道路交通法違反で罰金刑が科される場合と反則金の納付を求められる場合
- 反則金は刑罰ではなく、納付すれば刑事手続が開始されないため前科は残らない。
- 反則行為であっても、飲酒運転・無免許運転を伴う場合や事故を起こした場合には反則金で処理されない。
- 反則金の納付は任意であるが、いったん納付すると後から違反の成否を争うことはできない。

弁護士
岡本 裕明
令和8年9月1日、道路交通法施行令の改正が施行され、中央線、車両通行帯及び中央分離帯のいずれも設けられていない道路、いわゆる生活道路の法定速度が、時速60キロメートルから時速30キロメートルに引き下げられました。
標識による指定がない道路の法定速度は時速60キロメートルであるという理解のまま運転していると、これまでは違反にならなかった速度でも、速度超過として取締りを受けることになります。
また、令和8年4月1日からは、自転車を含む軽車両の運転者がした一定の違反行為についても、交通反則通告制度、いわゆる青切符による処理が適用されることとなりました。このように、道路交通法違反として取締りを受ける場面は、ここ数年で確実に広がっています。
もっとも、道路交通法違反として取締りを受けたとしても、そのすべてが刑事事件として処理されるわけではありません。青切符が切られた場合に前科がつく訳ではないように、多くの違反は、反則金を納付することによって、刑事手続に進むことなく終了します。
他方で、一定の違反行為については、反則金による処理が認められず、検察官に事件が送致された上で、罰金刑が科されることになります。反則金は刑罰ではありませんが、罰金は刑罰ですから、納付すれば前科として残ります。
つまり、同じ道路交通法違反であっても、反則金で終わるのか、罰金刑が科されるのかによって、その後に受ける不利益は大きく異なるのです。
今回は、どのような行為に対して反則金の納付が求められ、どのような行為に対して罰金刑が科されるのかについて、具体的な金額とともに解説していきたいと思います。
目次
1.反則金と罰金は何が違うのか

弁護士
岡本 裕明
まずは、反則金と罰金がどのように違うのかを確認しておきましょう。
道路交通法違反となる行為は、本来はそのすべてが犯罪です。信号無視も一時不停止も、条文上は拘禁刑又は罰金が定められた犯罪行為ですから、原則どおりに処理するのであれば、捜査を行い、公訴を提起し、刑事裁判で刑を定めることになります。
しかし、道路交通法違反は年間に膨大な件数が発生します。そのすべてを刑事手続で処理することは現実的ではありませんし、比較的軽い違反にまで前科が残るという結果を認めることも相当ではありません。
そこで、道路交通法は、比較的軽微で、警察官が現場で確認することができる明白かつ定型的な違反行為を「反則行為」と定め、これについては警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その納付があれば刑事手続を開始しないという特例を設けました。これが交通反則通告制度であり、いわゆる青切符による処理です。
道路交通法
(反則金の納付)
第128条第2項
前項の規定により反則金を納付した者は、当該通告の理由となった行為に係る事件について、公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない。
条文から明らかなとおり、反則金を納付した場合の効果は、刑が軽くなることではなく、刑事手続そのものが開始されないという点にあります。ですから、反則金を納付しても前科は残りません。
これに対し、罰金は刑法が定める刑罰の一つです。簡易裁判所の略式命令によって科されたものであっても、罰金以上の刑を受けた事実として記録され、職業や資格の制限につながることがあります。反則金と罰金は、金額の大小の問題ではなく、性質そのものが異なるものなのです。
2.反則金の納付を求められる行為とその金額

