ご家族・ご友人が逮捕・起訴されてしまったら、すぐにお電話ください!

0120-845-018

受付時間:7時~23時(土・日・祝日も受付)

初回電話
相談無料
守秘義務
厳守
東京 埼玉 神奈川 千葉

コラム

リツイートしただけなのに…犯罪者になってしまうのか

簡単に言うと…
  • わいせつ画像が掲載されたURLを紹介するだけでも、わいせつ物陳列罪に問われ得る。
  • 名誉毀損的なツイートを「リツイート」するだけでも、名誉毀損の罪に問われ得る。
  • 他人の権利や利益を侵害することがないように、「リツイート」の際には最大限の注意が求められる。
詳しくみる

 以前、インターネット上における名誉毀損の罪や侮辱罪について解説させていただいたことがあります(「インターネットの書き込み等によって成立する犯罪」 )。このコラムは侮辱罪の法定刑の引上げに関する法改正をきっかけに書いたものです。
 その中でも少しだけ触れましたが、「リツイート」を行うだけで犯罪となってしまうのかどうかという御相談が、数年前から増えているように感じています。
 「リツイート」とは、ツイッターの有する機能の一つで、他人の「ツイート」を紹介する機能になります。単に他人のツイートを紹介することもできますが、そのツイートに対する自身の意見も併せて投稿することも可能です。
 他人のツイートを自身の意見を付することなく「リツイート」する場合、当該ツイートに同調しているかのように受け取られるのが通常だと思いますが、元ツイートを非難するような意見を付する形で「リツイート」されることもあり、必ずしも「リツイート」を行った者が、対象となるツイートに対して賛成している訳ではありません。最近では、そのことをアカウントのプロフィールに記載している方も多くいらっしゃるかと思います。
 さて、このような「リツイート」は、他人の意見を簡単に周囲に広めることができますし、その意見の内容を自分自身で投稿し直す必要もありませんから、非常に便利な機能ですし、有意義な情報を拡散することもできます。
 ですから、「リツイート」という呼称はTwitterの機能に関するものですが、他のSNSとの関係でも同種の機能が設けられていることがあります。その仕組みが細部まで同一と言えるかは分かりませんが、Facebookにおける「シェア」やInstagramにおける「リポスト」等は、「リツイート」と似た使われ方がされているように思われます。
 便利かつ簡易な操作で行えますから、安易な気持ちで違法なツイートを「リツイート」してしまう可能性は、御自身が違法なツイートを行ってしまう可能性よりも高いものと言えます。
 今回は、「リツイート」によって犯罪者として扱われてしまう可能性について、解説させていただきたいと思います。

1.わいせつな内容の投稿

(1)条文

 
 まずはわいせつな画像等を「リツイート」してしまった場合のことを考えてみましょう。名誉毀損的なツイートを「リツイート」してしまうケースと比較すると、元々のツイートに問題があることは分かりやすいと思いますが、それでも御相談いただく機会はすくなくありません。
 「リツイート」との関係で特別な罪が設けられている訳ではありませんから、インターネット等にわいせつな画像等のファイルをアップした場合に適用される罪が問題となります。条文を確認してみましょう。

刑法

(公然わいせつ)

第174条
 公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(わいせつ物頒布等)
第175条
1項 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2項 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 2つの罪を紹介させていただきましたが、基本的には第175条が定めるわいせつ物頒布等の罪が問題となります。公然わいせつ罪との関係については別のコラムで触れておりますので(「CGとわいせつ犯罪について」 )、そちらを御確認ください。
 インターネット上にわいせつな画像を投稿し、誰でも見られるようにすることは、わいせつな図画を公然と陳列したとして、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金等が科されることになります。

(2)裁判例

 
 しかし「リツイート」の場合、わいせつ画像を投稿しているのは、画像をツイートした人間であって、「リツイート」した人間ではありません。
 「リツイート」を行った人は、元ツイートを紹介しているだけで、わいせつ画像自体とは無関係と言えなくもなさそうです。
 この点については最高裁決定があります。最高裁平成24年7月9日決定です。ここで問題となったのは、「リツイート」ではなく、わいせつ物を見ることのできるURLを書き込んだ行為でした。
 実は、この最高裁決定は、弁護人の上告を棄却し、上述した行為も「公然と陳列」したといえるのだということを認めているものの、その理由については何も判示していません。逆に、裁判官2名が「公然と陳列」したとは認めるべきでないという反対意見を述べており、この点が参考になります。
 気になる方は判決文を読んでみていただければと思いますが、この反対意見の中心部分は、「『公然と陳列した』とされるためには、既に第三者によって公然陳列されている児童ポルノの所在場所の情報を単に情報として示すだけでは不十分であり、当該児童ポルノ自体を不特定又は多数の者が認識できるようにする行為が必要で、この理は、所在場所についての情報が雑誌等又は塀に掲示されたポスター等で示される場合に限らず、インターネット上のウェブページにおいてなされる場合にも等しく妥当する。」という部分です。
 つまり、陳列されているわいせつ物の場所を知らせているだけの行為は、わいせつ物陳列罪を幇助する行為にはなり得たとしても、わいせつ物陳列罪自体にはあたらないと論じている訳です。
 一方で、わいせつ物陳列罪が成立する理由についてこの最高裁は何も判示していないので、その事件の控訴審(大阪高裁平成21年10月23日)を見てみましょう。
 控訴審判決は、「他人がいったん公然陳列した児童ポルノを更に公然陳列することがおよそ不可能であるということを意味するわけではない。」とした上で、「他人がウェブページに掲載した児童ポルノのURLを明らかにする情報を他のウェブページに掲載する行為が、新たな法益侵害の危険性という点と、行為態様の類似性という点からみて、自らウェブページに児童ポルノを掲載したのと同視することができる場合には、そのような行為…を児童ポルノ公然陳列として処罰することには十分な合理性が認められる」と判示しています。

