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コラム

最近の最高裁判所の判決や決定の内容について

簡単に言うと…
  • 裁判所HPでは、2024年6月から1年間で出されたものとして、15件の決定が掲載されている。
  • 最高裁は、上告審以外にも、特別抗告等についての判断を行っている。
  • 最高裁で判断を仰ぎ得るかどうかについては、専門家の相談が不可欠。
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弁護士
岡本 裕明
前回、最高裁における手続について簡単に解説させていただきました。今回は、最近(令和7年5月時点)の最高裁の判決や決定を確認し、最高裁がどのような事案にどのように判断しているのか確認してみたいと思います。

 前回のコラム(「最高裁における手続について。上告審は無駄なのか」 )において、最高裁判所に上告した際の手続について解説させていただきました。
最高裁判所に不服を申し立てなければいけない状況に追い込まれている場合、最高裁判所に不服を申し立てることによって、これまでの裁判所の判断が覆る可能性は相当に小さいと言わざるを得ません。
 しかしながら、裁判所によって、こちら側の主張を適切に伝える最後の機会になりますから、最高裁判所に不服を申し立てることを決めた以上は、十分に審議していただけるような書面を提出できるように努める必要があるでしょう。
 具体的な手続の内容や、書面に記載するべき内容については前回のコラムを確認していただければと思います。
 さて。最高裁判所が何らかの判断を下すこと自体が多くなく、ほとんどの場合は最高裁で判断すべき事由に該当しないとして、簡単に棄却されてしまうことが多いのですが、それでも最高裁判所が何らかの判断を下しているケースは当然ながら存在します。
 そこで、どのようなケースにおいて、最高裁判所がどのような判断を下しているのかについて、最近(2025年6月段階)の傾向を、今回のコラムでは確認してみたいと思います。
 どのような主張をするべきなのかについては、事案毎に異なりますから、最近の最高裁判所の判決や決定を確認したからといって、その内容を直接上告趣意書等に反映させられるといったことはないように思います。
 もっとも、最高裁判所の判決を確認してみると、些細な内容であっても判断を下しているケースや、問題視されることが多そうなのに、これまで判断が下されていなかったケースが存在することについて気付くことがあります。
 早速、最近の最高裁判所の判断について確認していきましょう。 最近の最高裁判所の判決や決定の内容について

1.最高裁判所の判決等を確認する方法

弁護士
岡本 裕明
最高裁判所に対して上告することについて、法律はどのように定めているのか、まずは条文を確認してみましょう。

 私達弁護士は、裁判例を調査するにあたって、様々な裁判例検索サービスを利用して、日々業務を行っております。もっとも、裁判例検索サービスを有料で契約しなくとも、一定の裁判例については、裁判所のHPにおける裁判例検索から確認することが可能です。
 今回は、令和6年6月1日から令和7年5月20日までの、刑事事件に関連する最高裁判例を確認してみたいと思います。令和7年5月20日の段階では、15件が表示されました。
 最新のものが令和7年4月8日付けの決定となっておりますが、決定された日にHPに表示される訳ではありませんから、4月8日から5月20日までの間に掲載すべき最高裁判例が一切存在しないという訳ではありません。
 また、掲載されている判例の事件番号(令和6年(あ)×××号 のようなものです)の内、()内の平仮名を御確認ください。この平仮名は符号といい、事件の種別を意味する記号になります(民事事件についてはカタカナで表記されます)。
 15件の中には、(あ)(し)(す)の3種類がありました。この内、(あ)というのが、有罪判決に対して無罪を主張する場合や、実刑判決に対して執行猶予を求めるケースのように、控訴審の判決に不服がある場合における上告申立に対する判断を意味する符号です。
 実は、最高裁判所に対して不服を申し立てることができる内容は、上告以外の方法もあるのです。最たるものが、勾留や保釈の判断に対する特別抗告です。保釈請求を却下する判断は、事件についての有罪無罪や、刑罰の内容を定める判決ではありませんので、不服を申し立てる方法は控訴や上告ではありません。抗告や特別抗告という方法によるのですが、(し)とはそのような特別抗告の事件であることを示す符号になります。
 (す)は、刑事雑事件といって、それ以外の最高裁判所に対する、刑事事件の不服申立になるのですが、やや珍しい内容になりますので、今回の解説の対象からは外しましょう。
 ちなみに、上述した期間において(す)として掲載されていたのは、高等裁判所で判決が宣告された後に逃亡を図った被告人の事件について、検察官が、保釈保証金の没取を求めた事案でした。

