なぜ薬物犯罪の再犯率の高いのか?最近ニュースでもよく耳にする、薬物犯罪の再犯に至る経緯や再犯時の量刑などを解説!
ここ数年、違法な薬物を所持・使用したことで、有名人が逮捕・起訴されたというニュースを耳にすることが多くなりました。その中には、以前にも同種の犯罪で刑罰を科されたにもかかわらず、再び同じ過ちを犯してしまった方も多くいらっしゃいます。 薬物犯罪は、被害者のいない犯罪ですから、その違法性についてイメージしにくいところがあると思いますし、違法な薬物と接する機会がない方がほとんどだと思います。しかしながら、薬物犯罪によって逮捕されてしまった方の多くは、普通の会社員や学生として真っ当な生活をされていた方が多く、反社会的勢力に属する方が中心に犯す罪という訳ではありません。 また、薬物犯罪は、再犯率が高い犯罪としても有名です。ですから、それまで全く犯罪とは無関係だった方であっても、一度、違法な薬物と関りをもってしまったがために、何度も刑務所を出入りする人生を送ることになってしまうこともあり得るのです。 今回のコラムでは、薬物犯罪について、再犯の点を中心に解説させていただきます。
目次
薬物犯罪の量刑について
量刑とは、裁判所が法律上で定められた刑の範囲内で、実際に言い渡す刑の種類や程度を決めることです。初犯の場合と、再犯のそれぞれのケースで量刑が異なります。
初犯の場合
薬物犯罪によって逮捕された場合であっても、通常の場合、前科がなければ、いきなり刑務所に服役することはありません。ですので初犯の場合には、直ちに刑務所に服役するように命じられることはなく、社会内で更生するためのチャンスをもらうことができます。つまり、執行猶予付きの判決を得られることが多いです。 執行猶予付きの判決を得られた場合、執行猶予期間中に犯罪行為に及ばなければ、実際に刑務所で服役することはありません。 もっとも、薬物犯罪の中でも、他人に販売する目的で大量に薬物を所持していた場合等には、前科がなくても直ちに服役を命じられることもあります。 したがって、他の犯罪と比較して、弁護人の重要性が低くなるということは決してありません。
再犯の場合
過去に薬物犯罪で刑罰を科された経験がある方が、再び違法な薬物に関与してしまった場合、裁判所が再び社会内で更生する機会を与えるために、執行猶予付きの判決を宣告することは、極めて珍しいものと言えます。 つまり、執行猶予期間中に、再び違法な薬物と関わってしまった方に対して、裁判所は厳しい判決を言い渡すことになりますので、ほぼ間違いなく刑務所に服役することを命じられることになります。 そうなると、執行猶予が取り消され、前回の薬物犯罪の際に科された懲役期間についても服役する必要がありますし、新たに犯した薬物犯罪についての刑罰に関する懲役期間についても服役する必要がありますから、相当に長い間、刑務所に服役することになってしまいます。 また、執行猶予期間を終えた後であっても、薬物犯罪に関する前科がある場合、裁判所は厳格な刑罰を科す傾向にあります。前回の薬物犯罪に関する刑罰を科されてから、約10年程度の期間があいていなければ、執行猶予付きの判決を得ることは難しい印象です。 詳細は、別の機会にお話しさせていただければと思いますが、刑務所への服役が免れられないような事案であっても、一部執行猶予という制度を用いて、服役期間を短くすることは可能です。 薬物犯罪の再犯者の弁護は、弁護人の知識と経験が試されるものといえるでしょう。
薬物犯罪の再犯率が高い理由とは?
