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コラム

え?この程度でストーカーになるの?ストーカー規制法について。

簡単に言うと…
  • 1. ストーカー規制法は警察官による早期介入を可能とするための法律である。
  • 2. そのため、軽微な言動であっても適用される可能性がある。
  • 3. 解釈上の問題が生じることもあり、警告等を受けた場合には、弁護士へ相談する必要性が高い。
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 今から約20年前にストーカー行為等の規制等に関する法律(以下、「ストーカー規制法」といいます。)が制定されました。この法律は、ストーカーが被害者を酷く傷付けるような事態が起きる前に、そのような予兆があった段階で警察が介入できるようにするために制定されたものです。

 しかしながら、この法律が制定された後も、ストーカーによる悪質な犯罪は後を絶ちません。特に、従前は、元交際相手や元夫婦等、何らかの人間関係があった人を対象にストーキングをする被疑者・被告人が多かったのですが、SNS等の発達に伴い、何らの人間関係もない方に対するストーキングの事案も増えてきているようです。

 無関係の人からストーキングされることの恐怖や危険性は、まだ皆様の記憶にも新しいと思われる小金井ストーカー殺人未遂事件を思い返していただけると分かり易いように思います。この事件の被害者の方はアイドル活動を行っていたようですが、そのような芸能活動を行っていなくても、何らかの理由でストーキングされる危険性は、現代社会においては誰にでも認められるものといえます。

 一方で、上述したとおり、ストーカー規制法は、大きな事件を未然に防ぐことを目的に制定されたものですから、この法律で刑罰の対象となっている行為自体には、悪質性が軽微なものも含まれています。

 ですから、ストーキングをしていることについての自覚がないままに、同法の適用対象になってしまうケースも少なくないのです。

 今回は、ストーカー規制法について解説させていただきます。

1.ストーカー規制法の内容

(1)ストーカー行為等の内容

 まずは、ストーカー規制法の内容を確認してみましょう。少し長いので適宜省略してご紹介させていただきます。

ストーカー規制法

第1条  この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。
第2条
1項 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
1号 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
2号 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知 り得る状態に置くこと。
3号 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
4号 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
5号 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
6号 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるよう な物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
7号 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
8号 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き…又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2項 前項第5号の「電子メールの送信等」とは、次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。
1号 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信…の送信を行うこと。
2号 前号に掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通 信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
3項 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第1項第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

当然の話ではありますが、ストーカー規制法はストーカー行為を規制することを一つの目的としています。そこで、どのような行為をストーカー行為と扱うのかが非常に重要な問題となります。

 そして、ストーカー規制法は、まず「つきまとい等」に該当する行為を列挙した上で、その「つきまとい等」が反復された場合に、その行為をストーカー行為と定めています。

 電子メールの送信等、その態様が比較的軽微と思われる場合には、身体の安全が害されるような内容のものに限る旨が定められていますが、「著しく粗野又は乱暴な言動」という抽象的かつ一般的に起こり得そうな言動も対象とされていますから、知らない間にストーカー行為等に及んでいたという事態も珍しいものとは言えません。

 ストーカー行為規制法違反の被疑者や被告人が、ストーカー行為等に及んでいることを十分に自覚している訳では無いのです。

(2)ストーカー行為等に対する制裁

 では、このようなストーカー行為等の存在が認められた場合、どのような制裁が予定されているのでしょうか。この点もまずは法律を確認しましょう。

ストーカー規制法

第3条
 何人も、つきまとい等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。
第4条
1項 …警察本部長等…は、つきまとい等をされたとして当該つきまとい等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し…更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。
第5条
1項 …公安委員会は、第3条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは…当該行為をした者に対し…次に掲げる事項を命ずることができる。
1号 更に反復して当該行為をしてはならないこと。
2号 更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項
8項 禁止命令等の効力は、禁止命令等をした日から起算して1年とする。
9項 公安委員会は、禁止命令等をした場合において、前項の期間の経過後、当該禁止命令等を継続する必要があると認めるときは…当該禁止命令等の有効期間を1年間延長することができる。当該延長に係る期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とする。
第18条
 ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第19条
1項 禁止命令等(第5条第1項第1号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。
第20条
 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 まず、もっとも軽い類型として、警察本部長等による警告が予定されています。この警告はストーカー行為等ではなく、「つきまとい等」を対象としており、早期に行うことが可能です。そして、「つきまとい等」にとどまらず、ストーカー行為等が行われた場合には、禁止命令が発されることもありますし、禁止命令を発することなく、刑罰を科すことも可能です。