弁護士
岡本 裕明
次に、どのような行為が反則行為とされ、いくらの反則金が定められているのかを確認します。
反則行為の種類は道路交通法別表第二に、反則金の額は道路交通法施行令別表第六に定められています。反則金は、違反の種別と車両の種類ごとに定額とされており、捜査機関の裁量で増減されるものではありません。
普通車について、実際に問題となることが多いものを挙げると、おおむね次のとおりです。
| 違反の種類 | 反則金額 |
|---|---|
| 速度超過(15キロメートル未満) | 9000円 |
| 速度超過(15以上20キロメートル未満) | 1万2000円 |
| 速度超過(20以上25キロメートル未満) | 1万5000円 |
| 速度超過(25以上30キロメートル未満) | 1万8000円 |
| 携帯電話使用等(保持) | 1万8000円 |
| 信号無視(赤色等) | 9000円 |
| 横断歩行者等妨害等 | 9000円 |
| 通行区分違反 | 9000円 |
| 安全運転義務違反 | 9000円 |
| 指定場所一時不停止等 | 7000円 |
| 通行禁止違反 | 7000円 |
| 放置駐車違反(駐停車禁止場所等) | 1万8000円 |
| 放置駐車違反(駐車禁止場所等) | 1万5000円 |
| 免許証不携帯 | 3000円 |
高速道路における速度超過については、時速30キロメートル以上35キロメートル未満で2万5000円、時速35キロメートル以上40キロメートル未満で3万5000円と、一般道路よりも重い金額が定められています。普通車の反則金は、この3万5000円が上限です。
令和8年4月1日から新たに反則行為とされた自転車の運転についても、携帯電話使用等(保持)が1万2000円、信号無視及び通行区分違反(いわゆる逆走等)が各6000円、指定場所一時不停止等及び無灯火違反が各5000円、並進禁止違反及び二人乗り等の乗車積載制限違反が各3000円とされています。自転車の違反であっても、金額の水準は自動車と大きく変わりません。
なお、座席ベルト装着義務違反や乗車用ヘルメット着用義務違反については、違反点数は付されるものの反則金の定めがなく、いわゆる白切符によって処理されます。反則金を納付する必要はありませんが、点数が加算される点は他の違反と同じです。
3.反則行為であっても反則金で処理されない場合

弁護士
岡本 裕明
もっとも、反則行為に当たる違反をしたからといって、当然に反則金で処理されるわけではありません。
道路交通法第125条第2項は、反則行為をした者のうち一定の者を「反則者」から除外しています。除外されるのは、大きく分けて、無免許運転など当該車両を運転することができない状態にあった者、酒気帯び運転など飲酒運転の状態にあった者、そして反則行為をし、よって交通事故を起こした者です。
実務上、最も注意が必要なのは三番目です。たとえば、指定場所一時不停止等それ自体は反則行為ですが、その一時不停止が原因で歩行者に接触してけがを負わせてしまえば、もはや反則金による処理を受けることはできません。過失運転致傷罪と併せて、刑事手続の中で処理されることになります。
つまり、青切符で終わるかどうかは、違反行為の内容だけで決まるものではなく、その違反が事故につながったかどうかによって決まります。同じ内容の速度超過であっても、事故が生じていなければ反則金1万2000円の納付で終了するのに対し、事故が生じていれば刑事事件として扱われるのです。
軽微な違反であると考えて安心していたところ、事故が生じていたために刑事手続が進んでいるという相談は、決して少なくありません。
4.はじめから罰金刑の対象となる行為

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岡本 裕明
次に、そもそも反則行為として定められておらず、はじめから刑事手続で処理される違反行為を確認します。
速度超過については、一般道路で時速30キロメートル以上、高速道路で時速40キロメートル以上の超過が反則行為から除外されており、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金が定められています(道路交通法第118条第1項)。生活道路の法定速度が時速30キロメートルに引き下げられたことにより、この線を越えてしまう場面は、従前よりも生じやすくなっているといえます。
飲酒運転については、酒気帯び運転が3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、酒酔い運転が5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされています。無免許運転も酒気帯び運転と同じく、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。警察官による呼気検査を拒んだ場合には、3月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています(同法第118条の2)。
いわゆるあおり運転として問題となる妨害運転については、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、高速道路上で他の自動車を停止させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合には5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされています。
携帯電話の使用については、単に保持して通話等をしたにとどまる場合は反則行為として1万8000円の反則金で処理されますが、これによって交通の危険を生じさせた場合には反則行為から除外され、1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象となります。
最も重いものは、事故を起こした後の救護義務違反、いわゆるひき逃げです。10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされており、罰金で終わることはむしろ例外的といえます。
5.罰金額の相場と反則金納付の判断

