観護措置決定(鑑別所送致)について|ダーウィン法律事務所 刑事事件専門サイト

ご家族・ご友人が逮捕・起訴されてしまったら、すぐにお電話ください!

0120-845-018

受付時間:7時~23時(土・日・祝日も受付)

初回電話
相談無料
守秘義務
厳守
東京 埼玉 神奈川 千葉

観護措置決定(鑑別所送致)について

1.鑑別所送致とは

 「鑑別所」という単語自体は聞いたことがある方が多いように思います。しかしながら、「少年院」とほぼ同じような施設と勘違いしている方も多くいらっしゃいます。
 「鑑別所」とは、少年事件が検察庁から家庭裁判所に送致された後、少年審判を行うまでの間、一時的に少年を収容する場所になります。
 したがって、成年事件において、被告人が起訴された後に収容される拘置所にイメージとしては近いものになります。
 鑑別所へ送致する旨の決定のことを観護措置決定と呼びます。そして、観護措置決定について、少年法は次のように定めています。

少年法
第17条

1項 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
1号 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
2号 少年鑑別所に送致すること。
2項 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから24時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3項 第1項第2号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、2週間を超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。
4項 前項ただし書の規定による更新は、1回を超えて行うことができない。ただし、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実…の認定に関し…少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に2回を限度として、行うことができる。
8項 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することができる。
9項 第1項第2号の措置については、収容の期間は、通じて8週間を超えることができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
3項 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることができる。

 法第17条1項1号は、「家庭裁判所調査官の観護に付すること」と定めており、鑑別所に送致されない観護措置も法律上は存在しますが、この第1号の観護措置はほとんど活用されておりません。したがって、観護措置決定と鑑別所の送致は同じような意味で用いられています。
 逮捕・勾留されている少年は、捜査機関の車両で家庭裁判所に連れていかれます。その場合には、第17条2項で定められているとおり、その日の内に観護措置についての判断がくだされます。逆に、逮捕・勾留されていない場合には、そのような時間制限はありませんが、逮捕・勾留されていない少年であっても、観護措置がとられてしまう場合もあります(身柄の引上げとも呼ばれています)。

2.鑑別所送致の要件

 さきほど、少年事件における鑑別所への送致は、成年事件において起訴後に拘置所に送られるのに似ているとお伝えしました。しかしながら、手続の進捗度合いという意味では似ているのですが、その内容は大きく違います。
 それは、拘置所は裁判を待っている間に被告人を収容する場所であるに過ぎない一方で、鑑別所は少年審判を控えている少年に資質鑑別(この資質鑑別については後で説明します)を行う場所であるからです。
 したがって、鑑別所に送致するかどうかを判断する際の要件についても、成年事件における被告人を勾留するかどうかの判断の際の要件とは異なります。
 身柄を拘束するという点では、成年事件における勾留の手続と同じですから、罪証隠滅や逃亡を疑う理由についても考慮要素になるのですが、鑑別所に送致する場合には、その他の要素も必要となります。
 第17条1項は「審判を行うため必要があるとき」と定めていますから、審判が行われる可能性が高いことが必要となりますし、鑑別所に送致しなくても、資質鑑別を行うことは可能ですから、鑑別所に収容してまで資質鑑別を行う必要性が求められます。
 そこで、付添人としては、家庭裁判所に対して、罪証隠滅や逃亡を疑う理由がないことを主張するのと同時に、資質鑑別が不要であることを主張することになります。
 この資質鑑別の必要性については、それまでに少年や保護者等から、少年の抱える問題点を十分に聴取していなければ、具体的に主張することができません。付添人弁護士としては、法律上の問題だけでなく、少年の成育歴や少年の置かれている環境について、詳細な部分についてまで十分に把握しておく必要があるのです。

3.鑑別所内で行われること

 では、鑑別所内で行われる資質鑑別とはどのようなものなのでしょうか。
 資質鑑別とは、医学、心理学等の専門的な知識を有する専門家が、少年と面談を行ったり、心理検査を行ったりして、少年が抱えている問題点を明らかにする手続です。
 この面談においては、警察官等による取調べ等と同様に、事件の内容についても聞かれることはありますが、それは、事件の詳細を明らかにする目的ではなく、少年が何故犯罪行為に関与することになってしまったのかの原因を明らかにする目的で行われます。
 また、鑑別内での行動等についても適宜確認されることになります。鑑別所内の職員への接し方や同じ収容者との接し方等に問題が認められる場合には、問題行動があった旨が記載された報告書が裁判所に提出されることになります。
 特に、少年事件においては、人間関係に問題のあるケースが多く認められますから、人との接し方等についても、詳細に報告されることになるのです。

4.鑑別所に収容される期間

 鑑別所に収容される期間については、第17条3項で「2週間を超えることができない。」と定められており、「特に継続の必要がある」場合にのみ更新され得るものとされていますが、2週間で鑑別期間が終わることは滅多にありません。
 鑑別所に送致された場合、基本的には4週間もの間、鑑別所に収容されることになります。この点、「少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがある」場合には、最大で8週間もの間、鑑別所に収容できる旨も定められていますが、鑑別所に収容される期間がそこまで長期化されることは稀です。
 通常の場合、鑑別所における鑑別期間の最終日に、審判日が指定されることになりますので、鑑別所に送致された事案において、少年審判の日までに釈放されるケースは多くありません。
 もっとも、資質鑑別の必要性が亡くなれば、観護措置の取消を求めることも可能ですから、付添人としては、観護措置決定を避ける事ができず、その決定自体を覆すこともできなかった場合には、資質鑑別の進捗状況等に鑑みて、観護措置の取り消しを求めることについても念頭におきつつ、弁護活動を行う必要があるのです。