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コラム

客引きは犯罪?

簡単に言うと…
  • 迷惑行為防止条例で禁止されている客引は、性的な内容を伴うサービスを提供する店舗等に限られている。
  • 市区町村の条例や風営法の中には、居酒屋のような形態の営業に関する客引きに対しても、過料や刑罰を科するものが存在する。
  • 法律や条例の要件についても、解釈の幅のあるものが多く、安易に客引を行う前に、リーガルチェックが求められる。
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弁護士
岡本 裕明
客引行為が犯罪になるのかについて解説します。

 コロナ禍といわれる期間が過ぎしばらく経ちました。忘年会や新年会に多数参加された方も多かったのではないでしょうか。私自身も、数年ぶりに開催された忘年会兼同窓会にいくつか参加する機会がありました。
 忘年会のような会合に参加すると、一次会では飲み足りず、二次会や三次会まで参加することも良くあります。しかし、出欠を事前に確認することの多い一次会とは異なり、当日の盛り上がり具合や、参加者の体調等によって参加人数が増減する二次会等についてまで、幹事が予約できていないケースは多いように思います。
 そのような時に、路上で客引(キャッチ)に声をかけられ、そのままお店に誘導された経験のある方は少なくないのではないでしょうか。
 他方で、「客引行為は犯罪です」というポスターを見かけたことがある方や、客引きについていかないように注意するアナウンスを聞いたことがある方も多くいらっしゃるように思います。
 犯罪だといわれている割には、繁華街に行けば多くの店員が、公然に店頭で客引き行為を行っているのを見ることは珍しくありません。
 本当に犯罪なのか疑わしく感じてしまいます。
 一方で、先日、常習的に客引行為を行わせていたことを理由に、暴力団幹部らが逮捕されたという報道もなされていました。
 今回は、キャッチとも呼ばれる客引行為が犯罪となるのかについて、解説させていただこうと思います。

1.東京都の条例

弁護士
岡本 裕明
東京都の条例を確認してみましょう!

(1)対象

 先日、暴力団幹部らが逮捕されたと報道されていたのは、仙台市の繁華街における客引き行為を容疑とするもので、宮城県の迷惑行為防止条例違反を理由に逮捕したというものでした。
 東京都においても、同様の条例が定められていますので、まずは東京都の条例の内容を確認してみましょう。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

(不当な客引行為等の禁止)

第7条
1項
 何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1号 わいせつな見せ物…の観覧、販売又は提供について、客引きをし…客を誘引すること。
2号 売春類似行為をするため、公衆の目に触れるような方法で、客引きをし、又は客待ちをすること。
3号 異性による接待(風適法第2条第3項に規定する接待…)をして酒類を伴う飲食をさせる行為…について、客引きをし…客を誘引すること(客の誘引にあっては、当該誘引に係る異性による接待が性的好奇心をそそるために人の通常衣服で隠されている下着又は身体に接触し、又は接触させる卑わいな接待である場合に限る。)。
4号 …人の身体又は衣服をとらえ…身辺につきまとう等執ように客引きをすること。

 条例を確認すると、「不正な客引行為」を規制の対象としており、「不正」ではない客引行為の存在を前提にしているように読めます。また、規制対象として列挙されているのは、いずれも性的な内容を伴うものであって、通常の居酒屋のようなお店の客引は規制対象となっていないように読めます。

(2)執ような客引

 唯一、4号は、性的な内容を伴わない店舗への客引も規制対象となっています。
 とはいえ、服を掴むなどした場合には、それ自体が暴行罪に該当する可能性もある訳ですから、そんな客引行為が違法になることは当たり前だとお感じになるかもしれません。
 もっとも、そのように明らかに不正な客引とまではいえなくても、4号の「執ような客引き」として、有罪になってしまうことはあり得るのです。  例えば、東京高等裁判所令和2年3月24日判決において、「執ように客引きをすること」に該当するとして有罪判決が宣告された行為は、「『今日良かったら遊びは。ガールズバー。結構評判良いんで、ガールズバー、1時間だけないですか。』などと言いながら、同所から約21メートルにわたってその身辺に付きまとって誘」ったというものです。
 この事案において、客引の対象となった歩行者は、客引に対して明確に拒絶する意思を示していなかったようで、このこともあって約21メートルという比較的長い距離にわたって、客引行為が続けられてしまったという背景があるようでした。
 東京高等裁判所は、「直接に客引きの対象となった者の意思に反するか否かは、同号の罪の成否に影響しない」として、有罪判決を維持しました。
 約21メートルという距離を皆様がどうお感じになるかという点もあるかと思いますが、客引行為に対して適当にあしらっていたところ、しばらく客引がついてきたという経験のある方は珍しくないのではないでしょうか。
 「執よう」という要件は、日常的に経験し得る客引行為でも該当すると考える必要がありそうです。

2.他の条例

弁護士
岡本 裕明
他の条例や法律を確認してみましょう!

