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コラム

保護観察って取り消されるの?

簡単に言うと…
  • 保護観察とは保護司等との面談を通じて、社会内で更生改善を図る処遇である。
  • 罪を犯した場合だけでなく、保護観察期間中に遵守事項に違反した場合には、少年院送致や刑務所での服役・拘禁を命じられる可能性がある。
  • 裁判所は、社会内での更生改善の可能性を慎重に判断するため、遵守事項に違反していることが明らかであったとしても、少年院送致や刑務所への服役・拘禁を避けることのできる可能性はある。
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弁護士
岡本 裕明
保護観察というと、刑務所や少年院に行かなくていいということは分かるものの、具体的にどのような意味を持つものなのか把握できていない方が多いように思います。今回は、保護観察の基本的な内容について、確認してみたいと思います。

 今回は保護観察についての解説をさせていただこうと思います。
 単語としては聞いたことがあるものの、その内容を詳細に理解できている方は多くないのではないでしょうか。保護観察期間中に何をするのかという点もそうですし、保護観察がどの程度続くのかという点も、懲役刑・禁錮刑・拘禁刑と違って具体的な期間を言い渡される訳ではありませんから、ハッキリしません。
 また、保護観察は、少年事件においてよく耳にする言葉ではありますが、成人の被告人を対象とする刑事事件においても問題となり得ます。ですので、少年事件における少年審判において言い渡される内容と、成人の被告人に対して言い渡される内容の違いも問題となり得そうです。
 今回は、一見して分かり難い保護観察というものの内容を掘り下げてみたいと思います。なお、少年院や刑務所から仮釈放(仮退院)された方に対しても、保護観察に付されることはあるのですが、今回のコラムにおける解説からは紙幅の関係で省略させてください。刑務所や少年院に行くことなく、保護観察に付された場合を対象に解説させていただきます。

1.保護観察の内容

弁護士
岡本 裕明
まずは、保護観察というものが、法律でどのように定められているのか、確認してみましょう。

 少年や被告人に対して保護観察を付することができることについては、刑法や少年法に定めがあります。しかし、保護観察の内容について定めているのは、刑法や少年法ではなく、更生保護法という法律になります。まずは、その法律に定められている内容を確認してみましょう。

更生保護法

(保護観察の実施方法)

第49条
 保護観察は、保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、その犯罪又は非行に結び付く要因及び改善更生に資する事項を的確に把握しつつ、第57条及び第65条の3第1項に規定する指導監督並びに第58条に規定する補導援護を行うことにより実施するものとする。
(指導監督の方法)
第57条1項
 保護観察における指導監督は、次に掲げる方法によって行うものとする。
1 面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状を把握すること。
2 保護観察対象者が一般遵守事項及び特別遵守事項…を遵守し、並びに生活行動指針に即して生活し、及び行動するよう、必要な指示その他の措置をとること…。
3 特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を実施すること。
(補導援護の方法)
第58条1項
 保護観察における補導援護は、保護観察対象者が自立した生活を営むことができるようにするため、その自助の責任を踏まえつつ、次に掲げる方法によって行うものとする。
1 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること。
2 医療及び療養を受けることを助けること。
3 職業を補導し、及び就職を助けること。
4 教養訓練の手段を得ることを助けること。
5 生活環境を改善し、及び調整すること。
6 社会生活に適応させるために必要な生活指導を行うこと。
7 前各号に掲げるもののほか、保護観察対象者が健全な社会生活を営むために必要な助言その他の措置をとること。

 更生保護法の中には保護観察について様々な規定があり、第57条にも続きがあります。しかし、引用が長くなってしまうので省略して紹介しておりますので、気になる方は法文を御確認ください。
 保護観察とは、基本的には、面接等を通じて保護観察者の行状を把握し、更生改善を図るために必要な指導や援護を行うことをいいます。
 そして、実際に誰がこのような指導を行うかというと、同法61条で保護観察官又は保護司が行う旨が定められているのです。
 保護観察というと、保護司との面談がメインだと説明されることが多いと思います。保護司との面談のみで更生を図ろうという訳ではないのですが、更生改善を図るために必要な指導は、対象者によって様々です。まずは、対象者が抱えている問題点を把握する必要がありますし、全ての問題との関係で特効薬となるような更生手段が定まっている訳ではないので、面談という柔軟に問題に向き合うことのできる手段が重宝されている訳です。

