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少年院・児童自立支援施設等について

1.身体収容を伴う保護処分としての2処分

 家庭裁判所による審判によって、少年に帰宅が許されず、そのまま施設に収容されてしまうケースとして、少年院への送致と児童自立支援施設への送致が考えられます。
 語弊をおそれずに単純に説明すると、少年院は年長少年が送致される場所で、児童自立支援施設は触法少年(こちら を御確認ください。)が送致される場所とイメージしていただければと思います。

2.少年院送致について

(1)収容を伴う保護処分であること

 まず、少年院送致についての規定を確認しましょう。

少年法
第24条

 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に14歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第3号の保護処分をすることができる。
 3号 少年院に送致すること。

 少年法には、少年審判の結果として少年院に送致できることにかかる定めしか見当たりません。少年院送致という処分の内容については、少年院法を確認する必要があります。

少年院法
第3条

 少年院は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し矯正教育その他の必要な処遇を行う施設とする。
1号 保護処分の執行を受ける者
2号 少年院において懲役又は禁錮の刑の執行を受ける者

第4条

 少年院の種類は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者を収容するものとする。
1号 第一種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(次号に定める者を除く。)
2号 第二種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満のもの
3号 第三種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの
4号 第四種 少年院において刑の執行を受ける者

第15条

1項 在院者の処遇は、その人権を尊重しつつ、明るく規則正しい環境の下で、その健全な心身の成長を図るとともに、その自覚に訴えて改善更生の意欲を喚起し、並びに自主、自律及び協同の精神を養うことに資するよう行うものとする。
2項 在院者の処遇に当たっては、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用するとともに、個々の在院者の性格、年齢、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境、交友関係その他の事情を踏まえ、その者の最善の利益を考慮して、その者に対する処遇がその特性に応じたものとなるようにしなければならない。

 少年院は当然ですが、少年を収容した上で、少年の改善更生を目的とする施設ですから、自由に外出することは認められません。したがって、親子間でのコミュニケーション等も制限されることになりますし、これまで通学していた学校に通学することも不可能となります。
もし、少年院に送致された少年が少年院から逃げ出した場合、少年院法は、48時間以内であれば少年院の職員に少年を連れ戻すことを許しています。48時間が経過した後については、裁判官の連戻状が必要となりますが、再度収容することが可能となっています。
 ですから、少年院送致は、成年事件における懲役刑と全く同じものと理解することはできませんが、それに類するものとして理解することができます。少年院に送致されることで人間関係を一新することができるなど、少年院送致が少年の更生に資する場合があることは否定できませんが、付添人としては、少年院に頼ることなく少年の更生が可能となるような環境を整備し、そのことを裁判官にアピールするための活動が必要となります。
 また、少年院には上述したとおり、第一種から第四種までの種別に分けられており、それぞれ初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院と呼称されています。少年院送致が不可避な事案においても、犯罪性向が進んでいるかどうかによって送致される少年院が異なり得ますので、付添人としてはこの点についても意識した活動が求められます。

(2)少年院に収容される期間

 保護観察処分と同様に、少年院送致処分についても、家庭裁判所が審判の際に、その収容期間を宣告することはありません。少年院から退院できる時期については、少年の更生の程度によって判断されることになるからです。  しかしながら、少年院の中に収容できる期間について、法律上の定めも存在します。

少年院法
第137条

 少年院の長は、保護処分在院者が20歳に達したときは退院させるものとし、20歳に達した日の翌日にその者を出院させなければならない。ただし、少年法第24条第1項第3号の保護処分に係る同項の決定のあった日から起算して1年を経過していないときは、その日から起算して1年間に限り、その収容を継続することができる。

 このように、法律上は、少年院に送致された少年は20歳まで少年院に収容されることとなり、19歳になってから少年院に収容された少年は、1年間少年院に収容されることになります。
 しかしながら、このような法律の定め通り、20歳まで退院できない少年が多いかというと実際の運用は異なります。
 保護観察処分と同様に、少年院送致についても、一般短期処遇等が存在し、そのような処遇を行うべきことについて、少年審判の際に裁判官が勧告した場合、多くの少年は半年以内に少年院を退院することになります。また、短期処遇についての勧告がなされなかった場合についても、概ね1年以内に退院することができているケースが多いようです。

3.児童自立支援施設送致について

(1)収容を伴う保護処分であること

まず、児童自立支援施設送致についての規定を確認しましょう。

少年法
第24条

 家庭裁判所は、前条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、決定をもつて、次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし、決定の時に14歳に満たない少年に係る事件については、特に必要と認める場合に限り、第3号の保護処分をすることができる。
2号 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。

 これまでと同様に、少年法自体には詳細な定めは存在しません。
 ここで、児童自立支援施設と同列に定められている、児童養護施設について簡単に説明させていただきますと、児童養護施設については、保護者が存在しない少年や、保護者から虐待を受けている少年を対象とするものになります。
 やや、他の保護処分とは性質を異にするものですので、ここでは説明を省略させていただきます。
 児童自立支援施設については、次のような定めが存在します。

児童福祉法
第44条

 児童自立支援施設は、不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

 このように、児童自立支援施設は保護者の下から通わせるような方法についても予定しており、少年院と異なり開放処遇を前提としています。
 実際に、少年院とは性質的な違いが大きく、児童自立支援施設から児童が逃亡して帰宅するようなケースにおいても、児童自立支援施設の職員が強制的に児童を連れ戻すのではなく、あくまでも少年や少年の保護者の説得を図ることになるのが通常ですし、児童自立支援施設内において、少年の自由な外出を強制的に禁じるような措置をとることも稀です。
 ですから、理念的には、児童自立支援施設送致を少年院送致と同列に、身体収容を伴う保護処分として理解するのは誤りなのかもしれません。
 しかしながら、児童自立支援施設に送致された場合、やはり親子で同居することができなくなるケースがほとんどです。如何に少年院や刑務所ほど、自由が制限されていないとしても、少年が少年の家族と共に自由に生活することが困難となる以上、私達としては、児童自立支援施設についても、身体収容を伴う保護処分であると理解しています。

(2)児童自立支援施設内での生活

 児童自立支援施設においては、一つの寮の中で数人が共同生活を営み、日中は、同一の敷地内にある学習棟で勉強に励むことになります。
 家庭的な雰囲気の下で生活ができるように、職員の方々も努められているようであり、実際に私も施設の見学に行ったことがありますが、非常に穏やかな空気の中で生活ができている印象でした。
 児童自立支援施設については、あまり高校生が送致されることはなく、ほとんどの場合、中学生以下の少年が送致されることが多いものといえます。
 また、高校に進学するまでには、保護者の下に戻されることが多いようです。

4.児童自立支援施設送致について

 親子関係は、人間関係の最も基本的なものだと考えています。少年の更生にあたって最も大事にすべき根幹部分と言えます。ですから、付添人としては、少年及び少年の保護者に十分なアドバイスを行い、更生の環境を整備した上で、これらの施設収容を伴う保護処分を回避できるように弁護活動を行う必要があります。
 特に、児童自立支援施設送致について、身体収容を伴う保護処分だと理解することについては、異なる見解をお持ちの方が多いように思いますが、私としては避けるべき処分であると考えています。
 しかしながら、何らかの問題行動に少年が及んでしまった以上、具体的な更生環境を整備できなければ、少年を保護者の下ではなく、異なる環境で更生を図らせるべきだという考えに一定の妥当性は認められます。家庭裁判所に対して十分な指導・監督能力や意思を伝えるにあたっては、経験及び知識のある付添人を選任されることをお勧めします。