なぜ薬物犯罪の再犯率は高いのか
以上のように、再び違法な薬物に関与してしまった場合には、刑務所に服役する可能性が非常に高いものといえます。そのことは、一度裁判を経験した方であれば、捜査機関や裁判官、弁護人から十分説明を受けているはずですから、十分に認識できている方が多いです。 にもかかわらず、再犯に及んでしまう方が多い理由として、違法な薬物には強い依存性が認められることが挙げられます。 実際に、平成30年度版犯罪白書によると、平成29年度に覚せい剤取締法に違反した者の内、再犯者率は66.2%と過半数を大きく超えています。 それほどに、薬物は人の精神や身体を蝕むものといえるのです。
薬物犯罪で再犯に至ってしまう原因は、人間関係にあり
先ほどお話しさしあげたとおり、覚せい剤をはじめとする薬物には、強度の依存性が認められます。しかしながら、一定期間違法な薬物と関与してしまった方であっても、全員再犯に及ぶ訳ではありません。一度、刑罰を科されたことを契機に、薬物との関係を断絶できている方も多くいらっしゃいます。 そして、薬物との関係を断絶できる人と、再び違法な薬物に関与してしまう人との大きな違いの一つとして、薬物関係者との人間関係を清算することができているかという点が挙げられます。 多くの方は、違法な薬物を自分自身で製造・栽培するのではなく、違法な薬物を多く所持している知人や売人等から入手しています。ですから、薬物犯罪の多くは、単独犯として裁判を受けているケースであっても、誰かしら薬物に関係している者との関りが認められるケースがほとんどなのです。 そして、そのような人間関係を清算しきれないでいると、裁判を受けた直後は、二度と違法な薬物に手を出さないという気持ちを強く持っていたとしても、周囲の人間が薬物を利用している状況にいれば、徐々にその気持ちが弱まり、再び違法な薬物を使用してしまうケースが非常に多いのです。
薬物犯罪から完全に抜け出すための方法は?
薬物犯罪に関わる人間関係を清算をする
ですから、違法な薬物との関係性を清算するにあたっては、違法な薬物に関係する人間関係を清算する必要があります。薬物の入手先だけではなく、違法な薬物を一緒に利用した経験のある人間等、関係を清算すべき人間関係については十分に吟味する必要があるでしょう。 他方で、薬物犯罪を犯してしまった後に、人生を再スタートする際には、周囲からのサポートが重要になります。したがって、清算する必要のない人間関係まで断絶してしまうと、精神的に更に追い込まれ易くなってしまいますし、円滑な再スタートをきることができません。 御家族等、最も身近な方と相談しつつ、人間関係の継続については判断していただく必要があるでしょう。
薬物に関する専門機関による支援を受ける
ですから、違法な薬物との関係性を清算するにあたっては、違法な薬物に関係する人間関係を清算する必要があります。薬物の入手先だけではなく、違法な薬物を一緒に利用した経験のある人間等、関係を清算すべき人間関係については十分に吟味する必要があるでしょう。 他方で、薬物犯罪を犯してしまった後に、人生を再スタートする際には、周囲からのサポートが重要になります。したがって、清算する必要のない人間関係まで断絶してしまうと、精神的に更に追い込まれ易くなってしまいますし、円滑な再スタートをきることができません。 御家族等、最も身近な方と相談しつつ、人間関係の継続については判断していただく必要があるでしょう。
薬物犯罪における弁護活動
以上のとおり、薬物に依存してしまう前に、または、薬物依存からの脱却にあたっては、人間関係の清算や専門機関による支援が極めて重要になります。
しかしながら、薬物を使用している間に、これらの活動に取り掛かるのは困難です。裁判を終えた後に、同じ人間関係の中に戻ってしまえば、いかに薬物の危険性を認識できていたとしても、再度薬物に手を出してしまう可能性は極めて高くなってしまいます。
ですから、逮捕、勾留されてしまった場合、早期に保釈等の手段で身体拘束から解放させることが弁護人の役割ですし、まずはそのような目標に向けて活動すべきなのですが、そのような活動に加えて、再犯を防ぐための環境調整についても刑事事件の弁護士として選任された弁護人の役割になります。薬物犯罪についての裁判手続が係属している間が、薬物との関係性を断ち切る最大のチャンスなのです。
とはいえ、薬物との関係性を断ち切る手段についても、薬物との関わり合いがない御家族らにとっては何の知識もないと思います。更に、人間関係を清算する必要があるとはいえ、捜査機関にその全てを供述しなければならないかというと、全てを供述することによって、不必要な疑いをかけられる可能性もあり、この点についても弁護人の役割は極めて重大となるのです。
まとめ
今回は、薬物犯罪についての再犯を中心に解説させていただきました。 薬物犯罪は、初犯の場合には刑務所に服役する可能性が大きくありませんから、その後の人生への影響も最小限にとどめることは可能です。 しかしながら、再犯率が高いことから、しっかりと薬物との関係を断絶させることができるかどうかも、大きな問題となります。 私たちは、再犯を防ぐことも含めて、弁護人の役割だと考えております。薬物犯罪についてお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談いただければと思います。