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コラム

警察官は弁護士への電話相談を妨害することができるのか

簡単に言うと…
  • 被疑者・被告人には、弁護人依頼権が保障されている。
  • 電話相談についても、弁護人依頼権の一環として行うことが可能である。
  • ほとんどの事案において、弁護士への電話相談を強制的に止めさせる根拠は乏しく、弁護士に相談するために携帯電話を利用する旨を明らかにした上で、電話相談を行うことは可能である。
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 私達は年中無休で電話での法律相談を承っております。24時間対応という訳にはいきませんので、午後11時までの受付とさせていただいておりますが、それでも多くの御相談をいただいております。
 その中には、職務質問を受けている最中に御電話をいただくケース、家宅捜索を受けている間に御電話をいただくケース、警察署に任意同行を求められている最中に御電話をいただくケースなどもございます。
 このような状況下における御相談については、ほとんどのケースで近くに警察官がおり、十分に話をすることができませんし、早く電話を終わらせるように求める警察官の声が聞こえてくる場合もあります。
 このような警察官の対応を違法だということはできるのでしょうか。今回はこのような問題について解説させていただければと思います。

弁護人依頼権

法律上の定め

 まず、弁護士に相談することについて、法律がどのように定めているのかについて確認してみましょう。

憲法

第34条
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

刑事訴訟法

第30条
1項 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。 第39条
1項 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者…と立会人なくして接見…することができる。

 弁護人に依頼する権利は刑事訴訟法だけでなく憲法上に定められている極めて重要な権利です。憲法34条の規定を受けて、刑事訴訟法も39条1項において、弁護人と立会人なしに相談することができる権利を定めており、このような権利は秘密交通権と呼ばれています。

身体拘束を受けていない場合

 憲法も刑事訴訟法も、「身体の拘束」を前提とする規定として定められています。 とはいえ、刑事訴訟法30条1項は、全ての被疑者・被告人の権利として弁護人選任権があることを定めていますし、身体拘束がなされていない場合であっても、弁護人に相談する権利の重要性は否定できないはずです。
 刑事訴訟法39条が「身体の拘束を受けている被疑者・被告人」と定めているのは、全ての被疑者・被告人との関係で弁護人依頼権が保障されていることを大前提として、自ら弁護人に相談しに出向くことができない身体拘束を受けている被疑者・被告人との関係において、弁護人との面会相談を可能とするためと理解されています。
 そうだとすると、身体拘束を受ける前の段階において、電話で弁護士に相談することも、被疑者・被告人の権利として認められるはずです。 御電話で御相談をいただく場合において、全ての御相談者様が被疑者・被告人としての立場を有している訳ではありませんが、事後的にこの点が問題となるようなケースは、警察官の面前で電話相談を行おうとしている段階で、何らかの犯罪の嫌疑が高まっており、被疑者としての立場を有していることがほとんどだといえるでしょう。 そうすると、そのような方々との関係では、弁護士と相談する権利が法律上認められているものと考えられそうです。

捜査機関が電話相談を止める根拠

捜索中の電話

 以上のとおり、被疑者・被告人には、弁護人依頼権の一環として、弁護士に相談する権利を有しているものといえそうです。これは、これまでに相談したことのない弁護士に対するものであっても変わりありません(とはいえ、これまで相談したことのない弁護士に対する法律相談を止められたといったような場合、裁判となった際に、本当に弁護士への連絡を希望していたのかどうかが問題となることは考えられます)。
 ですから、捜査機関側にそのような権利を制約する根拠がなければ、電話相談を無理矢理中断させる行為や、電話をさせない行為は違法な捜査だということができそうです。
 では、捜査機関側が被疑者の携帯電話の使用を妨げる根拠として何が考えられるでしょうか。

刑事訴訟法

第112条
1項 差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行中は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができる。

 刑事訴訟法112条1項は捜索の際に、捜索場所への出入りを禁じることができる旨を定めています。そして、捜索中に被疑者の携帯電話の利用を許可すると、組織的な犯罪が疑われる場合には、捜索場所に大勢の組織の人間が集まる危険性があることから、捜索を邪魔されないようにするために、同項を理由に携帯電話の使用を制限することは可能だと考えられています。  しかし、全ての事案において、警察の捜索を邪魔するような人間が多数集結する危険性がある訳ではありませんし、そもそも弁護士への法律相談のために携帯電話を利用する場合には、捜索が妨害される危険性はありません。 捜索の際に弁護士に相談する旨を明らかにした上で、携帯電話を利用することは許されるべきものといえます。

職務質問や任意同行を求められている最中の電話

 以上のとおり、捜索という裁判官からの令状を受けた上での捜査中であっても、弁護士に対する法律相談を妨げることができない以上、職務質問や警察署への任意同行の最中については、あくまでも任意の捜査ですから、弁護士への電話相談を強制的に止めることはできません。
 職務質問や任意同行を円滑に行うために、携帯電話を利用しないように説得することについては許容できる場合が多いかもしれませんが、捜査に協力するのではなく、弁護士への電話相談を先行させたい意向を明らかにした上で、御相談いただくことに何らの問題もありません。

警察官の面前での弁護士への相談

 せっかく弁護士に相談できる機会があるにもかかわらず、面前に警察官がいたのでは率直に事実を伝えることができません。弁護士としても、黙秘を薦めたい事案であったにもかかわらず、弁護士への相談の際に、警察官にその情報が全て伝わってしまっていたのでは、黙秘をアドバイスする意味がなくなってしまいます。  
 基本的に職務質問は、任意の捜査手続ですから、いつまでも対象者を留め置くことはできませんので、警察官が面前にいなくなってから、弁護士への相談内容を聞かれない状況下で、再度御相談いただくのが基本となろうと思います。  
 一方で、あまりに長く留め置かれる場合には、弁護士が直接警察官と話をするという方法も考えられます。しかしながら、その段階では初めて電話で御相談を受けただけの関係性であり、弁護人としても選任されていない状況ですから、弁護士が警察官に伝えられる内容は、違法な捜査を行うべきではなく、直ちに中止すべきであるとの一般論に留まってしまいます。
 以上のことから、もし警察官に職務質問を受けた際に、警察官から詰められては困るような御事情をお抱えの場合、御相談者の意向を無視して自首の話ばかりするということはありませんので、事前に御相談いただけますと、具体的なアドバイスを行えます。  
 基本的には、刑事事件の弁護士と面会ができるまでは黙秘するという方針が妥当なケースが多いかもしれませんが、事案によっては、警察官からの質問に回答することによって、事件を早期に解決し、逮捕、勾留を避けやすくする状況を作れるかもしれませんので黙秘を強く勧めるようなことはしません。

まとめ

 以上のとおり、基本的には、捜査機関による捜査を受けている最中であっても、電話で弁護士に相談することは自由に行えるはずです。
 とはいえ、捜査機関からは電話を終わらせるように強く求められると思いますし、携帯電話を取り上げられるようなケースも裁判例上散見されます。 捜査機関が近くで聞き耳を立てている場合に、弁護士に相談することは容易ではないと思いますが、詳細な事実関係を確認できなくても、最低限の取調べに対するアドバイス等を行うことは可能です。 そのような局面に向き合うことがありましたら、遠慮なく御相談いただければと思います。

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