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裁判の手続の流れについて

1 最初は形式的な手続が続きます

 裁判の開始は、裁判官の入廷と同時に、書記官の起立・礼の号令とともに始まることが多いです。その後、人定質問という手続が行われます。

刑事訴訟規則第196条
 裁判長は、検察官の起訴状の朗読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない。

 この手続は、起訴されている人物と、法廷に出廷している人物が同一であることを確認するためのものです。具体的には、氏名、生年月日、職業、住所、本籍を尋ねられることになります。本籍等の情報については、普段使うことが少ないと思います。この段階で躓いてしまうと、精神的余裕が更になくなってしまいます、本籍等については、事前に確認しておくとよいでしょう。
 その後、検察官が起訴状を朗読し、裁判官から黙秘権の内容を説明された後、起訴状の内容が間違いないかどうかについて確認されます。

刑事訴訟法第291条1項
 検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。
第291条4項
 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
刑事訴訟規則第197条
 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外、陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない。

 罪を認める場合には、「間違いありません」とだけ答えれば十分ですし、無罪を主張する場合であっても、「私は何もしていません」等、簡単な答えで十分です。その後、どのような理由で無罪を主張するのかについて、弁護人からも裁判官に意見を言う機会がありますので、被告人から詳細に裁判官に話をする必要はないのです。
 その後、検察官が、この裁判において、どのような主張をする予定なのかについて説明がなされます。この説明を冒頭陳述といいます。

刑事訴訟法第296条
 証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。

2 検察官請求にかかる証拠調べ手続について

 このような形式的な手続の後、事件の内容についての審理が始められます。刑事裁判においては、検察官が事実を証明する立証責任を負っていますから、まずは検察官側の立証から始まる事になり、通常の場合は、検察官が書面の証拠の取調べを裁判官に求める事から始まります。弁護人は、検察官の請求を受けて、検察官が請求している証拠について、証拠として使うことについて同意するかどうかについて意見を述べることになります。

刑事訴訟法第298条1項

 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
第320条

第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
第326条1項

 検察官及び被告人が証拠とすることに同意した書面又は供述は、その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限り、第321条乃至前条の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。

弁護人が不同意意見を述べた証拠については、裁判所としては直ちにその証拠を調べることは出来ませんので、同意意見が述べられた証拠についてのみ取調べることになります。そして、不同意意見が述べられたものについては、後日、その書面の作成者を証人として裁判所に呼び出し、その内容について証言させることとなるのです。
 他方で、刑事訴訟法第320条が定めているとおり、書面の証拠を裁判所に取調べさせる方法は、第326条で定められている弁護人の同意を得る方法以外にもあります。検察官としては、書面の作成者を証人として呼び出す以外に、書面の証拠を弁護人による同意なくして取調べるように裁判所に求める事になりますから、弁護人としては、そのような証拠を取調べることがない様に適切な意見を述べなくてはなりません。
 検察官請求証拠に対する対応については、事案に応じて様々なものがあります。この頁では基本的な流れについて説明させていただいておりますので、これ以上は深く立ち入りませんが、検察官請求証拠は捜査機関が作成した証拠が主たる内容ですから、基本的には被告人に不利な内容のものが多いといえます。検察官の主張に対して弁護人が被告人を弁護するために適切な弁護活動を行えるかどうかは、裁判の結論を左右しうる大切な局面と言えます。

