕明
珍しい罪名になります。弁護人としてはどのようなことを考えるべきなのでしょうか。考えてみました。

 報道で明らかとなっている情報が少ないため、他の罰則規定が問題となっている可能性もありますし、逮捕された熱帯魚店の関係者が、遺伝子組換え生物である熱帯魚をどのように「使用」していたのか、また当該熱帯魚をどのように販売していたのかは分かりません。
 前例の少なそうな事案になるでしょうから、具体的な事情をもとに罰則が適用される行為といえるのかどうかについて、慎重な判断が必要になるでしょう。
 一方で、遺伝子組換え生物である熱帯魚を購入した顧客との関係ではどうでしょうか。もし、遺伝子組換え生物である旨を熱帯店から説明を受けた上で購入し飼育していたのであれば、売主である熱帯魚店と同等とまではいかなくとも、同じような罰則が適用される可能性があります。
 逆に、遺伝子組換え生物である旨の説明を受けていなかった場合、遺伝子組換え生物使用規制法には過失犯を処罰する規定が定められていませんから、意図的に遺伝子組換え生物を「使用」していたと認められなければ、「故意」があるとして、同法の罰則規定が適用されることはありません。
 もっとも、遺伝子組換え生物であることを明確に認識できていなくても、その可能性を認識できていた場合には、「故意」が認められる余地はあります。
 例えば、薬物の輸入事案においては、日本に持ち込んだ薬物が覚醒剤であると明確に認識できていなくても、違法な薬物であることを認識できていた場合には、自身が所持している薬物が覚醒剤である可能性は認識できている訳ですから、「故意」は認められてしまうことになるのです。
 では、今回の報道にあったように、通常であれば発光しないはずの種類の熱帯魚であるものの、発光する個体として熱帯魚を購入した場合に、遺伝子組換え生物である可能性を認識できたと認められるでしょうか。
 一律に判断することはできず、購入時の説明や飼育時の様子等を併せて「故意」の有無は検討されることになるように思いますが、仮に熱帯魚を購入した顧客のような立場の方の弁護を担当する場合には、この点を理由に罰則規定の適用の是非を争うことは考えられそうです。

5.まとめ

弁護士
岡本 裕明
法律の全体的な解説はできておりませんが、報道されていたような事案との関係については、御理解いただけたでしょうか。

 今回は、遺伝子組換え生物使用規制法について、光る熱帯魚の飼育・販売によって同法違反の容疑で被疑者が逮捕されたという報道をもとに、解説をさせていただきました。
 今回のように、あまり耳馴染のない法律であっても、その法律の最後の方に罰則規定が設けられていることは多々あります。そのような場合、罰則規定のみを読んでも、犯罪の内容を理解することは出来ず、その法律全体を理解する必要があります。
 遺伝子組換え生物使用規制法との関係では、今回解説させていただいた内容はほんの一部であり、報道にあった事案において適用された罰則について適切に解説できているかも未知数です。
 もっとも、警察官から取調べを受けたり、書類送検された上で検察庁に赴く必要が生じたりしている場合には、それは全て刑事事件になります。私達が専門的に取り扱っている分野になりますので、御気軽に御相談いただければと思います。

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