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コラム

司法面接結果の証拠利用について。

簡単に言うと…
  • 捜査機関等に対して供述している様子を撮影した動画が、一定の場合には証拠として採用されることになった。
  • 動画が証拠採用された場合であっても、弁護人による反対尋問の機会は与えられる。
  • 動画で供述されている内容を争うためには、司法面接の態様や、司法面接前に記憶が汚染されていないかなどについて検討する必要がある。
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弁護士
岡本 裕明
不同意わいせつ罪等の創設以外にも、2023年の刑事法改正には、大きな改正がありました。その中でも、司法面接結果の証拠利用に関する改正内容について解説させていただきます。

 在るべき性犯罪規定については、未だに議論が続いております。被害者の方が泣き寝入りするようなことがなく、被害を申告することで過大な精神的負担を与えることのない手続とすることが求められる一方で、冤罪を引き起こす可能性を高めるような規定であってはなりません。
法制審議会で何度も議論が重ねられ、その結果をとりまとめた内容を踏まえて、2023年に刑法が改正されることになりました。
 とりまとめ案に対する反対意見もありましたし、現段階においても不同意わいせつの罪(刑法第176条)等の定め方が、抽象的で冤罪を引き起こす可能性の高いものとなっている旨の意見もあります。
 他方で、見落とされがちですが、法制審議会の性犯罪関係部会において議論されていたのは、不同意わいせつ罪等の実体法に関する内容だけではなく、手続法についても議論されていました。
 その中で、最も大きな法改正と考えられるのが、司法面接結果を証拠利用し易くするという改正です。
 文字だけを見ても、どのような改正なのか分かりにくいように思いますが、一定の場合において、伝聞証拠である被害者の供述内容を、そのまま証拠として用いることを許容する、大きな意味を有する改正なのです。
 今回は、司法面接結果の証拠利用に関する法改正の内容について、解説させていただこうと思います。

1.従前の法律の定め


弁護士
岡本 裕明
まずは、法改正前の状況がどのような状況であったのかについて確認してみましょう。

 まずは、司法面接結果の証拠利用について定められた、刑事訴訟法321条の
3に加えて、関連しそうな周囲の条文を確認してみましょう。

刑事訴訟法

第320条
 第321条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない。
第321条
1項 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。
2号 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者 が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異った供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。
第321の3第1項
第1号に掲げる者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体…は、その供述が第2号に掲げる措置が特に採られた情況の下にされたものであると認める場合であって、聴取に至るまでの情況その他の事情を考慮し相当と認めるときは、第321条第1項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。この場合において、裁判所は、その記録媒体を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。
1号 次に掲げる者
イ 刑法第176条、第177条…罪の被害者
ハ イ及びロに掲げる者のほか、犯罪の性質、供述者の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、更に公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
2号 次に掲げる措置
イ 供述者の年齢、心身の状態その他の特性に応じ、供述者の不安又は緊張を緩和することその他の供述者が十分な供述をするために必要な措置
ロ 供述者の年齢、心身の状態その他の特性に応じ、誘導をできる限り避けることその他の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置
とすることができる。

 個人的に重要だと思う部分のみを引用しておりますので、気になる方は法律の原文を御確認いただければと思います。
 まず、被害者の方が法廷以外で供述した内容については、刑事訴訟法第320条によって証拠とすることが原則としてできない旨が定められています。その例外として、刑事訴訟法第321条1項2号は、一定の場合において、裁判における供述よりも裁判外において検察官の面前で供述された内容の方を信用すべき特別な情況が認められる場合に、その供述内容を証拠とすることができる旨を定めています。
 つまり、例外的に、裁判外での供述内容を証拠として採用するためには、基本的には、裁判所においても改めて尋問を行い、その尋問内容と比較した上で、裁判外における供述の方が信用できる状況で行われたのだと認められる場合に限られていたということになります(その他にも例外的に証拠として用いることが許容されるケースはあるのですが今回は省略させてください)。

2.法改正の内容


弁護士
岡本 裕明
改めて法改正の内容について確認してみましょう。

 ですから、被害者の方の立場に立った場合、裁判外での供述内容を証拠として採用してもらうにあたっては、結局、裁判において被害内容について証言することが大原則となっていたのです。
 また、法廷において宣誓等を行った上で供述した内容よりも、裁判外で行った供述の方が信用できると判断されるケースも例外的ですから、せっかく検察官と一緒の詳細な供述調書を作成しても、その書面が証拠として採用されることは少なかったということになります。
 そこで、刑事訴訟法第321の3は、一定の犯罪(性犯罪等)の被害者が、何度も被害内容についての供述を求められることで、精神的苦痛を被らなくていいように、裁判外における被害者の供述を録取した記録媒体について、一定の条件の下で証拠として用いることができる旨を定めたのです。
 具体的には、供述者が十分な供述をするために必要な措置をとり、供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置がとられていれば、裁判において再度証言を行わなくても、裁判外での供述を録取した媒体を証拠として用いることができる旨を定めたのです。
 もっとも、裁判において再度証言しなくていいのは、検察官らによる主尋問との関係に限られ、弁護人からの反対尋問については受ける必要があります。ですから裁判に出廷する必要はあるのですが、裁判外で供述した内容は、既に記録媒体が取調べられているので、重ねて説明しなくてもいいという点で、被害者の負担が軽減されることになるのです。