(3)「リツイート」との関係

 
 言い換えると、わいせつ画像の投稿と同様に、URLを投稿する行為によって、わいせつ画像が不特定多数の目に触れる可能性が高まるようであれば、同じわいせつ画像を陳列したものとして処罰されることになるものといえるでしょう。
 では、元のツイートをしたアカウントのフォロワーが2000人存在しており、「リツイート」を行ったアカウントのフォロワーが10人しか存在しなかった場合、元々の投稿行為と同視することができないとして、わいせつ物陳列罪の成立は否定されるでしょうか。
 10人しか存在しない場合であっても、Twitterの場合にはフォロワー以外の人間もツイートを確認することは可能です。この点は、10人しかフォロワーのいないアカウントでわいせつ画像をツイートした場合であっても、「不特定多数」の人間がわいせつ物を視認できる状況に置いたとして、わいせつ物陳列罪が成立するのと同様に、犯罪の成立を否定する要素ではないでしょう。
 しかし、「鍵付き」のアカウントだった場合にどうかという問題や、「リツイート」を行ったアカウントのフォロワーが、元ツイートが行われたアカウントのフォロワーに全て包含されていた場合はどうかなど、判断が分かれ得るケースは、今後もあり得ると思います。
 とはいえ、原則としては、インターネットに投稿する行為は、インターネットを利用する全ての方に見られる可能性があるのであり、特にわいせつ物等の投稿については控えるべきだといえるでしょう。

2.名誉毀損的な内容を含む投稿

(1)条文

 
 この点においても、「リツイート」やインターネット上の投稿を特別に処罰するような法律は制定されておりませんので、他の犯罪と同様に刑法が適用されることになります。

刑法

(名誉毀損)

第230条
1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
(公共の利害に関する場合の特例)
第230条の2
1項 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2項 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3項 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
(侮辱)
第231条
 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合には名誉毀損、「公然と人を侮辱した」場合には侮辱の罪が成立します。名誉毀損や侮辱の罪の成否自体については、難しい問題もありますのでここでは省きます。
 問題は、元々のツイートが名誉毀損や侮辱の罪にあたる場合において、そのツイートを「リツイート」した場合、必ず名誉毀損や侮辱の罪が成立するかどうかという点です。

(2)裁判例

 
 「リツイート」という行為のみで刑罰が科された事案は現段階では見当たりませんでしたが、民事裁判で賠償を命じる判決が宣告されているものはあります。
 元知事が原告となっている有名な事案ですので御存知かもしれませんが、大阪地方裁判所令和元年9月12日判決です。この裁判における被告は、「引用リツイート」ではなく単に「リツイート」したに過ぎず、被告自身の考えなどは一切投稿していませんでした。
 この裁判において、被告側は、元ツイートを情報提供の趣旨でリツイートしたに過ぎないから、被告の投稿と同視し、被告による名誉毀損と評価することはできない旨を主張しましたが、裁判所は、「何らのコメントも付加せず元ツイートをそのまま引用するリツイートは…リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し。当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当である。そうすると…本件元ツイートの内容に賛同する旨の意思を示す表現行為としての被告自身の発言ないし意見でもあると解するのが相当」であると判示しています。
 大阪地裁は全ての「リツイート」についてツイートと同様の責任を認めるべきでとは判示しておらず、詳細に説明しておりますが、大幅にその内容を割愛して引用しておりますので、気になる方は原典を御確認ください。
 民事責任と刑事責任は質的に異なるものではありますが、「リツイート」という行為によって名誉が毀損されるかどうかという点における判断のほとんどは、両者において共通してくるように思われます。
 自分自身の言葉ではありませんから、安易に「リツイート」をしてしまう気持ちも理解できるところですが、その結果として大きな責任を負うことになる可能性もある訳です。

3.「リツイート」による犯罪と弁護活動

 
 以上のとおり、「リツイート」であったとしても、通常のツイートと同様の犯罪が成立する可能性が高いと考えてよさそうです。
 一方で、先程の大阪地判の判決文で省略した部分に関係するのですが、「前後のツイートの内容から投稿者が当該リツイートをした意図が読み取れる場合など、一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が理解できるような特段の事情」が認められる場合には、「リツイート」は元ツイートとは異なる性質を有するものとして理解される余地があるものと判断されています。
 また、わいせつ犯罪との関係においても、最高裁判所における裁判官が反対意見を述べているとおり、この点についての判断が裁判実務において固まっているとまでは言えない状況にあります。
 そうだとすれば、「リツイート」の内容や、元ツイートとの関連性等を詳細に把握した上で、被告人に犯罪が本当に成立するかどうかを精査することが弁護人には求められるものといえるでしょう。

4.まとめ

 
 以上のとおり、「リツイート」については、元ツイートがわいせつ画像を含んでいたり、名誉を棄損する内容を含んでいた場合、元ツイートを行った者と同様の責任を負う可能性が高いといえそうです。
 しかしながら、元ツイートを紹介したにすぎず、「正犯」とは扱えないのではないかという議論もあり得ますし、現時点でどのように判断されるべきなのか明確に決まっている訳ではありません。
 そもそも、インターネット上における表現行為は、現実社会におけるものとは大きく異なる訳ですから、インターネットという存在を想定できていない時期に制定された法律で解決しようとすることに無理があるとも考えられます。
 「リツイート」等については、便利な機能ではありますが、用いる際には慎重に行い、被害者の権利や利益を侵害する行為に便乗してしまわないように、最大限の配慮が求められます。

Tweet

関連する記事