ご家族・ご友人が逮捕・起訴されてしまったら、すぐにお電話ください!

0120-845-018

受付時間:7時~23時(土・日・祝日も受付)

初回電話
相談無料
守秘義務
厳守
東京 埼玉 神奈川 千葉

コラム

脱税事件について

簡単に言うと…
  • 脱税に対しては刑罰が定められている。
  • 税理士だけでなく弁護士によるサポートが求められることもある。
  • 犯罪の成否が問題となる場合、「偽りその他不正の行為」と認められるかどうかに加えて、故意の有無についても問題となる。
詳しくみる
弁護士
岡本 裕明
「脱税」という言葉は聞いたことがあると思います。税金の問題ですから、本来的には税理士に相談すべき内容ですが、どのような場合に刑事事件の弁護士に相談すべきなのでしょうか。

 「脱税」という言葉は皆様も聞いたことがあると思います。そして、その内容として、納めるべき税金を納めないことを意味するものだということは、御理解されているのではないかと思います。
 しかし、税金には様々な種類があります。所得税、消費税、法人税、相続税のように、名前だけは聞いたことがあっても、どのように課税金額が計算され、誰がどのように納めているのかについては、先程名前を挙げたような著名な税金についても、詳しく認識されている方は多くないのではないでしょうか。
 税務の問題についての一番の専門家は税理士になります。私自身も、東京弁護士会を経て国税局長に通知をしておりますので、通知弁護士として税理士業務を行うことは可能ですが、税務問題については本職の税理士に相談させていただいております。
 「脱税」と一般的に呼ばれるような行為についても、修正申告等を行うことによって解決できる場合には、弁護士よりも税理士にお願いするべきでしょう。より高度な専門性を有しているのは税理士ですので。
 他方で、「脱税」と呼ばれる行為の中には、犯罪行為として刑罰が定められているものがあります。そして、犯罪行為である以上、傷害罪や窃盗罪と同じように、検察官によって起訴され、裁判所において刑事裁判を受けなくてはいけない可能性があります。そのような状況に追い込まれてしまった場合には、税理士ではなく、刑事事件の弁護士の出番になるでしょう。
 そこで、今回は、刑事事件の弁護士に相談すべき「脱税」の問題として、どのようなものがあるのかについて、確認してみたいと思います。

脱税事件について

1.脱税に関する犯罪の種別

弁護士
岡本 裕明
犯罪となる「脱税」には、どのようなものがあるのでしょうか。確認してみましょう。

 刑罰が科される可能性があるとはいっても、「脱税罪」というものが刑法に定められている訳ではありません。また、様々な税金に関する刑罰が包括的に定められている「税金法」というものがある訳ではありません。所得税であれば所得税法に定められていますし、消費税であれば消費税法に定められており、税金を納めない行為の内、どのような行為に刑罰を科すのかについても、それぞれの税法で定められています。
 そこで、何か一つの法律を確認することで、税法違反の犯罪行為全般を理解することはできないのです。
 しかし、どのような税金が問題となっているにしても、納めるべき税金を納めない行為が「脱税」である点は共通していますから、各税法において犯罪として定められている行為には共通性が認められます。
 そして、どのような行為に対して刑罰が定められているのかを分類して理解するにあたって、①租税ほ脱犯と②租税危害犯に分けて考えることが多いです。②租税危害犯とは、納税手続等に違反する行為について刑罰を科すもので、例えば、申告書を提出しない単純不申告罪(所得税法第241条等)や、税務職員の検査を拒絶するような検査拒否罪(同法第242条等)等が存在します。
 逆に、①租税ほ脱犯とは、単なる手続違反ではなく、国や自治体の租税債権を直接侵害する犯罪を意味します。「脱税」事件として報道されるケースの多くは、租税ほ脱犯に分類されるものといえるでしょう。
 租税ほ脱犯の中には、酒類の無免許製造罪(酒税法第54条1項)のように、納税自体の問題ではないように思われるものも含まれていますし、税金額の計算を狂わせるのではなく、滞納処分の執行を免れるために財産を隠ぺいした場合に成立する犯罪(国税徴収法第187条)等も含まれており、その内容は多岐にわたります。

