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盗撮事件の自首

1.自首が問題となるケース

 盗撮事件については、駅や商業施設の階段・エスカレーター等で盗撮に及んだ直後に、被害者の方や目撃者の方から声を掛けられ、そのまま駅員室や警察署に連行されてしまうことが多いといえます。しかし、盗撮の犯人として声を上げられた場合であっても、駅員室等に連行されずにその場を離れることができることもあります。急いで逃げてしまった場合が典型例でしょう。

 また、痴漢等と異なり、盗撮の場合、被害者の方が撮影されたこと自体に気付いていないケースが数多く存在します。目撃者の方も、盗撮されているかもしれないと感じたとしても、確信が持てずに声を上げられないまま終わってしまうことも少なくありません。

 いずれにしても、盗撮行為の直後に駅員室等に連行されることがなかった場合、盗撮行為に及んでしまった方としては、これまで通りの日常生活を送ることができます。

 その一方で、自身が盗撮行為に及んでしまったことについての罪悪感に苛まれ、ケジメを付けたいと考える方も相当数いらっしゃいます。また、盗撮の場合には、その場で声を掛けられずに済んだとしても、犯行現場の防犯カメラの映像等から、後日、捜査機関に犯人が特定されてしまうケースもあるため、「いつ警察から連絡が来るのか」という不安を抱え続けることになる方も多くいらっしゃいます。

 もっとも、盗撮の被害者の方がどこの誰であるのかが分かっていることはほとんどありませんので、後々になって謝罪をしようと考えても会うことはできません。同じ時間帯の同じ場所で被害者の方を探し続けることは、被害者の方にとっては恐怖でしかありませんし、その行動自体が再び盗撮を疑われる原因にもなりかねませんから、全くお勧めできません。

 そうすると、このような状況となってしまった場合、考えるべきは自首をするのかどうかという点に尽きることになります。

2.自首とは

 法律上の自首とは、捜査機関がまだ犯人を特定していない段階で、捜査機関に対して自分が犯人であることを申告する行為のことをいいます。ですから、既に防犯カメラの映像等から盗撮事件の犯人を捜査機関が特定できている場合、警察署に盗撮に及んでしまった事実を告げたとしても、法律上の自首は成立しません。

 そして、法律上は、自首が成立した場合、刑を減軽することができる旨が定められています。

 ここで着目していただきたいのは、刑を減軽することができるというだけで、刑が必ず軽くなる訳ではないということです。殺人などの重大な事件の場合、自首が成立することによって大きく刑が減軽されることは考えられますが、盗撮事件の場合、自首の成否によって、起訴か不起訴かが決まるというほど、大きな効果は認められない印象です。

 なお、盗撮事件の場合、被害者の方が撮影されたことに気付いておらず、被害届も提出されていないことが少なくありません。この場合、捜査機関は盗撮という犯罪が発生したこと自体を把握していない訳ですから、自首をすることは、まさに自らの手で刑事事件を発生させる行為になります。この点は、被害者の方が被害申告をしていることが多い痴漢事件と比較して、盗撮事件における自首の是非を考える際の大きな特徴といえるでしょう。特に、自首を検討している方であっても、罪悪感から撮影したデータを消してしまっている方が多いように思います。その場合には、盗撮行為に関する証拠が全くない中で自首をするべきかという点も考える必要があります。

3.逮捕の可能性

 では、盗撮事件において自首をする意味が一切ないのかというと、そういう訳ではありません。刑が軽くなることに大きな期待はできなくても、警察官から呼び出しを受ける前に、自ら自身の犯した盗撮という罪を捜査機関に申告する行為は、刑罰を免れようとする意向を有していないことや、呼び出せば必ず出頭するという意思を示す行為といえます。すなわち、逮捕をしなくても、自身の犯した罪から逃げるつもりがないということを、強く捜査機関にアピールすることができるのです。

