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コラム

痛ましいサウナでの事故。刑事責任は誰に認められるのか。

簡単に言うと…
  • 報道されているサウナ店の事故については、業務上過失致死罪に問われる可能性がある。
  • 代表者だけではなく、現場の作業員の責任が追及される可能性もある。
  • 注意義務違反の有無については、様々な事情が総合的に考慮されることになるため、専門家への相談が求められる。
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弁護士
岡本 裕明
個室サウナ店による火事によって、2名の尊い命が失われてしまいました。このことについて刑事責任はどのように問われ得るのでしょうか。考えてみました。

 個室サウナ店で火事が発生し、利用者2名が亡くなってしまった事件については、大きく報道されることになりました。
 現時点においても、原因や機序について捜査機関による捜査が継続されているものと思われますが、今のところ(令和8年1月5日時点)、当該事件の刑事責任に関して、特定の人物や法人が被疑者とされていることを内容とする報道には接しておりません。
 もっとも、業務上過失致死容疑で、関係先を捜索するなどの捜査は行われているようですから、今後、サウナ店の経営者や作業員らに対して、刑事責任を追及する捜査が行われることになるでしょう。
 今回の事件は、サウナ店側としても起こしたくて起こしたわけではないでしょう。しかしながら、2名の尊い命が失われてしまっている以上、責任の所在について十分な検討が必要になることは間違いありません。
 そして、法的な責任としては、民事上の賠償責任に加えて、刑事責任が追及される可能性がある訳ですが、このような事件においては、どのような内容の責任が、どのような立場の人間に追及されることになるのでしょうか。
今回は、他の事例についても確認しながら、本件について、あり得る刑事責任の内容について解説させていただこうと思います。

痛ましいサウナでの事故。刑事責任は誰に認められるのか。

1.業務上過失致死罪とは


弁護士
岡本 裕明
同種の事件が生じた際には必ず、「業務上過失致死罪」が検討されているように思います。どのような罪なのか確認してみましょう。

 今回の個室サウナ店での事故のように、安全確認が不十分だったことによって、利用者を傷つけてしまったようなケースにおいては、業務上過失致死傷罪が問題となります。そこで、まずは業務上過失致死傷罪がどのような罪なのかについて確認してみましょう。

刑法

(過失傷害)

第209条
1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2項 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
第210条
 過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第211条
 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 以上のとおり、業務上過失致死傷罪については、過失致死傷の罪における過失が業務上のものだった場合に、重い刑罰を科すために定められています。
 業務上のものでなく、単なる過失致死だった場合、人の命が失われている場合においても、罰金刑しか定められていない訳です。最近、社会的な耳目を集めた、過失致死罪の事案としては、東京高等裁判所令和4年9月13日判決があります。この事案は、芸術イベントで展示していた作品に設置していた投光器によって火災が発生し、同作品を閲覧していた児童を焼死させたという事案です。
 他方で、過失が業務上のものであった場合、罰金刑ではなく、拘禁刑も科され得ることになります。これは、業務上の過失の方が通常の過失よりも、重い結果を引き起こす危険性が高いことを理由とするものだと理解されています。

2.業務上過失致死傷の成立要件

 では、どのような場合に業務上過失致死傷罪が成立することになるのでしょうか。刑法第211条は、「業務上必要な注意を怠(った)」場合としか定めていません。そこで、まずは「業務」の内容が問題となります。
 この点については、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為の内、他人の生命身体等に危害を加える虞がある行為と解されています(最高裁判所昭和33年4月18日判決)。
 もう少し分かり易い言葉に置き換えると、仕事として繰り返し行っている行為であれば、基本的には「業務」として認められるものと理解していいかと思います。それくらい「業務」というのは広い概念として理解されています。
 そこで、「必要な注意を怠り、よって人を死傷させた」といえるかどうかが中心的な争点となることが多いことになります。
 どのような場合に「必要な注意を怠った」と評価できるかどうかは、過失論をどのように理解するか次第で説明が異なることになりますし、この点は様々な考え方が存在します。今回のコラムでは深入りせずに、差し当たりの説明として、注意義務に違反した場合に、「必要な注意を怠った」と解されることとしましょう。

