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コラム

警察官限りで刑事手続を終わらせることはできるのか。微罪処分について 。

簡単に言うと…
  • 刑事事件は、原則として検察官によって処理される。
  • 例外的に「微罪処分」として検察官に送致することなく処理する手続が設けられている。
  • 「微罪処分」の対象となるかどうかは一律に決められていないものの、基本的には軽微な暴行や窃盗等の罪に限られる。
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弁護士
岡本 裕明
「微罪処分」という言葉は聞いたことがありますでしょうか。検察官を関与させることなく、刑事事件を終わりにできるのであれば、まずは「微罪処分」を目指したくなりますよね。どのような内容なのか解説させていただきます。

 罪を犯してしまった場合、できる限り早く私達刑事事件の弁護士に御相談いただきたいと思っています。早く弁護活動に着手できればできるほど、弁護活動の幅が広がりますので。
 一方で、どれだけ手厚い弁護活動を行ったとしても、既に警察官による捜査が始まっている場合、その捜査を止めることは基本的にはできません。それは、刑事事件をどのように処分するのかについては、検察官の権限と定められており、警察官自身が事件を終わらせることはできない原則となっているからです。
 また、検察官に事件が送致された場合であっても、不起訴処分として前科が付かない形で事件を終わらせることも可能です。私達刑事事件の弁護士としては、まずこの不起訴処分を得るために活動することになるでしょう。
 警察官自身が事件を終わらせることができないため、所謂「書類送検」が避けられないとしても、初めて刑事事件における被疑者として扱われた場合、送検自体も避けたいと考えることは、心情としては当たり前のようにも感じます。
 そのようにお考えになった結果、インターネット等で検索して、「微罪処分」として扱ってもらえれば、検察官に関与させることなく、事件を終わらせることが可能かもしれないと考え、私達に御相談いただく方もいらっしゃいます。
 確かに、「微罪処分」として処理された場合には、実質的に検察官を関与させることなく事件を終わらせることは可能です。
 今回は、「微罪処分」とは何なのかについて解説させていただきたいと思います。

1.刑事訴訟法上の定め

弁護士
岡本 裕明
そもそも、検察官が刑事事件を処理しなければいけないという原則は、どのように定められているのでしょうか。法律を確認してみましょう。

 冒頭でお伝えさせていただきましたとおり、刑事事件をどのように処理するのかについては、原則として検察官の役割とされています。そこで、まずはその原則がどのように定められているのか確認してみましょう。

刑事訴訟法

第246条
 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

第247条
 公訴は、検察官がこれを行う。
第248条
 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

 「公訴」とは「起訴」と同じ意味でご理解いただいて結構です。したがって、起訴するかどうかについては、第247条及び第248条によって、検察官が判断することになっています。
 したがって、第246条はその前提として、捜査した事件を検察官に送致するように警察官に求めていることになります。
 もっとも、第246条には例外的な内容も定められています。
 まず、「この法律に特別の定のある場合を除いて」と定められていますが、こちらは「微罪処分」とはあまり関係がありません。例えば、警察官が被疑者を現行犯逮捕した場合には、「速やかに」ではなく、48時間という厳格な時間制限が課されることになります。この場合、「特別な定」はあるのですが、結局、検察官に送致されることには変わりありません。
 他に、少年事件において、検察庁ではなく家庭裁判所に警察官が直接送致するケースも、「特別な定」によるものと理解されているのですが、こちらも別の手続になりますので、説明は省略させていただきます。
 「微罪処分」と関係があるのは、「但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」との一文です。

2.「微罪処分」における警察官の手続

弁護士
岡本 裕明
送致が必要とされない事件において、警察官はどのように事件を終わらせるのでしょうか。この点についても定めがありますので、確認してみましょう。

 検察官が指定した事件については、この限りではないと定められているため、検察官が指定した事件については、捜査をした事件について、検察官に送致しなくてもいいということになりそうです。
 では、警察官は検察官に送致するのではなく、どのような手続を行うことになるのでしょうか。犯罪捜査規範に定めがありますので、その内容を確認してみましょう。

犯罪捜査規範

(微罪処分ができる場合)
第198条
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
(微罪処分の報告)

第199条
 前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書…により検察官に報告しなければならない。
(微罪処分の際の処置)
第200条
 第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
(1) 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
(2) 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
(3) 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

