業務上横領罪について|ダーウィン法律事務所 刑事事件専門サイト

ご家族・ご友人が逮捕・起訴されてしまったら、すぐにお電話ください!

0120-845-018

受付時間:7時~23時(土・日・祝日も受付)

初回電話
相談無料
守秘義務
厳守
東京 埼玉 神奈川 千葉

業務上横領罪について

1 業務上横領事件とは

 業務上横領罪は、仕事として預かっている他人の物を自分のものにしてしまう犯罪で、刑法第253条に規定されています。罪が成立すると、10年以下の拘禁刑が科せられます。典型的な事例は、勤務先の金銭や備品等をそのまま着服してしまう行為です。業務としてではなく、単に友人等から預かったものを着服した場合、単純横領罪(刑法第252条)が成立することになります。
 窃盗罪(刑法第235条)と似た犯罪ではありますが、窃盗罪との違いは、被害品等が誰の占有下にあるかという点です。他人が占有しているものを奪うような行為には窃盗罪が成立し、自分が占有している他人の物を自分の物としてしまうような行為については横領罪が成立します。
 他人の占有を奪う行為ではないため、横領罪の法定刑は5年以下の拘禁刑とされ、窃盗罪(10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)よりも拘禁刑の上限が低くなっています。ただし、横領罪にも業務上横領罪にも罰金刑は定められていません。そのため、略式命令による罰金で終わることはなく、検察官に起訴されると、公開の法廷で審理される正式裁判になります。さらに、業務上横領罪が成立すると、拘禁刑の上限が10年に引き上げられ、法定刑が重くなります。
 なお、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で横領した場合には、刑が免除されます(刑法第255条・第244条)。ただし、家庭裁判所が選任した後見人が親族の財産を横領した場合には、この規定は適用されないとした判例があります。
 2025年6月1日に施行された改正刑法により、以前の「懲役」は「拘禁刑」に変わっています。

2 業務上横領罪の成立要件

 業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の物を横領する」ことで成立します。

(1)「業務上」とは

 社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務のうち、他人の物を預かって管理することを内容とするものをいいます。会社の経理担当者が会社の預金を管理する場合や、集金担当者が集金したお金を保管する場合が典型例です。なお、反復継続性が認められれば、仕事として行っているわけではない場合であっても、「業務上」の行為として認められる可能性があります。そして、その行為は契約に基づくものである必要もありません。また、無償で行っている場合であっても、業務性が否定されるわけではない点に注意が必要です。

(2)「自己の占有する」とは

 自分が管理・保管している状態にあることをいいます。物を手元に持っている場合だけでなく、会社の預金口座を自分の判断で出し入れできる立場にある場合も含まれます。
 一般的な動産であれば、その物を所持しているかどうかで、占有が認められるかどうかが判断されることになるでしょう。これに対し、不動産については、登記名義人となっている場合に、その不動産を占有しているものと認められます。
 他にも、対象となる物によって、占有が認められるかどうかは異なります。管理方法によっても異なることになりますから、一律に占有の有無を判断することはできません。
 更に、「自己の占有する」という点を争うことが、刑を軽くすることにつながらない可能性についても検討する必要があります。誰も占有していないと評価できるのであれば、そのような物を着服する行為は、占有離脱物横領罪(刑法第254条)として軽い刑罰が科されることになります。その法定刑は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料ですから、刑罰が軽く定められていることがわかるかと思います。典型例としては、放置自転車等を乗り去ってしまうような行為でしょう。
 一方で、他人の占有する物として認められてしまった場合、窃盗罪が成立することになります。拘禁刑の上限は業務上横領罪と同じですが、横領罪と比較すると窃盗罪の方が罪が重くなりますから、「自己の占有」を否定することが、罪を軽くすることに必ずつながるわけではなく、むしろ窃盗罪の成立を否定するために、「自己の占有」を主張するべきケースも考えられるのです。

