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コラム

新型コロナウイルスに感染していると偽ることで逮捕されることも。故意に感染を拡大した場合などに適用される罪状を解説。

 小池百合子都知事が、都民に対して不要不急の外出の自粛を求めるように要請する等、北海道だけでなく、新型コロナウイルスの猛威は日本全国に広まりつつあります。
 日本国民が団結して、新型コロナウイルスを収束させるために適切な対応をとる必要があるのですが、残念なことに、新型コロナウイルスに関係する言動によって、逮捕者等出てきております。
 今回は、新型コロナウイルスに感染していることを装う行為、又は故意に感染を広める行為がどのような刑事罰に該当するのか解説したいと思います。

偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪で逮捕された事案

 令和2年3月27日の報道によると、千葉県において、離陸前の航空機内で、新型コロナウイルスに感染している旨の発言を行った男性が、偽計業務妨害罪(刑法第233条)の疑いで逮捕されたようです。
 他にも、群馬県の電車内において、新型コロナウイルスに罹患しており、自分に近付くと感染する旨の発言をした男性も、同様に偽計業務妨害罪で逮捕されています。
 いずれも、公共交通機関の中での言動が問題となっており、飛行機や電車は通常の運行を一時停止しなければいけない事態に陥りました。
航空機内の事件については、その男性が実際に新型コロナウイルスに罹患していたかどうかについての報道は見当たりませんでしたが、電車内の事件については、罹患している事実は認められなかったとのことです。

偽計業務妨害とはどのような罪なのか

刑法は、偽計業務妨害の罪について、次のように定めています。

刑法

第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 報道されている事件については、新型コロナウイルスに罹患している旨を発言したことが「偽計を用いて」と評価されているようです。
 この「偽計を用いて」とは、人を欺いたり、人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑するような手段も含む概念だと理解されています。
 例えば、バスの運転手が癇癪持ちである旨の告知をするようなことも、「偽計を用いて」に該当するものとされています(大判昭和10年3月14日)。
 今回は、新型コロナウイルスに罹患していないにもかかわらず、実際に罹患しているかのような発言を行っている訳ですから、「偽計を用い」たと評価されるのは仕方ないものと言えるでしょう。
 また、実際に航空機や電車の運行に遅延を生ぜしめている訳ですから、航空会社や鉄道会社の「業務」が「妨害」されていることも明らかです。

実際の感染者の行為には成立しないのか

 以上のとおり、偽計業務妨害罪は、人を欺くような行為によって、業務を妨害した場合に成立する犯罪行為ですから、同様の行為に及んだ人が、実際に新型コロナウイルスに罹患していたことが明らかとなった場合、その言動の内容は真実であり、人を欺くような行為は認められない訳ですから、偽計業務妨害罪は成立しないことになります。
 実際の罹患者による言動の方が悪質に思えますが、この場合は何らの犯罪も成立しないのでしょうか。

威力業務妨害罪

威力業務妨害罪で逮捕された事案

 前述の他にも、新型コロナウイルスとの関係で、業務妨害の罪で逮捕された方のニュースは多く報道されていますが、注意深く確認していただくと、上述した偽計業務妨害の罪とは異なり、威力業務妨害の罪(刑法第234条)が適用されているものもあります。
例えば、愛知県の薬局内において、新型コロナウイルスに感染している旨を叫びながら、店内で何度も咳き込んだ男性が、威力業務妨害の罪で逮捕されています。
 このような行為を店内で行われた場合に、薬局が通常の業務を行うことは困難でしょうから、「業務」が「妨害」されたことは明らかです。

