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コラム

売春防止法とは。性行為を伴う風俗店は全て違法なのか 。

簡単に言うと…
  • 性行為を伴わないわいせつな行為であっても、児童買春の罪は成立する。
  • 対象者が児童でない場合、買春ではなく売春を防止する売春防止法が適用される。
  • 売春防止法は、売春の勧誘や周旋、場所の提供等を処罰対象として定めている。
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弁護士
岡本 裕明
売春行為が好ましくない行為であるということは、皆様イメージし易いのではないかと思います。一方で、性的なサービスを提供している風俗店は数多く存在し、その全てが違法であるという結論にも違和感を抱かれるのではないかと思います。今回は、売春防止法がどのような行為を処罰対象としているのかについて確認してみたいと思います。

 先日、警視庁が、デリバリーヘルス店を運営していたとされるグループの関係者を、一斉に摘発し、店舗責任者ら20名以上が逮捕された旨の報道がなされていました。
 このような報道が出されると、当該報道に対するコメントとして、見せしめのための逮捕であるなど、逮捕の正当性に疑義を抱いているかのような内容が投稿されることが多いように感じています。
 買春行為自体が好ましくない行為であることや、他人に売春をさせる行為は違法であることなどについては、多くの方が一般常識として理解されているように思いますが、それでも上述したようなコメントが散見されるのは、逮捕された被疑者が運営していた店舗と差異がないような店舗が、あたかも適法な業務として公に営業を続けていることに起因しているのではないかと感じています。
 もし、一般的にデリバリーヘルスと呼称されるような営業形態が法律に違反するようなものである場合、デリバリーヘルス店であることを自称して営業している店舗は全て摘発されるべきであり、捜査機関は恣意的に捜査に及んでいることとなってしまいます。
 では、本当に摘発される店舗と摘発されない店舗に差異はなく、捜査機関に目を付けられるかどうかだけの違いしかないのでしょうか。
 今回は、売春防止法を中心に、どのような行為が処罰対象として定められているかどうかを確認したいと思います。
売春防止法とは。性行為を伴う風俗店は全て違法なのか 。

1.児童買春

弁護士
岡本 裕明
買春行為の中でも、児童買春が悪質な行為であることはイメージし易いと思います。そこで、まずは児童買春についての規定を確認してみましょう。

 あまり区別して報道等をご覧になることはないのかもしれませんが、買春行為についての報道については、圧倒的に児童買春の事案が多いように感じています。まずは、児童買春について、法律がどのように処罰規定を設けているか確認したいと思います。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

(定義)

第2条
1項 この法律において「児童」とは、18歳に満たない者をいう。
2項 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
1号 児童
2号 児童に対する性交等の周旋をした者
3号 児童の保護者…
(児童買春)
第4条
 児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
(児童買春周旋)
第5条
1項 児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2項 児童買春の周旋をすることを業とした者は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。

 以上の通り、単に児童と性行為等に及ぶ行為よりも、児童買春を周旋するような行為に及んだ場合の方が、重い刑罰が科されることになります。
 それは、児童に性的な行為をさせることによって経済的な利益等を得ようとする点に、悪質さが認められるからと理解できます。
 そして、これから紹介する売春防止法と比較して見ていただきたいのが、「児童買春」の定義です。性交等をさせることが問題となるのですが、性器を性器に挿入するような行為だけでなく、性器等に触れるような行為も、「児童買春」の対象になるのです。したがって、性的な行為を伴うサービスを提供している風俗店において、従業員が児童であった場合には、性行為自体が禁止されていたとしても、「児童買春」に関する罪は成立することになるのです。

2.売春防止法上の売春

弁護士
岡本 裕明
売春防止法とはどのような行為を処罰する法律なのでしょうか。確認してみましょう。

(1)買春と売春

では、買春の対象が児童ではなかった場合はどうなるのでしょうか。この点については、売春防止法に定めがあります。

売春防止法

(定義)

