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コラム

健康増進法改正による喫煙者への影響。室内は原則禁煙に?

 平成30年7月に健康増進法が改正され、官公庁から喫煙場所が消滅しました。また、それ以前から、屋外の指定喫煙場所以外での喫煙行為について、金銭の支払いを命じる条例等も多数成立していました。
 喫煙者にとっては生き難い世の中になりつつありますが、受動喫煙等、非喫煙者への影響を考えれば、当然の流れなのだと思います。
 喫煙者としては、周囲の人に迷惑をかけることがないように喫煙することを心がける必要があります。基本的には、このことを心がけていれば、喫煙行為によって何らかの制裁を加えられるような事態に陥ることはないはずですが、喫煙者を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しております。
 そこで、知らない内に、法律に違反するような形で喫煙してしまうことがないように、今回は喫煙に関する法律関係についてまとめてみたいと思います。

1.健康増進法による喫煙の禁止

(1)健康増進法の内容

健康増進法は、第6章に「受動喫煙防止」という章を設けており、その中で、次のような規定で、特定の場所での喫煙行為を禁止しています。

健康増進法

第25条  国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない。 第27条 1項 何人も、特定施設及び旅客運送事業自動車等(以下この章において「特定施設等」という。)の第29条第1項に規定する喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない。 2項 特定施設等の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない。 第28条 1項 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 1号 たばこ たばこ事業法第2条第3号に掲げる製造たばこであって、同号に規定する喫煙用に供されるもの及び同法第38条第2項に規定する製造たばこ代用品をいう。 2号 喫煙 人が吸入するため、たばこを燃焼させ、又は加熱することにより煙(蒸気を含む。)を発生させることをいう。 第29条 1項 何人も、正当な理由がなくて、特定施設等においては、次の各号に掲げる特定施設等の区分に応じ、当該特定施設等の当該各号に定める場所(以下この節において「喫煙禁止場所」という。)で喫煙をしてはならない。 2項 都道府県知事は、前項の規定に違反して喫煙をしている者に対し、喫煙の中止又は同項第一号から第三号までに掲げる特定施設の喫煙禁止場所からの退出を命ずることができる。 第77条  次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の過料に処する。 1号 第29条第2項の規定に基づく命令に違反した者

以上のとおり、健康増進法は、国及び地方公共団体に対して、望まない受動喫煙を防止する措置をとるように求めており、特に、「特定施設等」における「喫煙禁止場所」における「喫煙」については、喫煙の中止を命じることができており、その命令に違反した場合には、30万円以下の過料に処する旨を定めています。
 iQOSやglo等の加熱式たばこについても、たばこ葉を使用していることから、たばこ事業法における「製造たばこ」に該当し、加熱によって生じる蒸気を吸入する行為についても、「喫煙」に含まれる旨が定められていますから、紙たばこと同様に規制されることとなります

(2)健康増進法によって禁煙とされる施設

 では、健康増進法が喫煙を禁止しているのは、具体的にどのような場所になるのでしょうか。

健康増進法

第29条  何人も、正当な理由がなくて、特定施設等においては、次の各号に掲げる特定施設等の区分に応じ、当該特定施設等の当該各号に定める場所(以下この節において「喫煙禁止場所」という。)で喫煙をしてはならない。 1号 第一種施設 次に掲げる場所以外の場所 イ 特定屋外喫煙場所 ロ 喫煙関連研究場所 2号 第二種施設 次に掲げる場所以外の屋内の場所 イ 第33条第3項第1号に規定する喫煙専用室の場所 ロ 喫煙関連研究場所 3号 喫煙目的施設  第35条第3項第1号に規定する喫煙目的室以外の屋内の場所 4号 旅客運送事業自動車及び旅客運送事業航空機  内部の場所 5号 旅客運送事業鉄道等車両及び旅客運送事業船舶  第33条第3項第1号に規定する喫煙専用室以外の内部の場所 第28条  この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 5号 第一種施設 多数の者が利用する施設のうち、次に掲げるものをいう。 イ 学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの ロ 国及び地方公共団体の行政機関の庁舎(行政機関がその事務を処 理するために使用する施設に限る。) 6号 第二種施設 多数の者が利用する施設のうち、第一種施設及び喫煙 目的施設以外の施設をいう。 7号 喫煙目的施設 多数の者が利用する施設のうち、その施設を利用す る者に対して、喫煙をする場所を提供することを主たる目的とする施設として政令で定める要件を満たすものをいう。 13号 特定屋外喫煙場所 第一種施設の屋外の場所の一部の場所のう ち、当該第一種施設の管理権原者によって区画され、厚生労働省令で定めるところにより、喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識の掲示その他の厚生労働省令で定める受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所をいう。

