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コラム

何でこのような事件で逮捕されるのか

簡単に言うと…
  • 死産について速やかな報告がなされなかったことを理由に、死体遺棄罪の事実で母親を逮捕したことが不当だと抗議がなされたケースが報道された。
  • 逮捕については、勾留の際に求められる「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」よりも抽象的な「罪証を隠滅する虞」があれば足りる。
  • 現状は、逮捕の際も勾留の際も、罪証隠滅の可能性について具体的に検討されているとは言えないものの、改善されている罪種もある。
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私達が日々お受けする法律相談の中で、逮捕されてしまうかどうかという質問は、数多くいただいております。
先日、死体遺棄容疑で逮捕された後に不起訴処分となった被疑者の弁護人が、逮捕が不当であったとして香川県警察に抗議文を提出した旨についての報道がなされていました。
報道によると、被疑者の方は妊娠に気付かず、死児を出産した後、役所等について相談をしていたものの、その後に臨場した警察官と共に警察署に任意同行した後に、逮捕されたという事案のようです。
報道された内容だけからすると、子供が亡くなっていることが明らかとなっている以上、警察官が捜査を行うのは当然だとしても、被疑者を逮捕する必要性まであったのかどうか極めて疑問のように思います。
今回は、逮捕の要件について改めて確認した上で、「人質司法」とも揶揄されている我が国の刑事司法の問題点について考えてみましょう。

逮捕の要件

嫌疑について

逮捕については、こちらのページで詳細に解説させていただいておりますので御確認いただければと思いますが、まずはどのような場合に被疑者を逮捕することが許されているのかについて、法律を確認してみたいと思います。

刑事訴訟法

第199条
1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる…。
2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員…の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
(記事等の掲載の禁止の特例)
第210条
1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2項 第200条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
第213条
 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

3つの条文を紹介させていただきました、これらはそれぞれ逮捕状によって逮捕する場合、逮捕後に逮捕状を求める緊急逮捕、逮捕状を必要としない現行犯逮捕の3つの逮捕の種類を説明するものとなっています。
そして、逮捕状による逮捕について定めた第199条1項をみてみると、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が認められれば、逮捕ができるかのように定められています。
そうすると、警察官は被疑者に対して何らかの犯罪についての嫌疑が認められれば、逮捕状を得ることができるようにも考えられます。

必要性について

しかしながら、逮捕は捜査の一環として行われるもので、犯罪に対する刑罰ではありませんから、全ての事件について被疑者を逮捕しなければ捜査ができないという訳ではないはずです。
この点について、第199条2項は、「明らかに逮捕の必要がない」場合には、逮捕状を発せないように定めているのです。

刑事訴訟規則

第143条の3
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

そして、逮捕の必要性をどのように判断するのかについては、刑事訴訟規則第143条の3が、「被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等」と定めています。
したがって、被疑者を逮捕しなくても、被疑者が逃げたり証拠を隠滅したりする危険性がなければ、被疑者を逮捕することは許されないといえるのです。

勾留の要件との差異

勾留の要件

「逃亡の虞」や「罪証を隠滅する虞」については、被疑者を勾留するかどうかを決定する段階でも問題となります。

刑事訴訟法

第60
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
 1号 被告人が定まった住居を有しないとき。
 2号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 3号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

逮捕という手続だけでは、被疑者を留置施設に拘束できる期間は極めて短期間に限られているため、捜査期間中に被疑者を拘束する必要がある場合、検察官は裁判所に対して被疑者の勾留を求めることになるのです。
ここで確認していただきたいのは、勾留の要件としては、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」が求められており、逮捕の必要性を基礎づける「罪証を隠滅する虞」とは表現を異にしているということです。
特に、逮捕状との関係においては、「明らかに逮捕の必要がない」と認められなければ、逮捕状が発せられることになる訳ですから、逮捕状を発する時よりも具体的な罪証隠滅や逃亡を疑う事情が勾留に際しては必要となるはずです。