 結局、第199条で検察官への報告が求められているのですが、事件として送致する訳ではありませんので、報告を受けた検察官が、被疑者の取調べを行ったり、被疑者に対して何らかの処分を下すことはありません。検察庁が、この報告に対して何らかの決済を行うということは予定されていないのです。
 そこで、第200条で定められているような厳重注意のみで、刑事事件としての手続を終わらせることができることになります。

3.微罪処分となる対象

弁護士
岡本 裕明
具体的にどのような事件が「微罪処分」の対象になるのでしょうか。考えてみました。

 ここまでくると、どのような犯罪が微罪処分によって終結し得るのかが気になってくると思います。もし、様々な事件との関係で、「微罪処分」として処理される可能性があるようでしたら、刑事事件の弁護士は、不起訴処分ではなくまずは「微罪処分」を目指して活動すべきということになりかねません。
 もっとも、刑事訴訟法や犯罪捜査規範の中では、「検察官が指定した事件」とはどのような事件なのかについて定めた条文はありません。昭和25年7月20日付け検事総長からの通知を受け、各地方検察庁の検事正の指示によって「微罪処分」となる事件が指定されているのです。
 したがって、全国的に統一的な基準が存在するのかは分かりませんが、微罪処分の対象とし得る事件は、基本的に軽微な事件として理解されています。
 具体的には、窃盗罪、詐欺罪、横領罪等の財産に対する犯罪については、被害額が1万円以下のものが対象となることが多いようです。1万円というのはあくまでも1つの基準ですので、示談金等が支払われており、被害が回復している場合には、被害額がある程度超過していても、「微罪処分」の対象となることがあるようです。
 他にも、暴行罪との関係では、凶器が用いられておらず、偶発的な犯行であるなどの理由で、犯情が軽微だと評価できる場合には、「微罪処分」の対象になり得るようです。
 逆に、被疑者が逮捕されている事案や、自首・告訴等がなされている事案については、「微罪処分」の対象にならないようですし、共犯者がいるような事案においても「微罪処分」の対象にはなり難いものといえそうです。

4.「微罪処分」と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
「微罪処分」を常に目指すことは、問題となっている犯罪によっては不可能な場合も多いです。しかし、可能性が残されている場合には、「微罪処分」を目指すことも考えられます。

 上述したとおり、「微罪処分」の対象となるかどうかについて、一律に基準を設けることは困難です。とはいえ、「微罪処分」として処理されている件数は、令和5年度の犯罪白書によると、4万8000件弱が「微罪処分」として処理されており、全検挙人員の3割弱を占めているようで、「微罪処分」として処理されるのが珍しいケースかというとそういう訳ではありません。
 もっとも、「微罪処分」として処理された犯罪累計について過去の統計を確認してみると、その大半が暴行や窃盗(侵入盗を除く)に集中しています。特に、自転車盗等が「微罪処分」として多く処理されていることが窺われます。
 つまり、「微罪処分」に該当するかどうかは、犯罪の内容によってある程度決まっており、私達弁護士が依頼を受ける段階では、「微罪処分」として処理されるかどうかについて、既に決まってしまっていることが多いように思われます。
 そこで、どのような事件においても、「微罪処分」を目指して弁護活動を行うというのは現実的ではなく、不起訴処分を目指して活動を行うことになるのが、実際には多いものと考えられます。
 とはいえ、初動の段階でご相談いただくことができた窃盗の事案について、被害者の方との示談交渉が成立するのを待ってから、事件を処理する旨を担当警察官から伝えられ、示談が成立した後に「微罪処分」として処理された事案もありますので、可能性が残されているケースにおいては、積極的に「微罪処分」として処理されることを目指して活動することも考えられるのです。

5.まとめ

弁護士
岡本 裕明
「微罪処分」の内容について御理解いただけたでしょうか。もし、「微罪処分」として処理されない場合であっても、前科がついてしまうことが確定する訳ではありません。弁護人と共に不起訴処分を目指して活動していきましょう。

 今回は、「微罪処分」について解説させていただきました。刑事訴訟法等の法律を見ただけでは説明されていない概念ですので、わかりにくい部分もあったと思いますし、結局細かい部分については、説明しきれていないところが残されているように思います。
 過去には、警察官が自分達の検挙実績を水増しするために用いられたこともあり、運用が不透明な部分が多いことから、制度自体の正当性について疑義を有している研究者の方もいらっしゃいます。
 御自身が抱えている問題が、「微罪処分」の対象となるのかどうかについて、正確に理解できる方はなかなかいらっしゃらないと思いますから、お悩みがあるようでしたら、まずはご相談いただければと思います。

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