このように、喫煙が禁止されているのは、第一種及び第二種施設とされている施設及び公共交通機関内が中心となります。
 そして、第一種施設として指定されている学校や病院、国及び地方公共団体の行政機関の庁舎については、特定屋外喫煙場所以外の場所が原則として禁止されていますから、屋内での喫煙は許されないこととなります。
 また、第二種施設は、「多数の者が利用する施設」とされていますから、飲食店やホテル等、多くの施設が該当することになります。
 第二種施設については、「喫煙専用室」を設けることが可能とされていますので、屋内の喫煙が全面的に禁止となる訳ではありませんが、専用室以外での屋内の喫煙は禁止されることになります。また、喫煙専用室であることから、同室内での飲食は禁止されていますし、加熱式たばこの喫煙のみを許可する専用室であれば飲食も可能とされていますが、加熱式たばこが健康に与える影響等が明らかとなった場合、将来的には通常の紙たばこと同じ扱いになる可能性もあります。

(3)施設を運用する側の問題点

 以上の内容は、基本的に喫煙者目線での問題について解説させていただきました。しかし、喫煙者との関係では、施設の表示等に従い、喫煙が許可された場所で喫煙している限り、大きな問題はないように思います。
 問題は、第二種施設の定義が広いため、喫煙者の利用客が多い店舗を営業する場合、十分に法律を理解した上で利用客に喫煙させないと、施設の管理権限者として処罰を受ける可能性があるということです。
 まず、施設内に喫煙可能な場所を設ける場合、喫煙可能な場所以外に灰皿等を設置することがないようにすることに加えて、喫煙可能な場所についても法律上の義務を果たして設ける必要があります。

健康増進法

第33条 1項 第二種施設等の管理権原者は…たばこの煙の流出を防止するための基準として厚生労働省令で定める技術的基準に適合した室の場所を専ら喫煙をすることができる場所として定めることができる。 2項 第二種施設等の管理権原者は、前項の規定により当該第二種施設等の基準適合室の場所を専ら喫煙をすることができる場所として定めようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該場所の出入口の見やすい箇所に、次に掲げる事項を記載した標識(以下この節において「喫煙専用室標識」という。)を掲示しなければならない。 1号 当該場所が専ら喫煙をすることができる場所である旨 2号 当該場所への二十歳未満の者の立入りが禁止されている旨 3号 その他厚生労働省令で定める事項 3項 第二種施設等の管理権原者は、前項の規定により喫煙専用室標識を掲示したときは、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該第二種施設等の主たる出入口の見やすい箇所に、次に掲げる事項を記載した標識を掲示しなければならない。 4項 喫煙専用室が設置されている第二種施設等の管理権原者は、当該喫煙専用室設置施設等の喫煙専用室の構造及び設備を第1項の厚生労働省令で定める技術的基準に適合するように維持しなければならない。 5項 喫煙専用室設置施設等の管理権原者等は、二十歳未満の者を当該喫煙専用室設置施設等の喫煙専用室に立ち入らせてはならない。 第34条 1項 都道府県知事は、喫煙専用室設置施設等の喫煙専用室の構造又は設備が前条第1項の厚生労働省令で定める技術的基準に適合しなくなったと認めるときは、当該喫煙専用室設置施設等の管理権原者に対し、当該喫煙専用室において掲示された喫煙専用室標識及び当該喫煙専用室設置施設等において掲示された喫煙専用室設置施設等標識を直ちに除去し、又は当該喫煙専用室の構造及び設備が同項の厚生労働省令で定める技術的基準に適合するまでの間、当該喫煙専用室の供用を停止することを勧告することができる。 2項 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた喫煙専用室設置施設等の管理権原者が、その勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。 3項 都道府県知事は、第1項の規定による勧告を受けた喫煙専用室設置施設等の管理権原者が、その勧告に係る措置をとらなかったときは、当該管理権原者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。 第76条  次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の過料に処する。 1号 第34条第3項…に基づく命令に違反した者 2号 第33条第3項…の規定に違反した者

