子どもを深夜に働かせると犯罪になるの? 子役・キッズユーチューバーと年少者保護のルール
- 子どもの深夜労働を規制しているのは主に労働基準法である
- 児童福祉法にも深夜の稼働を禁じる規定があるが、撮影行為一般には及ばない。
- 労働基準法は同居の親子関係には適用されない

弁護士
岡本 裕明
「子どもを夜遅くまで働かせるのは違法ではないか」という指摘を目にする機会が増えています。現在はユーチューバーとしても活動している方が、ホテルの脱衣場で撮影した動画を投稿したことで、大きな問題となりました。
当初は、ホテルの承諾を得ていたかどうかが問題とされていたようですが、大浴場の営業時間外に撮影されたという事実が報告された後は、「4歳の子どもを深夜まで撮影に付き合わせていたのではないか」という指摘が出るようになり、児童福祉法違反ではないか、労働基準法違反ではないか、という声まで見られるようになっています。
突如として指摘されるようになった感のある2つの法律違反なのですが、果たして今回のような事例で適用されることはあるのでしょうか。
また、子役やキッズユーチューバーの活動を含め、子どもを深夜まで働かせる行為は、法律上どのように扱われるのでしょうか。どこからが刑事罰の対象となるのか、改めて整理してみたいと思います。
目次
1.労働基準法は子どもの労働をどこまで禁じているか

弁護士
岡本 裕明
子どもの労働を正面から規制しているのは、児童福祉法ではなく労働基準法です。まずは年齢による制限から確認してみましょう。
労働基準法
第56条
1項 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
2項 前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする。
第118条1項
…第56条…の規定に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
労働基準法にいう「児童」とは、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者、つまりおおむね中学校を卒業するまでの子どもを指します。この年齢に達していない子どもは、原則として一切使用することができません。
例外を定めているのが2項です。健康と福祉に有害でなく、かつ軽易な労働であれば、所轄労働基準監督署長の許可を受けたうえで、満13歳以上の児童を修学時間外に使用することができます。
そして、映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童であっても同じ扱いとされています。テレビドラマや舞台に幼い子役が出演できるのは、この規定があるからです。
この最低年齢の規定に違反した場合、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されます。労働基準法の罰則の中では重い部類に属するものといえ、許可を得ずに幼い子どもを働かせる行為は、それだけ違法性が高い行為と評価されているものといえます。
2.深夜業の禁止と子役の特例

弁護士
岡本 裕明
次に、働かせてよい時間帯の規制です。
労働基準法
第61条
1項 使用者は、満18才に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によって使用する満16才以上の男性については、この限りでない。
5項 第1項及び第2項の時刻は、第56条第2項の規定によって使用する児童については、第1項の時刻は、午後8時及び午前5時とし、第2項の時刻は、午後9時及び午前6時とする。
第119条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
1号 …第61条…の規定に違反した者
満18歳未満の年少者については、午後10時から午前5時までの間に使用することが原則として禁止されています。さらに、56条2項の許可を受けて使用する児童、すなわち中学生以下の子どもについては、規制の始まりが2時間繰り上がり、午後8時から午前5時までが禁止時間帯となります。
もっとも、これでは舞台公演の終演時刻に間に合わないという不都合が生じます。そこで、映画の製作又は演劇の事業に使用される児童が演技を行う業務に従事する場合について、この時刻が午後9時および午前6時までと緩和されています。
深夜業の制限に違反した場合の罰則は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。実際、平成29年には、6歳の子役を未明まで撮影に従事させたとして、番組の制作側が謝罪する事態も生じています。子役の起用は、年齢の制限と時間帯の制限という二つの規制を同時にクリアしなければならない領域なのです。
3.児童福祉法は深夜労働を禁止しているか

弁護士
岡本 裕明
以上のとおり、労働基準法は、児童を働かせる場合について、年齢や時間帯による規制を行いつつ、映画の製作又は演劇の事業に関しては、特別にその規制を緩和しているものと認められます。
では、しばしば引き合いに出される児童福祉法はどうでしょうか。同法34条1項は、何人もしてはならない行為を列挙しています。
児童福祉法
第34条1項
4号 満15歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
4号2 児童に午後10時から午前3時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
第60条2項
第34条第1項第1号から第5号まで又は第7号から第9号までの規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
児童福祉法には様々な罰則規定が設けられていますが、深夜という要素が出てくるのは4号の2です。ただし、この規定が対象としているのは、戸々について、または道路その他これに準ずる場所で行う物品の販売や役務の提供に限られています。もともと想定されているのは、深夜に子どもへ物を売り歩かせるといった街頭での稼働であり、屋内の撮影スタジオやホテルの客室での活動はここに含まれません。4号の演技についても、同じく戸々または道路等という場所の限定が付いています。
したがって、児童福祉法は子どもの深夜労働一般を禁止しているわけではありません。
もっとも、上述したような行為に対する罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科とされており、労働基準法よりも重く設定されています。適用される場面は限られているものの、極めて重い罰則が定められているものといえるでしょう。
4.労働者該当性