 ですから、ストーカー規制法違反との関係で、禁止命令が出されていなければ、直ちに刑事事件とはならず、被疑者として扱われることはないという考え方は誤りです。禁止命令を出されることなく、直ちに逮捕されてしまうこともあり得るのです。

2.ストーカー規制法において解釈が問題となる点

(1)恋愛感情等

 ストーカー規制法において、「つきまとい等」と評価されるのは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」がなければなりません。

 したがって、例えば借金の取り立てのために、家に赴くような行為等については、取立て行為の態様によっては、他の犯罪が成立する可能性はありますが、少なくともストーカー規制法に違反することはないのです。

 一方で、「恋愛感情」という単語が用いられる法律は多くありません(私が知る限り、他には消費者契約法第4条3項4号)。ですから、一般的な用語ではあるものの、法律上の「恋愛感情その他の好意の感情」とはどのようなものなのかは問題となりそうです。

 この点については、単に一般的に好ましいという感情だけでは足りず、相手方がそれに応えて何らかの行動をとってくれることを望むという意味が必要であるものと解されています。このような望みがあるからこそ、その望みが満たされなかった場合に、怨恨の感情が生じることになるのです。

 特に、既に怨恨の感情に転化しているようなケースにおいては、その怨恨の感情が何に起因して生じたものであるかについて明らかにする必要がありますし、私自身もこの点を争って無罪判決をいただいたこともあります。

 それくらい非常に難しい認定が問題となるのです。

 もっとも、恋愛感情その他の好意の感情が認められなかった場合であっても、他の犯罪が成立する可能性があります。例えば、東京都の迷惑行為防止条例について確認してみましょう。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)

第5条の2
何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で当該特定の者…に対し、不安を覚えさせるような行為であって、次の各号のいずれかに掲げるもの(ストーカー行為等の規制等に関する法律…に規定するつきまとい等…を除く)を反復して行ってはならない…
 1号 つきまとい…
 2号 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
 3号 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ…

3号以下は省略させていただきましたが、各号に記載されている行為は、ストーカー規制法において定められているものと同様の内容です。一方で、条例は好意の感情等の要件を求めておらず、単に「悪意の感情」さえ認められれば、処罰対象となってしまいます。

 ですから、ストーカー規制法に違反しなければいいということにはならないのです。

(2)軽微な行為について

また、ストーカー規制法においては、問題となる行為が反復してなされた場合のみを制裁の対象としています。ですから、基本的に反復的な行為が前提となりますが、2回の行為でもその内容によっては「反復」して行われたと評価される場合もあります。これは、3回目や4回目の同様の行為が行われることが懸念されるかどうかという観点から判断されますし、一律にここまでであればストーカー行為等にあたらないという基準はありませんから、相手方に何らかの行為を求めるために執拗に接触を図る場合には、どれだけ御自身に正当性があると確信している場合であっても、代理人弁護士の選任を検討されるべきだと思われます。

 一方で、ストーカー規制法で列挙されている行為は、反復して行われなければ、通常に行い得る行為であることが多いです。例えば、家を訪れる行為についても、それ自体が違法だという訳ではありません。

 そこで、必要な行為についてまで規制されることがないように、ストーカー規制法自体も、過剰な適用を戒める条文を定めています。

ストーカー規制法

第21条
 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。

もっとも、この条文を用いて、ストーカー行為等に該当しないことを強調できるかというと難しいように思います。というのも、やはりストーカー規制法は、大きな事件を未然に防ぐために、警察官等の早期介入を可能とする趣旨で制定されていますし、特に警告については、比較的軽微な事実関係が前提となっていたとしても発令できるような内容となっています。