(3)「他人の物」とは

 自分以外の人や会社が所有している物をいいます。会社の売上金や預金、商品、備品などがこれに当たります。
 「物」である必要がありますから、権利等を不当に移転させる行為は、業務上横領罪にはなりません。とはいえ、「物」なのか「権利」なのかの区別も、実はそこまで簡単ではないのです。例えば、会社の口座から経理担当者が勝手に現金を引き出した場合には、「他人の物」を勝手に引き出したとして(業務上)横領罪が成立することはわかりやすいように思います。しかしながら、経理担当者が自分の口座に送金した場合には、「物」は動いていないようにも思われます。預金残高が変更されるだけだからです。もっとも、このような場合にも業務上横領罪の成立が認められています。
 預かった現金を着服してしまう場合も、業務上横領罪が成立する場合と成立しない場合があります。例えば、他人から借りたお金を使うだけで横領罪が成立してしまうのでは、お金を借りることができなくなってしまいます。一方で、何らかの用途を定めた上で、それ以外の用途に使うことがないように預託されたお金を使ってしまった場合には、(業務上)横領罪が成立する余地があるのです。

(4)「横領」とは

 預かっている物を、所有者でなければできないような方法で処分することをいいます。会社のお金を自分の口座に移したり、私的な支払いに使ったりする場合がこれに当たります。
 「後で返すつもりだった」という場合でも、一時的に流用した時点で横領罪が成立し得ます。
 もっとも、法律上「横領」としか定められていませんから、どのような行為が「横領」に該当するかの判断も、専門家でなければわかりにくいところでしょう。上述した一時的な流用の場合でも、流用期間が極めて短かった場合には、「横領」とは認められない可能性もあります。
 他にも、他人から預かった物を勝手に売却してしまった場合には「横領」に該当することになるでしょう。しかし、その物を自分の物と装ったうえで、他人を騙すために利用したに過ぎない場合には、「横領」とまでいえないケースもあり得るのです。例えば、他人から預かっている金銭を示したり、口座の残高を示した上で、自分自身の経済力を偽る行為については、その結果として第三者を被害者とする詐欺罪が成立することはあっても、金銭を預託していた方を被害者とする横領罪が成立することはありません。

3 関連する犯罪

(1)横領罪(刑法第252条)

 仕事としてではなく、友人から預かった物を勝手に売ったような場合には、5年以下の拘禁刑が科せられる横領罪(単純横領罪)に当たります。

(2)遺失物等横領罪(刑法第254条)

 落とし物や拾ったカードなど、持ち主の手を離れた他人の物を自分のものにした場合は、遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)に当たります。被害額が少なく被害者が個人であることが多いため、物を返して謝罪することが対応の中心になります。

(3)背任罪(刑法第247条)

 他人のために事務を処理する人が、自分や第三者の利益を図る目的などで任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を与えた場合には、背任罪に当たります。横領罪と背任罪の違いについては、横領罪と背任罪の違いについてのコラムで解説しています。

(4)窃盗罪(刑法第235条)・詐欺罪(刑法第246条)

 自分が管理していない会社のお金を盗んだ場合は窃盗罪、経費の水増し請求などで会社をだましてお金を受け取った場合は詐欺罪が問題になります。どの罪になるかは、お金を誰が管理していたのかによって分かれます。
 つまり、自分が管理している他人の物を着服してしまった場合には横領罪が成立し、自分が管理していない他人の物を自分の物としてしまった場合には窃盗罪が成立することになります。同じようにレジからお金を盗むような行為であっても、どのような人物がそのような行為を行ったかによって成立する犯罪は異なり得るのです。店長であれば業務上横領罪、アルバイト従業員であれば窃盗罪という判断になり得るということです。

4 よく逮捕・起訴されている行為(具体的態様)

(1)経理担当者による会社の預金の着服

 経理や財務を担当する従業員が、会社の口座から自分の口座に送金したり、架空の支払いを装って引き出したりする行為です。長期間にわたって繰り返され、被害額が大きくなることが少なくありません。

(2)売上金・集金・レジ金の着服

 店舗の売上金やレジの現金、顧客から集金したお金を自分のものにする行為です。当事務所の横領事件の解決実績には、クリニックの従業員によるレジ金の着服について、被害届の提出前に示談が成立した事例も掲載しています。

(3)預かった商品や物品の着服

 配送や保管のために預かった商品を自分のものにしたり、転売したりする行為です。

5 業務上横領の示談金の考え方

(1)示談金の基本は横領額の全額

 業務上横領の示談金は、横領した金額の全額を弁償することが基本です。暴行や痴漢の事件のように「慰謝料の相場」から示談金が決まるのではなく、まず会社が受けた損害を埋め合わせることが出発点になります。
 業務上横領については、被害者である会社等が被害を把握するまでに一定の期間がかかることが多くあります。そして、多くの方は会社に露見するまで、同種の横領行為を繰り返してしまい、被害額が極めて多額になってしまうことがあります。
 更に、そのように長期間の横領に気付けない会社は、経理関係がずさんなことが多く、横領の被害金の他にも使途不明金が多く存在することがあります。そうすると、被害会社との示談交渉においては、実際に横領していない使途不明金についても、横領の被害額として計算され、不当に高額な賠償金を求められることも珍しくありません。

