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コラム

オリンピック関連で逮捕者が続出。贈収賄の罪について

簡単に言うと…
  • 東京オリンピックに関する汚職事件で、贈収賄の罪で逮捕、勾留、起訴された被疑者について報道が為されている。
  • 収賄の罪にはいくつかの種類があり、収賄の罪の成立要件には様々なものがあり、無罪を主張するための内容にも色々な角度からの主張が考えられる。
  • 罪を認める場合であっても、弁護方針の策定には様々な角度からの検討が必要となり、刑事事件の弁護士の腕が試される類型である。
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 東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件に関する逮捕者のニュースが社会的耳目を集めています。大会組織委員会の元理事らが収賄罪の容疑で逮捕され、大会のスポンサーである民間企業の役員らが贈賄罪の容疑で逮捕されています。
 一部の事実については既に被疑者が起訴されており、極めて高額な保釈保証金の納付を条件に保釈が許可されたことも、大きく報道されていました。 賄賂に関しては、元法務大臣が票を買収したことなどとの関係でも、過去に大きく報道されたことがありましたが、この時は選挙に関する犯罪でしたので、公職選挙法違反として有罪判決を宣告されています。
 今回は選挙に関するものではありませんでしたから、贈収賄の罪の成否が問題となっています。
 そして、東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件に関しては、贈収賄の罪を認めている被告人がいる一方で、罪を否認している方もいることが報道で明らかとなっています。
 贈収賄の罪は、殺人罪や放火の罪と異なり、どのような場合に犯罪が成立し、どのような場合に否定されるのかがイメージしにくいように思います。
 そこで、今回は東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件を題材に、贈収賄の罪について解説させていただきます。 
 贈収賄の罪自体については、こちらで解説させていただいておりますので参考にしていただければと思います。

 

1.刑法上の定め

 まずは、贈収賄の罪がどのように定められているのか刑法の条文を確認してみたいと思います。

刑法

(収賄、受託収賄及び事前収賄)
第197条
1項 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処す
る。
2項 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、5年以下の懲役に処する。
(第三者供賄)
第197条の2
 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
(加重収賄及び事後収賄)
第197条の3
1項 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
2項 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
3項 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
(あっせん収賄)
第197条の4
 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第197条の5
 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄)
第198条
 第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

 
 贈賄の罪については1つの条文しか設けられていないにもかかわらず、収賄の罪については、収賄の形式等によっていくつかの条文に分けられています。それぞれがどのような場合に成立するのかについては、罪名解説のページを御確認いただければと思います。
 そこで、今回は非常に簡単に収賄の罪を概観するだけにしようと思いますが、賄賂を受け取ったに過ぎない場合よりも、不適切な職務を行ってほしい旨の依頼を受けて賄賂を受け取った場合の方が重く、さらに実際にそのような職務を行ってしまった場合には、より刑罰が重くなるという関係にあります。
 当然、贈賄側の量刑を判断するにあたっても、収賄側に成立する罪の重さは影響することにはなりますが、少なくとも法律上は1つの規定にまとめられており区別はされていないのです。

2.今回の事案の概要

 東京オリンピック・パラリンピックに関する汚職事件と呼ばれる事件については、最も手続が進んでいる事件との関係でも、現段階では裁判は開かれておらず、その詳細は明らかになっていません。
 そもそも、贈収賄の罪は秘密裏に行われるものですから、その詳細を明らかにするためには、大きな困難を伴いますから、報道されている内容を参考に、何が起こったのかを想像するしか現段階ではできません。
 報道によると、大会組織委員会の元理事が、民間企業の役員等から賄賂として現金を受けった見返りとして、その民間企業を東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー等として選定したという疑いが問題となっているようです。スポンサー等に選定されることによって、民間企業が得られる利益は業種によって様々考えられますし、報道されている企業の業種も区々ですから一概には言えませんが、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー等の肩書や地位を利用して収益を得ようとしていたことが考えられます。

3.公務員なの?

(1)大会特別措置法

 先ほど刑法の条文を紹介させていただきましたが、収賄の罪については、いずれの条文も、「公務員」という主語で始まっています。したがって、収賄の罪は公務員しか犯せない罪ということができます。  
 公務員と聞いて思い浮かべるのは政治家や官僚かと思います。では、今回問題となっている、大会組織委員会の元理事という立場は公務員なのでしょうか。  
 この点については、令和3年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法(以下、「大会特別措置法」と省略します。)について規定があります。

大会特別措置法

 (組織委員会の役員及び職員の地位)
第28条
組織委員会の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 この条文によって、組織委員会の役員らは刑法等の適用との関係では公務員として扱われることとなる、収賄罪の主体ともなり得ることになるのです。このような立場のことを「みなし公務員」といいます。

