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調査官による調査について

1.どのような手続なのか

 審判不開始決定を得られず、審判を受けることとなった場合、少年及び少年の両親等は、家庭裁判所の調査官による調査を受けることになります。この調査という手続については、次のような定めがあります。

少年法
第8条

1項 家庭裁判所は、第六条第一項の通告又は前条第一項の報告により、審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければならない。検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長から家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様とする。
2項 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に命じて、少年、保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。

第9条

 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければならない。

少年審判規則
第11条

1項 審判に付すべき少年については、家庭及び保護者の関係、境遇、経歴、教育の程度 及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況等審判及び処遇上必要な事項の調査を行うものとする。
2項 家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等についても、できる限り、調査 を行うものとする。
3項 少年を少年鑑別所に送致するときは、少年鑑別所に対し、なるべく、鑑別上及び観護処遇上の注意その他参考となる事項を示さなければならない。

 以上のとおり、家庭裁判所の命令によって、家庭裁判所の調査官が調査を行うわけですが、その調査範囲は、教育の程度や遺伝関係等にも及ぶ場合があります。犯罪の証拠を収集することが主目的である捜査機関による取調べよりも、調査官による調査の範囲は広いものといえます。したがって、調査官の調査を受けるにあたっては、捜査機関による取調べを受ける時以上に、十分な準備を行う必要があるのです。

2.調査された結果どうなるのか

 家庭裁判所調査官の調査において、少年や少年の保護者が十分な主張を行えなかった場合、どのような結果が待っているのでしょうか?
 家庭裁判所調査官の調査は、家庭裁判所による審判に向けて行われるものですから、審判が行われる前に、少年の身体が拘束されるようなことはありません。しかしながら、少年の反省が深まっておらず、少年の保護者による指導のみでは少年の更生に期待することができないと判断された場合、審判でその印象を覆すのは極めて困難になってしまいます。
 家庭裁判所調査官は、調査の結果を家庭裁判所に報告します。

少年審判規則
第13条

1項 家庭裁判所調査官は、調査の結果を書面で家庭裁判所に報告するものとする。
2項 前項の書面には、意見をつけなければならない。
3項 家庭裁判所調査官は、第一項の規定による報告の前後を問わず、少年の処遇に関し、家庭裁判所に対して意見を述べなければならない。

 調査官は「調査報告書」によって、調査の結果を家庭裁判所に報告します。そして、その調査の最終的な結果を報告する際には、「少年調査票」というものを作成します。
 第13条2項は、調査官に意見をつけるように求めていますが、この「意見」というのは、単なる調査官の考えというものではなく、最終的に少年に対してどのような処分が妥当なのかについての「意見」を意味します。
 ですから、「少年調査票」には、少年に対して、少年院に送致するのが妥当であるとか、不処分とするのは相当であるとか、何らかの意見が付されています。
 上述したとおり、家庭裁判所調査官による調査は、「家庭及び保護者の関係、境遇、経歴、教育の程度 及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況等」に加えて、「家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等」についても行われる訳ですから、その調査の結果を踏まえた調査官の意見は、極めて信憑性の高いものとして扱われます。
 警察署や検察庁等の捜査機関や鑑別所等も、少年に対してどのような処分をすべきかについて意見を述べますが、これらの機関による意見とは、その重みが格段に違うのです。
 少年院送致が相当であるという捜査機関による意見が付された事件について、少年院送致を回避したことは何度もありますし、捜査機関による意見を気にすること自体があまりありませんが、調査官の意見を無視することはできません。
 それは、家庭裁判所の裁判官も、調査官の意見を重視しており、調査官の意見と異なる処分を下すことが稀と言っても過言ではないからです。

3.調査官対応について

 以上のとおり、調査官による調査は、その後に控える少年審判における裁判官の決定に大きな影響を及ぼすものといえます。
 したがって、裁判官と直接対峙する手続ではありませんが、審判以上に綿密な準備をした上で臨む必要があるのです。
 まずは、少年と少年の保護者との間で、問題となっている犯罪行為の内容や、その犯罪行為に至る経緯についてまで、正確に共有する必要があります。その上で、これまでの成育歴等を前提に、どのような指導・教育が不足していたのかという点を検討する必要があります。
 少年事件が発生した時に、少年の保護者に常に問題があるという訳ではありません。むしろ、私が付添人として選任されたケースの多くは、しっかりとした教育を行っていたご家庭がほとんどでした。しかしながら、過去の指導内容や親子関係に問題点を見出すことができず、これまでの指導等に何ら問題がないと結論付けてしまうと、これ以上に保護者による指導・監督に期待ができないとの評価を導くことになりかねません。
 また、過去を省みることなく、将来における更生方法を検討しても、なかなか具体的な内容を生み出すことはできません。過去を振り返り、改善点を探る作業は不可欠になります。
 このような、少年と少年の保護者間での協議を前提に調査に臨んだ後、付添人弁護士としては調査官と密にコミュニケーションをとり、調査官と問題意識を共有しておく必要があります。そして、審判の際には、調査官が問題点として把握している点に対する解決策を、少年と少年の保護者から、裁判官に対して説明できるように準備しておくことで、厳格な処分の回避を目指すことになります。