警告自体を受けることによって何らかの不利益が生じるものではないかもしれませんが、警告を無視して活動することによって刑罰が科される可能性もある訳ですから、御心配であれば、それ以上に事件が進展する前に御相談いただくのがベストです。

3.ストーカー本人以外にも適用され得る

 ストーカー行為の中には、被害者に対して好意の感情や怨恨の感情を抱いている本人以外の者によって行われる場合もあります。例えば、ストーカー本人が被害者の家に出向かなくても、関係者につきまとい行為をするように指示した場合には、ストーカー規制法違反の共犯者としての責任を問われることになります。

 この点については、探偵を使って被害者を見張らせた行為について、探偵についてもストーカー規制法違反で検挙した事例も報告されています。探偵を使えば、正当な行為になるという訳ではないのです。

 探偵についてもストーカー規制法違反が成立し得るのであれば、同様の行為を代理人弁護士が行った場合でも、犯罪が成立する可能性はあります。

 ですから、弁護士として活動する場合であっても、どのような経緯で相手方に接触する必要があるのかについて、十分に確認する必要があるのです。

4.ストーカー事案における弁護活動

 一般的にストーカー行為と考えられる行為は、法律上「つきまとい等」として定義されています。そして、「つきまとい等」は、痴漢や盗撮や暴行のように、一見して明らかに犯罪行為と考えられるような行為とは異なり、日常的な行動とも考えられる行為も含まれ得るため、犯罪だという強い認識なく行ってしまうことが多く認められます。  
 したがって、1回の行為で犯罪扱いされることは珍しく、同様の行為が繰り返されるケースにおいて、刑事事件として扱われることが多いものといえます。  
 すなわち、ストーカーの容疑を掛けられた場合には、既に同様の行為が繰り返されているとの嫌疑がかけられており、同様にこのまま捜査機関が介入しなければ、将来的にも同様の行為が継続されるとの懸念を抱かれているといえます。  
 そうすると、加害者が被害者に接触する危険性があり、罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕、勾留が認められ易いことになりかねません。実際に、ストーカーは、特定の人に対して固執することによって発生する犯罪です。一般的には、裁判所に被害者の供述に関する証拠が提出されれば、その証拠については隠滅を図ることができず、罪証隠滅の危険性も低下する関係が認められますが、ストーカーの場合、別の理由で被害者に固執していると理解されることが多く、他の犯罪類型と比較すると、被害者と接触する危険性を払しょくすることが困難な事案といえるでしょう。  
 そのような中で、勾留期間の長期化を防ぎ、逮捕、勾留の状況から身体拘束の解放を目指すにあたっては、他の事案よりも、身柄引受人等による監督状況等について、刑事事件の弁護士によって具体的に裁判官に主張させる必要があります。  
 また、無罪を争う場合においては、客観的に被告人の言動が「つきまとい等」に該当するかどうかという点に加えて、恋愛感情等を抱いていないこと等の主観的な事情も十分に主張する必要があります。しかし、このような主観的な事情は被告人の内心に関するものですから、直接的な証拠が存在する訳ではありませんし、客観的に「つきまとい等」と考えられる行為を継続的に行っていたことが争えない場合には、何故そのような行為に及んでいたのかについて、過去の被告人の生活状況等をヒントに、被告人の主張する心情に沿う客観的な事実を積み重ねる必要があるのです。この点についても、刑事事件の弁護士のサポートは必要不可欠なものといえるでしょう。

5.まとめ

以上のように、ストーカー規制法については、警察官の早期介入を可能とするための法律であることから、実際に行っている行為が比較的軽微なものであっても、「つきまとい等」を行ったとして警告を受ける可能性はありますし、それ以上に事件が進捗した場合には、禁止命令が発令されたり、そのような指導なくしていきなり刑罰を科されたりすることもあるのです。

 一方で、ストーカーによる重大事件がなくなっていない現状において、この法律自体が不要な規制をしているとまでは言い難いように思います。

 ですから、不当な警告、禁止命令が出された場合もそうですし、被疑者として扱われた場合には当然に弁護人を選任する必要性が高いものといえます。

 実際に、弁護士が活動する必要がなければ、そのようにアドバイスさせていただきますので、御心配な点がありましたらまずは御相談ください。

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