2.典型的なほ脱犯の内容

弁護士
岡本 裕明
「脱税」の中でも、最も典型的な犯罪と考えられる「ほ脱犯」について、その内容を確認してみましょう。

 以上のように、一口に「脱税」といっても様々な態様が存在し、様々な法律によって刑罰が科されています。
 一方で、皆様が「脱税」についての報道を目にする際には、「所得隠し」や「架空経費の計上」のような態様が問題視されていることが多いのではないでしょうか。このように、実際よりも所得が少ないように装うなどして、本来的に納めなければならない税金の納税を免れるような行為が、典型的な「ほ脱犯」といえるでしょう。
 では、このような典型的なほ脱犯については、各法律でどのように定められているのでしょうか。代表的な法律をいくつか確認してみましょう。

所得税法

第238条
 偽りその他不正の行為により、第120条第1項第3号(確定所得申告)…に規定する所得税の額…若しくは第172条第1項第1号若しくは第2項第1号(給与等につき源泉徴収を受けない場合の申告)に規定する所得税の額につき所得税を免れ、又は第142条第2項(純損失の繰戻しによる還付)…の規定による所得税の還付を受けた者は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

法人税法

第159条
 偽りその他不正の行為により、第74条第1項第2号(確定申告)に規定する法人税の額…につき法人税を免れ、又は第80条第10項(欠損金の繰戻しによる還付)…の規定による法人税の還付を受けた場合…その違反行為をした者は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

相続税法

第68条
 偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する

 所得税法と法人税法については、かなり省略して紹介しているので、気になる方は法律の原文を御確認いただければと思います。
 ここで着目していただきたいのは、いずれの法律も、「偽りその他不正の行為」によって、納税を免れた場合に、刑罰を科しているという点です。また、同様の行為によって、不当に税金の還付を受けた場合も、同様に処罰されることとされています。
 刑法で定められている内容と比較すると、罰金額の上限が比較的高額に定められている点に加え、拘禁刑と併科することができる旨が定められている点に特徴があります。脱税を試みることが経済的にも不合理であることを明らかにして、適切に納税することを奨励するためにも、高額な罰金刑を拘禁刑と併せて科すことができるように定められているのです。
 当然、罰金を支払ったとしても、税金を納付したことにはなりませんから、別個に追加で税金を納付する必要があります。
 ちなみに、「1000万円以下の罰金」と定められているものの、それ以上に高額な罰金刑が科されている事案についての報道を見たことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。それは、例えば所得税法でいうと、第238条2項において、「免れた所得税の額…が1000万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、1000万円を超えその免れた所得税の額又は還付を受けた所得税の額に相当する金額以下とすることができる」と定められているため、ほ脱金額が高ければ高いほど、罰金の金額も高く設定できるからです。

3.偽りその他不正の行為

弁護士
岡本 裕明
「ほ脱犯」が成立する際の肝となるの要件、「偽りその他不正の行為」とは、どのような行為を意味するのでしょうか。

 以上のとおり、法律を確認すると、「所得税を免れ」たり、「法人税を免れ」たりするだけでは、所得税法違反等は成立しません。所得税等を免れるにあたって、「偽りその他不正の行為」に及ばなければ、犯罪にはならないのです。
 そこで、「偽りその他不正の行為」とは、どのような行為を意味するのかという点が問題となります。
 この点について、最高裁昭和42年11月8日判決は、「逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行なうことをいうもの」と説明しています。もっとも、条文の文言よりは、説明が少しだけ詳しくなっている程度で、結局どのような行為を意味するのか分かり難いように思います。
 そこで、実際の裁判例において、「偽りその他不正の行為」として認められた行為を具体的に確認してみましょう。
 販売収入の一部を除外して所得金額を過少に申告する行為や、架空の外注費を計上して所得金額を過少に申告する行為等が典型例ですが、虚偽の住民登録をすることで居住実態と住民登録を乖離させて所得秘匿工作に及んだ行為、事業により生じた収益を繰越欠損金のある関係会社の収益であるとして申告する行為等、様々な行為が「偽りその他不正の行為」として認められています。
 結局、適切な納税額よりも少ない納税額にしようと試みる行為のほとんどが、「偽りその他不正の行為」にあたってしまうといえそうです。本来的に申告すべき金額と異なる金額で申告した場合には、「偽りその他不正の行為」に該当することになるでしょう。