第2条
 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

 まずは定義だけを確認してみましょう。この点だけでも児童買春と大きな違いがあることが分かると思います。
 まずは、対象となる行為が、「性交」に限られていることです。「児童買春」では処罰対象となっていた、性器に触れる行為等については、売春防止法上の売春にあたらないことになります。
 そして、そもそもの法律名が買春ではなく売春の防止を目的としているという点も「児童買春」とは異なります。
 「児童買春」は、児童に対価を支払って性的な行為に及ぶ側を処罰する旨が定められていましたが、売春防止法では、性交に及ぶことで対価を得ようとする側を規制しているのです。
 すなわち、買う側を規制する法律とはなっていません。

(2)罰則の科される行為

 では、児童でない場合には、対価をもらう側(売る側)が処罰対象となるのでしょうか。

売春防止法

(売春の禁止)

第3条 何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない。
(勧誘等)
第5条
 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、6月以下の懲役又は1万円以下の罰金に処する。
1号 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
2号 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
(周旋等)
第6条
1項 売春の周旋をした者は、2年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
2項 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
1号 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
2号 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
(場所の提供)
第11条
1項 情を知って、売春を行う場所を提供した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2項 売春を行う場所を提供することを業とした者は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。

 

 このように、第3条で売春行為も買春行為も違法である旨が定められています。しかしながら、単なる売春や買春行為について罰則規定は設けられていません。
 ですから、売春や買春行為に及んだことのみを理由に、刑事罰が科されることはないのです。
 では、具体的にどのような行為に刑罰が科されるのでしょうか。売春防止法には他にも罰則規定が定められていますので、気になる方は売春防止法の原文を御確認いただければと思いますが、「児童買春」と同じように、周旋する行為に対して刑罰が科されています。
 また、売春行為を行う場所を提供する行為についても刑罰が科されており、風俗店関係者が逮捕されるケースで多いのは、周旋と場所の提供に関する罪になります。
 更に、新宿等で売春行為に及んでいた方が逮捕されるニュースもご覧になったことがある方もいらっしゃると思います。このように売春行為に及んでいる本人が逮捕されてしまうのは、売春行為自体ではなく、売春のために買春客を勧誘する行為が犯罪に該当するからということになります。

3.適法に性行為を行える風俗店の有無

弁護士
岡本 裕明
売春防止法が売春を周旋する行為や、売春の場所を提供する行為を処罰するものであることを説明しました。しかし、性行為自体をサービスに含む風俗店も存在するように感じます。この点はどう理解するべきなのでしょうか。

 以上のとおり、売春防止法は、売春行為自体というよりも、売春を勧誘・周旋するような行為に刑罰を科しています。そして、売春防止法上の売春に該当するためには、性的な行為と評価できるだけではなく、性行為そのものが行われなければなりません。
 一方で、所謂ソープランドのように、性行為自体がサービスに含まれているように思われる風俗店が、摘発されることなく営業している様子をご覧になったことがあるように思います。
売春防止法で売春行為が禁止されている以上、性行為を伴うサービスを行うことは違法であり、そのような行為に及ぶことについての許可を受けて営業している訳ではありません。
 建前としては、ソープランドにおいては、店舗として従業員に性行為を伴うサービスを提供させている訳ではなく、従業員と利用者との間での合意に基づき性行為に及んでいるだけであって、店舗のサービスと性行為は無関係であると理解されています。当事者間の自由恋愛によるものであると説明されるのは、店舗側の指示によって性行為をしている訳ではなくても、もともと当事者が売春行為に及ぶことを前提としている場合には、その場所を提供している以上、ソープランドの運営者にも売春防止法の罪が成立してしまうからです。