3.被告人の立場から見た問題点


弁護士
岡本 裕明
改正法の内容について、弁護人や被告人の立場から考えた時、どのような点が問題となるのでしょうか。

先程紹介した、刑事訴訟法第321条1項2号等の伝聞例外規定については、同号該当性が認められた場合、それだけで証拠として用いられることが許容されることになります。一方で、今回法改正があった司法面接結果の証拠利用については、弁護人による反対尋問の機会が与えられることになります。
 従前の伝聞例外についての定めと比較して、反対尋問の機会が確保されている分、被告人による防御活動は容易なのではないかとも感じられなくもありません。
 しかしながら、反対尋問が可能であるとはいえ、捜査機関らが一方的に面接して得られた供述内容が、そのまま証拠として採用されることのインパクトは小さくありません。書面ではなく、映像で被害者が供述している内容を確認することになりますから、単に供述内容だけでなく、その話し方や態度等によって、裁判官に与える心証は大きなものといえるでしょう。
 特に、司法面接結果が証拠として利用される対象は、児童等、公判廷において供述を求めることで精神の平穏が著しく害されるおそれがある被害者の方に限定されています。そのような方に、公判廷で供述を求めることになる訳ですから、自身の認識している内容を適切に表現することは困難でしょうし、反対尋問が奏功し得るかというと難しいように感じます。

4.司法面接結果の証拠活用と弁護活動


弁護士
岡本 裕明
このように、伝聞であっても証拠として認められるための条件とされている、司法面接とはどのような内容でしょうか。そして、弁護人としてはどのように活動することが求められているのでしょうか。

 以上のとおり、司法面接結果の証拠利用については、反対尋問の機会を弁護人に与えているとはいえ、司法面接の結果として供述されている内容が真実として認定され易い内容となっています。ですから、司法面接の方法としては、虚偽の内容が混ざることがないように、慎重な手続が求められます。
 その内容として、「供述者の年齢、心身の状態その他の特性に応じ、誘導をできる限り避けることその他の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置」が法律上求められている訳ですから、もし供述内容が不当であるように感じた場合には、まずこのような措置が執られていないことなどを争うことが必要になるでしょう。
 実際に、この要件について争われた裁判例は、まだ集積されていません。
例えば、熊本地方裁判所令和7年3月11日判決は、上述したような措置が執られていないという弁護人の主張に対して、「聴取場所は…一見して日常生活に供される部屋と異ならないものであり、かつ、聴取者は被害者に対し、本件の被害について聴取するに先立って被害者の好きな遊びなど日常的な事柄についてやり取りをするなどし、全体として約50分間で聴取を終えているところ、被害者の年齢を踏まえ、その不安又は緊張を緩和し、十分な供述をするために必要な措置が講じられていたものと認められる。また、聴取の方法を見るに、聴取者は、原則としてオープンな質問を用いていることに加え、被害者に対し極度に親和的であるなど特異な態度はとっていないところ、被害者の供述内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置が講じられていたものと認められる。」と判示して排斥していますが、聴取の方法が相当であったのかについての認定を詳細に行っていません(実際に、この裁判例においては、司法面接結果が証拠採用されるだけでなく、被害者に対する検察官による尋問も行ったようです)。
 他方で、今回の法改正が行われる前の裁判例ではありますが、名古屋高等裁判所令和5年1月18日判決は、「司法面接自体の手法は適切といってよい範ちゅうにあり、Aの供述態度等にも特段の問題はうかがえず、本件被害の核心部分についてのAの供述は自発的に得られたものとはいえるが、それだけで直ちにその信用性を肯定して公訴事実を認定することはできない。むしろ本件においては、そのような本件司法面接より前に、被害に遭った時期という重要な点を含む内容について誘導があった可能性があり、Aによる本件被害についての被害申告にその影響が及んでしまった可能性があることや、少なくともそのような見方を許す状況が存在したことは否定し得ない。本件被害についてのAの供述には、その信用性に疑いを差し挟む余地があるというべきである。」として、被害者の供述の信用性を排斥して被告人に無罪を言い渡した、津地方裁判所令和4年5月11日判決を支持しています。
 弁護人としては、司法面接が行われる前に、被聴取者の記憶が汚染されている可能性等も踏まえて対応することが求められるでしょう。

5.まとめ


弁護士
岡本 裕明
司法面接結果を証拠利用するということがどのようなことなのか御理解いただけたでしょうか。

 以上のとおり、司法面接結果を証拠利用される場合であっても、被告人・弁護人としては、供述者に対して反対尋問を行う機会は認められます。しかしながら、単なる書面ではなく、実際に供述している様子を撮影した動画が証拠として採用されることのインパクトは大きいはずです。
 そこで、上述した裁判例のように、弁護人としては、当該司法面接自体の方法に問題はなくても、司法面接が行われる前に、記憶が汚染されている可能性等を踏まえて弁護活動を行う必要があるのです。
 この点は、まだ裁判例が集積されておらず、裁判所がどのような判断をするのか不透明な部分も残されています。もし、このような事案に接することがありましたら、刑事事件について豊富な知識・経験を有している弁護人による助力が必要不可欠でしょう。まずは、お気軽に弊所まで御相談いただければと思います。

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