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コラム

ぼったくり防止条例って何 ?

簡単に言うと…
  • 「ぼったくり」は各都道府県が定める条例で規制されている。
  • 「迷惑を覚えさせる方法」のように、抽象的な定めで規制されている。
  • 悪質な行為については、条例ではなく刑法が適用されることもある。
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弁護士
岡本 裕明
「ぼったくり」自体はよく聞く言葉ですが、法律的にはどのようなことを意味する言葉なのでしょうか。確認してみましょう。

 先日、ぼったくり防止条例違反の容疑で、ホストの被疑者が逮捕された旨の報道がなされていました。この事案においては、ホストクラブを運営していた法人についても、同条例違反で書類送検されており、ホストクラブが書類送検されることは異例だとの報道もなされていました。
 さて。報道がされた事案は東京都の事案でしたが、東京都には「ぼったくり防止条例」という名前の条例は存在しません。
 また、「ぼったくり」という名前を聞いた時、なんとなく不当に高額な請求をされる行為だということは理解できると思うのですが、具体的にどのような行為が「ぼったくり」にあたるのかということをイメージできる方は多くないのではないでしょうか。
 更に、不当に高額な請求がなされる場合、恐喝や詐欺などといった他の罪名を適用することもできそうなのに、あえて「ぼったくり」という容疑で対応するのは何故なのでしょうか。
 分かり易そうで、実は具体的に検討されることが多くない、「ぼったくり」について、今回は解説させていただこうと思います。

1.東京都の条例の定め


弁護士
岡本 裕明
「ぼったくり」とは法律ではなく、各都道府県の定める条例によって規制されているようです。東京都の条文を確認してみましょう。

 今回報道されていた事案はぼったくり防止条例違反の容疑に関するものでしたが、そのような名前の条例は東京都には存在しません。ぼったくり防止条例と呼称されている条例の正式名称は、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」といいます。
 「ぼったくり」という単語は一切出てきませんが、確かに長い上に覚えにくいので、ぼったくり防止条例と略称されるのも頷けます。このコラムでも、ぼったくり防止条例という略称を用いたいと思います。
 条例ですから、各都道府県によって、その内容は違うのですが、東京都が定めている条例の内容を確認してみましょう。

ぼったくり防止条例(東京都)

(罰則)

第11条2項
次の各号の一に該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2号 第3条の規定に違反して、営業に係る料金について実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項を表示し、又は同条第2号に掲げる事項について不実のことを表示した者
3号 第4条の規定に違反した者
(料金等の表示)
第3条1項
 指定性風俗営業等を営む者は、公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を、営業所内において客に見やすいように表示しなければならない。
1号 当該営業に係る料金…
2号 違約金その他名目のいかんを問わず、当該営業に関し客が支払うべ きものとする金銭…に関する定めがある場合にあっては、その内容
(不当な勧誘、料金の取立て等の禁止)
第4条
1項 何人も、人に特定の指定性風俗営業等の客となるように勧誘をし、又は広告若しくは宣伝をするに当たっては、次に掲げる行為をしてはならない。
1号 当該営業に係る料金について、実際のものよりも著しく低廉である と誤認させるような事項を告げ、又は表示すること。
2号 前条第2号に掲げる事項について、不実のことを告げること。
2項 何人も、特定の指定性風俗営業等の客に対し、粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法で、当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをしてはならない。

 ぼったくり防止条例には、他にも様々な内容が定められているのですが、今回問題になりそうな箇所だけを引用させていただきました。
 第3条においては、実際に請求する金額を顧客が理解できるように表示することが求められており、第4条においては、その内容について虚偽の表示をしないことなどが求められていることに加え、不当な態様で取立てを行わないようにすることが求められています。
 報道されていた事案の中では、料金が支払われなかった場合には刑務所に送られる可能性があるなどを利用客に伝えた行為が問題視されていましたので、上述した第4条の2項に該当すると判断されたのではないかと解されます。