3.裁判例


弁護士
岡本 裕明
具体的に、どのような場合に業務上過失致死傷が成立するのでしょうか。

 「注意義務に違反した場合」に、「必要な注意を怠った」と評価できるというのでは、単に表現の違いでしかありません。そこで、具体的な裁判例を確認して、どのような場合に、「注意義務に違反」したと認められるのかについて確認してみましょう。
 過失に関する最近の重要な判例としては、福島第一原子力発電所に事故について、東京電力株式会社の幹部についての刑事責任を否定した、最高裁判所令和7年3月5日決定があります。同決定は、「被告人らにおいて、同発電所に10m盤を超える津波が襲来する現実的な可能性の認識」があったかどうかが問題となる旨を説示し、事故発生時点においては、「本件発電所に10m盤を超える津波が襲来するとい…現実的な可能性を認識していたとは認められない…。」と結論付けています。
 事故が発生することについて予見することができなければ、注意義務を課すこともできないため、注意義務違反を認めることができず、業務上過失致死傷罪の成立が否定されることになったのです。
 今回のサウナ店の事故については、天災に関連するものではないため、原子力発電所に関する判決とは比較がし難いかもしれません。
 そこで、施設の不備によって生じた事故に関する判例として、ホテル・ニュージャパン火災事件(最高裁判所平成5年11月25日決定)があります。
この事件では、「昼夜を問わず不特定多数の人に宿泊等の利便を提供するホテルにおいては火災発生の危険を常にはらんでいる上、被告人(代表取締役社長)は…スプリンクラー設備も代替防火区画も設置されていないこと…(などを)認識しており…いったん火災が起これば…宿泊客らに死傷の危険の及ぶおそれがあることを容易に予見できたことが明らかである。」として、「防火管理体制を確立しておくべき義務」に違反していることを理由に、業務上過失致死罪の成立を認めています。

4.責任を追及される対象

 紹介した2つの最高裁判例については、代表取締役や会社の幹部についての刑事責任が争われています。
 では、現場の作業員について刑事責任が追及されることはないのでしょうか。
 この点について参考になる裁判例として、大阪エキスポランド事故に関する裁判例(大阪地方裁判所平成21年9月28日判決)があります。
 この事案では、ジェットコースターが脱輪したことに伴い、乗客1名が死亡、12名を負傷させた事件について、遊園地を運営していた会社の取締役総括施設営業部長、施設営業部長、同部技術課長が起訴されています。
 この事故はジェットコースターの定期検査が適切に行われていた場合には、未然に防ぐことができたにもかかわらず、当該検査を十分に実施しなかったことによって生じた事故でした。そして、課長との関係では、営業部長より当該定期検査の実施を繁忙期以降に先送りするようにとの指示に即して行動したもので、ある意味では会社の業務命令に従った部下という側面も認められるものの、業務上過失致死傷の罪で有罪判決が宣告されています。
 注意義務への違反が認められる以上、上司からの命令があったとしても、その命令に従ったという主張は、何ら注意義務違反を正当化するものではないといえるでしょう。
 したがって、代表取締役のような立場にない人間であっても、刑事責任を追及される可能性は存在する訳です。

5.過失犯と弁護活動


弁護士
岡本 裕明
では、業務上過失致死傷の容疑がかけられた場合、どのような弁護活動が考えられるのでしょうか。

 上述したように、過失犯については、注意義務違反によって成立することになります。そして、注意義務違反が認められるかどうかについては、具体的にどのような危険があるのかについて予見できていなければなりません。
本件のようなサウナ店の場合には、紹介したエキスポランド事故の裁判例が参考になるでしょう。
もっとも、どのような注意義務があるのかは、その事故にどのような立場で関与しているのかによって異なり得ます。
 例えば、明石花火大会歩道橋事故について、最高裁判所平成28年7月12日決定は、「本件事故を回避するために両者が負うべき具体的注意義務が共同のものであったということはできない。被告人につき,B地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立する余地はない。」として、現地警備本部の指揮官という立場にあった警察署地域官と、同署副署長とでは、注意義務の内容を異にする旨を説示しています。
 そこで、業務上過失致死傷の容疑をかけられた場合において、会社全体としてみれば、何らかの過失が認められそうなケースにおいても、被告人の立場においてどのような注意義務が課されるのかについては、全ての事情を総合的に考慮して検討する必要がありますし、その結果として、注意義務違反が認められる関係者と認められない関係者に分かれることもあり得ます。
 弁護人としては、依頼者の立場では、どのような危険について予見することができ、その結果としてどのような注意義務が課せられるのかについて検討し、注意義務違反が認められない場合には、如何に充当な結果が生じていたとしても、依頼者に刑事責任は発生しない旨を主張することになるでしょう。

6.まとめ


弁護士
岡本 裕明
業務上過失致死傷の成立要件について御理解いただけましたでしょうか。

 以上のとおり、業務上過失致死傷の罪が成立するかどうかについては、被告人に注意義務違反が認められるかどうかによって判断されることになります。
 一方で、注意義務が課されるのかどうか、どのような注意義務が課されるのかについては、被告人がどのような立場の人間なのか、どのような危険性を認識することができたのか、その危険性は現実的なものといえるのかなど、様々な事情をもとに判断されることになりますので、一概に、このような事情があれば、責任が認められる(又は認められない)といったような判断はできません。
 過失の有無やその程度についての判断は、専門的な知識が求められることになるのです。何かお悩みの場合には、早目に専門家である弁護士に御相談いただければと思います。

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