 以上のように、喫煙を可能とする場所を設ける際には、他の場所にたばこの煙が流出することがないようにする必要がありますし、喫煙が可能である旨を表示しなくてはいけません。そして、このような義務に違反した場合には、都道府県知事から勧告を受けることがありますし、命令に違反した場合には過料に処されることもあるのです。
 特に、喫煙に関する標識の内容は、何種類にも分けられております。ご不安がある場合には、一度御相談いただければと思います。

2.屋外での喫煙について

(1)健康増進法の規定

これまで、施設内での喫煙について解説させていただきました。では、屋外であれば自由に喫煙することができるのでしょうか。

第一種施設については、基本的に敷地内での喫煙が禁止されていますから、屋外であっても、喫煙場所として定められた場所以外で喫煙することは許されません。
 また、当たり前の話ではありますが、喫煙が禁止されていない場所において喫煙する際も、喫煙する際に周囲に配慮しなければいけない義務が定められております。

もっとも、周囲に迷惑をかけるような喫煙に対する一般的な処罰規定は設けられておりません。

(2)条例の規定

 しかしながら、健康増進法が改正される前から、路上喫煙者に対して過料を科すような条例が成立していることは、皆様ご存知のように思います。
 例えば、千代田区における生活環境条例においては、路上禁煙地区等を定めており、当該地域内での喫煙に対しては、2000円の過料を科す等の定めが設けられています。
 また、喫煙者に対する規制だけでなく、上述した店舗内に喫煙室を設ける事業者等に対する規制についても、法律以上に厳格な規制を設ける条例も存在しています。
 例えば、東京都受動喫煙防止条例においては、飲食と喫煙を同時にできる喫煙可能室を設けるための要件として、従業員が存在しないことを挙げており、従業員を雇用している場合には、そのような場所を設けることができないこととなっています。
 したがって、法律だけではなく、条例の内容についても十分に理解する必要があるのです。

3.喫煙に関する事件における弁護活動

 喫煙に関する条例等においては、路上喫煙やポイ捨てに対して過料が定められていることが多いように思われます。過料は科料と異なり刑罰の一種ではありませんから、厳密には刑事事件とは言えません。  
 しかしながら、各自治体の条例の中には、喫煙に関する定めに違反した際の罰則として、罰金を科する旨を定めているものもあり、このような定めに違反した場合には刑事事件となります。  
 喫煙に関する条例に違反したことを理由に、逮捕・勾留されることはほとんど考えられませんが、過去にはポイ捨てを理由に逮捕された事件が報道されたこともあります。このようなケースは、単に喫煙に関する条例だけでなく、廃棄物処理法等にも違反しており、同法違反で逮捕されているようです。  
 いずれにしても、ポイ捨て程度で大事にはならないという風に考えることはできません。  一服が人生の大きな汚点となってしまうことがないように意識する必要がありますし、仮に喫煙を理由に警察官から接触があった場合、過料を支払えば済むと過信するのではなく、逮捕・勾留・起訴といった、刑事手続の流れに乗ることがないように、一度刑事事件の弁護士に御相談いただくことが望ましいものといえます。刑事事件の弁護士を選任する必要がないと分かれば、着手金を払って弁護活動をしてもらう必要もない訳ですので。

4.まとめ

 今回は、健康増進法の改正を中心に、喫煙者及び喫煙室を設ける店舗の経営者が置かれている環境について解説させていただきました。
 喫煙者の数は、従前ほど多くはありませんが、現在でも相当数存在しますし、喫煙は喫煙者にとって習慣化しており、直ちに禁煙するのが困難であるのは、禁煙治療等の存在からも明らかです。
 大麻や覚せい剤等の違法な薬物とは異なり、アルコール等と同様の嗜好品として扱われている以上、喫煙自体を責められる筋合いはないように思いますが、受動喫煙等の問題がある以上、これまで以上に周囲への配慮が求められているものと言えます

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