2.保護観察の制裁としての側面

弁護士
岡本 裕明
保護観察とは、犯罪行為に及んだ者に対して付されるものです。そうすると、保護観察には、制裁としての側面も認められそうです。どのような効果があるのか確認してみましょう。

(1)成人事件

 上述したように、保護観察は対象者の更生改善を図るためのものです。しかし、保護観察は、何らかの犯罪行為に及んだことに起因して付されるものです(少年事件との関係では、例外的に非行事実が認められない場合でも保護観察が付されることはあり得ますが、今回は説明を省略させていただきます)。
 特に、成人の刑事事件との関係では、拘禁刑等の刑罰に伴って付されるものですので、制裁としての側面があることも否定できません。
 まずは、この点についての刑法の定めを確認しておきましょう。

刑法

(刑の全部の執行猶予)

第25条2項
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても…情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)
第26条の2
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
1号 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
2号 第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。

 まず、保護観察中に再び罪を犯した場合には、第25条2項ただし書きによって、執行猶予を付すことができません。刑務所への拘禁等がほぼ不可避となる点で、制裁的な効果があるといえます(弁護人として、刑務所への拘禁等を防ごうとする場合、罰金刑等を求めることになるでしょう)。
 また、保護観察中に再犯に及び、その犯罪について執行猶予の付されない懲役刑・禁錮刑・拘禁刑が宣告された場合に、保護観察付きの執行猶予が取り消されることは想像し易いと思います(引用を省略しましたが、刑法第26条に定められています。刑務所等に拘禁されている間は、保護司や保護観察官ではなく、刑務所内において矯正処遇を受けることになります)。
 罰金刑が宣告されたことによって、新たな犯罪との関係では刑務所に拘禁されずに済んだ場合でも、保護観察付きの執行猶予が取り消されることによって、刑務所に拘禁される可能性があります。
 また、刑法26条の2は、新たに何らかの犯罪行為に及んだわけではない場合であっても、保護観察中に定められた遵守事項に違反した場合には、執行猶予を取り消した上で、刑務所に拘禁する旨を定めているのです。

(2)少年事件

 では、少年事件で付される保護観察はどうでしょうか。少年法では、少年院に送致することを猶予した上で、保護観察を付けている訳ではありません。ですから、成人事件のように拘禁刑等に付された執行猶予を取り消すことによって、保護観察中の者を少年院に送致することはできないのです。

少年法

(保護観察中の者に対する措置)

第26条の4
 更生保護法…第67条第2項の申請があつた場合において、家庭裁判所は、審判の結果、第24条第1項第1号の保護処分を受けた者がその遵守すべき事項を遵守せず、同法第67条第1項の警告を受けたにもかかわらず、なお遵守すべき事項を遵守しなかったと認められる事由があり、その程度が重く、かつ、その保護処分によっては本人の改善及び更生を図ることができないと認めるときは、決定をもって、第24条第1項第2号又は第3号の保護処分をしなければならない。

 第24条1項第2号又は第3号の保護処分とは、児童自立支援施設や少年院への送致を内容とするものです。したがって、執行猶予が取り消されるのと理屈は違うものの、遵守事項を遵守しなかった場合には、成人事件におけるのと同じように、身体拘束を伴う処分に付される可能性があるのです。

3.遵守事項とは

弁護士
岡本 裕明
保護観察が取り消されて、刑務所や少年院で拘束されてしまうケースというのは、遵守事項に違反した場合に生じます。そこで、遵守事項とは何なのかについて確認してみましょう。

 以上のとおり、成人であっても少年であっても、保護観察期間中は、遵守事項を遵守しなければ、刑務所や少年院等、身体拘束を伴う処遇に切り替えられてしまう可能性があるのです。
 では、遵守事項とはどのような内容なのでしょうか。再び、更生保護法の条文に戻って確認してみましょう。