逮捕後に釈放されることは例外的

被疑者を逮捕する段階においては、捜査機関としても十分な捜査を行うことができておらず、逃亡や罪証隠滅を疑うような事情があれば、逃亡や罪証隠滅について具体的な危険性が認められなくても、極めて短期間被疑者の身体を拘束することについて合理性が認められるように思います。
我が国の刑事訴訟法もそのような考えの下で制定されております。
被疑者を逮捕した後、被疑者の取調べが行われることになりますから、取調べ等の捜査を行うことによって、逃亡や罪証隠滅を疑う具体的な理由がなければ、被疑者を釈放した上で、必要に応じて警察署等に呼び出す等した上で在宅での捜査を続ければ足りるはずです。
しかしながら、検察統計調査によると2019年の逮捕後の被疑者の取扱いについて、10万3269件の内、9万5278件について勾留請求がなされており、その内の9万359件について被疑者の勾留が許可されています。
つまり、逮捕された被疑者は原則として勾留されているといえるのです。

運用上の問題点

罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由

被疑者に対する逮捕状が発される前の段階において、犯罪に関する証拠については捜査機関によって保全されていることが多く、その後に警察官が被疑者に取調べを行い、その内容を録取した供述調書を作成することによって、被疑者が証拠隠滅を図ることは現実的に不可能となるケースがほとんどだといえます。
しかしながら、現実的に不可能な証拠隠滅の可能性を理由に、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断され、被疑者の勾留が許可されてしまうというのが実情です。
例えば、薬物事案に関しては、所持していた薬物や被疑者の尿等が押収され、その薬物や尿の中から違法な成分が検出された場合、違法な薬物を所持又は使用した事実について、証拠を隠滅することは不可能に近いものと言えます。
特に、捜査機関による取調べに際して、違法な薬物を使用した経緯等について自供し、その内容が供述調書にまとめられている場合には、事後的に、不審者に無理矢理薬物を摂取させられた等の弁解を行うことは不可能なのであって、隠滅可能な証拠すら存在しないと言えそうです。
それでも、関係者らに接触することなどによって、罪証を隠滅することが可能であることなどを理由に、被疑者の勾留は認められてしまっているのです。

罪証を隠滅する虞

今回報道のあった死体遺棄の事件については、被疑者の勾留が許可されたのかどうかハッキリしませんが、逮捕される前に警察署に任意に同行しているとのことでした。
また、任意同行前には死産について役所に相談していたことも明らかとなっています。
そうだとすれば、警察署に両親を呼んだうえで事情聴取を行う必要性はあったのだと思いますが、捜査機関を含む公的機関に死産の報告を行っていた訳ですから、「罪証を隠滅する虞」が認められるのかどうか極めて疑わしいものといえます。
捜査機関とすれば両親間における口裏合わせ等を懸念したのではないかと思いますが、死産の事案であり、生まれてきた乳児を殺害した事案ではありません。ですから、犯罪を行おうとして行った事案ではなく、両親の間で口裏を合わせる必要性が低いように思います。
任意同行後の取調べに際して、母親と父親の供述に齟齬があるなどの事情があったのかもしれませんが、死産直後の母親を逮捕することが適切であったのかどうか、振り返って検討することが望まれます。

まとめ

今回は、死産についての報告が遅れたことを理由に死体遺棄容疑で母親が逮捕されたとの事案に接し、逮捕・勾留の要件について再確認しました。
上述したような薬物事案に加えて、違法性が大きい訳ではない事案においても、共犯者の存在が疑われる事案については、具体的な罪証隠滅の虞を検討することなく、類型的に逮捕状が発せられているように感じます。
一方で、私が弁護士になったばかりの頃は、痴漢や盗撮等の条例違反に関する事実であっても、嫌疑を否認しているケースでは、被疑者を逮捕・勾留することが多かったように思いますが、現時点においては、同種の事案において被疑者が逮捕・勾留されることは稀です。
これは、被害者に接触することによって罪証隠滅を図る現実的な可能性がないことを理由に、勾留請求を却下した最高裁判所平成26年11月17日決定(最高裁裁判集刑事315号183頁)の影響も大きいと思いますし、各弁護人がそれぞれの事案に際して、逮捕や勾留の不当性を強く争った結果だと思います。
刑事訴訟法や刑事訴訟規則が定めている内容自体が不合理だと言い難いのであれば、「人質司法」と揶揄されている現状は、その運用が問題となっているものと言えます。
薬物事犯に関しては、問題となっている薬物の悪質性や分量によっては、逮捕・勾留されないケースも僅かながら見られるようになってきていますから、「罪証を隠滅する虞」や「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」について、具体的かつ現実的可能性の有無がしっかりと検討されるような運用を目指して、それぞれの事案において積極的に活動をしていきたいと思います。

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