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コラム

CGとわいせつ犯罪について

簡単に言うと…
  • わいせつ物といえるかどうかについて、作り物の場合には、芸術性の有無等が争点となることもあり、実写との差異が生じ得る。
  • CGについては実写に見紛うような精緻な表現が特徴といえ、実写によるものと処罰範囲は近しいものといえる。
  • 児童ポルノについては、児童が実在していなければ刑罰の対象とならないが、モデルが存在する場合にはCGであっても処罰対象となる。
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 CGを自動生成できるAIが少し前から話題になっていますね。私もインターネット上で見かけたのですが、写真と見紛うような鮮明なものでした。
 AIによる自動生成ではない場合でも、技術の進化によって、長期間の訓練や練習を経ずとも、一定のレベルのCGを製作することは容易になってきているようです。
 その結果、過去にはあまり相談を受けることがなかったのですが、CGによるわいせつ物に関する御相談が、近年多くなってきたように感じています。
 CG(コンピューター グラフィックス)は、その名のとおりコンピューターで作成されたものですから、実際のモデルをカメラで撮影して作成された画像や動画とは異なります。つまり、実在のモデルのありのままの姿を内容としたものではないものがほとんどです。
 わいせつな内容が含まれている場合、わいせつ物であることに変わりはありません。もっとも、作り物に過ぎない訳ですから、実際の人間の姿が記録されている画像や動画と比較すると、犯罪となる範囲が狭いのではないかと御感じになっている方も多くいらっしゃいますし、実際にそのような感覚が不合理とまでは思いません。
 もっとも、CGであれば犯罪にならない訳では決してないので、わいせつ罪を犯すつもりがないにもかかわらず、安易な考えでわいせつなCGに関与してしまうと、意図せず警察官による取調べを受けることになってしまいかねません。
 そこで、今回は、CGによるわいせつ物が、実写のものと比較して、扱いがどのように異なり得るのかについて考えてみたいと思います。

1.基本的には実写と同じ

(1)刑法の条文

 
 今回はCGを問題としたいので、わいせつ犯の中でも、被害者に対する性的な行為を問題とする罪は検討対象から外し、わいせつ物を問題とするような罪について、どのような法律が定められているのかについて検討してみましょう。

刑法

(公然わいせつ)
第174条
 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(わいせつ物頒布等)

第175条
1項 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2項 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 公然わいせつ罪というと、露出行為を思い浮かべる方が多いように思います。実際もそのような行為が問題となることが多いのですが、周囲にいる人に視認させるために露出するような行為だけでなく、インターネット上で性的な行為を配信するような行為も公然わいせつ罪にあたります。
 もっとも、公然わいせつも「わいせつな行為をした者」を処罰する規定ですので、わいせつなCGとの関係で問題となるのは、わいせつ物頒布等の罪になろうかと思います。

(2)わいせつ物

 
   
 わいせつ物頒布等の罪において処罰される行為は、頒布及び陳列という行為です。頒布や陳列といった行為は、わいせつ物が実写のものであるかCGのものであるかによって、その難易度は変わりません。
 また、刑法第175条は「わいせつな文書」も処罰対象としていますから、そもそも作り物についても処罰範囲であることを明らかにしていますから、実写かCGかによって、処罰範囲が変わることはなさそうです。
 とはいえ、そもそも「わいせつ」という概念が抽象的です。アダルト動画についても無修正のものでなければ「わいせつ」とはみなされていません。
 また、作り物であることによって、芸術性等が争点として加わることも考えられます。女性器の3Dプリンタ用データが、わいせつ物になるのかについて最高裁まで争われた事件については、社会的耳目を集めましたので皆様も御存知かもしれません。最高裁は被告人に対する有罪判決を維持しましたが、この結論についても賛否が分かれ得るところかと思われます。
 したがって、作り物であることによって、実写によるものと比較して処罰範囲が狭くなることは十分にあり得るものと思われます。
 しかしながら、CGとの関係について考えると、昨今話題となっているものは、実写に極めて近しい表現の精緻さを特徴とするものですから、実写のものと法律上の取扱いは極めて近いものになるといえそうです。

2.児童ポルノとの関係について

(1)条文

 
 刑法第175条2項は、わいせつ物を所持していただけでも刑罰を科すことを定めていますが、有償で頒布する目的がなければ罪としておりません。
 一方で、児童ポルノについては、単純所持についても規制されています。そこで、こちらの方の条文も確認してみましょう。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

