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コラム

銀行口座が凍結されてしまった…取引停止措置について

簡単に言うと…
  • キャッシュカードや通帳を譲渡することで、犯収法違反という罪の被疑者となることがある。
  • 詐欺等の被害金の振込先となっている口座は、簡単に凍結されてしまう。
  • 一度凍結されてしまった口座の中の預金を引き出すことは非常に苦労することとなるため、キャッシュカードや通帳は第三者に譲渡してはならない。
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 御自身が名義人となっているキャッシュカード等を他人に譲渡する行為が犯罪となることについては御存知でしたでしょうか?普通であれば、御自身のキャッシュカードを他人に譲渡しようとは思わないでしょうし、どのような罪を犯してしまうのかについて正確に理解できていなくても、譲渡したらまずいのではないかと考えられるのではないかと思います。
 実際に、他人名義の通帳やキャッシュカードを入手した人間が、その口座を何に用いるかということを考えれば、自分に足がつかない口座として、犯罪に利用するのではないかということは想像し易いのではないでしょうか。
 しかしながら、経済的な困窮等によって精神的に追い詰められてしまうと、視野が狭窄してしまい、そのようなことを考えられなくなってしまう場合があります。そして、「融資をするにあたっては、キャッシュカードや通帳を事前に送付する必要があります」というようなメッセージに騙されて、キャッシュカード等を送付してしまうのです。
 この場合、融資を得る目的でキャッシュカードを交付している訳ですし、その後、お金を融資してもらえなかった場合には、キャッシュカードを譲渡した方は、詐欺の被害者になります。しかし、動機はさておき、キャッシュカードを第三者に譲渡すること自体は理解して行っている訳ですから、その行為については犯罪の被疑者として取り扱われてしまいます。
 さらに、譲渡したキャッシュカードに関する口座が犯罪に用いられてしまった場合、その口座が凍結されてしまうことがあります。弊所でも、銀行口座が凍結されてしまったと相談をいただく機会は少なくありません。
 今回は、キャッシュカードを譲渡することで、銀行口座が凍結されてしまうといった出来事について、どのような法律が適用されているのか、どうしたらいいのかについて解説させていただきたいと思います。

1.成立する犯罪

 
 キャッシュカードを第三者に譲渡し、そのキャッシュカードが犯罪に用いられてしまった場合、どのような犯罪が成立することになるのでしょうか。
 最悪なのは、そのキャッシュカードを用いて行われた犯罪の共犯者として扱われることです。例えば、オレオレ詐欺の被害者が、詐欺グループから振込先として、入手した口座を指定した場合、被害者からすれば、口座の名義人は共犯者の一人に見えるように思います。
 一方で、自分達が捕まることがないように、詐欺グループは自身の名義で作成した口座を犯罪で使いませんから、捜査機関からは共犯者として疑われずに済むかもしれません。しかし、次の犯罪の容疑で被疑者として扱われる可能性が高いです。

犯罪による収益の移転防止に関する法律

第28条
1項 他人になりすまして特定事業者…との間における預貯金契約…に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。

 1項はキャッシュカード等を受け取る側に対する罰則を定めており、2項はキャッシュカードを譲渡する側に対する罰則を定めています。当然、その口座を犯罪に用いた場合には、詐欺等のより重い犯罪が成立することになるのですが、キャッシュカードのやり取りのみに着目すると、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下、「犯収法」といいます。)第28条2項は、同条1項と同じ法定刑を定めていますから、犯罪に用いるために他人名義のキャッシュカード等を集める行為と同程度に、キャッシュカードを譲渡する行為は悪質だと考えられている訳です。

2.口座の凍結

 
 キャッシュカードを譲渡する対価として金銭等を受領してしまっている場合には、有償で預貯金通帳等を譲り渡したとして、犯収法違反の罪が成立してしまいます。
 一方で、無償でキャッシュカードを譲渡した場合、「預貯金契約…に係る役務の提供を受けること」という目的を認識していなければ、犯罪は成立しませんが、キャッシュカードの使用方法には限りがあるでしょうから、このような認識がなかったと主張することには一定のハードルがあるように思われます。
 それでも、キャッシュカードを騙し取られたという側面もありますから、被疑者として取り扱われていない方の相談も珍しくありません。
 被疑者として取り扱われていないのに、法律相談をされる方が珍しくないのは、次のような法律があるからです。

犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律

第3条
1項 金融機関は…捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。
2項 金融機関は、前項の場合において、同項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された疑いがある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対して必要な情報を提供するものとする。
第2条
3項 この法律において「振込利用犯罪行為」とは、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたものをいう。
4項 この法律において「犯罪利用預金口座等」とは、次に掲げる預金口座等をいう。
1号 振込利用犯罪行為において、前項に規定する振込みの振込先となっ た預金口座等

