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逆送事件について

1.逆送とは

 逆送とは、言葉のとおり逆に送致することを意味します。すなわち、検察官から事件の送致を受けた家庭裁判所が、事件を検察庁に戻すということです。
 逆送がなされる場合として、少年法は次の事態を想定しています。

少年法
第19条

2項 家庭裁判所は、調査の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、前項の規定にかかわらず、決定をもつて、事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

第20条

1項 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2項 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。

 大きく2つにわけると、少年が成人してしまった場合(年齢超過の場合)と刑罰を科すのが相当と判断されえる場合(重罪の場合)に分けることができます。

2.年齢超過の場合

 少年法は、少年が犯罪を犯した場合等に適用される法律ですから、少年が成人してしまった場合に適用されることは予定されていません。
 そして、少年法は、少年の可塑性等を理由に、成年とは異なる手続を設けている訳ですから、少年が成人になってしまった以上、犯罪行為時には少年であったとしても、少年法による手続を適用することはないのです。
 年齢超過を理由とする逆送の場合、逆送される理由や判断基準が明らかですから、逆送の判断について異議があることは多くないように思います。一つあり得るのは、捜査機関や家庭裁判所の手続の進捗が異常に遅くなったために、年齢超過をしてしまった場合の扱いです。
 この点については、本来的には少年法による処分を期待することができたにもかかわらず、捜査機関の怠慢等によって年齢超過を理由に検察庁に逆送された後に起訴された事案において、そのような起訴を違法として公訴を棄却した裁判例が存在します。他方で、捜査機関の怠慢等によらずに年齢超過をしてしまった事案については、起訴を適法にした裁判例もみられるところです(犯行当時16歳だった少年が成人した後に起訴された事例において、その起訴が適法と判断されるケースもあります)。
 もっとも、捜査機関や家庭裁判所が、意図的に年齢超過させることについてはあまり懸念しなくていいように感じています。実際に、私がこれまで取り扱った切迫少年(20歳の誕生日を間近に控えた少年)の事案については、捜査機関及び家庭裁判所も優先的に迅速に処理してくれている印象です。
 一方で、捜査機関の怠慢によって、少年審判を受けることができなくなったようなケースにおいては、無罪の主張ではなく、そのような手続に違法があることを主張することになります。大変、例外的な主張を行うことになりますので、このような主張の是非等については、少年事件の専門家に御相談されることをお勧めします。

3.重大事件の場合

 少年法第20条2項は、少年が故意の犯罪によって被害者を死亡させた場合について、原則として検察庁に逆送させるべきことを定めていますが、その他については、どのような場合に、検察庁に逆送すべきかについて詳細には定めていません。
 これまで、少年法は、少年に可塑性が認められること等から、罪を犯したことについての罰を科するのではなく、教育目的に資する保護処分に付することを目的としているとお話しさせていただきました。
 この逆送についての定めは、少年に対する教育が求められることを前提にしつつも、事案の性質、社会感情等を理由に、刑罰を科すことなく事件を終了することが相当ではないと理解される事件についての被告人に、適切な刑罰を科すことを目的としています。
 一方で、重大な事件であっても、少年に対する改善更生の機会を与える必要性は何ら変わりありませんし、重大な事件を起こしてしまう少年にこそ、養育環境等に大きな問題を抱えているケースが多く、手厚い保護が求められるものとも言えます。
 ですから、少年審判によって保護処分を下すべきなのか、成年と同じように刑罰を科するべきなのかについての判断は非常に困難なものとなります。付添人としては、家庭裁判所に対して、検察庁に送致することなく、少年法の手続によって少年を処分することを強く求める必要があります。
 では、検察庁に逆送された後、その判断に対して不服を申し立てることはできないのでしょうか。この点については、少年法に次のような定めがあります。

少年法
第55条

 裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもつて、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。

 つまり、検察庁から起訴された後、地方裁判所がその事件の審理を行うことになるのですが、その審理の結果、少年に対しては刑罰を科すのではなく保護処分に付するのが相当であると判断された場合、地方裁判所は事件を再度家庭裁判所に移送することになるのです。
 この移送を55条移送といいます。逆々送というイメージでしょうか。
 罪に対する刑罰である懲役刑と、少年の改善更生を目的とする施設への入所である少年院送致を比較した場合、いずれも少年の身体を収容する性質のものではありますが、少年に与える影響には大きな違いがあります。
 したがって、弁護人としては、施設収容を免れられないと考える場合であっても、家庭裁判所へ送致されるように最後まで活動を行う必要があるのです。