(2)遅延損害金・調査費用などが加わる場合

 横領した時点から返済するまでの期間については、民法で定める法定利率による遅延損害金が発生します。もっとも、実際の示談では、全額を返済することを条件に遅延損害金を求めない会社も少なくありません。
 また、会社が帳簿の調査を会計士などに依頼した場合には、その費用の負担を求められることがあります。会社が受けた迷惑に対する解決金を上乗せして合意する例もありますが、必ず求められるものではありません。

(3)示談金が高額になりやすいケース

 横領した金額が大きい場合、長期間にわたって繰り返していた場合、帳簿の改ざんなど発覚を防ぐ工作をしていた場合、取引先や顧客にも影響が及んでいる場合には、示談金が高額になりやすい傾向にあります。
 実際に、会社に不利益が及んでいる場合には、適切な賠償金を準備する必要があるでしょう。一方で、上述したように、横領の被害金ではない使途不明金についてまで、賠償を求められる場合には、当該使途不明金については横領の被害金ではなく賠償義務を負わないことを正確に主張する必要があるでしょう。

(4)横領額について会社と認識が違うとき

 会社が調査した横領額と、ご自身の記憶する額とが食い違うことがあります。会社の調査結果をそのまま認める書面に署名してしまうと、後から争うことは難しくなりますので、示談に応じる前に、帳簿や入出金の記録で横領額を確認することが大切です。

6 告訴される前の弁償・示談

(1)会社の被害届・告訴から事件になることが多い

 業務上横領罪は、告訴がなければ起訴できない親告罪ではありません。しかし実際には、会社が社内で横領を発見し、被害届や告訴状を警察に提出したことをきっかけに捜査が始まるのが一般的です。そのため、会社が警察に被害を申告する前であれば、刑事事件にならずに解決できる可能性があります。
 実際に、会社としても元従業員の刑事処分までは望まないケースも多く、一定程度の期間であれば、分割による賠償についても受け入れてくれる可能性はあります。一括で返済できないとしても、真摯に対応することで示談が成立することもあり得るのです。

(2)全額返済すれば告訴されないのか

 全額を返済したからといって、必ず告訴されないとは限りません。返済するだけでなく、被害届を出さない、告訴しないという内容を示談書で合意しておくことが重要です。すでに被害届を出されている場合には、取下げを合意の内容に含めることになります。

(3)示談書に入れる条項

 業務上横領の示談書には、示談金の額と支払方法、被害届を出さないこと・告訴しないこと(提出済みの場合は取り下げること)、示談書に定めるほかに債権債務がないことを確認する清算条項などを入れます。示談の一般的な進め方は、「相手の方と示談をしたい」のページで解説しています。

7 一括で払えないときの返済計画

(1)会社に示す分割返済案

 横領したお金をすでに使ってしまい、一括では返せない場合でも、現実的な返済計画を会社に示すことで、示談の道が開けることがあります。返済計画には、次の項目を具体的に盛り込みます。

項目内容の例

頭金

最初にまとめて支払う額(預貯金や家族の援助など)

月々の返済額

毎月確実に支払える額

完済までの期間

何年何か月で完済するか

支払方法

会社の指定する口座への振込など

支払いが遅れた場合

残額を一括で支払う、遅延損害金を付けるなど

(2)分割払いを公正証書にする

 分割払いを約束する場合には、その内容を公証役場で公正証書にすることがあります。支払いが滞ったときに裁判を経ずに強制執行できるという文言(強制執行認諾文言)を付けておくと、会社にとっては回収の見通しが立ちやすくなるため、分割払いに応じてもらいやすくなります。
 他方で、公正証書を作成した場合には、裁判を経ることなく、自分の財産を強制的に差し押さえられてしまう可能性があります。特に、賠償にあたって連帯保証人等を求められた場合には、そのような方にも迷惑がかかる可能性が高まるのです。公正証書を作成するかどうかについては、慎重な判断が求められるでしょう。

