目次
1 まずは保釈の請求です
起訴されてから約1月半ほど後に、第1回の裁判の期日が指定されることになりますが、起訴される際に身体を拘束されている場合、保釈を請求しなければ、裁判が終わるまで身体拘束を受けたままの状況になります。
ですから、まずは保釈の請求を検討する必要があります。
この保釈の請求についても、弁護士のサポートがなければ、被疑者やその御家族の方が請求することは非常に困難です。
どのような場合に保釈の請求が認められるかについては法律で定められていますから、保釈を認めてもらえるような保釈請求書を作成するには、専門的な知見が求められますし、裁判官に保釈の可否を判断させる前に、検察官と交渉をすることなどについても、弁護士でなければ難しいものといえます。
保釈が認められないと、裁判までに行う準備活動についても、警察署等の留置施設の中で行わなくてはなりませんから、十分な打合せ時間や打合せの環境を確保するためにも、保釈の請求は不可欠なものといえます。
否認している事件や、重大な事件であっても、保釈の請求が認められる場合はありますから、まずは、弁護士に御相談いただければと思います。
2 開示された証拠を精査して、裁判での弁護方針を固めていきます
起訴された後、第1回公判期日までの間に、検察官は弁護人に対して、裁判所に提出予定の書証を開示しなくてはなりません。検察官が裁判でどのような資料を提出し、どのような主張をするのかを確認するためにも、開示された証拠を精査することは不可欠なのですが、この書面は、弁護士でなければ確認することができません。
この証拠を被告人に見せることなく手続を進めてしまう弁護士も残念ながら一定数存在します。しかしながら、裁判に向けた準備を十分に行うためには、弁護人だけが証拠を把握できていれば足りるものではなく、被告人と共にその内容を精査することは必要不可欠です。被告人に対して、証拠を確認させない弁護士は論外と言えるでしょう。
刑事裁判においては、被告人や弁護人が無罪を証明しなくてはいけない訳ではなく、検察官が有罪を立証しなくてはなりません。ですから、弁護人は、検察官の立証をどのように弾劾できるのかを考えなくてはいけませんし、その際には当事者である被告人とも打合せが必要になります。裁判前の証拠を精査する段階で、実際の裁判における弁護方針を、確立させておく必要があるのです。
さらに、検察官かた開示される証拠は、検察官の全ての手持ち証拠ではありません。検察官が、裁判で使用しようと考えている証拠に限られます。ですから、弁護人が何も請求しなければ、それ以上の証拠を見ることはできません。しかしながら、検察官にとって不要な証拠であっても、弁護人からすれば有用な証拠である場合は少なくありません。このことは、罪を争っていない事件であっても同じです。十分な裁判の準備を行うためには、更なる証拠の開示を検察官に求めることが不可欠なものといえます。
3 証拠の取り扱いについて、検察官が請求した証拠を裁判で開示された証拠を精査して、裁判での弁護方針を固めていきます
検察官が弁護人に対して開示した証拠は、検察官が裁判所に提出することを予定している証拠になります。その中には被告人に極めて不利益な内容が含まれていることもありますが、弁護人が何もしなければ、そのような証拠も裁判官が目にすることになってしまいます。
そこで、弁護人としては、そのような証拠を裁判に提出させないことを考えることになります。そして、書面の証拠については、証拠として利用することを拒むことができるのです。不要な情報を裁判所に与える必要はありませんから、証拠として利用させることを拒むことに躊躇する必要はありませんが、このようなことを理解するにも、弁護人のサポートは不可欠です。
他方で、証拠としての提出を拒んだ場合、検察官としては、その証拠を作成した人を証人として裁判所に呼ぶことを検討することになります。その証拠が重要であればあるほど、検察官としては証人を請求することになるでしょう。被害者の方が証人として出廷した場合、法廷で被害感情が強調されてしまいますから、全ての証拠の利用を拒むことが被告人に有利という訳ではありません。まだ、無駄に証人を増やすことで、裁判の手続が長引くことにもなりますし、保釈の請求が認められにくくなることも考えられます。
検察官から開示を受けた証拠を、どの範囲まで使用させるのかについても、弁護人の専門的な知見に基づく判断が求められるのです。
4 弁護方針の重要さ
無罪を主張する事件においては、どのような理由で無罪を主張するのか、ケースセオリーを立てることが極めて重要になってきますし、そのケースセオリーを、どのように裁判において主張するのかも重要です。
一方で、有罪をを認めている事件においても弁護士の重要性は変わりありません。情状弁護というと、親族の方に証人となってもらい、裁判官に対して、被告人を監督することを誓約させるような弁護活動を想定される方が多いと思いますし、そのような弁護活動が妥当である場合も多く存在します。
しかしながら、高齢のご両親に働き盛りの被告人を監督することを誓約させても、その実効性が疑問視されるのは当然ですし、被告人の更生環境を整備する方法は、その事案毎によって異なり得ます。
特に、執行猶予と実刑の境界線の事案においては、弁護人が、執行猶予判決を得るための主張を適切にできているかどうかが重要になるのです。
例えば、クレプトマニアや性嗜好障害等、一定の犯罪行為に依存している状況が認められる場合に、家族による監督を誓約するだけでは不十分である一方で、そのような精神的な異常性を主張することは、自分の意思や家族の監督だけでは更生できないことを自ら認めるような主張になりますから、安易に行うべきではありません。
弁護士と専門家の間で、綿密な打合せが事前に求められるのです。
5 証拠の取り扱いについて、検察官が請求した証拠を裁判で開示された証拠を精査して、裁判での弁護方針を固めていきます
実際の裁判において、弁護士のサポートが必要不可欠であることについては、実際の裁判を経験したことがない方であっても、容易に想像できると思います。
特に、無罪であることを主張したり、執行猶予を付することが適当であることを主張するにあたって、被告人本人やその御家族が、裁判官に対して直接話をすることのできる被告人質問や証人尋問の手続は、裁判を経験したことがない方にとっては、非常に精神的負担の大きな手続である一方で、裁判の結果を左右しかねない重要な手続となります。
尋問は、弁護人からの質問に答える形で行いますから、弁護人の質問が分かり難い場合や、何を目的に質問しているのかについて理解を共有できていなければ、裁判官の前で見当違いなことを答えてしまいかねません。一方で、被告人や証人の話を聞く機会ですから、弁護人の質問ばかりが長くなってしまえば、裁判で自分の主張を行える最大の機会を失ってしまうことにもなります。
ですから、裁判の場において、被告人や証人が答え易いように質問することも大切ですし、裁判に至る前の準備が非常に大切なのです。
私達は多数の刑事事件に関与し、弁護人として活動してまいりました。既に起訴された段階であっても遅くはありません。まずは御相談ください。