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コラム

児童ポルノ製造罪について

簡単に言うと…
  • 児童ポルノ規制法では、所持や製造等の行為に刑罰が科されている。
  • 所持罪については、性的好奇心を満たす目的がなければ、刑罰が科されることはない。
  • 製造罪については、目的や製造方法によって適用される条文が異なりうる。
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弁護士
岡本 裕明
不同意性交等の罪と比較すると、注目される機会の少ない児童ポルノ規制法について、どのような行為に対して刑罰を科しているのか、簡単に確認してみましょう。

 性犯罪に関する刑罰の在り方については、不同意性交等の罪が制定された後の現段階においても、盛んに議論が続けられています。もし、将来的に更なる法改正が行われる場合、その内容は、従前の処罰範囲よりも、処罰範囲を拡大する方向になるものと考えられます。刑罰を科すべき行為を適切に処罰できるだけでなく、冤罪の数が不当に増えることのないような定めとなるように、今後も議論を続けていきたいと思います。
 一方で、私たちが日々相談を受ける性犯罪に関する内容の中には、児童ポルノに関する相談も比較的多く存在します。児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ規制法」といいます。)も、複数回の改正がなされている法律ではあるのですが、不同意性交等の罪と比較すると、社会的な関心が強く抱かれていたとは言えず、どのような行為に刑罰が与えられているのか、ハッキリ認識できている方は多くないのではないでしょうか。
 児童ポルノについては、そもそもどのような画像や映像が、「児童ポルノ」にあたるのかという点も問題となります。CGのように実在の人物がモデルとなっていない場合や、時間の経過によって被写体が成人した場合にも児童ポルノといえるのかという問題に加えて、被写体の年齢がハッキリしない場合にどのように児童ポルノに該当するかどうかを判断するのかなど、色々な問題があります。しかし、これらの点は別の機会に解説させてください。
 今回は、児童ポルノ規制法がどのような行為に対して刑罰を科しているかどうかについて解説していきたいと思います。

児童ポルノ製造罪について

1.児童ポルノ規制法の定め

弁護士
岡本 裕明
まずは、児童ポルノ規制法の内、児童ポルノに関して定められている部分について確認してみましょう。

 児童ポルノ規制法は、児童ポルノに関連する行為だけでなく、児童買春についても規制するものです。今回は、その部分を除いて、児童ポルノに関する定めについて確認してみましょう。

児童ポルノ規制法

第7条
1項 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する…。
2項 児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する…。
3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする…。
4項 前項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
5項 前2項に規定するもののほか、ひそかに…描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
6項 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する…。
7項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする…。
8項 第6項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。0歳に満たない者をいう。

 以上のように、児童ポルノに関連する犯罪については、細々とした文言が連なっており、単純な犯罪のように思えるのですが、意外とその内容を把握するのに骨が折れるものとなっています。
 単純化するために、電磁的記録に関して定めている部分などについては省略させていただきました。条文を正確に把握されたい方は、実際の法律を検索していただければと思います。
 ザっと確認すると、児童ポルノ規制法が刑罰の対象としようとしている行為として、児童ポルノの所持、提供、提供を目的とする製造・所持・運搬・輸入・輸出、公然陳列等が定められています。

2.所持

弁護士
岡本 裕明
児童ポルノは所持しているだけでも犯罪となります。では、所持の罪が成立する要件として、どのような内容が定められているのでしょうか。

 児童ポルノについて、単純に所持しているだけでも、刑罰が科されることになったのは、平成26年の法改正によるものです。当時は、比較的社会的耳目を集める法改正だったように記憶しております。
 もっとも、児童ポルノに該当するものを所持していた場合に必ず処罰されるのではなく、「自己の性的好奇心を満たす目的」で所持していた場合に限られます。例えば、家族写真の中に、幼い子供の半裸のような姿が写っていた場合などは、性的好奇心を満たす目的で所持している訳ではありませんから、刑罰を科されることはないといえるでしょう。
 とはいえ、思い出として家族によって撮影された写真が、「性欲を興奮させ又は刺激する」内容を含むことは稀なのではないかと思います。
 児童ポルノを所持していた場合には、そのような画像や映像を所持する目的が明確にない限りは、基本的には性的好奇心を満たす目的で所持していたと認められてしまう可能性が高いといえるでしょう。
 このような目的が否定され得るケースとして、東京高等裁判所令和2年11月12日判決は、「上記改正より相当以前に購入した児童ポルノがどこに保管されているか分からなくなったが、上記改正後の引っ越し等の際にそれが出てきてそのまま保管していた場合などには、自己の性的好奇心を満たす目的が否定されることがあり得る」と説示していますが、傍論としての説明でしかありませんし、極めて例外的なものといえるでしょう。
 また、児童ポルノ規制法は、「自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者」でなければ、児童ポルノの単純所持罪は成立しない旨を定めています。
 例えば、友人を自宅に招いた際に、その友人が児童ポルノを置いて行った場合などには、「自己の意思に基づいて所持するに至った者」にはあたりません。

