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不同意わいせつ罪について(令和5年改正後)

1 不同意わいせつ罪とは

 「不同意わいせつ罪」は令和5年の刑法改正の際に新設された罪名です。電車内で行われるような痴漢行為に類する行為から、飲酒をさせて酩酊状態となった被害者に対して行うわいせつ行為まで、様々な行為態様に対して刑罰を科すものとなっています。
 刑法が改正される前は、暴行や脅迫を用いてわいせつ行為に及ぶような「強制わいせつ罪」と、酩酊等によって意識を失っている被害者に対してわいせつ行為に及ぶ「準強制わいせつ罪」が区別されていたのですが、法改正によって両者が統合されることになりました。
 一方で、痴漢行為を処罰する各都道府県の迷惑行為防止条例は、現時点においても廃止されておらず、迷惑行為防止条例違反の罪と不同意わいせつ罪の区別は、従前の迷惑行為防止条例違反の罪と強制わいせつ罪と同じようになされるものと考えられています。
 しかしながら、「暴行又は脅迫」によるわいせつ行為以外でも、不同意わいせつ罪が成立することとなった関係で、従前であれば迷惑行為防止条例違反の罪として処罰されていたであろう行為についても不同意わいせつ罪が適用される傾向が窺われます。
 すなわち、着衣の上から被害者の身体に触れるような行為についても、迷惑行為防止条例違反ではなく、不同意わいせつ罪が適用されている事案が散見されます。
 不同意わいせつ罪が適用される場合、後述するように、迷惑行為防止条例違反の罪と異なり、罰金刑が法定されておりませんので、初犯でも起訴される可能性があり、早期に弁護活動を開始することが極めて重要になります。
 迷惑行為防止条例違反の罪の解説は、こちらに掲載 しております。

2 不同意わいせつ罪として罰せられる場合の成立要件

 不同意わいせつ罪についての刑法の定めは下記のとおりです。

刑法

(不同意わいせつ)

第176条
1項 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
1号 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
2号 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
3号 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
4号 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
5号 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
6号 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
7号 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
8号 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3項 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。

 ポイントとしては、
・わいせつな行為であること
・被害者がわいせつな行為を受けることについて、同意していないと考えたり、その考えを伝えることが困難な状態にあったこと
・上記の状態が各号に列挙された行為によって生じたこと
になります。
 特に、強制わいせつ罪との関係では、「暴行又は脅迫」のような行為が認められる必要があったのですが、「同意しない意思を形成・表明するいとまがない」というような要件が追加されたこととの関係で、迷惑行為防止条例で定められている内容に近い内容になったと理解することができます。

3 関連する犯罪

(1)強制わいせつ罪

 令和5年に刑法が改正されるまでは、身体に直接触れるような悪質な痴漢行為は、より重い強制わいせつ罪が適用されていました。現時点においても改正前に行われた行為については、「強制わいせつ罪」の適用が考えられます。

(2)各迷惑行為防止条例違反の罪

 電車内や混雑な場所において、着衣の上から被害者の身体に触れる行為は、今後も迷惑行為防止条例違反が適用されることが考えられます。しかし、不同意わいせつ罪との境界線が、より曖昧となってきている点には注意が必要です。

4 不同意わいせつ罪と告訴の関係

 そもそも告訴とは、被害者が捜査機関に対して、犯罪の事実を申告し加害者に対する処罰を求める行為をいいます。そして、告訴が無いと起訴ができない犯罪類型のことを親告罪といいます。
 不同意わいせつ罪は親告罪とされていません。したがって、不同意わいせつ罪の被害者の告訴がなくても起訴ができます。つまり、被害者との示談が成立し、告訴を申し立てない旨を明らかにしてもらえたとしても、起訴されてしまう可能性は残ってしまうのです。
 もっとも、捜査機関も被害者の意思は最大限尊重してくれますので、ほとんどの場合、示談の成立が認められれば、不起訴処分を得られる可能性が高いといえます。

5 よく逮捕・起訴されている行為(具体的態様)

(1) 悪質な痴漢

 電車内等の混雑に乗じて、他人の身体に触れるような行為の内、着衣の上からではなく、直接被害者の身体に触れるような行為は、不同意わいせつ罪として扱われます。
 被害者の方や目撃者の方、或いは鉄道警察隊等によって、犯罪行為を現認されることが多く、現行犯逮捕される危険性が極めて高いものといえます。そのため、通勤時間帯で会社に迷惑がかかるからと言った理由ではもちろん、逮捕は免れませんし、不合理な否認や身元引受人がいない場合には、逮捕だけにとどまらず、そのまま長期間の勾留がされる可能性もあります。
 また、令和5年の法改正に伴い、着衣の上から被害者の身体に触れるような行為についても、不同意わいせつ罪として逮捕されるケースが目立つようになりました。

(2) 飲酒の上でのわいせつ行為

 従前から、被害者の方が酩酊状態にあることに乗じて、わいせつ行為に及ぶ行為は準強制わいせつ罪として扱われていました。しかし、「心神喪失」や「抗拒不能」といった要件が定められていましたので、相当程度に酩酊していなければ、飲酒後のわいせつ行為が犯罪として扱われることは多くありませんでした。
 法改正に伴い、アルコールを摂取させたことに伴い、わいせつ行為に同意しないことが困難な状態となったと認められた場合には、不同意わいせつ罪として処罰されることになりました。
 飲酒後の性行為について、刑罰が科される危険性が高まったといえます。

