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否認事件について

1.少年事件の手続と否認事件

 少年事件においても、当然冤罪はあり得ます。ですから、身に覚えのない事実によって逮捕され、家庭裁判所に送致された場合には、成年における刑事裁判の時と同様に、しっかりと無罪を主張する必要があります(少年審判においては無罪判決の宣告は予定されておらず、「非行事実なし」を理由とする不処分を目指すことになります)。

 しかしながら、後述するとおり、少年事件において、少年や付添人が非行事実を争うにあたっては、成年の刑事裁判手続にはない問題点があります。

 率直にいって、少年法が定める諸手続きは、否認事件を適切に審理する手続となっていないとも感じています。そこで、そのような問題点について、付添人は十分に注意しながら、手続を進める必要があるのです。

2.全ての記録が提出されてしまう

 少年事件における一番の問題点は、その内容の真実性が担保されていない内容についても、捜査機関が作成した資料の全てが、裁判官の目に留まってしまうという点です。

少年審判規則
第8条

1項 検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長が事件を家庭裁判所に送致するには、次に掲げる事項を記載した送致書によらなければならない。
 1号 少年及び保護者の氏名、年齢、職業及び住居(保護者が法人である場合においては、その 名称又は商号及び主たる事務所又は本店の所在地)並びに少年の本籍
 2号 審判に付すべき事由
 3号 その他参考となる事項
2項 前項の場合において書類、証拠物その他参考となる資料があるときは、あわせて送付しなければならない。

 少年審判規則は、証拠となるものや参考となる資料について、全て裁判所に送付するように求めています。そこで、仮にそのような証拠の中に、少年や弁護人の認識とは大きく異なるような事実を前提とするものや、捜査機関の違法な捜査や取り調べによって得られた証拠が含まれていた場合も、その内容は全て裁判官に提供されてしまうのです。

 この点が、まずは検察官請求証拠を証拠として認めるかどうかについて、弁護人に意見を述べさせる成人の刑事裁判とは大きく異なるところです。

 したがって、少年事件における弁護人としては、捜査段階において、少年に不利益な供述調書等の捜査資料が作成されることがないように、成年事件以上に、少年に対しては具体的なアドバイスを行う必要があります。黙秘が重要になる局面も、成人の事件以上に多いといえるでしょう。

3.鑑別所送致について

 鑑別所は、少年を審判までの間、無目的に収容する施設ではなく、あくまでも少年の資質鑑別を行う施設になります。

関連記事:「観護措置決定(鑑別所送致)について」

鑑別所は、少年審判までの間に一時的に少年を収容し、資質鑑別を行う施設です。観護措置決定は家庭裁判所が必要と認めた場合に行われ、収容期間は通常2週間ですが、最大8週間まで延長可能です。

 もし、少年が何らの非行に及んでいない場合には、ぐ犯事由が認められるようなケースを除けば、資質鑑別についても何ら必要とならないはずです。資質鑑別を必要とするような非行事実自体が存在しないからです。

関連記事:「ぐ犯事件について」

「ぐ犯事件」とは、少年が将来犯罪を犯す可能性があると判断された場合に、家庭裁判所が保護処分を下すことができる事件です。実際の犯罪行為が証明されていなくても、特定の行動や環境が問題視されます。ぐ犯事件は数が少ないものの、保護処分が下されることが多く、弁護活動が重要です。

 一方で、多くの事案においては、否認事件においても資質鑑別が行われることになります。家庭裁判所からすると、審判の結果として非行事実が認められた場合に、資質鑑別を一切行っていなければ、適切な保護処分を選択することができませんから、資質鑑別を先行して行うことにも理由はあるのだと思いますが、否認事件において弁護士のいない場所で事件に関する内容について聴取されるのは、付添人弁護士としてはリスクでしかありません。

 したがって、鑑別所への送致自体について、必要性がないことをしっかりと家庭裁判所に主張することに加えて、鑑別所に送致された場合について、調査官や鑑別所の技官による面会に対するアドバイスもしっかりと行う必要性があるのです。

4.審判について

(1)書証の提出

 少年が非行事実について争っている場合、少年審判は、まず非行事実が認められるかどうかについての審理を先行して行う事になります。

 そして、非行事実を争うケースの場合、既に捜査機関から少年が犯罪行為に及んだことに関する資料が多数提出されている状況であることから、付添人としてもその内容を弾劾する主張に加えて、少年が犯罪行為に及んでいないことを示す証拠を提出する必要があります。この点について、書証について言えば、捜査機関側が裁判所に自由に提出できていることと同様に、比較的自由に提出することが可能です。

