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コラム

保釈請求における監督者って何ですか(法制審部会の要綱案をみて)

簡単に言うと…
  • 法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会において、被告人の公判期日への出頭及び刑の執行の確保を目的とする刑事法の整備案が昨年末にとりまとめられた。
  • 整備案の中には、保釈を許可する際に監督者を選任し、監督保証金を納めさせる案も提案されている。
  • 保釈判断の不当な厳格化に直結するものではないものの、身元引受人のなり手がいなくなることも懸念され、基本的には整備案に沿った法改正には反対である。
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 法務省の法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会において、被告人の公判期日への出頭及び刑の執行の確保を目的とする刑事法の整備案が昨年末にとりまとめられています。
 このコラムでは、この整備案の内、再保釈に関する改正案について解説させていただきましたが、その際にもお伝えした通り、この整備案には、外国籍の被告人に対するGPSの装着等、様々な内容が含まれています。
 今回は、その中でも、監督者や監督保証金の制度について解説させていただきたいと思います。

保釈における条件

法律上の定め

 監督者や監督保証金は現在の刑事訴訟法には定められていない、新しい制度になります。そこで、まずは現在の刑事訴訟法が保釈についてどのように定めているのかについて確認しましょう。

刑事訴訟法

第89条1項
 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
第90条
 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
第93条
1項 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
3項 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を附することができる。
第94条2項
裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。

 

 刑事訴訟法89条や90条は、保釈を許可するかどうかについて定めております。そして、保釈を許可する場合に、保釈保証金や保釈条件について定める旨を、93条や94条が定めているのです。
 ちなみに、93条3項は保釈条件を「附することができる」としか定めておりませんから、保釈条件のない保釈も認められそうなところではありますが、実務上、被告人の住居の制限や海外渡航の制限等については、全ての保釈との関係で保釈条件として附されています。

身元引受人

 以上のとおり、現在の刑事訴訟法には「監督者」について何も定めていません。
 一方で、保釈を請求するにあたっては、身元引受人(身柄引受人と呼称されることもあります)が求められるということを聞いたことがある方も多いように思いますが、身元引受人についても刑事訴訟法は何ら定めていません。
 身元引受人とは、保釈期間中の被告人と同居するなどして、被告人が証拠隠滅を企てたり、逃亡を図ったりすることがないように監督する人間のことをいいます。多くの場合は、被告人と同居している御家族の方を身元引受人として保釈を請求しているのではないでしょうか。
 刑事訴訟法上求められていないにもかかわらず、身元引受人を準備した上で保釈を請求しているのは、身元引受人に身元引受書を作成してもらうことによって、刑事訴訟法90条の「保釈された場合に被告人が逃亡…するおそれの程度」を低下させ、保釈を許可してもらおうという考えがあるからです。
 ですから、弁護人としては保釈を許可してもらうために、身元引受人を探すことになるのですが、仮にこの身元引受人が身元引受書で誓約した内容に違反して、被告人の監督を怠ったとしても、身元引受人に何らかの刑罰が科されるということはありません。身元引受人というのは、あくまでも刑事訴訟法において定められた存在ではなく、法的な義務は認められないのです。

 

監督者制度

整備案の内容

 では、今回の整備案の中で提案されている監督者とは、これまでの身元引受人とは異なるのでしょうか。まずは整備案の内容を確認してみましょう。

整備案

1.監督者の選任
 裁判所は、保釈を許(す)…場合において、 被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するため必要があると認めるときは、適当と認める者を、その者の同意を得て、監督者として選任することができる…。
2.監督者の義務等
(1)監督者は、被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するために必要な監督をするものとすること。
(2)裁判所は、監督者に対し、次のア又はイに掲げる事項の一方又は双方を命ずるものとすること。
  ア 被告人が召喚を受けたときその他この法律の規定により被告人が出 頭しなければならない場合において、裁判所の指定する日時及び場所に、被告人と共に出頭すること。
  イ 裁判所の定めるところにより、被告人の住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて…報告をすること。
3.監督保証金
(1)監督者を選任する場合には、監督保証金額を定めなければならない…。
(3)監督者の選任があったときは、保釈を許す決定は…保証金及び監督保証金の納付があった後でなければ、これを執行することができない…。
4 監督者の解任等
 裁判所は、次のアからウまでのいずれかに該当すると認めるときは、監督者を解任することができる…。
   ア 正当な理由がなく監督者が2()による命令に違反したとき。
5 監督保証金の没取
裁判所は…監督者を解任する場合には、決定で監督保証金の全部又は一部を没取することができるものとすること。

