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コラム

献花台から花やお供え物を持ち去る行為について

簡単に言うと…
  • お供え物を持ち去る行為が問題となっている。
  • お供え物を持ち去る行為については、供えられた場所によって窃盗罪が成立する場合もあるが、犯罪が成立しない場合もある。
  • 犯罪の成否については、お供え物を持ち去る時に視認できる情報から判断できるものではなく、他人の弔意を無碍にする行為は差し控えるべきである。
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 先日、ザ・ドリフターズの仲本工事さんがお亡くなりになったとの訃報に接しました。「8時だョ!全員集合」や「ドリフ大爆笑」といった番組について、私はリアルタイムでは拝見していなかったのですが、それでもザ・ドリフターズの皆様をテレビでお見掛けする機会は多くありました。いかりや長介さんや志村けんさんが亡くなった時も強く感じましたが、志村さんが亡くなられてからまだあまり時間が過ぎていない中での訃報でしたから、一視聴者として本当に寂しい想いで一杯です。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 私と同じような気持ちを抱いた方の多くが、仲本さんの事故現場に花や飲食物を供えに行かれたようで、現場の様子もニュースになっていました。
 そして同時に、現場に供えられた花や飲食物を持ち去る者が現れたというニュースにも接しました。故人に対する弔意を無碍にする行為であり、非常に残念に感じています。
 一方で、このような行為に対してどのような犯罪が成立し得るのかという問題についても解説する必要があると感じました。
 そこで、今回はお供え物を持ち去る行為に対して成立する犯罪について解説させていただこうと思います。

1.考えられる犯罪

 では、お供え物を勝手に持ち去る行為について、どのような犯罪が成立するのかについて考えてみましょう。お供えされている場所如何によっては、お供え物を持ち去るために、その場所に立ち入る行為自体が、建造物侵入(刑法第130条)にあたる可能性があります。
 しかし、建造物侵入の罪は、その場所に立ち入る行為に対して成立する犯罪であり、お供え物を持ち去るという行為を問題としている訳ではありませんから、今回はお供え物を持ち去るという行為にのみ着目してみたいと思います。
 このような行為に対して適当が考えられる刑法上の条文は、以下の2つなのではないかと思われます。
 罪がどのように定められているのか刑法の条文を確認してみたいと思います。

刑法

(窃盗)
第235条
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
(遺失物等横領)
第254条
 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 自分の物ではない物を、自分の物として持ち去る行為について適用し得るのは、窃盗罪と占有離脱物横領の罪になろうかと思います。
 それぞれの犯罪が実際に成立するのかについて考えてみましょう。

2.窃盗罪


(1)他人の財物か

 
 窃盗罪は「他人の財物を窃取した」場合に成立する犯罪です。
 つまり、お供え物を持ち去る行為に対して窃盗罪が成立するかどうかは、そのお供え物が「他人の物財」にあたるのかという点と、お供え物を持ち去る行為が「窃取」といえるのかいう点が問題となります。
 まず、お供え物は「他人の財物」にあたるのでしょうか。
 持ち去ろうとしている人間に供えられた物ではありませんから、自分の物ではないことは明らかです。問題は、誰かの物ということができるかという点にあります。
 誰の物でもない物のことを無主物といいます。そして無主物は「他人の財物」ではないと理解されています。例えば、所謂窃チャと略される自転車盗に関しては、路上に放置されている自転車であっても、所有者が明らかになれば、「他人の財物」といえますが(窃盗罪が成立するかは別の問題がありますが、ここでは省きます)、既に捨てられた物である可能性が否定できない場合には、「他人の財物」ではないとして、犯罪が成立しないと結論付けられることになるのです(神戸家裁姫路支決平成21年12月8日等)。
 お供え物についてはどうでしょうか。賽銭泥棒等については多くの裁判例があり、窃盗罪が適用されていますし、賽銭以外の清酒等のお供え物についても、神社の看守者が管理する物であることから「他人の財物」にあたるものとして、窃盗罪で有罪判決が宣告されています。
 あくまでも、寺院等が管理する場所に供えられた物については、寺院等が所有・占有するものとして窃盗罪が成立することになるのであって、実際にお供え物を供えた人が被害者となる訳ではありません。
 前の持ち主が所有権を主張する意思がなかった場合でも窃盗罪が成立する場合における有名な最高裁判例として、ゴルフ場内のロストボールに対しても窃盗罪の成立を認めたものがありますが(最決昭和62年4月10日)、そのような考え方に近いケースになるものといえそうです。