(3)家族の返済義務と自己破産

 成人した本人が横領したお金について、家族が当然に返済の義務を負うわけではありません。法律上支払う義務があるのは、家族が保証人になった場合などに限られます。
 また、横領のように悪意で他人に損害を与えた場合の損害賠償は、自己破産をしても支払義務がなくならない可能性が高いとされています(破産法第253条第1項第2号)。

(4)無理な約束は逆効果になる

 実際には支払えない額を約束し、約束どおりに支払えなくなると、会社の信頼を失い、かえって告訴につながることがあります。確実に守れる計画を立てることが何より大切です。

8 懲戒解雇・退職金との関係

 会社のお金の横領は、懲戒解雇の理由になりやすいといえますが、懲戒解雇が認められるかどうかは、就業規則の定めと事案の内容によって判断されます。
 就業規則で、懲戒解雇の場合には退職金を支給しない、又は減額すると定められていることがあります。会社が退職金と返済額を差し引きする場合には、本人の自由な意思に基づく同意が必要とされるなど、法律上の注意点があります。
 退職の形、退職金の扱い、返済の方法、告訴しないことは、一度の話し合いでまとめて合意することが大切です。どれか一つだけを先に決めてしまうと、後の交渉で不利になることがあります。

9 業務上横領罪の弁護方針

(1)犯罪事実を認める場合

ア 弁護方針

 業務上横領罪は、法定刑に罰金がない重い罪です。横領額が大きく、弁償もされていない事案では、前科のない方でも実刑判決を受けることがあります。
 告訴される前であれば、弁護士が代理人として会社と話し合い、返済と告訴しないことの合意を目指します。逮捕される可能性がある場合には、弁護士から警察・検察官・裁判官へ意見書を提出し、逮捕・勾留されないように求めます。

イ 被害弁償・示談

 業務上横領罪において、一番重要となるのが、会社への被害弁償です。被害が弁償されているかどうかは、処分を決めるうえで最も重視される事情の一つであり、起訴される前に全額を弁償して示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性があります。起訴された後であっても、弁償の状況は判決の重さに大きく影響します。
 本人だけで会社と話し合うと、事実と違う額を認める書面に署名してしまったり、守れない返済案を出してしまったりする危険があります。会社が示談に応じない場合でも、弁償金の一部を支払ったり、会社が受け取りを拒む場合に法務局に供託したりすることで、弁償の意思を示す方法があります。

ウ 再発防止策

 横領の背景に、借金やギャンブルなどの問題がある場合には、その問題の解決に取り組むことも重要です。家族による金銭管理の協力なども、処分の判断で考慮されることがあります。

(2)犯罪事実を認めない場合

 会社が主張する横領額に争いがある場合や、会社から許可を受けて支出したものである場合など、横領の事実そのものを争う場合には、帳簿や入出金の記録、社内のやり取りなどの証拠を集め、警察・検察官へ提示していくこととなります。
 事実と異なる内容の供述調書が作成されてしまうと、それを覆すことは大変困難ですので、早期の弁護士介入が重要です。

10 公訴時効

 業務上横領罪の法定刑は10年以下の拘禁刑ですので、公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。

罪名法定刑公訴時効

業務上横領罪(刑法第253条)

10年以下の拘禁刑

7年

横領罪(刑法第252条)

5年以下の拘禁刑

5年

遺失物等横領罪(刑法第254条)

1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料

3年

 時効は、それぞれの横領行為が終わった時から進行するのが原則です。長期間にわたって繰り返し横領していた場合には、時効が完成していない時期の行為について、起訴される可能性があります。
 また、刑事の時効とは別に、会社が損害賠償を請求できる民事上の時効は、損害と加害者を知った時から3年、横領の時から20年です。刑事の時効が完成しても、返済義務は残ります。

11 法定刑一覧(参考条文)

刑法

(横領)
第252条
1項 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
2項 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

(業務上横領)
第253条
 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する。

(遺失物等横領)
第254条
 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

(準用)
第255条
 第244条の規定は、この章の罪について準用する。

(親族間の犯罪に関する特例)
第244条
1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

(背任)
第247条
 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

<横領事件に関する法定刑一覧>
犯罪の種類法定刑

業務上横領

10年以下の拘禁刑

横領

5年以下の拘禁刑

遺失物等横領

1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料

背任

5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

対応弁護士による、解決実績はこちらのページをご覧ください。

関連する記事