 特に盗撮事件では、撮影に使用した機器や撮影したデータという証拠が存在しますので、捜査機関としては、これらが隠滅されるのではないかという点を懸念します。自首に際して、撮影に使用した機器を自ら提出することができれば、証拠隠滅のおそれがないことを示す事情にもなり得ます(もっとも、機器の提出については後述する注意点があります)。

 そのような意味では、既に捜査機関が盗撮の犯人を特定できている場合であっても、警察署からの接触を受ける前に罪を打ち明けるために警察署等に出頭することができれば、同じようなアピールをすることは可能です。

 したがって、法律上の自首が成立せず、単なる出頭に過ぎない場合であっても、逮捕の可能性を減少させる行為といえるでしょう。

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4.自首の方法

 自首をする場合、警察署に赴くことになると思います。法律上、どの警察署に赴いたとしても、自首することは可能です。しかし、東京で盗撮事件を起こしたにもかかわらず、北海道の警察署に自首をし、北海道の警察官にその盗撮事件を捜査させるのは非常に効率が悪いです。北海道の警察官も、事実上、東京の警察署に出頭するように勧めるだけで、自分達で自首された事件を取り扱おうとはしないでしょう。本来的にはどの警察署でも自首は受理されるべきなのですが、管轄外の盗撮事件についての自首をしようとしても、管轄のある警察署に自首するように指導されて終わってしまうことがあります。

 円滑に手続を進めるために、管轄の警察署に赴くようにするべきでしょう。管轄は犯罪が発生した場所を基準に判断されますので、盗撮事件の場合には、撮影行為に及んだ場所を管轄する警察署に赴くことになります。駅の階段やエスカレーターであれば、その駅の所在地を管轄する警察署です。走行中の電車内で撮影に及んだ場合、犯行場所を具体的に特定するのは困難かもしれません。2つの警察署の管轄のいずれかがハッキリしないケースもあるかもしれませんが、その場合には行きやすい方の警察署で構いません。

 なお、各警察署の管轄については、警察署のHPで確認することが可能です。

 また、上述したように、自首をすることの最大の目的は逮捕の可能性を減少させることです。そのためには警察官に対して、被疑者の方が逃げたり証拠隠滅工作をしたりしないと感じてもらう必要があります。そうすると、被疑者の方が1人で赴いた上で逃亡しないことを誓約するだけでなく、弁護士や被疑者の方の家族が、被疑者の方を逃亡させないことを誓約できた方が、警察官に対してより強く主張することが可能です。

 弁護士がいなければ自首できない訳ではありませんが、自首を検討される際には、まず自首をする前に弁護士に相談することをご検討いただければと思います。

5.撮影機器とデータの取扱い

 盗撮事件の自首において、痴漢事件と大きく異なるのが、撮影に使用したスマートフォンやカメラ等の機器と、撮影した画像・動画のデータをどのように扱うのかという点です。

 まず、自首を検討するのであれば、撮影したデータを削除したり、機器を廃棄したりすることは避けるべきでしょう。なんの証拠も残っていない状況では、警察署に出頭しても警察官が自首として取り扱わない可能性があるからです。実際に自首を検討する前に、撮影したデータを削除してしまっている方も相当数いらっしゃると思います。意図的に流出させることはなくても、過失によって漏洩してしまう可能性もある訳ですから、犯罪行為によって入手したデータを長く手元に残しておくよりは賢明な判断ともいえます。その場合には、自首するのではなく、二度と同じ過ちを犯すことがないように別の形で反省に努めることが適切なケースが多いようにも思います。

 逆に、自首をする場合には、撮影機器と共に、盗撮行為によって得られたデータ等についても警察官に示すことになるでしょう。しかし、その機器の中に、今回自首をしようとしている盗撮行為以外の余罪をうかがわせるデータが記録されている場合には、機器を提出することによって、捜査の範囲が余罪にまで広がってしまうことになります。盗撮事件は、一度露見することなく行えてしまうと繰り返してしまう方が多く、初犯であっても常習性を疑われやすい犯罪です。捜査機関が把握していない過去の行為まで明らかになった場合には、自首をしているにもかかわらず、逮捕の可能性が高まることも考えられますし、最終的な処分も重くなってしまうことが考えられます。