3 弁護人請求にかかる証拠調べ手続について

検察官請求にかかる証拠の取調べが終わった後は、弁護人請求にかかる証拠の取調べ手続に移行することになります。
 ここでも、基本的な手続の流れは同じです。弁護人としても、検察官の同意が得られなければ、書面の証拠を裁判所に取調べさせることは原則として出来ません。したがって、検察官の同意を事前に得られなかった場合には、裁判所に対して当該証拠を取調べるべき理由を適切に主張しなくてはなりません。
 また、書面による証拠の取調べを終えた後、被告人の家族等の情状証人に対する証人尋問や被告人質問が行われます。このような手続においては、まず弁護人が質問をした後、検察官が反対尋問を行い、必要に応じて弁護人が再主尋問を行い、最後に裁判官が補充尋問を行うことになります。
 検察官や裁判官による尋問について、台本を丸暗記するような方法では駄目で、事前に綿密な準備が必要であることについては、裁判の準備についてのページで説明させていただいたとおりです。
 弁護人の質問については、事前の打合せを行うことでスムーズに回答できることが多いと思いますが、尋問こそ弁護人の能力の差が顕著に出る局面なのです。
 尋問は一問一答の形で行いますが、証拠になるのは弁護人の発言ではなく証人や被告人の発言です。したがって、弁護人が長々と喋った後、証人や被告人が「はい」と答えるだけの尋問は、被告人や証人にとっては楽でしょうが、裁判官は弁護人の発言内容を真実としては受け止めてくれないでしょう。
 そうすると、弁護人の質問は出来る限り短くするのが望ましいことになりますが、弁護人の質問の仕方によっては、証人や被告人が何を答えていいのかが分かり難い場合も珍しくありません。
 尋問においては、事前の準備に加えて、その時々において、証人や被告人が答え易いような内容の質問をその場で考える必要があるのです。
 なお、尋問の際には、検察官や裁判官の質問に対して、その質問が誘導尋問等、不相当な内容のものであった場合には、弁護人として直ちに異議を述べる必要があります。この点については、また別のページでご説明させてください。

4 意見陳述

それぞれの請求した証拠の取調べが終わった後は、検察官と弁護人がそれぞれ、事件についてどのような判決を下すべきかについて意見を陳述することになります。

刑事訴訟法293条1項

 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

2項

 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

弁護人は、これまで取調べた証拠を前提に、目標となる判決を得るために意見を述べる事になります。検察官の主張がどのように誤っていて、自らの主張が何故正しいのかについて、説得的に論じなければなりません。
 その際には、必要な事実を全て主張しなければならない一方で、あまり意味のない事実について五月雨式に全て主張してしまうと、意見全体の説得力を欠く事になります。
 また、証拠から認めることのできない事実を援用することも認められません。最後に主張したい内容については、それまでの証拠調べ手続の中で、全て裁判所に顕出させておく必要があるのです。
 そして、検察官と弁護人の意見陳述を終えた後、裁判所は被告人に「最後に何か言いたいことはありますか?」と、意見を言う機会を与えてくれます。

刑事訴訟規則第211条
 被告人又は弁護人には、最終に陳述する機会を与えなければならない。

被告人から裁判官に伝えて欲しい内容については、被告人質問の段階で全て出し切っていなければなりませんから、この段階で裁判官に伝えなくてはいけない内容は残されていないはずです。ですから、無罪主張の場合には無罪である旨を簡単に伝えれば十分ですし、罪を認めている場合には謝罪や二度と同じ過ちを犯すことがないことを簡単に誓約することで十分でしょう。

5 複雑な事案の場合

このページでは裁判の基本的な流れを理解して頂くために、もっとも単純な事案を想定して、裁判の流れを説明させていただいております。したがって、無罪を主張している場合等においては、上述した内容以上に、検察官の立証活動や裁判官の訴訟指揮に異議を出さなくてはいけない場面は多々認められます。
 共犯者と一緒に裁判を受ける場合等、特殊な事案においては、更に弁護人が準備しておかなければいけない事項も増えます。しかしながら、弁護人が法廷で直ちに異議を述べなければ、検察官や裁判官の活動に問題があったとしても、事後的に取り戻すことは極めて困難です。
 弁護人には、法廷の場において、検察官や裁判官に対抗するための知識と経験がなければならないのです。
 異議の内容や特殊な検討が必要となる事項については、またページを改めて説明させて頂きます。

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