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コラム

ゴーン氏逃亡で揺れる日本の刑事手続きにおける「保釈」とは

 昨年の大晦日に大変なニュースが流れました。特別背任の罪等で起訴されていた日産自動車の元会長であるカルロス・ゴーン氏が、保釈中の身であるにもかかわらず、日本を出国しレバノンに入国したとのことです。
 その後の報道で、ゴーン氏は裁判所の許可を得ることなく、また弁護人に事前に相談することもなく、無断で出国していたことが明らかとなりました。
 非常に大きな問題として年末年始を騒がせた事件となったのですが、その中には弁護人や裁判官の責任を問う声も多く聞かれました。しかしながら、そのような批判の多くは、「保釈」という制度について十分に理解していないものがほとんどであるように思いました。
 日本の刑事手続については改善すべき点が多くあるように思います。あるべき刑事手続に近付くために、刑事手続について一般市民の中で議論がなされることは好ましいことと言えます。
 しかし、正しい知識を前提にしなければ、有意義な議論にはなりません。そこで、今回のコラムでは、「保釈」の基本的な内容について、その内容を解説させていただくことにします。
 そして、次回のコラムでは、ゴーン氏の件で問題となった、保釈が認められた後の諸問題について解説したいと思います。

保釈の前提としての勾留

「起訴前の勾留」と「起訴後の勾留」の違い

 「保釈」とは、保釈保証金の納付を条件に、一時的に釈放してもらう制度です。当然のことですが、「保釈」は、逮捕・勾留の手続によって身体を拘束されている方が対象となります。
そして、刑事手続における身体拘束は、大きく2つに分けることができます。それは起訴される前の起訴前の勾留と、起訴された後の起訴後の勾留です。起訴前の勾留は、被疑者に対する終局処分を検察官が判断するため、捜査機関による捜査を行う間、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われます。起訴後の勾留は、裁判を円滑に行うにあたって、被告人の逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われるものです。
 いずれの勾留も、刑事訴訟法第60条で、勾留を認めるための要件が定められています。

刑事訴訟法

第60条
 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

 そして、「保釈」との関係で大切なのは、「保釈」は起訴後の勾留に対してのみ請求することができ、起訴前の勾留については請求することすら認められません。ですから、検察官が被告人を起訴した後でないと、いくら保釈保証金を準備できても、そのお金を納付することすらできないのです。

「勾留」は「事件単位」で決められる原則がある

 また、「保釈」との関係で理解する必要があるものとして、勾留等は、人単位ではなく事件単位で行われているということです。
 つまり、窃盗の罪で逮捕されている被疑者を取り調べている過程で、別の被害者に対する詐欺事件の犯人でもあるという疑いが生じた場合、捜査機関は、窃盗の罪で被疑者を起訴した後、詐欺の罪によって改めて被疑者を逮捕することが可能です。
 そうすると、窃盗の罪については、既に起訴されていますから、保釈を請求することは可能なのですが、詐欺の罪によって勾留されている場合には、窃盗の罪についての保釈が認められたとしても、実際に釈放されることはなく、詐欺の罪に関する勾留によって、警察署や拘置所に留置され続けることになってしまいます。
 既に何らかの罪で起訴されているにもかかわらず、弁護人が直ちに保釈できない背景には、別罪での再逮捕が予定されている場合等があるのです。

保釈が認められるための条件

権利保釈と裁量保釈

 したがって、保釈の請求は、全ての容疑についての捜査が終了し、再逮捕のおそれがなくなったことを確認した後に行われるケースが多いです(再逮捕の可能性がある場合であっても保釈請求をするべきケースはありますが、このことについては別の機会に解説させていただきます)。
 保釈についても、大きく2つに分けることができます。刑事訴訟法第89条が定める権利保釈と、同第90条が定める裁量保釈です。

刑事訴訟法

第89条
 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
第90条
 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

罪証隠滅のおそれがないか

 刑事訴訟法第89条は、同条が列挙するような状況が認められない場合には、保釈を認めなければならないと定めていますが、同条によって保釈が認められることはなかなかありません。
 それは、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(同条1項4号)について、裁判所が極めて厳格に解しており、同号にあてはまることを理由に、89条に基づく保釈が却下されてしまうためです。
 共犯者が存在する事件については、共犯者が存在するという一事をもって、共犯者との口裏合わせの危険性を理由に、同号該当性が認定されてしまうケースがほとんどです。
 弁護人としては、罪証隠滅のおそれが抽象的には懸念し得るとしても、現実的にはあり得ないことを、裁判官に対して強調し、保釈の許可が得られるように活動する必要があるのです。
 ゴーン氏との関係では、住居の玄関に監視カメラを設置する等の保釈条件が課されていたことが報道で明らかとなっていましたが、このような条件を裁判所が積極的に付すことは考えにくく、弁護人主導で、保釈の許可を得るための努力であったことが窺えます。

逃亡のおそれがないか

 刑事訴訟法第89条は、逃亡のおそれについては触れていませんが、同条第90条においては、逃亡のおそれについても、一考慮要素として挙げられています。
 特に、ゴーン氏のように、日本国籍を有しない被告人との関係では、海外に逃亡してしまうことが懸念されますので、弁護人が旅券を預かる等の方法によって、海外逃亡のおそれがないことを裁判官にアピールすることになります。
 また、逃亡のおそれがないことを示すために、御家族の方に、被告人と同居して被告人を監督することを内容とする身柄引受書を作成していただくことも多く行われています。

保釈保証金について

 上述したように、保釈が許可されるためには様々な条件が存在します。しかしながら、冒頭でお伝えしたとおり、保釈という制度は、勾留されている被告人を前提とするものです。
 したがって、勾留の要件が満たされていることが前提となります。すなわち、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」や「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」が存在することが前提となるのです(勾留の要件が解消されているような場合には、勾留の取り消しを求めることになります。この制度についても別の機会にお話しさせていただきます)。
 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由等が認められる被告人を釈放するにあたって、裁判所が求めるものが保釈保証金になります。
 保釈保証金という担保金を裁判所に納付させ、実際に罪証隠滅や逃亡を試みた時には、そのお金を没取するという条件をつけることによって、被告人等による罪証隠滅や逃亡を防ごうとしているのです。

まとめ

 今回は、「保釈」について簡単に解説させていただきました。
 刑事事件に携わる弁護士として、日本の刑事手続については、納得のいかない点が多く認められ、その最たるものが、被疑者・被告人に対する身体拘束が安易に認められすぎているという点です。
 保釈保証金について、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」が認められる被告人を釈放するために必要なものだと解説させていただきましたが、本来的には保釈保証金の納付を求めるまでもなく、勾留を取り消すべきであると感じる事案が多くあります。
 次回は、保釈が認められた後の諸問題について解説させていただきます。

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