上告申立についても、控訴申立と同様の問題点が認められます(控訴申立についてはこちら)。
刑事訴訟法
第414条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
このように、上告についての手続は、控訴における規定が準用されていますので、形式的な手続は、控訴審における内容と共通しています。 控訴するかどうかを検討するにあたっては、判決が宣告される前から十分に打ち合わせを行っておく必要性があることについてお話差し上げましたが、上告をするかどうかについても同様です。 特に、上告審において、量刑不当を理由に上告する場合、最高裁判所はほとんどそのような主張に見向きもせずに結論を下す傾向にあります。非常に困難な戦いとなりますので、そういった状況も踏まえて、上告をするかどうかについては検討する必要があります。 また、上告については、控訴の時以上に、上告の理由が制限されています。
第405条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。 1号 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。 2号 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。 3号 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。 第406条 最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であっても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。 第407条 上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。 第408条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。
このように、上告を申し立てるにあたっては、単なる事実誤認や法令適用の誤りだけではなく、最高裁判所の判例に違反していることや、憲法に違反していることについても主張しなければ、そもそも審理すらしてもらえないのです。 例外的に、そのような事項がない場合であっても、判断を下してもらえるケースは存在しますが、原則として、405条に定められている内容がなければいけません。 最高裁判所の判例や憲法の解釈については、問題となっている事件について正確に把握しているだけでは対応できず、十分な知識がなければ、問題となる最高裁判所の判例を見出すこともできませんし、憲法の解釈論についても非常に高度な知識が求められます。 上告の際に求められる弁護人の能力は、第一審において求められる弁護人の能力とは全くことなるものといえるでしょう。