威力業務妨害とはどのような罪なのか

 では、威力業務妨害は偽計業務妨害とどのように異なるのでしょうか。刑法は、次のように定めています。

刑法

第234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 基本的には、用いる手段が「偽計」なのか「威力」なのかが違うだけで、その他の規定の内容は、法定刑も含めて、偽計業務妨害の罪と同じです。
 「威力」とはどのような概念なのでしょうか。
 「威力」については、人の意思を制圧するような勢力を意味し、暴行や脅迫はもちろん、暴行や脅迫とまでは評価できない言動であっても、人の意思を制圧するに足りる勢力であれば、「威力」と評価されるものと解されています。
 店員に対して暴力を振るうような事件についてはイメージしやすいのですが、「威力」の概念は非常に広く、珍しい態様による威力業務妨害罪の事案として、次のような裁判例が存在します。
 ・店内で牛の内臓等を焼き悪臭を充満させる行為(広島高裁岡山支判昭和30年12月22日)
 ・デパートに蛇を撒き散らす行為(大判昭和7年10月10日)
 ・猫の死骸を机の引き出しの中に入れる行為(最決平成4年11月27日)
 このような事案は、直接的に暴力を振るった事案ではありませんが、通常の業務に影響を与えるような行為であったとして、「威力」を用いたものと評価されました。
 威力業務妨害の罪については、実際に新型コロナウイルスに罹患している場合であっても、当然に成立します。実際に、新型コロナウイルスに感染していた男性が、愛知県のパブの中で、罹患している旨を話しながら至近距離でホステスの方と会話するなどした事案においては、威力業務妨害の罪によって立件されたようです。
 しかしながら、この男性については、結局逮捕されることはなく、亡くなってしまったようです。実際に新型コロナウイルスに感染している場合、逮捕・勾留を行い、警察署内に留置してしまうと、留置場内にコロナウイルスが蔓延してしまうおそれがあります。もし、一命をとりとめた場合であっても、留置施設内での感染可能性がないことを確認できない以上は、逮捕することは不可能だったように思います。

店内や交通機関内でなければ犯罪にならないか

 以上のとおり、実際に罹患しているかどうかにかかわらず、新型コロナウイルスに感染していることを公言するような場合、その場所が店内や交通機関の中であれば、そのお店等の営業が妨害されることは明らかですから、業務妨害罪が成立することになります。
 では、公道等で同様の行為に及んだ場合には、犯罪は成立しないのでしょうか。
 当然、このような場合にも同じ犯罪が成立します
公の場で、新型コロナウイルスを撒き散らすかのような言動を行った場合、警察官等が出動することとなります。したがって、警察官の業務を妨害したとして、偽計業務妨害の罪等が成立することになるのです。
 少し昔の話になりますが、You Tuberが白色粉末を意図的に警察官の前で落として逃走を図る動画を作成した事案で、偽計業務妨害罪で逮捕された件も広く報道されていましたが、同じような理屈になります。

故意に他人に感染させる行為

 上述したとおり、新型コロナウイルスに罹患していることを公言するような行為については、犯罪が成立する可能性が高いものと言えます。
では、自分が新型コロナウイルスに罹患していることを秘して他人に接触し、その他人に感染させた場合はどうでしょうか。業務を妨害するような迷惑な言動をしている訳では無いので、業務妨害の罪に問うことは難しそうですし、この場合は業務が妨害されていることではなく、感染させた行為を処罰したいところです。
 この点について、古い裁判例にはなりますが、最判昭和27年6月6日は、性行為によって性病を罹患させた者に対して傷害罪の成立を認めていますし、同様に赤痢菌等を食品に添加して食べさせる行為等に対して傷害罪の成立を認めた裁判例(東京高判昭和51年4月30日)等も存在します。
 したがって、他人を何らかの病気に罹患させる行為については、傷害罪(刑法第204条)を成立させることができます。その結果として、被害者の方が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪(刑法第205条)が成立しますし、被害者が亡くなる可能性を認識して意図的に感染させた場合には殺人罪(刑法第199条)が成立する余地すらあるのです。
 上述した裁判例のように、性行為による感染であること等を明らかにできる事案とは異なり、新型コロナウイルスの場合、誰から感染したのかという感染源を特定することが困難ということもあり、傷害罪等によって処罰することには立証上のハードルが高そうですが、刑罰を科される可能性は十分に認められます。

まとめ

 今回は、新型コロナウイルスとの関係で成立し得る犯罪について解説させていただきました。現段階においても、新型コロナウイルスの猛威は収束の目途がたっておりません。
 国民全員で立ち向かうべき局面にきていますから、この混乱を無意味に拡大させるような行為は厳に謹んでいただきたいと思います。

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