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コラム

再逮捕って何?何度でも逮捕を繰り返せるのか。

簡単に言うと…
  • 報道等で用いられる「再逮捕」は法律上の「再逮捕」ではなく、別の犯罪に関する容疑によって、連続して逮捕されたことを意味することが多い。
  • 法律上の「再逮捕」とは、「同じ容疑」を理由に、「同じ被疑者・被告人」を再び逮捕することを意味する。
  • 「再逮捕」は刑事訴訟法の定める拘束期間の上限に対する抜け道となる危険性があるため、実務上は厳格にその必要性が判断されている。
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 刑事事件に関する御相談をいただき、弁護人として選任されることとなった場合、まず検討しなければいけないのが逮捕の可能性です。

 あくまでも最終的な目標は不起訴や無罪判決等になります。しかしながら、弁護人として選任された直後の段階においては、それよりも先に逮捕を回避することが重要です。逮捕を回避することができれば、学校や勤務先にそのことを伝えることなく事件を解決できる可能性が格段にあがります。逆に、逮捕されてしまうと、後に不起訴処分等を獲得できた場合であっても、これまでの生活が一変してしまう危険性があるからです。

 周囲からの信用を失うことになりかねませんし、何らかの刑事罰が科される前の段階で、退学や退職に追い込まれることも珍しくありません。

 一方で、逮捕されてしまった場合であっても、身体拘束から解放するための弁護活動が重要であることに変わりありません。勾留が決定されてしまった場合には、最大で20日もの間、警察署等に拘束されることとなりますが、その期間を最短のものにとどめることによって、勤務先や学校に知られることなく事件を解決できる場合もあり得るからです。

 しかしながら、捜査のための身体拘束期間の上限が20日間かというとそういう訳ではありません。

 弊所をはじめとする刑事事件を取り扱う法律事務所のHPには、最大23日間の拘束が予定されている旨の説明がなされていることが多いと思いますし、その説明内容は間違っておりません。

 しかし、その例外が存在します。それが「再逮捕」というものです。

 今回は「再逮捕」について解説させていただきます。

1.「再逮捕」とは

(1)一般的な「再逮捕」の意味

 「再逮捕」という言葉は刑事訴訟法には出てきません。しかしながら、通常の逮捕とは異なる「再逮捕」と呼ばれるものを想定していると解される規定は存在します。

 一方で、私達が「再逮捕」と呼んでいる逮捕のほとんどは、この法律上の「再逮捕」には該当しません。

 つまり、「再逮捕」と呼ばれている手続の中には、法律上の「再逮捕」と法律上は再逮捕には該当しない「逮捕」の2種類が混在しているのです。

 まず、一般的に「再逮捕」と呼ばれている手続について説明します。

一般的に「再逮捕」と呼ばれているものの多くは、既に何らかの罪で逮捕されている被疑者・被告人を、別の罪で逮捕する場合のことを指しています。

 「再逮捕」というキーワードでニュースを検索すると多くの事件が出てきますが、その多くは同種事件を繰り返していた被疑者・被告人が、同じような犯罪行為を別の被害者に対しても行っていたことを理由に、再び逮捕されたという事案です。

 例えば、ある少女との買春行為によって逮捕されていた被疑者が、別の少女との買春の事実を理由に再逮捕されたというケースや、特殊詐欺の受け子を行ったとして逮捕されていた被疑者が、他の被害者宅でも現金等を受領していたとして逮捕されるようなケースです。

 このようなケースの場合、既に逮捕されている被疑者・被告人を、再び逮捕するという意味で「再逮捕」という言葉が使われていますが、これまでに逮捕していた犯罪とは別の犯罪が問題となっており、新しい犯罪行為との関係では1回目の逮捕です。つまり、厳密には「再逮捕」ではなく、同じ被疑者・被告人が連続して逮捕されたという意味しかありません。

 この場合、同様の手続が2回繰り返されることになりますから、最大23日間の身柄拘束期間の上限が2倍になることになります。

 特に、特殊詐欺等の事案においては、複数の被害者に対して同種の犯行を行っていることが多く、3-4回逮捕が繰り返されることも珍しくありません。このような場合、身体拘束期間の上限も3-4倍になってしまうことになります。

(2)法律上の「再逮捕」

 上述したように、私達が普段「再逮捕」と呼んでいる手続のほとんどは、ある犯罪行為についての1回目の逮捕が、他の事件に関する逮捕・勾留期間経過後に連続して行われたことを意味しているに過ぎません。

 一方で、法律上の「再逮捕」とは、同一の事件について、再び逮捕することを言います。まずは、刑事訴訟法等がこのような逮捕について、どのように定めているのか確認したいと思います。

刑事訴訟法

第199条
1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。…
2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員…の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
3項 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があったときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

刑事訴訟規則

第142条
1項 逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。
8号 同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があったときは、その旨及びその犯罪事実

 このように、刑事訴訟法等は、既に同一の事実について逮捕状の発付を受けている場合に、再度逮捕状を請求する際には、その事実を裁判官に知らせなければならないことを定めていますから、刑事訴訟法は、同一の事実に対するものであっても、逮捕状を複数回発付することを認めているものといえます。

 しかしながら、逮捕状を請求する際に、2回目以降の逮捕状の請求である旨を記載しなければならないということの他には、「再逮捕」を行う際の特別な要件や手続について、法律上に規定は見当たりません。