 成年の刑事事件のように伝聞証拠かどうかを強く意識する必要がありませんので、書証の提出については積極的に行うべきでしょう。

(2)人証の取調べ

 しかしながら、人証(証人尋問)については、家庭裁判所に証人尋問を行うことを認めさせなければ行うことができません。

少年法
第14条

1項 家庭裁判所は、証人を尋問し、又は鑑定、通訳若しくは翻訳を命ずることができる。
2項 刑事訴訟法中、裁判所の行う証人尋問、鑑定、通訳及び翻訳に関する規定は、保護事件の性質に反しない限り、前項の場合に、これを準用する。

少年審判規則
第29条の3

少年、保護者及び付添人は、家庭裁判所に対し、証人尋問、鑑定、検証その 他の証拠調べの申出をすることができる。

 このように、少年審判においても、当然ですが証人尋問を行うことは可能です。そして、証人尋問についての申し出は、審判日ではなく、家庭裁判所に係属した後であればいつでも可能です。

 審判期日までの間に、家庭裁判所は審判の進行について決めていますから、当日申し出をするのでは、裁判所に申し出を受けてもらえない可能性があります。当該証人尋問の必要性等について、事前に裁判官と協議しておく必要があるものと言えます。

 特に、成年の刑事裁判においては、証人尋問等の証拠調べを行った上で、最後に被告人本人の話を聞くことが一般的ですが、少年事件においては、証人尋問の必要性を判断する等の理由で、付添人から証人尋問の申し出を行っていたとしても、少年本人の話を先に聞きたいという要望が裁判所から出される可能性があります。

 少年本人の話を先に確認してもらった方が、証人尋問の必要性が明らかになりやすい等の事情があるなら別ですが、少年本人の話を先行して確認する場合、少年の供述のみによって非行事実の有無を判断されてしまう危険性も存在します。少年に有利な証人が存在する場合、基本的に付添人は、証人尋問を先行して行うように裁判官に求めるべきものと言えます。

(3)検察官の関与

 少年及び付添人が非行事実について否認していたとしても、そのことのみによって検察官が少年審判に参加することになる訳ではありません。むしろ、否認事件であっても、検察官は少年事件に関与しないことの方が多いように思います。

 少年法は、検察官が審判等の手続に関与する場合について、次のように定めています。

少年法
第22条の2

1項 家庭裁判所は、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る事件であって、死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、審判に検察官を出席させることができる。
2項 家庭裁判所は、前項の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聴かなければならない。
3項 検察官は、第一項の決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問し、並びに意見を述べることができる。

少年審判規則
第30条の6

1項 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、審判(事件を終局させる決定の告知を行う審判を含む。)の席に出席し、並びに審判期日外における証人尋問、鑑定、通訳、翻訳、検証、押収及び捜索の手続に立ち会うことができる。 2項 家庭裁判所は、検察官関与決定をしたときは、当該決定をした事件の非行事実を認定するための手続を行う審判期日及び当該事件を終局させる決定の告知を行う審判期日を検察官に通知しなければならない。

第30条の7

1項 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、裁判長に告げて、証人、鑑定人、通訳人及び翻訳人を尋問することができる。
2項 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、審判の席において、裁判長に告げて、少年に発問することができる。

第30条の8

1項 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、裁判長に告げて、証人、鑑定人、通訳人及び翻訳人を尋問することができる。
2項 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、審判の席において、裁判長に告げて、少年に発問することができる。

第30条の10

 検察官は、検察官関与決定があつた事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、審判の席において、裁判長の許可を得て、意見を述べることができる。

 以上のとおり、検察官が少年審判に関与するのは、死刑等が予定されている重大な案件の中で、犯罪行為の有無について争いがあるような事案が想定されています。そして、検察官を関与させる旨を家庭裁判所が決定した場合、この決定に対して不服申立を行う事はできませんので、付添人としては検察官の関与が不要であることについて、裁判官に十分に意見を申し述べる必要があります。

 検察官は、家庭裁判所から参加の決定を受けた場合、証拠を提出することも可能ですし、少年に対する処分についての意見を述べることも可能です。

 検察官が、少年に有利な意見を述べることに期待することはできませんから、付添人としては、検察官の活動に対して、その都度防御策を講じる必要があります。

 特に、少年審判において検察官が関与するのは極めて例外的であり、検察官が関与することを求めている事案については、検察官による積極的な活動が予定されていると考えることができます。付添人は、検察官の活動に対して適切な弁護活動を行う事ができるように、準備しておくことが強く求められるのです。

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