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警察の捜査を受ける場合、必ず逮捕されるのかどうか?
警察は、罪を犯したと疑われる人を発見した場合、必ず逮捕するわけではありません。逮捕することなく取調べを行うこともあります。その場合、任意に警察署への出頭を求めて取調べを行うことになります。
警察官も公務員ですから、取調べは平日の日中に行われることが多いですが、会社や学校等を一時的に休んで対応すれば、会社や学校に露見することはありませんし、それまでと同じ日常生活を送ることができます。
逆に、逮捕されてしまった場合には、取調べの結果、何らの刑罰を科されないことになったとしても、数日間は警察署内の留置場に拘束されてしまいます。その間、外部との連絡が一切許されなくなってしまいますから、このことをきっかけに、退職や退学に追い込まれることも珍しくありません。
ですから、逮捕を回避できる可能性がある場合には、逮捕の可能性を出来る限り小さくする活動が求められます。
そもそも、逮捕とは何か?
日本の刑事訴訟法では、被疑者を逮捕する為に3種類の手続が定められています。
第199条
…罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる
第210条
…死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる
第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる
裁判官の発する逮捕状による逮捕を通常逮捕、重い罪についての捜査の際に例外的に行う逮捕を緊急逮捕、現行犯人をその場で逮捕することを現行犯逮捕と呼びます。
緊急逮捕や現行犯逮捕の場合には、警察官による捜査が開始されてから逮捕されるまでの間に、弁護士に依頼する時間的余裕がないことがほとんどだと思います。
そうすると、弁護士が逮捕回避のために活動しうるのは、通常逮捕の場合ということになりますが、通常逮捕の場合であっても、逮捕状が発付された後に、警察官が逮捕状を執行することなく、任意で取調べを続けるということはあまり多くありません。
逮捕を回避することは可能かどうか?
逮捕をするための条件とは
では、逮捕を回避することができないかというとそういう訳ではありません。逮捕は、被疑者を逮捕する理由と必要性がある場合にのみ行われますから、その理由や必要性がないことを捜査機関に伝えることで、逮捕を回避できる場合があります。
この内、逮捕の理由は、逮捕が許される程度の嫌疑がかけられているかどうかが問題となりますから、警察や検察かがどの程度の証拠を保持しているかに関わってきます。警察や検察が保持している証拠に手を出すことはできませんから、逮捕の理由を薄めるためには、被疑者が犯人でないことを示す証拠や主張を捜査機関に投げかけるほかありませんが、早い段階でこちら側の主張を開示することにはリスクもあります。
また、警察や検察は国家権力を用いて捜査をすることができますが、弁護士にはそのような権力がありませんので、捜査能力に顕著な差が生じてしまいます。そうすると、逮捕の理由を争うことで、逮捕を回避するのは極めて限定的な事例といえるでしょう。
逮捕の可能性を低めるためには、残る要件である、逮捕の必要性がないことを主張していくことになります。
どのようにして逮捕の必要性がないことを主張するのか?
まず、逮捕の必要性について、刑事訴訟規則第143条の3は次のように定めています。
刑事訴訟規則第143条3
…逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない
重要な部分は、「被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」との部分です。したがって、逮捕の可能性を低くするためには、逃亡や証拠を隠すようなことをしないことを、警察官に対して主張することになります。
逃亡や証拠を隠す意思がないことを警察官に伝える最も端的な方法は、「自首」になります。「自首」については、こちらを御覧ください。
自首以外にも、例えば同居の親族や、職場の上司等から、しっかりと監督することを誓約する書面を提出する等、逃亡の意思がないことを捜査機関に印象付ける方法はあります。家族や職場の方に伝えたくない場合は、弁護士がそのような上申を行うこともあります。
また、犯行現場となった場所に近付かないことを誓約するなど、証拠を隠滅する意思がないことを示す方法も考えられます。
このような手段によって、逮捕の必要性がないことを主張し、逮捕を回避することは考えられますが、このような方法は、捜査機関に対して積極的に働きかけるものですから、今後の方針に大きな影響を与えるものです。
その対応には慎重さが求められますから、まずは弁護士に御相談いただくことをお勧めいたします。