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コラム

満期まで必ず服役する訳じゃないの?仮釈放について

簡単に言うと…
  • 無期懲役刑の場合には30年、有期懲役刑の場合には刑期の1/3を経過することで「仮釈放」が許可される可能性が生じる。
  • 実際には、刑期の1/3の経過で「仮釈放」が許可されることはなく、8割以上の刑期が経過した後に「仮釈放」が認められるケースが多い。
  • 検察官や裁判官の意見が参考にされることもあり、「仮釈放」についても意識した弁護活動が必要。
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 刑事事件の御依頼を受けた場合、まずは不起訴処分や略式起訴などのように、正式な起訴を避けられるように弁護活動を行うことになります。そして、起訴されてしまった場合であっても、事実を否認している場合には無罪を主張することになりますし、罪を認めている場合であっても、罰金刑や執行猶予付きの判決を目指すことになります。
 しかし、執行猶予期間中に再犯に及んでしまった場合や、罪名によっては、執行猶予付きの判決を得られることができず、刑務所への服役を命じられてしまうこともあります。
 その場合であっても、弁護人としては服役する期間ができる限り短くなるように、全力で弁護を行います。
 では、判決で服役期間が宣告された場合、必ずその期間は刑務所に服役することになるのでしょうか。
 実際には、満期前に釈放される方は珍しくありません。その手続のことを「仮釈放」といいます。「仮釈放」という単語自体は聞いたことがある方が多いように思いますし、「仮釈放」という言葉が、満期前に出所させることを意味するという点については、何となく理解されている方が多いのではないでしょうか。
 しかし、その手続や要件がどうなっているのかについては、実務家であっても詳細に把握している方は多くありません。
 そこで、今回は「仮釈放」について説明させていただこうと思います。

1.法律上の定め

 
 まずは、「仮釈放」がどのように定められているのか、法律を確認してみたいと思います。

刑法

(仮釈放)
第28条
 懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
(仮釈放の取消し等)
第29条
1項 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。
 1号 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
 4号 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
3項 仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。

 「仮釈放」は、懲役が執行されることによって、刑務所の中に服役している方を釈放する手続ですから、刑の執行方法として刑法に定めが置かれています。
 刑法は、刑期の3分の1の経過で「仮釈放」することができる旨を定めていますので、懲役9年の判決を言い渡された方は3年で、無期懲役刑という極めて重大な犯罪を行った場合にしか宣告されない刑罰を科された方も、10年で刑務所から外に出られる可能性があることになるのです。

2.「仮釈放」の時期

 
 このような刑法の条文だけを確認すると、重い刑罰を科された場合であっても、かなり早い段階で「仮釈放」が許されることとなり、裁判の結果が軽視され過ぎているのではないかと感じる方も多いように思います。
 では、実際に「仮釈放」がどの程度認められているのかについて、統計を確認してみたいと思います。
 令和4年版犯罪白書によると、「仮釈放」が認められた方が9740人いらっしゃるのに対して、満期まで服役した方は6676人いらっしゃったようです。したがって、そもそも「仮釈放」が認められない方もかなりの割合でいらっしゃるので、刑期の3分の1しか服役しなくていいという考えは誤りです。
 さらに、実際に「仮釈放」が認められた方との関係で、どの段階で「仮釈放」が認められたのかについて確認すると、刑期の7割未満で「仮釈放」を認められた方は1.4%しか存在しません。そして、34.7%の方が9割以上の刑期を服役した後でしか「仮釈放」を認めてもらえていないのです。
 つまり、刑法が定めている3分の1という数字は、全く実態を表していないといえるでしょう。

3.「仮釈放」の条件

 
 では、どのような場合に「仮釈放」が認められることになるのでしょうか。上述したとおり、刑法では「改悛の状があるとき」としか定められていません。
 抽象的にはどのような場合に「仮釈放」を許すべきなのか理解できるかもしれませんが、これだけでは「仮釈放」するかどうかの判断の基準にはなり得ません。この点については、「改悛の情」の中身について別の法律が定めていますので、その内容を確認する必要があります。

犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則

(仮釈放許可の基準)
第28条
 法第39条第1項に規定する仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。