2.法律上の再逮捕にあたる場合の制約

(1)不当な蒸し返しの防止

 このような「再逮捕」が無制限に許容されてしまうと、同じ犯罪行為についての逮捕を繰り返すことによって、最大23日間という法律上の身体拘束期間の上限が無意味なものとなってしまいます。

 ですから、このような意味での法律上の「再逮捕」は極めて厳格な要件の下でしか許容されませんし、実務上あまり見られません。

 一方で、上述したように「再逮捕」の要件等について定めた規定は存在しませんから、どのような状況下において「再逮捕」が許容されるかについては、裁判例等を参考に判断することになります。

 この点について、東京高等裁判所昭和48年10月16日判決(判例時報727号102頁)は、上述した刑事訴訟法等の規定は、「理由のない逮捕のくり返しを防ぐものである」と判示し、不当な蒸し返しと評価されるようなものでなければ、同一の事実で被疑者を逮捕することも可能であるとしています。

 そして、この東京高裁の事案においては、「捜査主体の変更、新たな捜査主体と被告人の居住地との地理関係、第一次逮捕後の日時の経過、捜査の進展に伴なう被疑事実の部分的変更、逮捕の必要性等の諸点からして、再逮捕をするにつき相当の理由がある場合に該当する」として、再逮捕は適法である旨が判示されています(2回目の逮捕の際に、既に逮捕していたことを裁判官に知らせなかったという違法な捜査も行われていたのですが、この点は省略します)。

 そうすると、再逮捕の適法性は、1回目の逮捕後の事情の変化や、既に逮捕していることを踏まえた上で、改めて逮捕する必要があるのかどうかを検討して判断されるものといえます。

(2)法律上の「再逮捕」が認められ得る事案

 法律上の「再逮捕」が許容される典型的なケースとして、最初に発付された逮捕状が功を奏さなかったケースが挙げられます。すなわち、逮捕状の発付を受けたものの、被疑者の逃亡等の理由で逮捕することができず、逮捕状の有効期間が切れてしまったようなケースです。

このような場合も、一度、逮捕状が発付されている以上、2回目の逮捕状の請求は「再逮捕」にあたることになりますが、実際に身体拘束をされていない訳ですから、このような「再逮捕」を否定する必要性は薄いように思われます。

 また、最初に発付された逮捕状によって被疑者を逮捕しているケースであっても、勾留することなく釈放した被疑者が、釈放後に逃亡や罪証隠滅を試みた場合等には、改めて逮捕する必要性は生じていますし、勾留がなされていないことから、「再逮捕」をすることによって、刑事訴訟法が定めた身体拘束期間の上限が無意味なものになるということにもなりません。

一方で、最初に発付された逮捕状によって逮捕された後、20日間の勾留が付されているにも関わらず、「再逮捕」がなされ、更に20日間の「再勾留」がなされるようなケースとの関係では、一つの事実について、刑事訴訟法の定めた身体拘束期間を超えた身体拘束が行われることになります。このような「再逮捕」や「再勾留」を適法とした裁判例も存在しますが、その数は少なく、「再逮捕」や「再勾留」の必要性については、相当に厳格に判断されているものと解されます。

3.再逮捕が想定される事案における弁護活動

 以上のとおり、一般的に再逮捕と呼んでいる手続は法律上の再逮捕とは異なります。そして、法律上の再逮捕に関しては、あまり数多くなされるものではありませんし、法律上も極めて例外的に認められているに過ぎません。  
 法律上の再逮捕が行われるような事案においては、法律上の要件を適切に満たしているのかどうかについて、勾留の段階でしっかりと争う必要があります。したがって、その要件や事実関係をあてはめることのできる十分な刑事弁護の経験を持った弁護士によるサポートが不可欠といえるでしょう。  
 また、法律上の再逮捕ではなく、既に逮捕されている被疑者を再び逮捕するという意味での再逮捕についても、弁護方針を定めるにあたっては、極めて専門的な判断が求められることになります。  
 特に、同種の被疑事実で逮捕が繰り返される場合、逮捕自体を取り消させるような主張は弁護士にはできませんが、その逮捕に引き続いて行われる勾留の手続の際に、逮捕・勾留の必要性がないことを主張することによって、被疑者の釈放を得られる可能性があります。  
 また、再逮捕がされてしまうと、保釈の請求ができないという問題がある一方で、再逮捕の可能性を懸念し続けることによって、いつまでも保釈の請求を自重してしまうと、結局釈放のチャンスがいつまでも訪れないことになります。  
 いつ保釈の請求をするのかという点については、捜査機関による捜査の進捗具合等も問題となるため、刑事事件の弁護士による行動な判断が求められることになるのです。

4.まとめ

 以上のように、「再逮捕」と呼ばれる手続については、法律上も「再逮捕」として扱われるべきものと、連続して逮捕がなされているに過ぎないものとがあり、法律上の「再逮捕」と解されるものについては、慎重な運用が求められます。

 そして、私の知る限りは、同じ事件について同一の被疑者を繰り返し逮捕するような捜査が頻繁に行われていることはなく、法律上の「再逮捕」として捜査機関も認識しているものについては、刑事訴訟法が定める身体拘束期間の上限を無意味にするような運用はなされていないように感じています。

 一方で、「再逮捕」には異なる存在もあります。それは、本来的には法律上の「再逮捕」として扱われてしかるべき内容のものについても、通常の逮捕と同様に扱われている点です。つまり、捜査機関や裁判所が考える、法律上の「再逮捕」の範囲が小さすぎるのではないかという点です。

 この点について、次回のコラムで解説させていただこうと思います。

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