4.摘発されない風俗店との差異

弁護士
岡本 裕明
これまでの説明を前提とすると、摘発されないソープランドは存在し得ないように感じてしまいます。この点はどのように理解すればいいのでしょうか。

 先程、ソープランドと称される風俗店が摘発されることなく営業できている理由について、「建前としては」という前提で説明させていただきました。
 もっとも、ソープランドを利用することで、性行為に及ぶことができた場合において、店舗が当該売春行為と全く関係していないケースは考え難いように思います。
 そうすると、ソープランドとして営業している店舗が散見されることについては、仮に、店舗側の関与が一定程度捜査機関によって当該営業形態が黙認されている側面は否定し難いように思います。
 性行為に及ぶことが前提となっている以上、そのような業務は売春防止法に違反する可能性が極めて高いと言わざるを得ません。ですから、性行為を前提とするサービスを提供している以上、同種の店舗が摘発されておらず、ソープランドとしての営業について全国的に黙認されてい る側面があることを理由に、犯罪の成立を否定することは困難です。
 この点について、福岡高等裁判所宮崎支部昭和61年2月25日決定は、トルコ風呂(現在のソープランドと捉えていただいて、さしあたり結構です)において売春が常態化しており、トルコ風呂における売春関係事犯の取締り状況が手ぬるいことを認めつつも、「以上のような捜査、起訴に至る経緯及び事案の軽重、犯罪の情状、犯罪後の情況あるいは公判における立証についての本件捜査当局の予測ないしは確信等の諸点にかんがみると、本件につき本件捜査当局が、恣意的、差別的に被告人両名を捜査、起訴したものでないことは明らか」と判示しています。
 詳細な事実認定の紹介は省略しますが、少なくとも判決文から明らかとなる事実との関係では、捜査の端緒となったのは、当該店舗が「豪華で、料金も高く、遊客も多(かった)」というものです。同店内で売春が行われているとの風評があったことも捜査の契機となっていたようですが、ソープランドという名前で営業をしている以上、そのような風評のない店舗の方が想定し難いことを考えると、大きな事情ではないように思います。
 その他にも、売春防止法以外の犯罪についての捜査を契機として、売春防止法についての捜査に派生する事案も多くみられます。
 その結果として、店内で売春が行われていたことを明らかとする証拠が発見されてしまえば、如何に同種の営業を他の店舗が行っていることが明らかであっても、「恣意的、差別的」な捜査だと裁判所が認定することはないはずです。
 結論として、性行為が行われている以上は、摘発される可能性のない風俗店は存在しないといえるでしょう。

5.売春防止法と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
売春防止法違反の容疑がかかってしまった場合、どのような弁護活動が考えられるでしょうか。考えてみましょう。

 売春防止法違反と一口に言っても、これまで説明したとおり、場所の提供や周旋といったような、風俗店を経営する側の立場として摘発されるケースと、個々人が売春の勧誘等の行為によって摘発されるケースでは、弁護方針として大きな違いが生じます。
 性行為を伴うサービスを提供していた場合には、売春防止法には違反してしまうことになりますが、風俗店の経営にあたっては様々な関係者が関与していることになります。故意や共謀が認められないケースはあるかもしれませんし、まずは黙秘を維持する必要があるでしょう。最終的に何かを供述する弁護方針によるべきだと判断するケースもあるかもしれませんが、関係者が複数存在する事案に関しては、弁護人によるアドバイスを受けるまでは黙秘に徹するのが好ましいものといえます。
 逆に、個々人の売春行為が問題となっている場合、売春目的で勧誘している様子や、遊客の証言等の証拠が存在している可能性が高く、実際に売春目的がなかったことを捜査機関に理解させるにあたって、何かを説明するべきシチュエーションが多いかもしれません。もっとも、売春防止法違反の事案に限られませんが、一度供述してしまった内容について撤回することは困難である一方で、黙秘については弁護方針次第でいつでも解除することが可能です。まずは、弁護人によるアドバイスを得られるように試みてください。

6.まとめ

弁護士
岡本 裕明
売春を助長する活動には一切助力することができません。しかし、過去の行為に対して捜査を受けている場合、弁護人の助力は不可欠です。

 上述したように、性行為を伴うサービスの提供は、基本的に売春防止法に違反することになります。この点について、適切な許可を受けていれば、そのような営業を許すべきだという考えもあるかもしれませんが、少なくとも現時点における我が国では違法です。したがって、私も、そのような風俗店を営業することに賛成はしませんし、摘発を防ぐような弁護を行うこともありません。
 一方で、性行為を伴わないサービスのみを提供している店舗において、当事者間の判断で性行為が行われた場合等、店側に刑事責任を科すことが不当であるケースはあり得ると思いますし、売春ではない行為が売春として摘発されるケースも考えられます。
 このようなケースにおいては、躊躇する必要はありませんので、直ちに御相談ください。違法な営業を手助けすることはできませんが、過去の行為に関する弁護については、私達がお手伝いさせていただきます。

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