(2)窃取か

 次に、「他人の財物」であったとしても、「窃取」といえるかどうかが問題となります。「窃取」とは人の占有を奪った上で、自分や第三者の占有に移すことを言います。
 したがって、「他人の財物」であったとしても、その物が占有されていない状態で放置されていた場合、その物を持ち去ったとしても「窃盗罪」は成立しないことになるのです。先程少しお話しさせていただいた、窃チャを例にしてお話しさせていただきます。
 駐輪場等に置かれている自転車を乗り去ってしまった場合には窃盗罪が成立することになりますし、路上に無断駐輪をしている自転車であっても、直ちに占有が否定される訳ではなく、窃盗罪が成立する余地はあります(どの程度の期間放置したら占有が否定されることになるのかについては、極めて難しい問題ですので、ここでは省きます)。
 しかし、長期間路上に放置されているような自転車については、持ち主が明らかとなったとしても、持ち主によって占有されていない状況下で乗り去ったという評価になりますから、持ち主の占有を奪ったとはいえず、「窃取」したとはいえないことになるのです。

3.占有離脱物横領罪

 
 路上に長期間放置されていた自転車を勝手に乗り去った場合に窃盗罪が成立しないとしても、犯罪行為にならない訳ではありません。
 このような場合に占有離脱物横領の罪が成立することになります。刑法第254条は「占有を離れた他人の物を横領」した場合に犯罪が成立する旨を定めていますので、占有を奪うことなく物を持ち去った場合にも成立させることができるのです。
 しかし、占有離脱物横領の罪についても、その対象は「他人の物」になりますから、無主物を持ち去る行為に対して適用することはできないのです。
 寺院に供えられた物ではなく、献花台等に供えられた物を持ち去るような場合であっても、その献花台を設置・管理している自治体等に所有や占有が認められることになりますから、勝手に持ち去る行為に対しては窃盗罪が成立することになりそうです。
 では、自治体等が献花台等を設けていなかった場合はどうでしょうか。仲本さんのケースについても、特に献花台等は設置されておらず、路上に直接、物が供えられている状況でした。
 このような場合、管理者がいないことになりますので、管理者の占有は認められないこととなり、窃盗罪の成立を認めることは難しそうです。
 では、占有離脱物横領の罪はどうでしょうか。前述したとおり、占有されていないお供え物であっても適用することは可能ですが、誰かの物であるということができるでしょうか。
 ゴルフボールや寺院に供えられた物との関係で説明させていただいたとおり、お供え物を供えた人としては、その物を回収するつもりはないはずですので、供えられた段階で、その物を供えた人の物ではなくなっていると考えざるを得ません。そして、寺院等が管理している場所ではなく、公道に置かれている場合には、管理者が存在しませんから、占有がされていないというだけでなく、その物が自治体に帰属しているとも言い難く、犯罪は成立しない可能性が高いということができそうです。

4.まとめ

 
 以上のとおり、自治体等によって管理されている場所以外の場所に供えられた物については、その物を持ち去る行為に対して刑法を適用することは難しそうだという結論になりそうです。
 しかし、占有や所有という概念は目で見て判断できるものではありません。窃チャについても、犯罪が成立するのか何罪が成立するのかについて、目で見ただけでは判断できないケースも多い訳です。
 さらに、ゴミについては、条令等によって自治体が管理する旨が定められているケースもあり、窃盗罪が適用される場合もあります。同様に、献花台等が設置されていない場合であっても、場所によっては犯罪が成立し得るケースがお供え物との関係でも想定できるのです。
 何よりも、他人の弔意を無碍にする行為は差し控えるべきでしょう。同様の行為が続出しないように願っております。

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