2.(し)の案件について

弁護士
岡本 裕明
上告ではなく特別抗告の事案にはどのようなものがあるのでしょうか。

(1)案件数

 上述したように、(し)の符号が付されている事件番号は、上告ではなく特別抗告に対する判断であることを示しています。
 1つの刑事事件について言い渡される判決は、通常1つだけです。複数の犯罪が問題となっている場合であっても、複数の犯罪行為をまとめて、1つの刑罰が言い渡されることになりますので、控訴や上告をする機会は1度きりです。
 一方で、特別抗告については何度も行う機会があります。保釈の例で説明すると、1度目の保釈請求が却下され、特別抗告まで行った場合であっても、2度目の保釈請求も却下された場合には、その2度目の保釈請求を却下した判断に対して、再度特別抗告まで申し立てることが可能なのです。
 そうすると、上告事件よりも特別抗告事件の方が多いように感じますが、司法統計によると、特別抗告事件の数は、上告事件の半分強程度のようです。
 今回も、15件の内、特別抗告事件は5件しかありませんでした。

(2)内容

 この期間に判断された事件の内、1件については、再審請求に関するものでした(令和7年2月25日 令和5年(し)第412号)。再審請求については、上告審でも正しい判断がされなかった場合における、冤罪の究極的な救済手続になります。詳細な説明が必要になるので、今回は解説を省略させていただきます。
 残りの4件の内、3件については、いずれも「特別抗告をすることはできない」という理由で棄却されています。つまり、不服の内容を検討するまでもなく、そもそも不服を申し立てることができない手続であるとして棄却されているのです。
 このように聞くと、弁護人の知識不足で、誤った申立をしてしまった事案かのように聞こえるかもしれませんが、決してそういう訳ではありません。他に不服申立の方法がないことから、誤った手続の是正を求めて、最高裁判所の判断を仰ぐということは十分に考えられるのです。今回問題となっている3件も、逮捕状発付に対する不服(令和6年7月17日 令和6年(し)第462号)、少年事件の記録閲覧に対する不服(令和7年3月12日 令和7年(し)第90号)公判期日前に実施される証人尋問に対する不服(令和7年3月31日 令和7年(し)第152号)を内容とするもので、本来的には適切な不服申立手続が整備されて然るべきである内容に感じます。
 残りの1件は、証拠開示に関する不服を内容とするものなのですが、他の3件とは異なり、棄却するのではなく、高等裁判所に差し戻す決定をしています(令和6年11月15日 令和6年(し)第761号)。
 この事案は、不服申し立ての対象となる決定についての書面が、弁護人と被告人それぞれに送達され、弁護人が即時抗告を申し立てたのですが、高等裁判所は、弁護人が書面を受領したタイミングとの関係では、既に抗告ができる期間を徒過してしまっていることを理由に、抗告を棄却しました。これに対して、最高裁判所は、被告人が書面を受領したタイミングとの関係で、抗告できる期間を徒過していないのであれば、その抗告は有効な抗告であると判断したのです。

(3)小括

 以上のように、ここ1年間の(し)に関する最高裁判所の判断は、形式的な内容に関するばかりでした。ですから、一般の方からすれば、そのような形式的な内容は、最高裁判所に判断を仰ぐまでもなく、法律にしっかり定められているのではないかとお感じになったかもしれません。
 もっとも、今回問題となっている各決定の背景にある法律は、特段新しく制定された内容という訳ではありません。それでも、特別抗告ができるかどうかという点の判断や、抗告可能な期間制限についての判断などについて、改めて最高裁判所が判断していることが窺われる訳です。
 不服を申し立ててみても無駄だろうと思うことなく、正しくないと感じる手続があるようであれば、最高裁判所の判断を仰ぐことを躊躇する必要がないことについては御理解いただけるのではないかと思います。

3.(あ)の案件について

弁護士
岡本 裕明
では、上告事件については、最高裁判所はどのような判断を下しているのでしょうか。最近の内容を確認してみましょう。

(1)上告理由の有無

 15件の内、9件が(あ)の符号が付されている上告事件についての判断になります。残念ながら、検察官による上告によって、高等裁判所による無罪判決が破棄されてしまった事件(令和7年2月7日 令和5年(あ)第1285号)を除くと、検察官らによる上告に関する事件(令和6年10月7日 令和4年(あ)第1059号、令和7年3月5日 令和5年(あ)第246号)も含まれているものの、全ての事件で上告が棄却されています。改めて、上告を申し立てることによって、高等裁判所の判決を覆すことが困難であることを痛感します。
 弁護人による上告が棄却されている6件の内、憲法違反等、適切な上告理由が存在することを前提に判断されているのは1件しかなく、残る5件については、刑事訴訟法第405条が定める上告理由には該当しないとした上で、原判決を破棄する必要がない旨を説明しています。
 前回のコラムで、憲法違反等の上告理由を見出すことができない場合であっても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するといえる事情がある場合には、最高裁判所が判断を示すことがある旨をお伝えさせていただきました。  
 今回のコラムの対象とした最新の最高裁判例の中には、弁護人の上告によって原判決を破棄したものはありませんでしたが、法令違反や事実誤認に関して著しく不当な内容がある場合、その内容を説得的に論じることで、最高裁判所の判断を仰ぐことが可能となることを裏付ける結果にはなっていると思います。