4.申告しない場合にも成立する

 他方で、税金を免れる方法としては、納税額が小さくなるように、意図的に過少な所得額等を申請する方法だけでなく、何らの申告をしないケースもあり得ます。申告書を提出しない単純不申告罪(所得税法第241条等)が、租税危害犯に分類される旨は上述しました。
 単純不申告罪は、「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる」として、先程紹介したほ脱犯の規定と比較すると、極めて軽い刑罰とされています。
 しかし、過少申告ではなく申告自体をしないケースにおいても、脱税行為の露見を防ぐために、所得を隠ぺいするような「偽りその他不正の行為」を行うことは考えられますから、その場合には単純不申告罪ではなく、ほ脱犯が成立することになります。もっとも、この場合には、過少な金額を申請している訳ではないので、申告した金額と申告すべき金額に差異があることを理由に、「偽りその他不正の行為」と認めることはできません。
 そこで、そのような「不正の行為」がなされていたかどうかで判断することになります。例えば、帳簿を二重に作成していた場合には、「不正の行為」と認定されることに問題はなさそうです。もっとも、最高裁判所平成6年9月13日判決は、虚偽の帳簿を作成したりするなどの工作を積極的に行った形跡は認められない事案において、「仮名又は借名の預金口座に売上金の一部を入金保管することは、税務当局による所得の把握を困難にさせるものであることに変わりはな(い)」と判示しています。
 結局、意図的にほ脱を試みて行われる行為については、基本的に「偽りその他不正の行為」に該当することになるものといえそうです。
 更に、「偽りその他不正の行為」に及んでいないと判断された場合であっても、単に申告しなかっただけでなく、その結果として税を免れた場合には、申告書不提出ほ脱犯として、下記のような規定も存在します。

所得税法

第238条3項
第1項に規定するもののほか、第120条第1項…の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第120条第1項第3号…に規定する所得税の額…につき所得税を免れた者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 刑罰の程度は半減していますが、単純不申告罪と比較すると、重い刑罰が予定されています。申告書不提出ほ脱犯については、現時点(令和7年6月)においては、積極的に適用されている訳ではなさそうですが、「偽りその他不正の行為」について否定するだけでは、無罪の主張に繋がらない可能性がある点に留意する必要があります。

5.脱税事件における弁護活動

弁護士
岡本 裕明
「偽りその他不正の行為」という要件が、相当に広く認められてしまうと考えた場合、弁護活動としてどのような内容が考えられるのでしょうか。

 以上のとおり、積極的に虚偽の資料を作成するような行為がなく、適切な納税額の算定を困難にさせるような程度の行為でも、「偽りその他不正の行為」として認められてしまう可能性が高いとすれば、弁護人としてどのような弁護活動が可能なのでしょうか。
 もし、事実について争いがない場合には、修正申告等の手段によって、正しい金額を納税することが、検察官の処分や裁判所の量刑を減軽するのにもっとも有効なものといえます。税務署の判断や計算が誤っている可能性は否定できませんから、まずは税理士への相談が不可欠なものといえるでしょうが、検察官や裁判官に対して減刑を求めるために修正申告等を行う場合には、弁護士による活動が必要になるでしょう。
 他方で、減刑ではなく、犯罪の成立自体についても争う余地はあります。それは、客観的に、「偽りその他不正の行為」に及んでいると認められてしまった場合であっても、そのことを意図的にやっていなければ、故意が否定されることになりますから、犯罪の成立を否定することができるのです。
 実際に、故意が否定されることによって、無罪判決が宣告された裁判例は存在します。東京地方裁判所平成25年3月1日判決は、被告人が、源泉徴収されずに海外口座に入庫等されたインセンティブ報酬等について申告することなく、約3億5000万円を秘匿したという事案において、税金制度への無理解や税理士に一任していたことなどの事情を前提に、過少申告となっていることを認識できていなかったとして無罪を言い渡しています(実際には、様々な事情を精査した上で故意を否定しており、単に税金制度に無知だったことのみを理由にしている訳ではありませんので、興味がある方は判決文を直接御覧になってください)。
 社会が複雑になっていることに伴って、税金の問題も複雑化していますから、「偽りその他不正の行為」によるものではないという主張も考えられますが、故意の部分についても安易に認める前に、本当に犯罪が成立するような行為なのかについて、十分な精査が必要となるでしょう。

6.まとめ

弁護士
岡本 裕明
脱税の問題について御理解いただけましたでしょうか。税理士だけでなく、弁護士によるサポートが必要になる状況もあるのです。

 以上のとおり、「脱税」と呼ばれる犯罪行為の中には、様々な種類のものがありますし、典型的な行為と考えられる「ほ脱犯」との関係でも、どのような場合に犯罪が成立するのかについて、一律に判断することは困難です。
 検察庁や裁判所に関連する手続となる前の段階から、税理士だけでなく弁護士によるサポートが重要となるケースもあり得ますので、一度、専門家に御相談いただければと思います。

Tweet

関連する記事