(2)「みなし公務員」だと分からなければ無罪か

 報道の中には、逮捕された元理事が、自身が「みなし公務員」であり収賄罪の主体となり得ることについて認識していなかったと供述していることを明らかにしたものがありました。
 「みなし公務員」とされる立場には様々なものがあります。基本的には、そのような役職に就く際に、「みなし公務員」となる旨が十分に説明されるはずではあるのですが、報道によるとこの点の説明が不十分だったのではないかとの指摘も窺われます。
 同じような論点が問題となった最近の事例として、神戸地判令和1年7月5日(D1-Law28273061)があります。この事件の被告人は、国土交通省が発注した道路工事監督支援業務の現場責任者として「みなし公務員」としての地位に就いていたのですが、「みなし公務員」になっていたとは知らなかったと主張し、収賄罪の成立を否定しました。しかし、神戸地裁は、「講習会の実施状況や実施報告書の内容からすれば…公務員と同様の立場にあることを説明していないはずがないし、講習会を本件までに2回は受講した被告人がいずれにおいてもその説明を全く聞いていなかったとは考え難い…。仮に、被告人が、収賄罪等の罰則の適用に関して公務員と同じ立場に置かれているということまでを正確に理解していなかったとしても…現場責任者の立場で管理技術者の代務者として職務を行っていたのであって、発注者側の立場で公共工事に関与することになることを十分に認識していたものである。」、「そうすると、被告人は、少なくとも公的職務を担うことから担当技術者等が国土交通省の職員と同様の規律に服すること、すなわち、みなし公務員とされる実質的根拠となる事実を認識していたと認められるから、収賄罪の主体としての立場に関する故意に欠けるところはない。」と判示しました。
 したがって、本件においても、まずは大会組織委員会の元理事として選任される際に、適切な説明があったのかどうかが問題となります。次に、そのような説明が十分になされていない場合であっても、実際に担当していた職務の内容から、公務員と同様の規律に服するべきだと考えられる事実関係を認識していたかどうかが問題となることになります。
 「みなし公務員」だということを知らなかったということを理由に無罪判決を勝ち取るという話だけを聞くと、そのハードルは極めて高いように聞こえますが、理屈的には成り立ち得る主張だといえそうです。

4.「賄賂」なの?

 贈収賄の罪の成立を否認するにあたって、もっともシンプルな方法として考えられるのは、賄賂の受け取りを否定することです。現金が銀行口座から送金されているようなケースでは、記録が明らかに残っているため、受取を否認することは難しそうですが、現金で手渡されている場合には、捜査が難航することも考えられそうです。
 では、現金等の受け取りが明らかとなった場合において、贈収賄罪の成立が否認されるケースとして、どのような事案が考えられるかというと、賄賂として渡したのではなく、別の名目で支払ったものであるとの弁解が考えられ、一部の報道の中では、今回の一連の事件の中でも同様の弁解がなされているケースもあるようです。
 確かに、再度刑法の条文を確認してみると、「公務員」という言葉に続けて、「職務」という言葉も頻繁に用いられています。公務員の立場にある者に対して現金を支払った場合に、常に贈収賄の罪が成立する訳ではありません。例えば、見舞金や社交儀礼としての性質が認められれば、職務に対して支払われたものではなく、贈収賄の罪の成立は否定され得るのです。
 とはいえ、見舞金等の別の名目で支払えば、必ず贈収賄の罪の成立が否定される訳ではなく、見舞金としては不当に高額であり、実質的には職務の対価として支払われていると認められるケースも十分に考えられるのです。

5.贈収賄の罪における弁護活動

 本件においてもそうですが、贈収賄の罪が問題となる場合、様々な関係者が存在することが明らかになります。報道されているだけでも、多数の企業や役員が実名で報道されていますし、報道の裏にいる関係者まで含めると、極めて多数の人間が関与していることになります。
 そして、贈収賄の罪は突発的に行われることは考えられず、何度も協議して犯行に至るのが通常ですし、秘密裏に行われる犯行ですから、客観的証拠を大量に確保できることが常に望める訳ではありません。したがって、関係者の供述が重要な証拠となるのです。
 関係者の供述が重要な証拠となる場合には、そのような関係者に接触することによって罪証隠滅を図られることを危惧して、被疑者が逮捕・勾留される可能性が高く、多数の関係者の証人尋問が予定される場合には、勾留期間が長期化し、保釈も安易に出されない可能性も懸念されます。
 一方で、本件においても、起訴直後に保釈された被告人のニュースが報道されていましたから、決して早期の身柄解放が不可能な事案ではないのです。十分な経験を有する刑事事件の弁護士のサポートが非常に重要になるといえるでしょう。
 また、贈収賄の罪は被害者のいない犯罪です。したがって、示談交渉によって減軽を図ることができませんし、失脚を伴うことが多く、再犯しようにも行えないことが多いため、再犯可能性の低い犯罪類型だと言えます。そうすると、犯罪事実ではない一般情状に関する弁護活動によっては、大幅な減刑を見込むことが難しいものといえます。
 贈収賄の罪は決して執行猶予が付きにくい犯罪ではありませんが、一般情状による減刑が困難である以上、犯罪事実に関して十分な弁護活動を行う必要があり、保釈を得るために捜査機関の見立て通りの事実を何でも自供すればいい訳ではありません。この点のバランスを考えた弁護活動を行うにあたっても、刑事事件の弁護士の腕の見せ所となるでしょう。
 無罪主張をする場合における弁護方針も様々なものが想定されますし、関係者の供述を反対尋問によって弾劾するためには、緻密な弁護方針が必要となります。この点においても、刑事事件の弁護士の役割が特に重要となることは自明だといえます。

6.まとめ

 今回の事件についてはまだまだ解明されていないことが多く、報道がなされている事実もほんの一部に過ぎませんし、報道された内容がすべて真実であるとも限りません。
 ですから、贈収賄の罪について解説させていただく際に、今回の事件を参考にさせていただきましたが、全く別の方向に議論が進むこともあり得ます。
 今回の記事については、贈収賄の罪というものが極めて複雑なものであり、多くの論点を含むものであるということさえ伝わればいいかなと思っております。

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