 したがって、機器を提出するべきかどうか、提出するとしてどのタイミングで提出するのかという点は、自首をするかどうかという判断と同じくらい重要な判断になります。この点については、機器に記録されている内容を踏まえて、経験のある弁護士と十分に相談した上で判断する必要があるでしょう。

 データを削除してしまった場合であっても、データが手元に残されている場合であっても、悩ましい判断が伴うものであって、弁護士のアドバイスは非常に重要になります。

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6.自首の是非

 以上のとおり、自首をすることで、盗撮事件の被疑者として逮捕される可能性を減らすことができます。では、逆に自首をすることのデメリットは何でしょうか。自首は、自らを被疑者とする盗撮事件について、自ら刑事事件化する行為といえます。ですので、何もしなければ刑事事件とならずに前科がつかずに済んだかもしれないにもかかわらず、自首をすることによって前科がついてしまう可能性があるのです。

 「逮捕が嫌か前科が嫌か」という考え方は非常に極端で、正しい考え方ではないのかもしれません。当然ですが、弁護人が選任された場合には、逮捕も前科も防ぐために活動しますが、必ずしも弁護士による弁護活動が奏功するとは保証できません。ですので、このような極端な考え方をしてみるのも、思考の整理には役立つかと思われます。

 道徳的には盗撮行為に及んでしまった以上、自首をすることが正しいといえるでしょう。しかし、自首をした場合には、盗撮事件の被疑者として取り扱われ、刑罰が科されることを覚悟した上で行うべきです。被害届等が提出されていなかった場合に、自首をしたとしても厳重注意で終わってしまうケースは散見されます。ただし、盗撮事件の場合、被害届が出されておらず、被害者を特定できない場合であっても、撮影されたデータが残っている以上、事件として扱うことは十分に可能ですから、厳重注意で終わらせることを目的として自首を行うべきではありません。

 また、被害者の方が特定されていない場合には、示談交渉という弁護活動を行うことができません。盗撮事件において示談は不起訴処分を得るための最も重要な弁護活動ですから、自首によって事件化したものの、示談ができないまま処分を受けることになる可能性についても、考慮しておく必要があります。

 といっても、「前科がつくリスクの方が嫌だ」という結論に至った場合であっても、既に警察官が捜査に着手している可能性が極めて高い場合には、自首をしなくとも刑事事件として立件される可能性は高い訳ですから、ただただ警察官による捜査が始まるのを待つよりは、自首をした方がいいということも考えられます。盗撮事件の場合、犯行現場の防犯カメラの映像が残っているかどうかや、その場で声を掛けられた際に身分証等を確認されているかどうかによって、捜査機関が犯人を特定できる可能性は大きく変わります。捜査機関が捜査に着手している可能性の高低についても、自首をするべきかどうかを判断する際の重要な考慮要素になり得ます。

 とはいえ、警察が動いているかどうかを確認する術はありませんし、その可能性を適切に判断することも極めて困難です。その場にいたわけではない弁護士にも正確な判断は難しいかもしれませんが、これまでの経験として、刑事事件として立件される可能性について、お伝えできるお話はあるかもしれません。

 重ねてになりますが、自首をした後に弁護士に相談するのではなく、自首をする前の段階で、一度御相談いただければと思います。

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検察官の処分は正式起訴・略式起訴・不起訴の三通りです。撮影機器が押収された事案では起訴猶予を目指し、示談が要になります。余罪が多数出た場合や罰金前科があれば正式起訴もあり得ます。

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自首は自らの罪を捜査機関に告白することを意味するため、前科がつく可能性や逮捕される可能性も十分にあります。自首のデメリットを理解した上で判断していただくための考え方について回答しています。

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