3.製造

弁護士
岡本 裕明
児童ポルノを製造することが犯罪になることについては、常識的にも理解できると思います。しかし、児童ポルノ規制法は、製造の仕方によって、異なる条文を設けています。内容を確認してみましょう。

 単に所持することでさえ刑罰が科されるわけですから、そのような児童ポルノを製造する行為に刑罰が科されるのは当たり前でしょう。
 もっとも、児童ポルノ規制法は、第7条において、児童ポルノの製造について3項、4項、5項、7項に分けて定めており、どのような場合に児童ポルノの製造罪が成立するのかについては、条文をよく確認する必要があります。
 まず、3項においては、児童ポルノを提供する目的で製造した場合に適用される規定です。したがって、自分自身で閲覧するだけの目的で製造された場合には、この規定によって刑罰を科すことはできません。
 次に、4項においては、児童に性的な恰好をさせたり、性的な行為に及ばせたりして、その様子を撮影するような方法で児童ポルノを製造する行為が規制されています。昨今、SNSを通じて、裸体等の写真を送信させるようなケースが目立ってきているように思いますが、そのようなケースに対しても、この4項が適用されることになります。
 最後に、5項は、いわゆる盗撮のような行為に対して適用されます。盗撮のようなケースの場合、被写体となる児童は、意図的に性的な恰好をさせられている訳ではありませんから4項を適用することができないのです。
 上述した3つの製造罪については、どの規定が適用されたとしても、同じ法定刑が定められていますから、刑の軽重に差はないのですが、いずれかに該当しなければ犯罪は成立しませんから、いずれの類型に該当するのかについて、弁護人としては十分に確認する必要があります。
 なお、単に提供するのではなく、不特定多数への提供を目的として製造された場合には、7項が適用され、より重い法定刑が定められています。
 児童に性的な恰好をさせた上で、そのような様子を撮影するようなケースにおいて、その撮影者は、被写体が児童であることを認識できていれば、自身の撮影行為が違法であることは十分に認識できていると思います。ウッカリ児童ポルノを製造してしまうということはあまり想定できません。
 もっとも、撮影行為のみが製造にあたるわけではありません。最高裁判所平成18年2月20日決定は、児童ポルノを別の記録媒体に記憶させる行為についても、児童ポルノ製造罪にあたる旨を判示しています。この事案は、自身が撮影した児童ポルノに関するものでした。

4.弁護活動

弁護士
岡本 裕明
児童ポルノに関する事案について、弁護人としてはどのような弁護活動が考えられるのでしょうか。

 以上のとおり、児童ポルノについては、所持や製造する行為に刑罰が科されており、その他にも運搬や輸入等の行為についても処罰される旨が定められています。児童ポルノに関する行為について、犯罪の成否を争う場合、その多くは児童ポルノに該当するかどうかを争うケースが多いように思います。
 児童ポルノに該当するかどうかについては、別のコラムで解説させていただこうと思いますので、「所持」や「製造」に該当しないと主張することが可能かを検討したいと思います。
 上述したように、所持については、単なる所持ではなく、自分の意思で所持するに至ったという点や、性的好奇心を満たす目的ではなかったと主張することが考えられます。また、製造についても、目的や特定の手段を用いて製造されたものといえなければ、児童ポルノ規制法を適用することができません。
 とはいえ、児童ポルノに該当することが前提となってしまうと、その「所持」や「製造」にあたらないとの主張が認められるケースは、非常に例外的なものとなりそうです。そうすると、児童ポルノに該当するかどうかという点や、児童ポルノに該当することについての認識などが認められるのかという点について、慎重な検討が求められることになるでしょう。
 また、現段階においても、写真集のように紙媒体の児童ポルノも存在するのだと思いますが、弊所においてご相談いただいたことのある事案は、すべて画像や映像等のデータに関連するものでした。このようなケースでは、捜査機関に携帯電話等を押収されることで、多数の余罪が発見されてしまうようなことが珍しくありません。
 捜査機関による取調べの対応等についても、経験のある弁護士のアドバイスを受ける必要があるでしょう。

5.まとめ

弁護士
岡本 裕明
児童ポルノ規制法が、どのような行為を規制対象としているのかについてはご理解いただけましたでしょうか。

 以上のように、児童ポルノ規制法は、児童ポルノに関わる様々な行為に対して刑罰を科しています。前科や前歴の認められない被告人に対して、直ちに刑務所への服役を命じられるほどに重い刑罰が科されることは稀だと思いますが、前科前歴がない場合であっても、起訴されてしまうことは十分にあり得ます。
 単に所持したに過ぎないケースであっても、前科が付されてしまうケースについても経験したことがあります。軽く考えることなく、早い段階で弁護士へご相談いただければと思います。

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