 さて。ここまでの内容ですと、執ような客引でなければ、通常の居酒屋のように、性的な要素を含まない店舗の客引は犯罪とならないと整理できそうです。
 しかしながら、そうではありません。他の条例や法律を確認してみましょう。

豊島区客引き行為等の防止に関する条例

(客引き行為等の禁止)

第5条
 何人も、道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において、公衆の目に触れるような方法で、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
1号 飲食店等の営業に関し、客引きをすること。
(迷惑行為防止重点地区の指定)
第7条1項
 区長は、前2条に違反する行為を防止するために、特別な措置を講ずる必要があると認める区域を迷惑行為防止重点地区(以下「重点地区」という。)として指定することができる。
(指導)
第8条1項
区長は、重点地区内において、第5条…に違反する行為をしていると認める者に対し、当該行為をやめるよう又は従業員への注意、監督等を行うよう指導することができる。
(警告)
第9条
 区長は、重点地区内において、第5条…の規定に違反する行為を行った者に対し、前条第1項で規定する指導をした場合において、当該指導を受けた者が、更に当該違反行為をしていると認めるときは、その者に書面をもって、当該違反行為をしてはならない旨の警告をすることができる。
(勧告)
第10条
 区長は、前条に規定する警告を受けた者が、更に当該違反行為をしていると認めるときは、その者に書面をもって、当該違反行為の中止を求める勧告をすることができる。
(過料)
第15条
 以下の各号のいずれかに該当する者は5万円以下の過料を科する。
1号 第10条に規定する勧告を受けた後に、重点地区内において第5条 の規定に違反する行為をした者

 

 

 つまり、区長が指定した場所においては客引が禁止され、指導、警告、勧告を無視して客引を継続した場合には、過料が科されることになるのです。

 同様の条例を定めている地方自治体は他にもみられるのです。

3.風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)

弁護士
岡本 裕明
犯罪にあたる可能性はあるのでしょうか。

 とはいえ、このような条例で定められているのは過料です。過料は科料と異なり、刑法における刑罰の一種ではありませんから、過料が科されるに過ぎない行為について、通常は犯罪として扱うことはありません。
 では、犯罪にあたる可能性はないのでしょうか。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

(禁止行為等)

第22条
 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
1号 当該営業に関し客引きをすること。
(罰則)
第52条
 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1号 第22条第1項第1号…(これらの規定を第31条の23及び第3 2条第3項において準用する場合を含む。)…の規定に違反した者

 第22条は風俗営業について客引を禁止しています。そして、第52条は、第22条が準用される場合についても刑罰を科す旨を定めており、準用される対象として、「飲食店営業を営む者」が含まれているのです。
 「飲食店営業を営む者」との関係では、単なる客引ではなく、風営法において深夜とされている午前0時から午前6時までの時間における客引が対象になりますが、過料ではなく、刑罰の対象となっているのです。
また、「風俗営業」に該当するかどうかの線引きは、風営法で定義づけられているものの、曖昧な部分が残りますから、客引が刑罰の対象となる範囲は、極めて限られているとはいえないのです。

4.弁護活動

 以上のように、客引という単純な行為が問題となっているにもかかわらず、どのような条例や法律が問題となるのかについては分かり難いものとなっています。また、「執よう」かどうかなどのように、法律上の要件を満たすかどうかという点についても、事案毎の判断が求められます。
 したがって、まずは問題となっている行為が犯罪行為にあたるのかについて、弁護士としては十分に検討した上で、弁護方針を定めることになるでしょう。  また、お店との関係も問題となり得ます。客引行為に及んでいる方の多くが、会社の業務命令によって客引行為を行っており、自身の営業のために自主的に行っている方はほとんどいらっしゃらないように思います。
 風営法や東京都の条例には、実際に客引行為を行った者に対する刑罰だけでなく、従業員らに客引行為を行わせた法人に対する両罰規定も設けられています。実際に客引行為に及んだ方と、その方が所属する会社とで、ベストな弁護方針が共通するとは限りませんから、別個に弁護人を探すべきといえます。

5.まとめ

弁護士
岡本 裕明
お気軽にご相談ください!

 今回は、客引行為が犯罪にあたるのかどうかについて解説させていただきました。法律だけでなく、都道府県の定める条例が問題になるケースは、痴漢や盗撮等で身近に存在しますが、更に市区町村の条例まで問題となり得るケースは、珍しいのではないかと思います。
  更に、条例だけでなく、風営法も問題となる行為ですので、よく目にする行為であるからといって、安易に客引行為に及ぶことで、法律や条例に違反してしまう可能性は大いにあるのです。  
 もし、そのような容疑によって、警察署や検察庁から取調べを受けているなど、お悩みがあるようでしたら、御気軽に弊所までご相談ください。

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