 第3条1項は、犯罪利用預金口座であるとの疑いがある場合には、取引停止等の措置を講ずることを金融機関に求めています。どのような口座は犯罪利用預金口座になるかについても、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(以下、「振込詐欺救済法」といいます。)で定義されているのですが、詐欺の被害金が振り込まれた口座であれば、名義人が共犯者であるかどうかに関わらず、凍結の対象となる旨が定められているのです。
 更に、「犯罪利用預金口座であるとの疑いがある場合」と定められていますから、そのような疑いがある旨の通知が捜査機関等からあった場合には、本当に犯罪利用預金口座であるかどうかの調査をせずとも、凍結の対象となってしまうのです。

3.凍結口座内の預金の消滅

 
 御自身の口座が使えなくなるだけでも大変ですし、振込詐欺救済法第3条2項では、他の金融機関に対する情報提供に関する定めが設けられており、先程お伝えしたとおり、「犯罪利用預金口座であるとの疑い」さえ認められてしまうと、口座が凍結されてしまいます。
 日常生活に大きな影響を及ぼすことになります。
 一方で、振込詐欺救済法という名前の法律で定められた手続ですから、口座を凍結しただけでは、振込詐欺の被害者が救済されることはありません。
 凍結後にも手続が予定されているのです。

犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
(公告の求め)

第4条
 金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、次に掲げる事由その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは…預金保険機構に対し…当該債権の消滅手続の開始に係る公告をすることを求めなければならない。
(預金等に係る債権の消滅)
第7条
 対象預金等債権について、第5第1項第5号に掲げる期間内に権利行使の届出等がなく、かつ、前条第2項の規定による通知がないときは、当該対象預金等債権は、消滅する。この場合において、預金保険機構は、その旨を公告しなければならない。

 このように、振込詐欺救済法は預金等債権を消滅させる旨を定めています。預金等債権が消滅した場合には、口座の名義人に預金額相当の金銭を払い戻す必要がなくなりますから、その金銭を振込詐欺の被害者の救済に充てようというのがこの法律の趣旨になるのです。

4.消滅を防止する手続

 
 キャッシュカードを譲渡することが犯罪に当たるとしても、口座内の預金を全てなかったことにされるというのは、金額にもよるのかもしれませんが制裁として大きすぎます。
 預金の消滅について防ぐ方法はあるのでしょうか。
 振込詐欺救済法第7条は、「権利行使の届出等」がない場合に預金債権が消滅する旨を定めていますので、権利行使の届出等を行うことによって消滅を防止することは可能です。
 とはいえ、消滅が防止されるだけで、口座が凍結されたままでは預金を引き出すことができません。
 預金を引き出すためには、もともとの取引停止等の措置を解除してもらう必要があります。また、元々口座の名義人と銀行等の金融機関との間の契約内容を考えれば、名義人には自身の口座内に預託された金銭を引き出す権利があるはずですから、金銭の支払いを求めて訴訟を提起することも考えられます。
 この点について、東京地方裁判所平成22年12月3日判決は、「本件口座が犯罪利用預金口座等でないことを立証するには…本件口座が…判決等によって本件口座が犯罪利用預金口座等に当たらないことが明らかにされ、あるいはこれらの者が長期間にわたり原告に対し損害賠償等を求めず、事実上その権利行使が放棄されているといった事実が立証される必要がある」と判示しています。
 判決等で犯罪利用預金口座等に当たらないことを明らかにすることが唯一の方法とは判示していませんが、相当に高い立証のハードルを越えないと、取引停止等の措置がなされている口座の中の預金を引き出すことは難しいといえるでしょう。

5.弁護人の関与

 
 詐欺罪等の共犯者として取り扱われてしまう場合、共犯者との接触を封じるために逮捕されてしまうケースが多いように思われます。キャッシュカードを騙し取られてしまっているという被害者的な側面があったとしても、そのことが共犯関係になかったことを直接裏付けるものではありませんから、捜査機関や裁判所に対して共犯関係になかったことを適切に主張するにあたっては、刑事事件の経験が豊富な弁護士による助力が不可欠といえそうです。
 逆に、犯収法違反の疑いに止まる場合であっても、上述したとおり、犯罪の成立には主観的な要件(認識)も問題となり得るため、まずは本当に犯罪行為にあたるのかという点からの弁護が求められますし、犯収法違反の事実が成立してしまう場合であっても、被害者的な側面やキャッシュカードを譲渡するに至った経緯等を理由に、不起訴処分を求める弁護活動が求められます。
 一方で、銀行口座が凍結されてしまった場合の対応は、刑事事件の問題とは少しズレていますので、申し訳ございませんがそれだけを御依頼いただいても、弊所では受任させていただいておりません。もし、刑事事件が平行して係属している場合には、弊所に御相談いただければと思います。

6.まとめ

 
 今回は、キャッシュカードを譲渡してしまった場合に、どのような犯罪が成立してしまうのかという点に加え、口座が凍結されてしまうということについて解説をさせていただきました。
 口座についての取引停止措置等については、その措置を止めさせるためのハードルが極めて高いものとなっています。
 やはり安易にキャッシュカードや通帳等について他人に譲渡することがないように、賢明に御判断いただくことが一番だといえるでしょう。

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