(児童ポルノ所持、提供等)

第7条
1項 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者…は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者…も、同様とする。
2項 児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する…。
3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする…。
(定義)
第2条
3項 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録…に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
1号 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の 性的な部位…が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ禁止法」といいます。)は、児童ポルノだけでなく児童買春についても禁止する法律で、様々な類型の行為に刑罰を科していますので、今回は児童ポルノの製造や所持についての罰則に関する条文だけを抜き出させていただきました。
 ここでは、「わいせつ」という文言ではなく、「児童ポルノ」という文言で規制対象が定められています。そして、どのようなものが「児童ポルノ」にあたるのかについて、第2条3項で定義されているのです。

(2)CGとの関係

 
 作り物であることが、わいせつ物に該当するかどうかの判断に影響を与えることはあり得るとしても、実写に近い精巧なCGについては、実写とほぼ判断が同じになるのではないかということを先程ご説明差し上げました。
 児童ポルノとの関係でも同じかというと、1点大きな違いがあります。それは、CGについては実在する人物がそのまま描かれている訳ではない可能性があり、「児童」かどうかが分からないという点です。
 さらに、わいせつ物頒布等の行為が犯罪とされているのは、そのような行為によって、社会の善良な風俗が損なわれるからであって、頒布されたわいせつ物としての画像や動画の被写体となっている方々の利益を保護するものではありませんが、児童ポルノ禁止法は、児童を性的な対象とするような社会にさせないためという目的に加えて、児童ポルノの被写体となっている児童の保護も目的となっています。
 したがって、AIによる自動生成によって作成されたCGについては、被写体の実在性が明らかとならず、「児童ポルノ」に該当しない可能性が高いといえるでしょう。
 一方で、CGといっても、その作成過程には様々なものがあり得ますから、実在するモデルを用いて作成された場合には、「児童ポルノ」に該当する可能性があるのです。特に、最高裁は、数十年前に撮影された「児童ポルノ」をもとに作成されたCGについても、モデルが実在する児童であったことを理由に、「児童ポルノ」に該当する旨を判断しています。
 もともとの「児童ポルノ」は数十年前に作成されているものですから、その「児童ポルノ」をもとにCGが作成された段階では、被写体となっていた方は間違いなく成人されているものと思われますが、それでも作成されたCGは「児童ポルノ」にあたると判断されたのです。

3.CG等に関するわいせつ犯罪と弁護活動について

 
 まず、わいせつ物頒布等の罪については、わいせつ物に該当するのかについて、十分に吟味が必要となります。法律上の「わいせつ」は、通常の日本語としての「わいせつ」という言葉よりも、極めて範囲が狭く、「わいせつ物」に該当しないとの主張も十分にあり得るからです。
 特に、何を「わいせつ」とするかについては、社会情勢の変遷と共に移り変わるものと理解されています。すなわち、50年前の「わいせつ」と現代の「わいせつ」とは異なる内容だと理解されているのです。
CG等の最新技術が用いられているものについて、「わいせつ」といえるかどうかを判断する際には、これまではなかった観点からの検討も求められる可能性がある訳です。
 また、CGとは直接関係ありませんが、わいせつ物頒布等の行為が問題となる場合、PCや携帯電話が押収されることが想定されますから、押収された媒体からどのようなものが発見され得るのかについても、十分に検討する必要があるでしょう。
 一方で、児童ポルノが問題となる場合には、弁護方針を検討するにあたって、その作成過程についても十分に検討する必要があります。上述したとおり、モデルとなる児童の実在性が認められない場合には、「児童ポルノ」として認められない可能性もあるからです。
 また、モデルが特定された場合であっても、何らかの画像等を参考にCGが作成された場合、そのモデルを特定することが困難な場合も多く、そのモデル自体が「児童」にあたるのかについても検討が必要でしょう。

4.まとめ

 
 以上のとおり、わいせつ物頒布等の罪や児童ポルノに関する罪については、従前から複雑さが認められる分野だったといえます。加えて、CG等の作成が容易になったことによって、このような問題点も増えることとなり、捜査機関にとっても弁護人にとっても、簡単に処理することのできない事案となってきているものといえるでしょう。

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