(2)上告理由が存在しないと判断されたもの

 原判決を破棄しなければ著しく正義に反する誤りとして、法令違反や事実誤認の他に、量刑不当を主張することも考えられます。しかしながら、著しく正義に反するような量刑を高等裁判所が宣告するということは考え難く、最高裁判所が量刑についての判断を示すことは多くありません。唯一の例外が死刑判決に対するものです。
 今回の調査対象の中で量刑に関して触れている唯一もの(令和7年2月21日 令和5年(あ)第541号)も死刑判決についてのものでした。
 また、最高裁判所が事実誤認を理由に、高等裁判所の判決を破棄するケースは存在するものの、そのような事例は多くありません。法律が正しく適用されているかどうかが問題となるケースよりも、実際に何が起きたのかについて争われるケースの方が圧倒的に多いにもかかわらず、事実誤認について詳細に判断しているものは、1件しかありませんでした(令和7年1月27日 令和5年(あ)第422号)。
 残る3件は、法令違反として、法律の適用の誤りを中心に主張された事件になります。1つは、監護者性交等の事案(令和7年1月27日 令和6年(あ)第753号)です。監護者性交という罪名が新しく創設されたものであることとの関係で、法令違反が問題となった事案でした。
 また、残りの2つは、組織的犯罪処罰法の事案で(令和6年7月16日 令和4年(あ)第1460号、令和6年10月7日 令和4年(あ)第1059)、法律自体は極めて新しいものではないものの、仮想通貨という社会的には比較的新しい財産が問題となったものです。

(3)上告理由の存在が認められたもの

 直近1年間の最高裁判例の内、裁判所HPに掲載されている中で、唯一、上告理由があることを前提に、憲法違反の有無が判断された事例も、結局は、弁護人の上告が棄却されています(令和7年4月8日 令和5年(あ)第1434号)。
 詳細が気になる方は、裁判所のHPを御確認いただければと思いますが、不正確である可能性を御容赦いただくことを前提にまとめると、航空法は、航空機内の秩序を維持するための機長からの命令違反に対して刑罰を定めています。本来的には、犯罪の内容は法律で定める必要があるにもかかわらず、機長によって刑罰を科すべき行為が決められてしまうという点が、憲法に違反しているという点が問題となった事案でした。
 つまり、被告人が何をしたかという点以前に、このような法律自体が憲法に違反しているのではないかという主張に対して、最高裁判所は判断を示したことになるのです。

4.上告審における弁護活動

弁護士
岡本 裕明
上告審において、どのような弁護活動が求められるのでしょうか。

 前回のコラムの紹介ばかりで恐縮ですが、直近1年間の最高裁判例を確認した上でも、上告審における弁護活動については、前回のコラムでお話しさせていただいた内容に大きく付け加えることはありません。
 今回のコラムでは、多くの裁判で問題となる事実誤認や量刑不当について、最高裁判所が頻繁に判断を下すことはなさそうだということが明らかになりましたが、だからといってその主張を諦めるべきではありません。
 他方で、(し)の符号が付されている最高裁判例からも明らかとなったとおり、既に判断が下されていそうなトピックであっても、法律や過去の最高裁判例で明らかになっていなかった内容というのは数多く存在します。
 また、憲法違反等の上告理由を見出すことができなかった場合であっても、実際に最高裁判所が審理し直すことがあり得ることも確認できました。
 それでも、多くの事案との関係で、最高裁判所は、こちらの主張を吟味したのかどうかさえハッキリしないような態度で、上告や特別抗告を棄却することがほとんどではあります。
 そのような態度で棄却させることがないようにするためには、適切な上告趣意書や特別抗告申立書を準備するという点に尽きます。
 そのような書面を作成するに際しては、依頼者となっている被告人の話を真摯に聞くことが大切であることは言うまでもありませんが、(し)の最高裁判例の中で触れられているような、些細な手続とも感じてしまいかねない内容についても、問題点がないかどうか、これまでの審理経過を十分に吟味する必要があるのです。
 また、最後に紹介した事件のように、法律自体の憲法違反を主張することさえ、必要な事件は存在します。

5 まとめ

弁護士
岡本 裕明
直近の最高裁判所の判断について触れつつ、改めて上告審について解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 最高裁判所は、様々な不服申立の正当性について、最終的な判断を仰ぐ場所となります。上告だけでなく、特別抗告という手続も扱っており、その他の事件類型も存在しますから、一律に解説するのが困難で、どうしても抽象的な説明になりがちです。
 そこで、少しでも具体的な内容と併せて説明させていただきたく、直近1年の最高裁判所の決定等を紹介させていただきました。
 それでも、難解な内容が多かったように思います。
 最高裁判所に何かを申し立てても無駄だと感じることが不合理だとは思いません。実際にそのような側面はあるように思います。
 しかし、どのような不服を申し立てることができるのかについては、専門家でないと判断が困難なことが多く存在します。
 諦めてしまう前に、一度、専門家に御相談いただければと思います。
 私達は、上告審についても多くの事件を手掛けておりますので、お悩みがあるようでしたら、御気軽にご相談ください。

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