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コラム

改めて盗撮の罪について考える

簡単に言うと…
  • 盗撮行為に対する処罰についても法改正が議論されている
  • 室内における性行為等を密かに撮影する行為に対しては、現行法を前提にすると、各都道府県の迷惑行為防止条例違反の罪によって対応するしかない
  • 各道府県の条例の定め方によっては、犯罪が成立しない場合も考えられ、条例ではなく法律による規制が望まれる
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 法務省における性犯罪に関する刑事法検討会が、我が国の性犯罪規制の在り方についての取りまとめ案を公表してから、約半年が経過しました。
 性犯罪規定については、様々な改正点が残されていますが、その中でも、所謂盗撮行為については、現行法の下では、可罰的なものなのかどうか、どの法令が刑罰を科す根拠となるのかについて、十分に整理できていません。
 このような状況を改善するために、性犯罪に関する刑事法検討会の中では、アダルトビデオへの出演を強制するようなケースや、スポーツ選手のユニフォーム姿等を撮影するケースなど、様々な行為について議論がなされてきました。
 所謂盗撮行為というと、一番多く御相談いただくのは、駅構内や公共施設等に設置されている階段やエスカレーター等において、高所にいる女性のスカートの中を撮影するような行為です。このような行為については、各都道府県が定めている迷惑行為防止条例違反の罪によって刑罰が科されることとなります。
 一方で、その次に多く御相談いただくのは、相手の同意を得ることなく性行為の様子を撮影するような行為です。このような行為も、典型的ともいえるものなのですが、どのような刑罰を科すことができるのか、即座に判断することが難しい状況にあります。
 今回は、相手の同意を得ることなく性行為の様子を撮影するような行為について、どのような犯罪が成立するのかについて、現行法上の扱いを解説させていただこうと思います。

法律の定め

刑法

 まずは、刑法の定めを確認してみましょう。

刑法

第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 刑法の中には盗撮行為自体に刑罰を科す旨を定めた条文はありません。しかし、被害者の身体に対して直接接触するような行為でなくても、被害者の性的な姿態や行動を撮影する行為は「わいせつな行為」に該当します。
 ですから、「暴行又は脅迫」を用いて、撮影行為が行われている場合には、強制わいせつ罪を適用することが考えられます。
 しかし、性行為等を盗撮するケースのほとんどは、性行為を行うこと自体については同意が得られていることが多く、そのような場合「暴行又は脅迫」の要件を満たしませんから、強制わいせつ罪を適用することはできません。

軽犯罪法

 盗撮行為を直接規制する法律としては軽犯罪法があります。

軽犯罪法

第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。 23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

 軽犯罪法における窃視罪については、「場所をひそかにのぞき見」る行為が処罰対象とされています。したがって、性行為に及んでいない第三者が撮影を行う場合には、性行為に及んでいる場所如何によっては、軽犯罪法の適用が考えられますが、性行為の相手方が同意を得ずに密かに撮影するような行為には、基本的には適用することが困難です。
 また、軽犯罪法を適用できた場合であっても、その刑罰は「拘留又は科料」に限られており、十分な制裁として機能しないという問題もあります。

条例の定め

東京都

 冒頭でお話し差し上げた通り、階段やエスカレーター等において、高所にいる女性のスカートの中等を撮影する行為は、各都道府県の条例によって規制されています。東京都の条例を確認してみましょう。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)

第5条
1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。 2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。 イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所 ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

 駅構内等ではなく、室内における性行為を隠れて撮影する行為について、東京都の条例違反の罪は成立するのでしょうか。  この点については、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体」を「住居」などの場所において撮影することになりますから、東京都の条例違反の罪によって刑罰を科すことが可能です。 刑罰については、同条例の8条2項1号によって、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨が定められています。

青森県等

 東京都の条例を適用することは可能そうでしたが、他の各道府県ではどうでしょうか。
 迷惑行為防止条例は、駅構内等の公共の場所における行為を念頭において定められているものが多く、先程紹介した東京都の条例についても、公共の場所以外における盗撮行為を処罰範囲に含めるために、改正がなされています。
 したがって、改正がなされていない道府県等においては、迷惑行為防止条例を室内における性行為等の盗撮行為に適用できない場合があるのです。