弁護士
岡本 裕明
罰金は、反則金と異なり、あらかじめ金額が定まっているものではありません。法定刑の範囲内で、違反の態様や前科前歴を踏まえて個別に決められます。特に、前科がある場合には、初犯者に対する刑罰よりも極めて重い刑罰が科されることが多いです。ですから、罰金の具体的な金額については、ケースバイケースとしかいえません。
その上で、各行為態様毎に、科される罰金額として想定される金額を述べるのであれば、速度超過については、一般道路で時速30キロメートル以上の超過であれば6万円から8万円程度、高速道路で時速40キロメートル以上の超過であれば8万円から10万円程度となることが多いようです。速度超過の罰金の上限は10万円ですから、超過幅が大きい事案では上限に近い金額となります。
酒気帯び運転については、事故を伴わない初犯で20万円から30万円程度、呼気アルコール濃度が高い場合や物損事故を伴う場合には40万円から50万円程度に及ぶこともあります。無免許運転についても、初犯であれば20万円から30万円程度が一つの目安となります。
ただし、これらはいずれも略式命令によって処理される場合の目安にすぎません。飲酒運転や無免許運転を繰り返している場合、あるいは救護義務違反を伴う場合には、正式に公判請求され、拘禁刑が求刑されることも珍しくありません。
6.道路交通法違反と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
以上のとおり、反則金の納付で終わる場合と、罰金刑が科される場合とでは大きな違いがあることがわかりました。
もっとも、反則金の納付を求められた場合に、反則金の支払いが強制される訳ではありません。反則金の納付は法律上の義務ではなく、これに応じるか否かは、違反を指摘された方の任意の選択に委ねられています。
最高裁判所昭和57年7月15日判決は、自らの意思で反則金を納付した場合には、後になって反則行為を争って無罪を主張することができない旨を判示しています。
正確には、反則金の納付の通告の取消を求める行政訴訟において、反則金を納付した以上は、反則行為がなかったことなどを理由に、反則金の納付の通告の取消を求めることはできず、反則行為の成否を争いたい場合には、反則金を納付せず、検察官によって起訴された後の刑事裁判で争う必要がある旨を判示した判決です。
したがって、身に覚えのない違反を指摘された場合であっても、その場で反則金を納付してしまえば、後から取消しを求めることはできません。他方で、納付しないという選択をすれば、刑事手続が開始される可能性を引き受けることになります。
反則金の額そのものは決して高額ではありませんが、反則行為を争うかどうかの判断は、その後に刑事手続を受け入れる覚悟を伴うものです。金額の多寡だけで決められる問題ではありませんので、納得のいかない取締りを受けた場合には、納付期限が到来する前に弁護士に相談していただくことをお勧めします。
7.まとめ

弁護士
岡本 裕明
以上のとおり、道路交通法違反のうち比較的軽微な反則行為については、反則金を納付することで刑事手続が開始されず、前科も残りません。反則金の額は違反の種別ごとに定額であり、普通車であれば3000円から3万5000円までの範囲に収まります。
これに対し、一般道路で時速30キロメートル以上の速度超過、飲酒運転、無免許運転、妨害運転、救護義務違反といった行為は、はじめから刑事手続で処理され、罰金刑が科されれば前科が残ります。罰金額は、速度超過であれば6万円から10万円程度、飲酒運転や無免許運転であれば20万円から50万円程度が一つの目安となります。
そして、反則行為に当たる違反であっても、飲酒運転や無免許運転を伴う場合、あるいは事故を起こしてしまった場合には、反則金による処理を受けることができません。軽い違反のつもりであっても、事故が生じただけで刑事事件になり得るという点は、十分に意識しておく必要があるでしょう。
取締りの内容に納得できない場合や、反則金を納付すべきかどうか判断に迷う場合には、納付期限までの期間が限られていますので、早めに弁護士にご相談ください。









