目次
1 捜査機関からの接触を受ける前の方
(1)自首の是非についてアドバイスを差し上げます
逮捕を回避するために警察署に自首をすることは有益です。なぜなら、逮捕は、被疑者が逃亡や罪証隠滅を図る可能性がある場合に、被疑者の身体を拘束することで、被疑者による逃亡や罪証隠滅工作を防止し、その間に捜査を進めるために行うものですので、自首をすることによって、逃亡や罪証隠滅を行う意図を有していないことを、捜査機関に対して強調することができるからです。
一方で、逃亡や罪証隠滅を行う意図を有していないことを捜査機関に伝えるためには、犯した罪を正直に告白する必要があります。自首後の取調べにおいて、虚偽の供述をしていると捜査機関に疑われた場合には、自首をしたにもかかわらず、逃亡や罪証隠滅を疑われるかもしれません。
また、罪を犯したことを捜査機関に打ち明けることで、前科がつく可能性も高くなります。弁護士は、贖罪を強制するような立場にはありませんから、今後の手続の見通し等についてしっかりお伝えした上で、自首について御検討いただくことになります。
(2)自首の具体的方法を考え、自首に同行いたします
自首をする場合、警察署に出頭することになりますが、どの警察署に出頭するのか、事前にアポをとる必要があるのか等、自首することを決めた後にも、迷うことは多いと思います。
まず、出頭先の警察署ですが、本来的にはどの警察署に行っても構いません。
犯罪捜査規範第63条
司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない
しかしながら、実際は、管轄外の警察署に出頭した場合、管轄の警察署に出頭するように伝えられ、自首として受理されないような事案も存在します。したがって、自首をする際には、その事件の管轄のある警察署に出頭する必要があります。
事件の管轄は、基本的には犯罪が発生した場所によって決められます。暴行や傷害事件等については、犯罪が発生した場所を特定することは簡単だと思います。しかしながら、加害者と被害者の方が直接接触していない犯罪類型等では、管轄を特定するにも、法律的な知識が必要となるのです。
また、出頭先の警察署が特定できた後も、事前に電話でアポを取るのかどうか等、自首の方法についても、一概には決められません。
出頭した日に担当の警察官が不在にしていると、自首として取り扱われることなく帰宅させられるかもしれません。しかしながら、事前に電話してから出頭する場合、出頭者の個人情報を全て伝えてしまうと、その情報をもとに逮捕令状を請求されてしまうかもしれません。したがって、事前にアポは取るものの、個人情報は伝えないで出頭することが多いように思いますが、このような方法が常に適切だという訳でもありません。
事案の内容について、事前にしっかりと打ち合わせをさせていただいた上で、ベストな方針を決めさせていただくことになります。
2 既に捜査機関から接触を受けている方
(1)逮捕の可能性について検討します
逮捕の回避についてご相談いただく場合のほとんどは、任意の取調べを終えた後か、捜査機関から取り調べの日程調整の電話があった後でのご相談になります。
この場合、捜査機関としては、逮捕状を持って被疑者に接触するという選択をしなかった訳ですから、捜査機関が捜査に着手していることを被疑者に認識させても、被疑者が直ちに逃亡や罪証隠滅を図ることはないと判断していることになりますから、既に逮捕の可能性が極めて高いような状況ではないものと言えますが、事後的に逮捕される可能性がない訳ではありません。
逮捕の回避を最優先にするべきなのか、捜査機関に対して余計な情報を提供しないことを最優先にするべきなのかについて、慎重な判断が求められますので、弁護士のアドバイスも、まずは逮捕の可能性を踏まえて行うことになります。
なお、現行犯逮捕の場合、事件発生直後に逮捕されてしまいますから、事前に弁護士に相談する機会はありません。その場合でも、職務質問を受けている最中や、任意の取り調べを受ける際等、弁護士に電話で相談するタイミングはあり得ます。
どの段階であっても、弁護士への相談は無駄にはなりません。
(2)逮捕の可能性について検討します
既に捜査機関による接触がある場合には、その後に警察署に出頭したとしても、自首が成立しないケースがほとんどと言えます。一方で、警察署に出頭して、自身の犯罪行為について打ち明けることで、逃亡や罪証隠滅を企図していないことについて印象付けることは可能ですから、自首に該当しない場合であっても、警察署に出頭することが無意味になる訳ではありません。
しかし、自首する場合と異なり、捜査機関の手元には、その事件についての捜査資料が一定程度存在しています。警察官に対して罪を自白したとしても、そのような資料の内容と一致しない内容を話したのでは、むしろ疑いが深まることになりかねません。
したがって、自首の場合以上に、取調べへの対応についてのアドバイスが重要になることになります。
また、自首する場合と同様に、逃亡や罪証隠滅の意図がないことを、どのように警察官に主張するのか、その主張を裏付ける資料を作成することができるか等についても、弁護士のアドバイスは重要になってきます。単に、家族の身柄引受書を作成して提出する以上に、逃亡や罪証隠滅の可能性がないことを強調できる方法もあるのです。
逮捕は、身体を拘束される際に行われる最初の手続です。したがって、逮捕さえ回避できれば、その後の勾留請求を却下させる活動や、保釈請求も必要なくなります。弁護士による逮捕回避に向けた活動は極めて重要なものになりますので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。