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コラム

マスクの転売が法律で禁止に。知人に売却した場合は罰則の対象になる?

 新型コロナウイルスが猛威を振るっております。現段階においても感染者は拡大の一途をたどっており、公立学校も休校となってしまっています。  そして、今回のコロナウイルスの騒動によって、マスクやトイレットペーパー等の生活品が品薄になり混乱が生じました。このような混乱を収束させるため、国民生活安定緊急措置法に基づく措置として、マスクの不正転売等の行為に対して刑罰を科すことを内容とする閣議決定がなされました。この内容は、令和2年3月15日から施行されることになります。  では、花粉症等の理由で、従前から備蓄していたマスクを、友人に対して売却した場合でも処罰対象になるのでしょうか。  今回は、国民生活安定緊急措置法に関する閣議決定について、解説させていただこうと思います。

国民生活安定緊急措置法とは

目的

そもそも、国民生活安定緊急措置法とはどのような法律なのでしょうか。多くの方にとっても、あまり耳にしない法律だと思います。この法律の第1条は、この法律が制定された目的について次のように定めています。

国民生活安定緊急措置法

第1条  この法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。

 国民の生活に必要な物資が異常事態においても国民全体に行きわたるように、価格や需給の調整を行うことを目的とする法律だということが理解できます。

手段

 では、この法律は上述した目的を達成するための手段として、どのような内容を定めているのでしょうか。  例えば、物価の高騰が認められる物資が存在する場合に、当該物資の価格を指定し、その価格を超えた金額で販売した者に対して課徴金を納付するように命じることができる旨などが定められています。条文を御確認ください。

国民生活安定緊急措置法

第3条1項  物価が高騰し又は高騰するおそれがある場合において、国民生活との関連性が高い物資又は国民経済上重要な物資(以下「生活関連物資等」という。)の価格が著しく上昇し又は上昇するおそれがあるときは、政令で、当該生活関連物資等を特に価格の安定を図るべき物資として指定することができる。 第4条  主務大臣は、前条第一項の規定による指定があつたときは、その指定された物資(以下「指定物資」という。)のうち取引数量、商慣習その他の取引事情からみて指定物資の取引の標準となるべき品目(以下「標準品目」という。)について、遅滞なく、標準価格を定めなければならない。 第7条  主務大臣は、指定物資を販売する者のその指定物資の販売価格が次の各号に掲げる品目の区分に応じ当該各号に規定する価格を超えていると認めるときは、その者に対し、当該各号に規定する価格以下の価格でその指定物資を販売すべきことを指示することができる。 第8条1項  第4条から前条までに規定する措置を講じてもなお指定物資の価格の安定を図ることが困難であると認められる場合において、その指定物資の価格の安定を確保することが特に必要であるときは、政令で、当該指定物資を特に価格の安定を確保すべき物資として指定することができる。 第9条  主務大臣は、前条第一項の規定による指定があつたときは、その指定された物資(以下「特定物資」という。)のうち取引数量、商慣習その他の取引事情からみて特定物資の価格の安定のためにその価格の安定を確保すべき品目(以下「特定品目」という。)について、遅滞なく、特定標準価格を定めなければならない。 第11条  主務大臣は、特定品目の物資の販売をした者のその販売価格が当該販売をした物資に係る特定標準価格を超えていると認められるときは、その者に対し、当該販売価格と当該特定標準価格との差額に当該販売をした物資の数量を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

 今回は、このような価格を指定するような手段ではなく、取引自体を禁止する手段がとられました。次の条文を御確認ください。

国民生活安定緊急措置法

第26条1項  物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を政令で指定し、政令で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。 第37条  第26条第1項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる

 この条文によると、販売価格が決められるのではなく、政令で定めることによって、譲渡若しくは譲受行為自体を制限若しくは禁止することができます。  さらに、その政令に違反した場合の刑罰も定めることができるのです。

