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コラム

薬物事件にはどんな法律が適用されるのか。薬物別に適用される法律の違いや量刑を解説(前編)

 先日、有名な歌手の方が違法な薬物を所持していたという疑いによって逮捕され、大きく報道をされていました。報道によると、覚せい剤に加えて、「ラッシュ」と呼ばれる危険ドラッグを所持していたそうです。  昨年から、有名人による薬物犯罪の検挙が後を絶ちません。その中には、覚せい剤や大麻等、典型的な違法薬物が問題となった事例もありますが、本件のように危険ドラッグが問題となることもあります。  また、薬物事件の内、大麻取締法違反及び覚せい剤取締法違反については、どのような薬物を所持していた場合に成立する罪であるのかが明確ですが、麻薬及び向精神薬取締法違反については、どのような薬物が「麻薬」や「向精神薬」とされているのか、正確に理解できている方は少ないように思います。  本件において問題となった「ラッシュ」と呼ばれる薬物は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法と略されています)によって規制されているのですが、薬機法まで含めると、どのような薬物が違法とされているのかについて正確に理解することも非常に困難です。 今回のコラムでは、薬物犯罪について、どのような薬物が規制されているのかについて解説させていただきます。

覚せい剤取締法

 覚せい剤は、違法な薬物の中でも、最も悪質性の高い薬物だと理解されています。取引価格も高価な場合が多く、0.1gで1万円から2万円とも言われております。したがって、安易に覚せい剤を譲渡することは考えにくく、覚せい剤を所持していた場合には、覚せい剤だと理解した上で所持していることが多く、なかなか覚せい剤だと知らずに所持していたという弁解が通用しません(密輸事案のように、そもそも違法な物を所持していたこと自体を認識していなかった場合には別問題です)。  「覚せい剤」は「覚せい剤」やシャブやアイス等の隠語で流通しており、覚せい剤取締法第2条における「覚せい剤」の定義が、「フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類」等と一般の方には分かり難い定義となっていますが、フエニルアミノプロパン等が含まれている薬物だとは認識していなかったとして争われることはほとんどないように思います。

大麻取締法

 大麻取締法も、覚せい剤と同様に、どのような薬物が規制されているのか分かり易い法律だと言えます。  大麻取締法第1条は、「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。」と定義しています。したがって、違法な薬物だとは知りつつも、大麻取締法に違反するような薬物であるとは知らなかったという弁解はあまり耳にしません。  しかしながら、同条は、「ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」として、大麻草に由来する物であっても、同法に違反しない大麻草由来の製品は存在し得ることになります。  例えば、CBDオイル等の製品が、インターネット等において適法な製品であるかのように紹介されているのは、上述したような違法な部位を使用した商品ではないことが理由とされています。  他方で、CBDオイルの中には、幻覚作用を生ぜしめると言われているTHCの成分が含まれているものもあり、実際に輸入の際に問題となった事件を担当したこともあります。 原則として、大麻草由来の商品については、大麻取締法に違反する可能性が高いものと理解しておいた方が無難だと考えられます。

麻薬及び向精神薬取締法

「麻薬」とは何か

 覚せい剤取締法や大麻取締法と異なり、麻薬及び向精神薬取締法は、どのような薬物を規制しているのかが、法律名だけでは明らかになりません。  「麻薬」は、麻薬及び向精神薬取締法第2条1号において、「別表第一に掲げる物」とされています。そして、別表第一には、1号から76号までに様々な塩類等が記載されており、様々な薬物が「麻薬」として指定されていることが分かります。ですから、薬物や成分の名前を聞いただけでは、「麻薬」に該当するものなのかどうかさえ理解できないのです。  「麻薬」に分類されるものとして、有名な薬物としては、「MDMA」や「コカイン」等があげられます。  なお、麻薬及び向精神薬取締法は、ジアセチルモルヒネ等を含有する麻薬かどうかによって、その罰則に差異を設けています。例えば、「ヘロイン」等については、当該成分が含まれていることから、より厳罰が科されることになりますし、輸入等の重罪においては裁判員裁判の対象事件にもなるのです。

