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コラム

常習累犯窃盗って何?普通の窃盗とは違うのか。

簡単に言うと…
  • 1. 常習累犯窃盗という罪は、刑法ではなく古い特別法で定められている。
  • 2.何度も同じ罪で服役しているとしても、罪を犯し続けてしまう方の背景には様々なものがある。
  • 3. 常習累犯窃盗として、一律に重い罪を科すような法律は、見直すべき時がきているのではないか。
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 皆様は常習累犯窃盗という言葉を聞いたことがありますでしょうか。何となく聞いた事があるという方も多いのではないかと思います。

 窃盗という単語が用いられているとおり、窃盗罪の一種ではあるのですが、実は刑法で定められた罪ではなく、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」という昭和5年に施行された非常に古い法律で定められている犯罪です。

私は、個人的には、常習累犯窃盗という罪は廃止するか、その成立範囲をもう少し狭いものに変えるために、法律を改正するべきだと考えています。

今回のコラムでは、常習累犯窃盗の罪について解説させていただき、その上で、私がどのような点が問題だと感じているのかについて説明させていただこうと思っています。

 少し難しい話になってしまうかもしれませんが、簡単にお話しすると、クレプトマニアに罹患されている方のように、精神的な問題を抱えている方が、その精神的な問題を理由に窃盗を繰り返してしまうような事案においてまで、一律に罪を重くするような法律は不適切だと感じているのです。

 できる限り平易に説明させていただこうと思います。お付き合いください。

1.常習累犯窃盗とは

(1)条文

 まずは、どのような場合に常習累犯窃盗の罪が成立するのかについて、条文を確認してみたいと思います。

盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律

第2条
常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第235条、第236条、第238条若ハ第239条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ3年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ7年以上ノ有期懲役ニ処ス
1号 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
2号 2人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
3号 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル   
邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
4号 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯 
シタルトキ
第3条
常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前10年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付3回以上6月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例ニ依ル

 冒頭にお伝えしたとおり、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律は非常に古い法律です。平仮名が用いられていない名前だけ見ても、古い法律であることが分かるように思います(ちなみに、刑法は1995年に口語体に直されています)。

 この法律は、刑法上の窃盗罪と強盗罪について、常習的に行われたものの内、第2条はその態様に着目して、第3条は常習性や累犯の存在に着目して、特定の要件を満たすものに関して、刑法が定める法定刑より重い刑を定める内容となっています。

 窃盗罪についていうと、刑法上の法定刑は、10年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金刑とされているところ(なお懲役刑の下限は1月、罰金刑の下限は1万円になります。)、常習累犯窃盗の法定刑は、3年以上の懲役刑とされています。

 罰金刑の可能性は排除されていますし、懲役刑の下限も3年とされていますから、常習累犯窃盗の罪で起訴された場合には、相当に長期間、刑務所に服役することになってしまうのです。

(2)常習性要件と累犯要件

 今回問題にしたい常習累犯窃盗は、先程ご紹介させていただきました盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律の第3条で定められています。

 この条文は、「常習として」窃盗や強盗等の罪を犯したという要件と、10年以内に同種の罪で3回以上6月以上の懲役刑(その執行が猶予された場合も含みます)を受けているという累犯性の要件を満たした場合に成立します。

 この常習性と累犯性の要件は、似ている要件ではありますが、微妙にその内容を異にします。

 多数の窃盗罪に及んでおり、捜査によって多くの余罪が発覚した場合であっても、以前に有罪判決を宣告された経験がなければ、累犯性の要件は満たしませんし、そもそも懲役刑前科に限定されていますから、罰金刑を複数回宣告されている場合であっても累犯性の要件は満たしません。

 一方で、累犯性を満たしている場合、それだけの刑罰が科される程度には犯罪を繰り返してきたものといえますから、常習性も問題なく認められるように考えられます。実際に、前科等の存在を理由に常習性が認められているケースがほとんどのように思います。

 累犯性を満たしつつも常習性を満たさないようなケースは例外的な事案と言えそうです。これまで犯してきた窃盗罪とは、その態様を大きく異にするようなケースにおいては、常習的に行われた窃盗罪の一部とは評価されにくいとは言えるように思います。

2.常習累犯窃盗が重く処罰される訳

 常習累犯窃盗の罪が通常の窃盗罪より重く処罰されることについて、多くの皆様は疑問を抱かないかもしれません。過去に何度も窃盗罪をしている訳ですし、窃盗罪を犯したことによって刑務所に服役までしているにもかかわらず、性懲りもなく再び犯罪行為に手を染めている訳ですから、これまでよりも重い刑罰を科すのが当然だと考えるのが普通だからです。

 このような考えを警告理論と呼んでいます。過去に、同種の犯罪行為を犯したことについて刑罰を科しているにもかかわらず、その更生の機会を被疑者・被告人は活かすことができず、十分に窃盗罪の違法性を認識していたはずですから、このような警告に違反するような被疑者・被告人には、通常の罪よりも重い刑罰を科そうと考える訳です。