 この規則によると、①「悔悟の情及び改善更生の意欲」がある、②「再び犯罪をするおそれ」がない、③「保護観察に付することが改善更生のために相当」であることに加え、④「社会の感情がこれを是認すると認められない」と言えない場合に認められることになります。
 刑法と比較するとその内容が詳細になっているようにも思えますが、基本的に①の要件を満たす場合には、②と③の要件も満たされることが推認されるものと言えます。
 したがって、結局は「悔悟の情及び改善更生の意欲」という要件が非常に重要になりますし、この点については「改悛の情」という要件とあまり抽象度は変わらないように思えてしまいます。
 「仮釈放」の時期についても、刑法の定める法定期間と実際の仮釈放のタイミングに大きな乖離が認められますし、「仮釈放」の要件についても極めて抽象的な内容しか定められていませんから、立法的な改善が必要であると私自身は考えていますが、現状はこのような定めを前提に運用されているのです。

4.「仮釈放」の手続

 
 最後に、「仮釈放」の手続を確認してみたいと思います。「仮釈放」は保釈請求と異なり、身体を拘束されている本人(受刑者)から、「仮釈放」の可否の判断をするように請求することが予定されていません。つまり、受刑者は自身を「仮釈放」して欲しいと請求することができないのです。
 では、どのような手続が予定されているのでしょうか。

更生保護法

(仮釈放及び仮出場を許す処分)
第39条
 刑法第28条の規定による仮釈放を許す処分及び同法第30条の規定による仮出場を許す処分は、地方委員会の決定をもってするものとする。
(法定期間経過の通告)
第33条
 刑事施設の長…は…刑法第28条…に規定する期間が経過したときは、その旨を地方委員会に通告しなければならない。
(仮釈放及び仮出場の申出)
第34条1項
 刑事施設の長…は…前条の期間が経過し、かつ、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をしなければならない。
(申出によらない審理の開始等)
第35条
1項 地方委員会は、前条の申出がない場合であっても、必要があると認めるときは、仮釈放又は仮出場を許すか否かに関する審理を開始することができる。
2項 地方委員会は、前項の規定により審理を開始するに当たっては、あらかじめ、審理の対象となるべき者が収容されている刑事施設…の長…の意見を聴かなければならない。

 以上のとおり、「仮釈放」を認めるかどうかは、地方更生保護委員会です。そして、同委員会は第35条で仮釈放を許可するべきかどうかの審理を自ら開始することができます。一方で、受刑者と最も接しているのは刑事施設の人間です。そこで、刑事施設の長に、地方更生保護委員会に仮釈放を許すように申出を行うことができる旨が定められているのです。
 一方で、「仮釈放」の処分を行うように地方更生保護委員会に、服役者本人が請求する手続は定められていないのです。

5.「仮釈放」における弁護人の役割

 
 弁護人は、あくまでも捜査段階における被疑者や、公判(裁判)段階における被告人をサポートする立場にありますので、裁判が終わって服役が始まってしまうと、弁護人としての立場も消滅してしまいます。
 また、上述したように服役者本人には、「仮釈放」のための手続を進める請求権がありませんから、その請求を代理人として行うこともできません。
 だからといって、弁護人が「仮釈放」に向けた活動を何もできないかというとそういう訳ではありません。
 例えば、弁護人は、執行猶予付きの判決を得ることや減刑を目的に、被告人の更生環境を主張・立証する必要があります。そして、「仮釈放」をするかどうかの判断を地方更生保護委員会が行う際には、検察官や裁判官に対して、「仮釈放」の可否等について意見を求めることがあるのです。
 検察官や裁判官は、元被告人の服役中の態度を直接知っている訳ではありませんから、基本的には裁判の際に得た情報を軸に意見をすることになります(検察官や裁判官に意見を求めることの適切さ自体に私は懐疑的ですが、ここでは省略します)。したがって、裁判の場で、弁護人が十分に構成環境について、主張・立証を尽くしていないと、「仮釈放」が困難になってしまいかねないのです。

6.まとめ

 
 今回は、「仮釈放」について解説させていただきました。一般の方や被害者の方からすると、裁判で一定の期間服役するように命じられているにもかかわらず、その期間が経過する前に釈放を許すことに抵抗を覚える方も多くいらっしゃるかもしれません。
 しかし、「仮釈放」が認められず、満期で出所する場合、十分なサポートを受けることができずに、再犯に及んでしまう可能性が高まってしまうおそれもありますから、積極的に活用されるべき制度だと考えています。
 「仮釈放」の手続の段階で新たに弁護士を探すというよりは、捜査段階や公判段階で被疑者・被告人をサポートしていた弁護士の方が適任であることも考えられますが、もしお悩みの方がいらっしゃいましたら、気軽に御相談いただければと思います。

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