「向精神薬」とは何か

 「向精神薬」について、麻薬及び向精神薬取締法第2条6号は、「別表第三に掲げる物」と定義しており、別表第三は、1号から12号までに様々な塩類等を記載しています。「麻薬」よりは記載されている種類が少ないものの、分かり難いことには変わりありません。  眠剤や抗不安剤等に用いられるものが多くみられます。

薬機法

 冒頭で紹介した「ラッシュ」等の薬物については、上述した「麻薬」や「向精神薬」に該当しません。しかしながら、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)によって規制されています。  薬機法第83条の9は、「指定薬物」を所持するなどの行為について、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金を科する旨を定めています。  そして、「指定薬物」の内容については、第2条15項において、「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用…を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物…として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものをいう」とされています。したがって、薬機法は「指定薬物」の内容を定義しておらず、厚生労働大臣の指定に任せていることになります。  そして、その指定の内容は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令」という長々しい名前の省令の第1条で定められており、同条は、現在1号から281号まで存在します。  このように「指定薬物」の概念が広いものになっている理由は、麻薬及び向精神薬取締法と異なり、法律で規制薬物を定めている訳ではなく、省令で定めていることから、何らかの危険な薬物が発見された場合に、法律を改正することなく規制対象として追加できるためだと考えられます。  「脱法ドラッグ」の多くは、現状においては「指定薬物」として定められており、過去には「脱法」と考えられていた薬物も、現在では「違法」な薬物とされていることが多いものといえるでしょう。

薬物事件における弁護活動

 以上のとおり、所持することや使用することが法律で規制されている薬物には様々なものがあります。また、同じ大麻取締法で規制されるものの中にも、植物片としての大麻だけでなく、大麻リキッドというものもありますし、麻薬や指定薬物として定められている薬物には様々なものがあります。  
 問題となっている薬物の悪質さやその量によって、最終的に裁判官から言い渡される判決や懲役刑の重さは決められることになりますし、薬物の性質や量については、裁判において争いにくい事情ではあります。  
 しかし、他のコラムでもお伝えしましたが、薬物犯罪は極めて再犯率の高い犯罪ですから、再犯防止のための環境が調整されているかどうかという点も、判決の内容に大きな影響を及ぼします。  
 薬物との関係性を断ち切るための専門家の支援も当然に大事にはなりますが、被告人本人や被告人の御家族自身が、薬物を断ち切るために何ができるのかという点についても具体的に主張できるように準備する必要があります。
 過去に薬物との関りがある以上、客観的に二度と薬物を使わないことを証明することは不可能ですから、二度と薬物を使わないことについてどれだけ裁判官に信用してもらうのかという点が問題となります。刑事事件の弁護の経験が豊富な弁護士によって、十分に裁判官に伝えさせる必要があるのです。

まとめ

 今回は、薬物犯罪について、薬物そのものに注目して、その内容や法律の規制について解説させていただきました。  ストレスの多い社会ですから、一時的に気を楽にするために薬物に頼りたくなった経験がある方も少なくないように思います。その場合には、まずはしっかり医師の診察を受けた上で、処方された薬品を用いるようにしてください。  市販の薬品を用いることによっても、何らかの法律に違反してしまうようなことはなさそうですが、知人や友人等から譲り受けた薬品に頼るのは非常に危険です。  今回、ご紹介させていただいた法律の他にも、あへん等を規制する「あへん法」や、シンナー等を規制する「毒物及び劇物取締法」等、他にも様々な法律が存在します。そこで、後編では各法律に違反した場合の罰則や、日本で規制されている薬物について、海外で使用した場合の罰則等について、解説させていただきます。 薬物事件は単純な事案と考えられがちですが、専門性も求められる事案です。薬物犯罪についてお悩みの点がありましたら、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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