 警告理論については、反対意見も根強く存在します。それは、刑罰は、そのような犯罪を行った人間の刑事責任を問うために科されるものですし、その刑事責任はあくまで被告人が行った犯罪行為の内容によってその大小が決められるものです。初犯者が行った場合であっても、過去に前科がある者による犯行であっても、100円の菓子パンを盗んだという行為の違法性は同じはずだからです。

3.一律に重く処罰することの不相当さ

 とは言え、私も、初犯の人と累犯要件を満たす人の刑罰を同じにするべきだと主張したい訳ではありません。

 常習性と累犯性を充足するような場合において、一律に、下限を3年以上とするような重い刑罰を科すのが不適切だと考えているのです。

 冒頭でお話し差し上げたとおり、クレプトマニアのような精神疾患をお悩みの方が、刑務所においてその疾患を完治させることができず、出所と服役を繰り返すようなことがあります。しかし、このようなケースにおける被告人に対しては、警告理論が機能していないことは明らかなように思います。

 前刑の際に懲役刑に服し、十分な警告を受けておきながら、その警告に反して犯罪に及んだということはできず、その精神疾患を理由に再び同じ犯罪を犯してしまった方に対して、過度に重い刑事罰を科しているように思うのです。

 常習累犯窃盗の罪がなくても、刑法は窃盗罪に対する法定刑の上限を10年としていますから、常習性等を理由に重く処罰しなくてはいけない被告人がいたとしても、刑法のみで十分対応することは可能です。

 常習累犯窃盗の罪を残すとしても、その適用範囲については、警告理論等によって重く処罰することが説明可能な範囲にとどめるべきだと思うのです。

4.常習累犯窃盗の罪における弁護活動

 以上のように、常習累犯窃盗の罪は非常に不合理なもので、早期に法改正によって削除されるべきものだと考えていますが、残念ながら現在においても盗犯等防止法は生きた法律として適用されており、常習累犯窃盗の罪で起訴され、実刑判決を宣告されている方は数多くいらっしゃいます。  
 本来であれば、このような合理性を失った法律を適用することが誤っていることについても裁判において必ず主張したいのですが、法律の違憲性等を主張しようと考えた場合、最高裁判所まで続く戦いを覚悟しなければなりません。全ての被告人がそのような争いを望むわけではありません。  
 法律の違憲性を争わない場合には、できる限りの減刑を求める弁護活動を行うことになります。常習累犯窃盗の罪は3年以上の懲役刑が法定刑として定められているのですが、他の犯罪と比較すると、刑法第66条の酌量減軽の規定が適用されるハードルが低いことでも知られています。ですから、3年以下の判決を得ることも十分に考えられ、できる限り短い期間にとどめさせるために、刑事事件の弁護士の役割は極めて重要なのです。  
 常習累犯窃盗の罪の特徴は、何と言っても窃盗行為を繰り返してしまう点にありますから、再犯防止の関係について具体的に主張する必要があります。しかし、累犯前科が要件となっているだけあって、この罪で起訴される方の多くは更生資源に乏しい方が多く、実刑判決が予定されていることから、在宅捜査のまま在宅起訴されるケースは考え難く、被疑者の逮捕、勾留は大前提となっていることが多いように思います。  
 そして、更生資源に乏しい場合、裁判官に保釈を許可させるための材料にも乏しいことが多く、判決までの間に保釈を許可していただくことが困難なことが多いです。つまり、逮捕、勾留されてしまうと、そのまま社会にでることなく刑務所に収監されてしまうのです。  
 しかし、再犯防止の為には、社会の中で正しく生活できる途を確保することが重要であり、拘置所の中に勾留されたままでは、そのような手段を確保することはできません。  
 刑事事件の弁護士としては、極めて高いハードルであることは認識しながらも、保釈への途を検討する必要があるものと言えるでしょう。

5.まとめ

 常習累犯窃盗という罪自体に問題があるということは、社会的にまだ認知されておりませんが、常習性や累犯性の要件を理由に刑罰を加重することについて、不当な取り扱いがなされているのではないかと主張されている先生は珍しくありません。

 一方で、初犯者と比較して、何度も同じ過ちを繰り返している方を重く処罰すべきだということは、一般的にも常識的な扱いと考えられているように思います。多くのケースにおいては、そのような理解で構わないかと思うのですが、法律で一律に定めてしまう事の不当さについて解説させていただきたく、常習累犯窃盗の罪についてコラムを書きました。

 昨今、性犯罪に関する大改正も行われましたし、従来、全く手が入らなかった刑事法分野についての法改正が活発に行われています。この流れが失われない間に、常習累犯窃盗のような罪についても議論がなされることを願っております。

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