更生保護法

(一般遵守事項)

第50条1項
 保護観察対象者は、次に掲げる事項(以下「一般遵守事項」という。)を遵守しなければならない。
1号 再び犯罪をすることがないよう、又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること。
2号 次に掲げる事項を守り、保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること…
(特別遵守事項)
第51条
1項 保護観察対象者は、一般遵守事項のほか、遵守すべき特別の事項(以下「特別遵守事項」という。)が定められたときは、これを遵守しなければならない。
2項 特別遵守事項は…これに違反した場合に…刑法第26条の2…に規定する処分がされることがあることを踏まえ、次に掲げる事項について、保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内において、具体的に定めるものとする。
1号 犯罪性のある者との交際、いかがわしい場所への出入り、遊興による浪費、過度の飲酒その他の犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動をしてはならないこと。
2号 労働に従事すること、通学することその他の再び犯罪をすることがなく又は非行のない健全な生活態度を保持するために必要と認められる特定の行動を実行し、又は継続すること。
4号 医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること。
(特別遵守事項の特則)
第51条の2
薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律第4条第1項の規定により保護観察に付する旨の言渡しを受けた者については…規制薬物等…の使用を反復する犯罪的傾向を改善するための前条第2項第4号に規定する処遇を受けることを…特別遵守事項として定めなければならない…。

 この点も、条文をかなり省略して紹介させていただいておりますから、気になる方は原文を御確認ください。
 遵守事項は、一般遵守事項と特別遵守事項に分かれており、一般遵守事項については、再犯に及ばないといった、ある意味では当然の内容が定められています。逆に、特別遵守事項については、対象者の更生改善にあたって必須と思われる内容が、個別具体的に定められることになります。
 共犯者らのような関係者との人間関係の清算という内容の他に、就学や就労等が定められることもありますし、専門家による処遇を継続的に受けることが定められることもあります。第51条の2は、薬物依存への脱却に向けた治療やカウンセリングを内容とするもので、一例として挙げさせていただきました。

4.裁判例

弁護士
岡本 裕明
遵守事項を遵守すべきことは間違いありません。しかし、保護観察は、元々は社会内での更生に期待できる人に対して付されるものであったはずです。 どのような場合に、実際に保護観察が取り消されてしまうのか、裁判例を確認してみましょう。

 以上のとおり、遵守事項に違反した場合には、刑務所や少年院での処遇に切り替えられてしまいます。とはいえ、もともと保護観察は、社会内での更生を図ることができると裁判官が判断したために付されたもののはずです、したがって、軽微な条件違反で直ちに刑務所や少年院に送られてしまうとすると、保護観察に付した目的が損なわれてしまうはずです。
 そこで、どのようなケースにおいて、刑務所や少年院に送致されることとなるのか、実際の裁判例を確認してみましょう。

金沢家庭裁判所令和5年3月9日決定

事案
本人は、18歳に満たない青少年にわいせつな行為をしたという条例違反の非行によって、保護観察決定を受けたものの、保護観察期間中に、18歳に満たない青少年に性行為を求めるメッセージを送った。
本人は、保護観察所に出頭し、上記行為が一般遵守事項に違反するとして警告を受けたものの、その後も同様の行為に及んだため、再度警告を受けた。
さらに、その後、18歳に満たない青少年にわいせつな行為を行う目的で連絡を取り、行為に及ぼうとしたものの、いわゆる美人局の被害に遭った。
裁判所の判断
本人にとって2回目の警告であったにもかかわらず、そのわずか10日程度後に同様の行為に及んでおり、そもそも本人は、本件行為と同様の行為の末になした前件非行によって保護観察に付されたことが認められる。保護観察所による警告は、残念ながら全くと言っていいほど抑止力とはならなかった。
本人の改善更正を図るためには、保護観察ではこれを実現することができず、より強力な枠組みでの指導が必要であり、少年を少年院に収容し、専門家による適切な指導の下、内省を深めさせ、自身の問題性に向き合わせる必要があると認められる。