2.ぼったくりに該当する行為の内容


弁護士
岡本 裕明
どのような行為が「ぼったくり」にあたるのかについて、条例は抽象的な定めを設けています。

 先程引用した条例で定められているとおり、「ぼったくり」と呼ばれる行為は2つに分けて考えることができそうです。まずは、実際の請求額よりも安価な支払額で済むかのように利用客に誤信させる行為です。
 実際の請求額を理解し得るような表示が求められていますが、単に適切な表示がされていないだけでなく、著しく低廉な価格と誤認させる表示をしていた場合には、行政指導を受けるだけでなく、刑罰が科され得る旨が定められています。4条1項1号のいう「著しく低廉」とみとめられるかどうかは、一般の社会通念に従って判断されるものとされていますので、具体的な基準が一律に定められている訳ではありません。
 次に、利用客に対して不当な方法で支払いを求める行為です。実際には、支払額についての認識に齟齬が生じるために、不当な方法で支払いを求められることになるのですが、支払額を誤信させる行為とは別個に禁止されていますから、仮に正当な金額であったとしても、不当な方法で支払いを求めた場合には、刑罰が科されることになるのです。
 ここでいう不当な方法として、同項2号は、「粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法」と定めています。所持品を隠匿するという態様以外に、具体的な態様は定められていませんが、社会的に迷惑を覚える程度の言動と認められれば、実際の利用客が迷惑と感じていなくとも、ぼったくり条例に違反することとなるものと解されています。

3.特徴


弁護士
岡本 裕明
他にも、共犯関係の立証が不要とされている等、ぼったくり条例にはいくつかの特徴が認められます。

 ぼったくり条例が制定される前までは、恐喝、窃盗、強盗等の刑法上に定められている犯罪の他、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律が適用されてきました。実際に、現段階においても、上述したような「迷惑を覚えさせるような方法」を超えて、暴行や脅迫に該当するような手段が用いられた場合には、より重い法定刑が定められている、上述した各種刑法犯が適用されることになります。
 ぼったくり条例は、そのような刑法犯の成立が認められないような態様についても刑罰を科する点で、刑法以上に適用対象が広いものとなっています。
 また、ぼったくり条例については、公安委員会によって指定された地域内についてのみ適用されることが前提となっています。
 しかしながら、上述した取立行為等については、地域外で行われた行為についても対象となります。したがって、店内で取り立てるのではなく、店外に連れ出した後に取立てを行ったとしても、条例の適用から逃れることはできません。
 また、取立てや勧誘を行う人間と、ぼったくり店の経営者は異なることが多いように思います。しかしながら、ぼったくり条例は、取立て等の行為自体を禁止していますから、取立て等を行った行為者とぼったくり店の経営者との間の共犯関係が立証されない場合でも適用可能となります。

4.ぼったくり条例違反と弁護活動


弁護士
岡本 裕明
抽象的な要件として定められている以上、本当に「ぼったくり」に該当するのかについては、弁護人として慎重な判断が求められます。

 ぼったくり条例については、既に10年以上前に制定されていますし、ニュース等で耳にする機会も少なくないと思うのですが、刑事事件の弁護士として相談を受ける機会はあまり多くありません。
 弁護士としても、各都道府県の条例の内容を精査しつつ、弁護活動に従事する必要があります。
 東京都の条例を前提とした場合、先程お伝えしたとおり、条例の定めは「著しく低廉」や「迷惑を覚えさせる方法」のように抽象的に要件が定められていますから、まずはそのような要件に該当するのかどうかについて、十分に検討する必要があります。
 また、共犯関係の立証は不必要とされていますが、主観的事情の立証が全く必要ない犯罪ではありません。当たり前ですが、利用料の取立て目的の言動でなければ、適用されることはないのです。
 このように、犯罪が本当に成立するのかについて慎重に検討した上で、犯罪にあたる行為に及んでしまったことが明らかな場合には、ぼったくり店との関係性の解消等、再犯可能性を否定できるような弁護活動が求められるでしょう。

5.まとめ


弁護士
岡本 裕明
ぼったくり条例について御理解いただけましたでしょうか。東京都の条例しか紹介できませんでしたが、気になる方は同じような条例名で、御自身がお住まいの地域でも検索してみてください。

 今回は、ぼったくり条例違反について解説させていただきました。
 繁華街で飲み歩く機会のある方には、「ぼったくり」という用語は身近なものに感じられるのではないかと思いますが、「ぼったくり」に対してどのように刑罰が定められているのかについては、十分に理解されていない方が多いと思いますし、多くの弁護士もその詳細を把握している訳ではありません。
 少しでも条例の内容について理解を深めるための力になっていれば幸いです。

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