国民生活安定緊急措置法施行令

 上述した条文に基づいて制定されているのは、国民生活安定緊急措置法施行令になります。今回のコロナウイルスの騒動に対応するために、次のような条文が追加されました。

国民生活安定緊急措置法施行令

第1条  国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第26条第1項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。 第2条  衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡 (不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであって、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。 第7条1項  第2条の規定に違反した場合には、当該違反行為をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 肝となるのは第2条です。衛生マスクの譲渡を禁止しているのですが、その禁止される譲渡の態様を括弧書きの中で制限しており、仕入れ価格よりも高い値段で、不特定多数の者に積極的に販売する行為を禁止しています。

どのような場合に犯罪行為となってしまうのか

 冒頭で述べたような、友人からマスクを譲るように依頼を受けて、備蓄していたマスクを少し高い値段で売るような行為については、不特定多数の方に対して積極的にマスクを販売するような行為ではありませんから、今回の政令に違反しないことになります。  また、備蓄していたマスクを善意で不特定多数の方に譲渡する場合も、その仕入れ価格と同額又は安い価格で販売するのであれば、今回の政令に違反することはありません。  しかしながら、経済的利益を目的とするのではなく、善意でマスクを譲渡する場合であっても、入手の際にかかった送料等の値段も含めた金額で販売してしまうと、「購入価格を超える価格」で販売したことになってしまいます。  政令は、利益を得ることを目的としているかどうかを問題にしていないため、実費等を考慮すれば、マスクを販売したことで儲けが出ていなくても、刑罰を科されてしまう可能性があるのです。

転売に関する犯罪の弁護活動

 まだまだコロナウイルスは世界中で猛威を振るっていますが、マスク等の感染予品についての供給量が安定してきたことから、現段階においてはマスクの転売は、罰則の対象から外されました。  
 しかし、今回のことで、今後も何らかの必需品の供給が不足した際に、営利目的で転売事業を行うと処分される可能性があることが分かりました。当然、これまで違法ではなかった行為に罰則を設ける訳ですから、政府も十分な周知を行うはずです。知らない内に罪を犯すことがないように、何か新しい事業を行うにあたっては、法律の専門家のアドバイスを受けておくことが好ましいでしょう。法律に違反した場合に、逮捕・勾留され、起訴される危険性のある刑事事件については、刑事事件の被告人となることがないように、専門の弁護士にアドバイスを求めることが重要です。  
 特に、転売に関する犯罪については、仕入先や販売先など、多数の人間が関与することになります。このような犯罪については、関係者間の口裏合わせ等を防ぐために、被疑者を逮捕・勾留するケースが極めて多く認められます。
 一方で、それまで犯罪行為となっていなかった行為に対して新たな罰則を設ける場合、そのような行為は他の犯罪行為と比較すると、悪質性が低いものと考えることのできるケースも多く、刑事事件についての経験や知識のある弁護士の活動によって、前科をつけることなく終結させられる可能性も大いに認められるのです。  
 もし、新たに始めた事業等に関連して、警察署等から接触があった場合など、心配事がありましたら、御気軽に御相談いただければと思います。

まとめ

 今回は、コロナウイルスが猛威を振るう中、マスクの転売行為を禁止することを内容とした国民生活安定緊急措置法及び同法施行令について解説させていただきました。  刑罰を科す行為について、法律では具体的に定めることなく、政令によってその処罰範囲を具体化させるような法律は少なくありません。前回のコラムで紹介させていただきました、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)も、違法とする薬品の指定を政令に委ねています。  政令にその処罰範囲を委ねているのは、法律自体を改正することなく、新たに処罰範囲を拡大または縮小させることができるため、国として迅速な対応が可能となる点にあります。  一方で、国民としては、それまで違法ではなかった行動について刑罰が科されることになる訳ですから、十分に注意する必要があります。過去に適法であったからといって、その行為が現時点においても適法だとは限らないのです。  もし、ご不安に思われることがあるようでしたら、お気軽に弊所まで御相談ください。

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