 最終的には少年院に送致されることになってしまいましたが、それまでに同種の行為に2回及んでいるにもかかわらず、社会内での更生に期待して警告に止めた点に特徴のある事案といえます。
 裁判所は親による指導にこれ以上期待することができない点などについても触れた上で、少年院への送致を決めております。

大阪高等裁判所令和5年6月26日決定

事案
少年は、保護観察決定を受け、保護観察所において「保護観察に付されたときに保護観察所の長に届け出た住居に居住すること」等の遵守事項の内容及び違反した場合には少年院に収容される可能性があることについて説明を受けた。
しかし、少年は、保護観察所の許可を受けることなく、外出したまま届出住所に帰宅しなかった(これを「家出」という。)。これらの家出中、少年は、元交際相手の家に行ったり、公園で野宿したりして過ごしたほか、繁華街まで行くこともあった。家出の後、少年が自宅に帰ることを拒否したことから、児童相談所で一時保護されたが、一時保護中も2度にわたり無断で外出した。
少年は、その後自宅に戻ったが、再度家出をし、その後に発見された時に、身体に多数の自傷行為の傷跡があったことから、医療保護入院となった。
退院後に、家出が遵守事項に違反するとして警告を受けたが、再び家出をするに至った。
裁判所の判断
少年の要保護性は、保護観察下にもかかわらず一層高まっているといえる。また、少年は保護司及び保護観察官による指導や警告にもかかわらず家出を繰り返しており、少年が保護観察の指導等を真摯に受け止めていないことは明らかである。上記少年の問題性によれば、このまま保護観察を継続したとしても、今後少年が指導を真摯に受け止めることを期待することは難しい。
少年の両親は、少年に対する愛情及び監護意欲を有しているものの、少年の家庭外に出ようとする欲求の歯止めにはならなかった。他に保護観察の継続を可能にする有効な手立ては見当たらない。
以上によれば、現時点で少年が自らの問題性に目を向けつつあることを考慮しても、保護観察によっては少年の改善更生を図ることはできないと認められる。

 事案の紹介からは省略していますが、この大阪の事案は、最後に家出をした後、児童相談所の職員らに暴行を加えるなどの非行に及んでいることが認められます。この暴行については、遵守事項違反を理由にいずれにしても少年院に送致されることが決まったため、別個に処分はしない旨の判断が下されていますが、結論に多少に影響を及ぼしたように思います。
 金沢の事案のように、犯罪に類する行為を繰り返したわけではなく、家出という遵守事項違反を理由に、少年院に送致されている点に特徴がありますが、この事案でも、遵守事項に一度違反しただけで少年院に送致しているのではなく、警告をした上で、その警告にも違反している点を重視し、少年院送致を決めています。したがって、保護観察官や家庭裁判所としても、社会内で更生改善が期待できないかどうかについて慎重に判断してくれているといえるでしょう。

東京高等裁判所平成22年3月5日決定

事案
被請求人は、保護観察所に出頭した際、交際相手方で生活していたにもかかわらず母親方を住居とする住居届出書を提出し、届出の住居に居住せず、担当保護司を来訪もせず、保護観察官の呼出しに応じず、他人方を転々とするなどして所在不明となっていたことに加え、覚醒剤事犯者処遇プログラムの受講に際して、次回遅刻あるいは不出頭があれば執行猶予取消しにつながる旨厳重に指導されたにもかかわらず指定の日時に出頭しなかった。
裁判所の判断
被請求人は、出会い系サイトで知り合った男性とラブホテルに行くことによりその男性から金銭を貰い、ネットカフェで寝泊まりし、覚せい剤を購入していたという前刑の犯行時と同様の生活状況に陥っていたと見られ、保護観察離脱後の生活状況は甚だ不良であったといえる。
また、覚醒剤事犯者処遇プログラムについては、本件プログラムへ参加することを通じて広く更生に資するようにすることが同プログラムが設けられた趣旨であるから、被請求人が覚せい剤を使用・所持するなどしたとはうかがわれないからといって、「情状が重いとき」への該当性が当然に否定されることにはならない。
被請求人が第3回以降の本件プログラムを受講しなかったことは、上記のとおり保護観察に服する意欲の乏しさと、再び覚せい剤事犯を起こさないようにする意識の低さを示していると見られる。
以上のことから、特別遵守事項違反に該当する事実を認め、かつ、その情状が重いとして、前刑の執行猶予の言渡しの取消しを認めた原決定を支持した。

