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触法事件

1.触法事件とは

 成年を被疑者・被告人とする刑事事件の手続については、被疑者・被告人が無罪を主張しているかどうかによって、手続の大枠が変わることはありませんし、裁判所が事件を受理する際の取り扱いが変わることもありません。
 しかしながら、少年事件については、その内容によって裁判所の取り扱いが変わります。
 一つは、少年が犯罪行為に及んだと疑われて裁判所に送致されたのかどうかという点です。犯罪行為に及んだとは疑われていない場合であっても、将来的に犯罪行為に及ぶ可能性が高いと認められる場合、家庭裁判所に送致されることがあり、このような事件のことをぐ犯事件といいます(詳細はこちらを御確認ください。)。
 もう一つは少年の年齢による区別です。刑法第41条は「14歳に満たない者の行為は罰しない。」と定めていますから、14歳未満の少年による犯罪行為は、刑法によって処罰することができません。一方で、14歳未満であったとしても、犯罪行為自体を行うことは可能です。そこで、少年法は、14歳未満の少年による犯罪行為について、触法事件として定め、家庭裁判所へ送致することを求めているのです。

2.児童相談所の介在

(1)児童相談所への送致が先行する

 触法事件における最大の特徴は、警察署、検察庁等の捜査機関と家庭裁判所に加えて、児童相談所が事件に関与することになる点です。

少年法
第3条

1項 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
2号 14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
3号 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
2項 家庭裁判所は、前項第2号に掲げる少年及び同項第3号に掲げる少年で14歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
(通告)

第6条

2項 警察官又は保護者は、第3条第1項第3号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、又は通告するよりも、先づ児童福祉法による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、その少年を直接児童相談所に通告することができる。

第6条の6 

1項 警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。
 1号 第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が次に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。
 2号 前号に掲げるもののほか、第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。
2項 警察官は、前項の規定により児童相談所長に送致した事件について、児童福祉法第27条1項4号の措置がとられた場合において、証拠物があるときは、これを家庭裁判所に送付しなければならない。

児童福祉法
第25条

 要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし、罪を犯した満十四歳以上の児童については、この限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。

 児童相談所は都道府県知事と並列して記載されているケースが多いのですが、都道府県知事による送致等が行われるケースは稀で、触法事件については、基本的に児童相談所を関与させて手続が進捗します。そして、警察署から児童相談所に事件が送致され、児童相談所から家庭裁判所に送致されるというのが、ほとんどの触法事件における流れと言えます。

(2)児童相談所限りで手続が終了する場合もある

 少年法第6条の7は、「その行動の自由を制限し、又はその自由を奪うような強制的措置を必要とするとき」に、児童相談所から「家庭裁判所に送致」するように求めています。
 したがって、そのような措置が不必要と判断される場合には、家庭裁判所に送致することなく、児童相談所限りで事件を終結させることは可能になります。
 付添人弁護士としては、家庭裁判所に送致させることなく事件を解決する方法を探るために、児童相談所とも折衝する必要があるのです。 

児童福祉法
第26条

 児童相談所長は…送致を受けた児童及び相談に応じた児童、その保護者又は妊産婦について、必要があると認めたときは、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
1号 次条の措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。
2号 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関…において、又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司若しくは児童委員に指導させ…ること。
6号 児童自立生活援助の実施が適当であると認める児童は、これをその実施に係る都道府県知事に報告すること。

第27条

1項 都道府県は、前条第1項第1号の規定による報告又は少年法第18条第2項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
1号 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
2号 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において、又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司…に指導させ…ること。
3号 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
4号 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。
4項 第1項第3号又は第2項の措置は、児童に親権を行う者…の意に反して、これを採ることができない。

少年法
第6条の7

2項 都道府県知事又は児童相談所長は、児童福祉法の適用がある少年について、たまたま、その行動の自由を制限し、又はその自由を奪うような強制的措置を必要とするときは、同法第33、第33条の2及び第47の規定により認められる場合を除き、これを家庭裁判所に送致しなければならない。