(3) 16歳未満に対するわいせつ行為

 これまでは、13歳未満の方に対してわいせつ行為に及んだ場合には、被害者の方の承諾を得ていたとしても、強制わいせつ罪が適用されていました。
 不同意わいせつ罪との関係でも同様です。しかしながら、法改正に伴い、わいせつ行為の相手方が13歳以上であっても16歳未満の場合、わいせつ行為についての承諾を得ていたとしても、被疑者側が5歳以上年上の場合には、不同意わいせつ罪が適用されることになりました。
 中学生同士や高校生同士で行われた合意の下でのわいせつ行為であれば、通常は不同意わいせつ罪が適用されることはありませんが、大学生や成人が中学生や高校生に対してわいせつ行為に及んだ場合には、合意の下でのわいせつ行為でも犯罪となってしまう可能性があるのです。

6 不同意わいせつ罪の弁護方針

(1) 犯罪事実を認める場合

ア 弁護方針

 不同意わいせつ罪は親告罪ではありませんから、被害者の意向に反してでも、検察官は起訴することが可能です。しかしながら、性犯罪についての裁判を行うことは、被害者にとっても精神的な負担が著しいものになりますから、ほとんどの場合は、被害者の方が示談が成立した場合、不起訴処分を得られる可能性が高まります。
 もし、犯罪事実を認める場合には、真摯な反省と被害賠償に向けた弁護活動を行うとともに、逮捕を伴う場合には早期の身柄開放を働きかけ、不起訴処分を目標に弁護活動を行うこととなります。

イ 被害賠償金(示談金)の交渉について

 わいせつ行為によって被害者が被る精神的苦痛や肉体的苦痛は想像に難しくありません。ですから、被害者としては、謝罪や賠償金の支払いが目的であったとしても、そのような苦痛を与えた張本人やその家族と連絡を取ることを望みません。
 一方で、第三者である弁護士であれば、賠償金や謝罪を受けることを目的に、話に応じていただける可能性はあります。そのため、被害賠償(示談)を検討する場合には、弁護士にまず相談されることをお勧めいたします。
 検察官も、直接加害者には被害者の連絡先を教えることが出来ない場合でも、弁護士には連絡先を伝えることも許諾されることもあります。
 不起訴となる要因は犯罪の事情を総合的に考慮して決められますが、被害者との間で、示談が成立していることは、不起訴となる要因として大きな要因です。
 具体的な金額については、個別具体的事案によって異なりますのでご相談いただければと思います。

ウ 再犯防止策

 不同意わいせつ罪は典型的な性犯罪になります。痴漢に準じた行為などとの関係では、性依存症が疑われることもあります。この場合には、二度と同じ過ちを起こさないために専門の医療機関に通院するということも、重要になります。また、家族や勤務先上司からの身元引受書や身元監督書の提出なども一定の効果があると考えられています。
 一方で、不同意わいせつ罪として扱われる行為には様々なものがあり、依存症が常に懸念される訳ではなく、様々な原因が考えられます。どのような主張が被疑者の刑事責任を減少させるかは、ケースバイケースです。
 主張の内容によっては、事実を積み上げるために(通院であれば複数回の通院実績を確保するなど)、一定の期間がかかるものがあり得ます。早期に弁護士に御相談いただければと思います。

(2) 犯罪事実を否定する場合

ア 捜査機関に対して、自白をしないという姿勢を貫く

 強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪という形に変わったことによって、どのような場合が犯罪になるのかという点についての定めが詳細なものとなりました。
 すなわち、被害者の方が、わいせつ行為について同意しない意思を明らかにすることができなかった理由が類型化されることになりました。
 どの類型に該当することを理由に、不同意わいせつ罪の被疑者とされているのかを確認した後、それぞれの類型に該当しないことや、当該類型に該当するとしても、被害者の方が同意しない意思を明らかにすることができなかったとはいえないことについて、具体的な事情と共に検討することとなります。
 もっとも、捜査機関の誘導によって被疑者にとって好ましくない発言を記録されるおそれもありますので、わいせつ行為が行われたとされている状況について、こちら側の弁解をどの程度詳細に伝えるのか、或いは黙秘権を行使するのかについて、早急に弁護士のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

イ 被害者や現場にいた関係者の目撃の証言の信用性を争う。

 不同意わいせつ罪には、様々な類型があります。客観的な証拠があるものもありますが、性的な行為に関する内容ですので、密室や目撃者が存在しない場所で行われる場合も多いです。そのような場合、被害者とされる方の供述の信用性を争うことになります。具体的には、
・被害者の供述が具体的かどうか
・被害者の供述と矛盾する事実は存在しないか
・過去の被害者の供述に矛盾点が存在しないか
などを検証することとなります。

7 法定刑一覧(参考条文)

(不同意わいせつ)

第176条1項
1項 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3項 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。

<迷惑行為防止条例違反事件に関する法定刑一覧>
犯罪の種類法定刑

東京都条例違反

(単純)

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

(常習)

2年以下の懲役または100万円以下の罰金

神奈川県条例違反

(単純)

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

(常習)

2年以下の懲役または100万円以下の罰金

埼玉県条例違反

(単純)

6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

(常習)

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

千葉県条例違反

(単純)

6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

(常習)

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

※強制わいせつ罪に該当する場合には「6月以上10年以下の懲役」となります。罰金刑がないため、起訴された場合には、実刑を伴う場合もあります。

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