 こちらは少年ではなく成人の執行猶予取消の事案です。少年と同様に、生活拠点が定まっていないことが重視されていますし、薬物事犯によって執行猶予付きの判決を言い渡されているにもかかわらず、薬物依存の脱却に向けたプログラムの受講を怠っていた点についても重視されています。その結果として、遵守事項に違反しているだけでなく、その違反についての情状が重いと評価され、服役を命じています。
 こちらも、プログラムを欠席・遅刻することがないような指導をまずは行っているため、1回の欠席を理由に直ちに、執行猶予が取り消されている訳ではありません。一方で、プログラムを受講することが求められている場合には、仮に実際には薬物を利用した形跡が認められず、一定程度、薬物依存から脱却できているように思われるケースであっても、そのことを理由に、勝手にプログラムを欠席することは許されないことが明らかになっています。

5.遵守事項違反と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
これまで、保護観察の内容について解説させていただきました。遵守事項に違反したことなどを理由に、少年院送致や刑務所への服役・拘禁が問題となっている場合、弁護士は何ができるのでしょうか。

 上述したとおり、形式的に遵守事項に違反している場合であっても、保護観察官や裁判所は、社会内での更生改善の可能性を慎重に判断してくれているものといえ、直ちに少年院送致や服役・拘禁を命じている訳ではありません。
 むしろ、社会内での更生改善に現時点ではこれ以上期待することができないと判断された場合において、少年院送致や服役・拘禁を命じているものと解することができます。
 もし、遵守事項に違反していないにもかかわらず、遵守事項に違反したとして扱われている場合には、当該事実認定を争うことを考える必要はありますが、どちらかというと遵守事項違反が、直ちに少年院送致や刑務所への懲役・拘禁に繋がるほど重篤なものなのかを争う事案が多いといえるでしょう。
 そうだとすると、遵守事項に違反するに至った経緯や、その経緯を踏まえた上で、今後は遵守事項を遵守し続けた上で、社会内での更生改善が可能であることを、客観的な資料をもとに裁判所に理解させる必要があります。
 遵守事項への違反が認められている時点で、御家族だけで解決できる状況にはないことがほとんどと言えます。一方で、保護観察期間中であれば、更生改善のための指導等を担当している保護司や保護観察官も存在するはずです。そういった社会内で更生改善するために有益な方々とも協力しつつ、少年院送致や刑務所への懲役・拘禁を避けるために、弁護士による活動は必要不可欠といえます。

6.まとめ

弁護士
岡本 裕明
これまで、保護観察の内容について解説させていただきました。遵守事項に違反したことなどを理由に、少年院送致や刑務所への服役・拘禁が問題となっている場合、弁護士は何ができるのでしょうか。

 保護観察については他にも様々な問題点があります。しかし、法律や裁判例等を引用した上で紹介するとなると、かなり長文になってしまいました。まだ、保護観察の期間や、遵守事項を遵守し続けていた場合にどうなるのかといった点などについて、解説できていない部分は残されていますが、今回の解説はここまでとさせていただきます。
 今回は、遵守事項に違反した場合の内容を中心に解説させていただきました。せっかく、社会内での更生改善を期待され、少年院や刑務所に入らなくて済んだのに、生活態度等を理由に拘束されてしまったのでは、一度、少年院や刑務所を回避できた意味が半減してしまいます。
 もし、執行猶予が取り消されそう又は少年院に送致されてしまうかもしれないという局面にお悩みでしたら、直ちに弊所まで御相談ください。

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