 新設制度であることから、条文案も詳細なものとなっており、かなり大部を省略して紹介しておりますので、興味をお持ちの方は、法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会のページで御確認いただければと思います。
 この整備案の中で、最も重要なのは、監督者には被告人を監督する法的義務が課されており、当該義務に違反した場合には、監督保証金が没取される可能性があるという点です。
 これまでの身元引受人に類する立場であるにもかかわらず、法的な義務が課されるという点で大きな違いが存在するのです。

現在の運用との関係

 では、仮にこのような整備案が実際に法定された場合、現在の保釈の運用にどのような影響があるでしょうか。
 保釈が認められ易くなるのではないかという期待もあり得ます。
 それは、身元引受人には法的な義務がないことから、被告人を監督することを誓約していたとしても、その誓約に違反した場合のペナルティが存在しません。ですから、ペナルティがなくとも被告人を監督してくれるような立場(被告人と同居の家族等)の身元引受人でなければ、保釈を許可する要因として扱ってもらえませんでした。監督者として法的な義務を課すことができれば、被告人の知人・友人であっても、監督保証金の没取というペナルティによって、被告人を監督することについての担保があることになりますから、家族の協力が得られないという被告人であっても、保釈を得やすくなるのではないかという考えです。
 一方で、法的な義務がないからこそ身元引受書に署名してくれていた人達が、監督者となることを躊躇することも懸念されます。ます。本文が入ります。本文が入ります。

監督者制度は不要ではないか

 今回の整備案の中で、再保釈に関する法改正について、私は過去のコラムで明確に反対であることを述べました。
 監督者制度については再保釈についての改正程には強く反対はしませんが、基本的には反対の立場です。
 身元引受人となる方がいなくなってしまう懸念が一番の理由です。監督者制度を導入した場合であっても、常に監督者の選任が必要となる訳ではありませんし、身元引受人という法的な義務のない方の監督によって保釈が許可される場合も残りそうではありますが、実際にどのように運用されるかは未知数です。
 また、法的な義務が課される監督者に選任されることを躊躇する方に、適切な監督を期待できないとは言えません。やはり、法的な義務を課されるという圧力による影響が極めて大きいのではないかと危惧しているのです。
 特に、監督者が被告人の監督を怠った場合、監督保証金を没取されることになりますが、現時点において、保釈保証金を工面しているのは、多くの場合、身元引受人になります。結局、保釈保証金を没取するというペナルティを準備するだけで、十分に被告人の監督を担保することはできるはずです。

監督者と刑事事件の弁護士

 監督者制度を不要だと考えているのは、現在の法的義務のない身柄引受人に被告人を監督させる方法によっても、実務的には混乱はなく、円滑に運用することができていると考えられるからです。
 しかしながら、仮に監督者の制度が導入され得る場合には、刑事事件の弁護士が監督者の役割やリスクを十分に説明した上で、監督者への就任をお願いすることになろうと思います。 一定のリスクを負うことになる訳ですし、そのリスクが現実のものとなるかどうかは、刑事事件の弁護士の手腕というよりも、保釈期間中の被告人の言動にかかってくるわけですから、被告人と監督者との間の信頼関係の問題になりそうです。
 しかし、刑事事件の弁護士が保釈制度の内容について双方に適切な説明をすることで、監督者に円滑に就任してもらえる可能性は高まるはずです。
 現時点においては、身柄引受人として就任して意味のあるのは、極めて被告人と近しい存在に限られ、実質的には親族に限られている状況です。監督者制度の導入によって、被告人の監督者となり得る存在が拡大するのであれば、この制度を前提に、保釈が許可される範囲が拡大されるように、刑事事件の弁護士は全力を尽くす必要があるのです。

まとめ

 再保釈の件について解説させていただいた時にもお話ししましたが、今回の整備案が直ちに改正法の内容となる訳ではありません。
 在るべき保釈手続の在り方について、今後の議論を注視していきたいと思いますし、積極的に意見を発信していきたいと思います。

 

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