痴漢事件における条例違反と不同意わいせつ罪の違い|ダーウィン法律事務所 刑事事件専門サイト

ご家族・ご友人が逮捕・起訴されてしまったら、すぐにお電話ください!

0120-845-018

受付時間:7時~23時(土・日・祝日も受付)

初回電話
相談無料
守秘義務
厳守
東京 埼玉 神奈川 千葉

痴漢事件における条例違反と不同意わいせつ罪の違い

1.どんな行為が「痴漢」と扱われるのか

 「痴漢」は法律上に定められた文言ではありません。ですから、「痴漢」という語句で検索しても、その定義を定めている法律は存在しません。

 では、「痴漢」とはどのような行為を指すのでしょうか。痴漢とは、一般的には、被害者の方の承諾なく、被害者の方の性的な部位に触れるような行為の内、混雑に乗じるような場合や、被害者の方が拒絶できないようなタイミングで不意を突いて及ぶような場合を意味する用語として用いられています。

 ですから、混雑した通勤電車内等で行われる行為をイメージすることが多いと思いますが、夜道で追い抜きざまに触れるような行為も、「痴漢」の一種といえるでしょう。

2.法律上の扱い

 一応、「痴漢」という用語がどのような意味を持つのかについて解説をさせていただきましたが、重要なのは法的な扱いです。そこで、法律がどのような行為を犯罪として定めているのかについて確認してみましょう。

刑法

(不同意わいせつ)
第176条
 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
1号 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
5号 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的行為等の防止に関する条例

(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条1項
 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(罰則)
第8条
1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2号 第5条第1項…の規定に違反した者…。
8項 常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

 迷惑行為防止条例は各都道府県によって定められていますので、各都道府県によってその内容は異なります。とはいえ、各都道府県で定められている内容は類似しておりますので、代表例として東京都の条例を引用させていただきました。

 まずは刑法です。従前は強制わいせつ罪が適用されていましたが、法改正により不同意わいせつ罪が適用されることになりました。従前は、わいせつ行為自体が暴行にあたるという解釈がされていたのですが、法改正以降は、相手の方に拒絶するタイミングを与えず、黙って性的な部位に触れるような行為について、5号該当性を理由に不同意わいせつ罪が適用されることになります。 通勤電車内における混雑に乗じた場合であっても、夜道で突然身体に触れられる場合であっても、被害者の方としては防ぎようのない状況にありますから、「いとまがない」場合に該当することになる訳です。

 逆に、条例違反の場合には、「公共の場所」などにおいて、「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れる」行為が、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」といえれば成立することになります。基本的には、公の場で突然身体に触れられれば、「著しく羞恥」させる行為と認められてしまうでしょう。

3.条例違反と不同意わいせつ罪の違い

 では、痴漢事件が発生した際に、この2つの罪名のいずれが適用されるのかについては、どのように区別されているのでしょうか。

 刑事事件を取り扱う法律事務所のHPでは、着衣の上から触れた場合には条例違反で、着衣の下にまで手を入れて、直接被害者の方の身体に触れた場合には不同意わいせつ罪が成立すると解説されているものが多いように思います。そして、実際にもそのような区別が妥当しているように思います。

 しかし、条例の内容を確認してみると、「直接に人の身体に触れる」行為についても、条例違反として定められていますし、着衣の上からであっても、陰部付近や臀部付近に触れる行為は、「わいせつな行為」といえそうですから、不同意わいせつ罪が適用されてもおかしくないはずです。つまり、条文の文言を見るだけでは、着衣の上か下かという事実だけで両罪を区別できないのです。

 では、何故、着衣の上から触れる行為については、強制わいせつ罪(法改正後は不同意わいせつ罪)ではなく条例違反が成立すると解されてきたのでしょうか?それは、着衣の上から触れる行為は、人を著しく羞恥させる行為ではあっても、わいせつな行為ではないと解されてきたからです。

 こう説明すると、違和感を抱かれる方は多いと思います。特に、「わいせつ」の概念については、社会に併せて変容するものと理解されていますから、このような理解に違和感を抱く方が大多数となった場合、将来的に着衣の上から性的な部位に触れるような態様による痴漢行為についても、条例違反ではなく不同意わいせつ罪が適用されることになる可能性は十分にあるのです。

 また、これまでは不同意わいせつ罪ではなく強制わいせつ罪が適用されていました。ですから、「強制的だ」と評価し難い内容についても、刑法犯である強制わいせつ罪ではなく条例違反が成立するものと解されてきました。しかしながら、不同意わいせつ罪の創設によって、行為が強制的かどうかは大きな問題ではなくなりました。

したがって、条例違反の罪と不同意わいせつ罪の区別が、より一層困難になっているものといえるのです。実際に、着衣の上から身体を触れた場合のように、これまでであれば条例違反の罪として扱われていた事案についても、不同意わいせつ罪が適用されるケースも散見されるようになってきています。両者の区別はますます困難になってきているといえるでしょう。

4.弁護活動について

 不同意わいせつ罪については、罰金刑が法定されていません。ですから、検察官としては、起訴か不起訴かという両極端にある処分のいずれかを下す必要があるのです。被疑者が不同意わいせつ罪の犯人であると認めるに足りる十分な証拠があると考えられる場合において、示談も成立していなければ、不起訴処分とする理由がありませんから、前科前歴がなかったとしても、起訴せざるを得ないということになるのです。

 弁護人としては、問題となっている行為が不同意わいせつ罪ではなく、条例違反を成立させるにとどまる行為であることを主張できないのかについて、まずは検討する必要があるでしょう。

 また、不同意わいせつ罪が成立すると考えられるケースであっても、被害者の方と示談が成立すれば、不起訴処分を得られる可能性が高く認められます。示談の成否が最終的な結論に大きな影響を及ぼす犯罪類型ですから、示談交渉に着手するかどうかについては、早い段階で検討する必要があるでしょう。

関連記事:「痴漢事件における示談交渉」
痴漢事件で示談交渉をすることの重要性と方法について説明しています。被害者との示談が前科の有無に影響するため、弁護士を通して連絡先を入手し、示談金を決めることが必要です。示談金の性質は慰謝料的な側面も認められますが、被害者の許しを得るための代価としての側面も強く、法的な根拠・相場はありません。

 逆に、冤罪を晴らす弁護方法については、まずは、裁判を回避できるように活動する必要がありますが、被疑者の方が冤罪である旨を主張しているにもかかわらず、検察官がその主張を正解することなく、被疑者の方を痴漢事件の犯人として起訴してしまった場合には、冤罪を晴らすために全力で被告人の方を弁護する必要があります。

関連記事:「痴漢事件の裁判」
痴漢事件で起訴されるケース、自白している場合と否認している場合の裁判の流れと注意点、弁護活動のポイントなどについて、具体的な例を挙げて説明しています。痴漢事件は、条例違反と不同意わいせつ罪の区別が難しい犯罪類型であり、示談交渉や冤罪防止のために、専門的な知識と経験を持った弁護人に相談することが重要です。

 私達は、多くの痴漢事件について御依頼いただき、実際に弁護活動をして参りました。まずはお気軽に御相談いただければと思います。

痴漢事件でお悩みなら!今すぐ痴漢事件に強い弁護士に至急お電話ください