青森県迷惑行為防止条例

第6条
 何人も、公共の場所又は公共の乗物内において、正当な理由がないのに、他人に不安を覚えさせ、又は他人の性的羞恥心を著しく害するような次に掲げる行為をしてはならない。 2号 衣服等で覆われている他人の身体若しくは下着(以下「他人の身体 等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして、他人の身体等をのぞき込み、若しくは写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を設置し、若しくは他人の身体等に向けること。 3号 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

 青森県の条例は、「公共の場所又は公共の乗物内」における行為のみを処罰対象としているため、室内における性行為を撮影する行為に対して適用することができません。
 このような形で条例を定めている県は青森県に限られず、他にもいくつかの県でみられるようです。
 また、このような形で条例を定めている都道府県においては、盗撮場所との関係だけでなく、「衣服等で覆われている他人の身体若しくは下着」を撮影する行為を処罰対象としている関係で、脱衣した上で性行為に及ぶようなシーンを撮影する行為を処罰範囲に含めることができません。

望まれる法改正

 以上のように、性行為を隠れて撮影する行為に対しては、それが児童ポルノ等の犯罪を構成しない限りは、各都道府県の条例違反の罪が成立することを理由に刑罰を科すことになりますが、条例の内容は各都道府県において差異があり、場所によって処罰されるかどうかに違いが出てきてしまいます。  迷惑行為防止条例は、盗撮の被写体となる被害者の方を保護する目的ではなく、その地域で生活する住民の平穏を確保するという目的で定められてきたものでしたから、そのような目的を達成する手段についても、地域ごとに定めることに合理性は認められます。  
 しかしながら、同意なしに性行為を撮影されないことを保護する必要性は、地域的に差異が生じるものではありません。ですから、室内における盗撮行為についても処罰が可能となるように、旧来の迷惑行為防止条例を改正すべきではあるのですが、本来的には各都道府県の条例ではなく、国の法律で定めるべきものだといえます。

盗撮の罪に関する弁護活動

 以上のように、盗撮の罪がどのように扱われるのかについては、各自治体によって多少の差があります。また、盗撮の態様によっては、条例ではなく他の法律に違反する場合もあるのです。更に、盗撮の態様自体も極めて多様化してきていることが窺えます。犯罪の成否が微妙なもの、階段等の場所で携帯電話を用いておこなう典型的なもの、トイレや更衣室にカメラを設置するものなどがあり、それぞれによって弁護方針を異にすることがあり得ます。
 例えば、店舗のトイレ等にカメラを設置するような態様による場合、建造物侵入の罪も成立する可能性が高く、盗撮の対象となった方だけでなく、店舗の管理者との示談交渉も必要となることがあります。また、盗撮の罪との関係で問題となることが多いのが余罪の存在です。盗撮の罪は文字通り、隠れて撮影する罪ですから、撮影した映像や画像が証拠として残ることがほとんどですし、そのような映像や画像がなくなってしまい、復旧もできない場合には、捜査がそれ以上進捗しないケースさえ珍しくありません。
 逆に、現行犯として盗撮が見つかってしまった場合に、過去に盗撮に及んだ際の画像や映像が多く出てくることが多いのも、盗撮の罪の特徴です。多くの場合、余罪について積極的に供述することが被疑者・被告人の利益に繋がることはありません。その分だけ犯情が悪質なものと判断されることになりますし、逮捕、勾留の可能性も高まります。
 一方で、盗撮の罪との関係では、携帯電話等が押収されてしまった場合、余罪を供述しなくとも露見してしまう可能性が高く認められます。このような状況下において、捜査機関による取調べにどのように対応するのかについては、豊富な経験を有する刑事事件の弁護士のアドバイスが不可欠となるでしょう。

まとめ

 以上のとおり、性行為について密かに撮影する行為については、児童ポルノ等の他の法令に違反することを内容とする犯罪が成立しない限りは、基本的には各都道府県の条例違反の罪によって処罰することになりますが、道府県によっては条例違反の罪が成立しない場合も考えられます。
 したがって、犯罪の成否について一律に判断するのが難しい類型の事案といえますから、このような容疑がかけられている場合等については、弁護士によく相談していただく必要がありそうです。

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