弁護士
岡本 裕明
そうすると、子供を働かせることによって刑事罰が科されるかどうかについては、児童福祉法ではなく労働基準法の適否が問題となることになりそうです。もっとも、今回問題となっているのは、自分の子供を撮影したという事案で、従業員を撮影していた訳ではありません。
労働基準法9条は、「労働者」を、事業に使用される者で賃金を支払われる者と定義しており、指揮命令に服して働き、その対価を得ているという関係がなければ、「労働者」にあたらないことになります。
「労働者」にあたらない場合には、その者を「使用」したことにもなりませんから、労働基準法違反を理由に刑罰を科されることはありません。もっとも、「労働者」に該当するかどうかは、雇用契約書を締結しているか、委託契約書を締結しているかという形式的な側面ではなく、どのような業務にどのような形で従事しているかという実体的な面から判断されます。
業務委託契約を締結しているから、労働基準法違反が成立しないという訳ではないのです。
例えば、東京高等裁判所平成4年2月6日判決は、18歳に満たない児童を料理店の宴会場にコンパニオンとして派遣して酒客の接待をさせた行為に対して、労働基準法違反の成立を認めています。一般的な従業員やアルバイトとして扱われるような定形的な関係性がなくても、「労働者」性が認められることはあり得るのです。
5.親が自分の子どもを撮影する場合

弁護士
岡本 裕明
親が自分の子供を雇用できない訳ではありません。家族経営の会社等においては、雇用関係を認めることのできる親子は考えられるでしょう。
しかし、親が自分の子どもを自分のチャンネルの動画に登場させているようなケースにおいて、両者の間に雇用関係が認められることは考えにくいでしょう。加えて、労働基準法は、同居の親族のみを使用する事業には同法を適用しないと定めています。家族だけで完結している撮影である限り、そもそも労働基準法が適用される場面ではないことになります。
労働基準法
(適用除外)
第116条2項
この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
ですから、撮影にあたって賃金等が支払われており、親子間において使用者と従業員としての関係性が認められるケースであっても、同居の親族のみが問題となっている場合には、労働基準法違反が成立する余地はないのです。
6.子どもの労働と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
以上のとおり、本件で問題となっている事案を前提とすると、幼い子どもを深夜に撮影した上で、その動画を投稿することで収益を得ていたとしても、そのことが労働基準法や児童福祉法に違反することは考えにくいといえるでしょう。
しかしながら、常に同種の行為に対して刑事罰が科される余地がないかというとそういう訳ではありません。
例えば、芸能事務所と契約して子役として稼働させている場合や、制作会社が撮影に関与して子どもに演技を指示し、報酬が発生している場合には、労働者性が認められ、許可や時間帯の規制が正面からかかってきます。
このような場合は、単に親が同席していたとしても、「同居の親族のみ」ではなく、外部の事業者によって子どもが使用されている訳ですから、労働基準法が適用されることになります。
また、子どもが子役として稼働していた訳ではなく、親が芸能事務所と契約している場合であっても、その子どもを深夜に稼働させていた場合には、同種の問題が生じ得るでしょう。
家族旅行の様子が撮影されているだけに見える場合であっても、その裏側に製作会社等の関与がある場合には、自分の子供を撮影する行為に対して刑罰が科される可能性もある訳です。
7.まとめ
以上のとおり、子どもを深夜に働かせる行為を規制している中心は労働基準法であり、その内容は最低年齢の規制と深夜業の規制の二本立てです。児童福祉法にも深夜の稼働に関する規定は置かれていますが、街頭での販売等に限定されており、撮影や出演一般を捕捉するものではありません。
そして、これらの規制はいずれも使用者と労働者の関係を前提としているため、親が自分の子どもを撮影して発信している場面には、そのままでは及びません。冒頭で触れた件についても、報じられている限りの事実を前提とする限り、労働基準法違反や児童福祉法違反を問うことは難しいというのが実際のところです。
もっとも、法律が処罰の対象としていないことと、その行為に問題がないこととは別の話です。子どもの生活時間をどこまで大人の都合に合わせてよいのか、子どもの姿を不特定多数に向けて公開してよいのかという問題については、現行法が正面から答えを用意していません。近年、いわゆるシェアレンティングとして議論されているのも、まさにこの空白の部分です。刑事罰があるかどうかという物差しだけで判断すると、大切な視点を落としてしまうことになりかねません。
子役の起用や子どもの出演を伴う撮影に関わる立場にある方は、労働基準監督署長の許可が必要な場面かどうか、終了時刻が何時までに制限されるのかを、事前に確認しておくことをお勧めします。
よくある質問
- Q.子どもを働かせる際の年齢制限はどうなっていますか?
- A.原則として満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで児童を使用してはなりませんが、映画や演劇の事業などは例外的に満13歳未満でも許可を得て使用可能です。
- Q.子役が深夜に撮影を行う場合、時間制限に緩和はありますか?
- A.映画の製作や演劇の事業に従事する児童が演技を行う場合に限り、禁止時間帯が午後9時から午前6時までに緩和されます。
- Q.児童福祉法は、あらゆる場所での子どもの深夜労働を禁止していますか?
- A.いいえ。児童福祉法が禁止しているのは、主に道路などの屋外で物品販売や演技を業務としてさせる行為であり、屋内での撮影活動などは含まれません。