 児童相談所は、送致を受けた少年について、児童相談所に通所させる等の措置をとることが可能ですし、その措置で十分と判断される場合には、家庭裁判所への送致を回避することができます。
 逆に、少年の身体の拘束を伴う処分が必要となる場合、原則として児童相談所は、家庭裁判所に送致することが求められています。例外的に、児童自立支援施設への送致(児童自立支援施設の詳細についてはこちら を御確認ください)については、保護者の同意があれば、家庭裁判所へ送致することなく行えることとなっています。
 児童自立支援施設は少年院とは異なりますが、親元を離れて生活させるという意味において、収容施設と同視できるものといえます。したがって、親元で十分に少年を監督・指導することができるとお考えの場合には、児童自立支援施設への送致について同意してはいけません。この場合、児童相談所は、少年の事件を家庭裁判所に送致することになりますから、家庭裁判所において児童自立支援施設に送致すべきだという児童相談所の判断が正しいのかどうかについて判断を仰ぐことになります。付添人弁護士としては、児童自立支援施設に送致する必要はなく、少年の保護者による指導・監督によって、十分に更生させることができる旨について主張することになるのです。
 以上のとおり、家庭裁判所に送致されることなく事件を終結させられる可能性もありますので、児童相談所の段階においても、付添人弁護士の存在は極めて重要です。しかしながら、警察官や検察官などの捜査機関の存在感が希薄であることや、家庭裁判所に送致される可能性があることについて十分に理解されていないケースが多く、児童相談所に送致された段階で付添人弁護士が選任されているケースは多くありません。
 付添人弁護士としては、家庭裁判所に送致される前に選任されていた場合の方が、弁護活動に幅を持たせることができますし、実際に親子関係を含む人間関係の改善等の環境調整について、児童相談所や家庭裁判所にアピールするための実績を作ることができます。 児童相談所に送致された場合やされる可能性について警察官等から示唆された場合、早い段階で御相談いただきたく思います。

(3)児童相談所も少年を収容することが可能

 児童相談所が関与する触法事件について一番厄介なのが、児童相談所も少年を所内に収容することが可能という点です。成年事件における逮捕・勾留や、鑑別所への送致等とは、その性質を大きく異にしますので、「収容」という用語を用いるのに躊躇するところではありますが、実際に両親であっても少年との面会は禁止されてしまいますし、少年自身も事実上自由な行動が制限されてしまいますから、成年事件における逮捕・勾留と同視できると言っても、特に御両親や付添人弁護士の目線からは過言ではないように思っております。
 そして、この児童相談所における少年の収容のことを、一時保護と言います。

児童福祉法
第33条

1項 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
2項 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第27条第1項又は第2項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。
3項 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から2月を超えてはならない。
4項 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第1項又は第2項の規定による一時保護を行うことができる。
5項 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行った後2月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。

 このように、一時保護の目的は、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握する」ことが目的となっており、親子関係に問題がなく、両親による指導・監督に期待できる場合には、一時保護の要件を充足しないものと考えられるのですが、実際の運用においては、少年に再犯の可能性が否定できないこと等を理由に、一時保護がとられるケースも散見されます。
 この、一時保護については、児童相談所で少年を保護することが多く、児童相談所は警察署の留置場とは違いますから、内部で勉強等を行うことも可能です。しかしながら、親元で生活するのと比較すると、どうしても行動の制限が多くなりますし、何よりも親子間の面会が許されない点で、少年や少年の保護者に対する不利益は小さくありません。
 また、逮捕・勾留や鑑別所の送致については、法律によって厳格に期間が制限されているため、身体を収容される期間について予測がつくのですが、一時保護の場合、いつまで保護されているのかの予測が極めて困難です。
 特に、法律上は、保護者の同意を要件としていますが、逮捕・勾留と異なり、少年の身の安全や健全な育成を理由とするものですから、少年の一時保護が行われる際に、その手続の内容を理解することなく、一時保護について同意してしまっている保護者の方が極めて多いものと言えます。個人的な感覚ですと、一時保護をされてしまっているケースにおいて、ほとんどの保護者の方が、一時保護の内容を理解しないまま、一時保護について同意してしまっているように感じています。
 両親が、形式的にではあっても一時保護について同意してしまっている場合、2か月間という一応の期間制限はありますが、児童相談所は必要性を感じれば、その期間を延長することができますし、同意を得ている場合の一時保護の延長期間については、法律上に定めがありません。したがって、家庭裁判所に送致するまでの間、ずっと児童相談所で保護され続けることになるのです。
 この一時保護については、家庭裁判所による判断ではありませんから、裁判所に対する準抗告や抗告等、成年の刑事事件において身柄拘束された際に用いる手続を使うことができません。
 裁判所ではなく行政による処分になりますので、行政処分の有効性を争う必要があるのです。具体的には、行政不服審査法に基づく審査請求を行うことになります。

3.まとめ

 触法事件については、児童相談所が関与することによって、通常の少年事件より手続が複雑となりますし、児童相談所に一時保護がなされている場合、少年との面会が禁じられてしまいますので、少年と意思疎通を図るためには、付添人弁護士を選任しなければ、少年の状態や少年の意思を確認することすら困難となります。
 少年が幼いことなどから、捜査機関や家庭裁判所から厳罰を科されることはないものと甘く考えている方が多いのですが、触法事件は、通常の少年事件よりも数倍厄介なものといえます。早い段階で御相談いただくことをお勧めします。