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コラム

正当防衛って何?どんな時に成立するの?

簡単に言うと…
  • 正当防衛は認められにくい。
  • 「急迫不正の侵害」があると認められるかどうかが、正当防衛の成否を判断する際の中心となる。
  • 正当防衛が認められた場合には刑罰は科されないが、正当防衛が成立すると軽信せずに、弁護士に相談することが望まれる。
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弁護士
岡本 裕明
正当防衛という言葉は日常的にも耳にしますが、どのような場合に成立するものなのでしょうか。確認していきましょう。

 正当防衛という言葉については、聞いたことがある方が多いように思います。 この言葉は、本来的には人を傷つけるような好ましくない行為であっても、何か悪い行為に対する反撃として行われる場合には正当化されるのではないかといった局面で、日常的に耳にするように感じています。
 もっとも、「正当防衛」でニュース検索していただくと分かるように、正当防衛が成立した事例の報道はあまり見られず、様々な事件における被疑者や被告人の言い分として、正当防衛が主張されている旨の報道が目立ちます。 正当防衛が成立した事案の報道があまり見られないのは偶々な可能性は否定できませんが、実際に正当防衛が認められるケースというのは非常に限られています。御相談者様から正当防衛を主張したいと相談を受けることもあるのですが、多くの場合は正当防衛の成立要件を満たさないため、別の弁護方針を検討することがほとんどなのです。
 皆様がイメージするより、正当防衛の成立が認められる範囲は非常に狭いのです。今回は、どのような場合に正当防衛が認められるのかについて解説していきたいと思います。

正当防衛って何?どんな時に成立するの?

1.法律の定め

弁護士
岡本 裕明
正当防衛が法律でどのように定められているのかについて確認してみましょう。

まず、正当防衛が法律上、どのように定められているのかについて確認してみましょう。

刑法

(正当防衛)

第36条
1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2項 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律
第1条
1項 左ノ各号ノ場合ニ於テ自己又ハ他人ノ生命、身体又ハ貞操ニ対スル現在ノ危険ヲ排除スル為犯人ヲ殺傷シタルトキハ刑法第36条第1項ノ防衛行為アリタルモノトス
1 盗犯ヲ防止シ又ハ盗贓ヲ取還セントスルトキ
2 兇器ヲ携帯シテ又ハ門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ若ハ鎖鑰ヲ開キテ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ船舶ニ侵入スル者ヲ防止セントスルトキ
3 故ナク人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ船舶ニ侵入シタル 者又ハ要求ヲ受ケテ此等ノ場所ヨリ退去セザル者ヲ排斥セントスルトキ
2項 前項各号ノ場合ニ於テ自己又ハ他人ノ生命、身体又ハ貞操ニ対スル現在ノ危険アルニ非ズト雖モ行為者恐怖、驚愕、興奮又ハ狼狽ニ因リ現場ニ於テ犯人ヲ殺傷スルニ至リタルトキハ之ヲ罰セズ

 まず、刑法第36条1項に定められているのが、正当防衛の基本的な要件になります。細かくは後述しますが、「急迫不正の侵害」があった場合に、「自己又は他人の権利を防衛するため」に、「やむを得ずにした行為」のことを正当防衛というのです。一方で、急迫不正の侵害に襲われている状態において、冷静に自分の身を守るための必要最小限の行為で対応しなさいというのは難しい注文です。そこで、2項において、防衛行為が行き過ぎてしまった場合、正当防衛として一切処罰しないということはできないものの、過剰防衛として刑を減刑又は免除する旨を定めているのです。
 更に細かくは解説しませんが、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律という古い法律にも、正当防衛についての定めがあります。例えば、自宅に侵入してきた人間を追い出そうとして防衛行為に及ぶ場合には、侵入犯から何か攻撃をされるような危険があったとはいえない場合であっても、驚愕、興奮、狼狽によって犯人を殺傷してしまったのであれば処罰しない旨が定められているのです。

2.急迫不正の侵害

弁護士
岡本 裕明
正当防衛が例外的にしか認められない一つの理由として、「急迫不正の侵害」という要件が、厳しく解釈されている点があげられます。どのように解釈されているのか確認してみましょう。

 さて。刑法の定めを確認しました。やや小難しい日本語で定められてはいるものの、その条文を見ただけでは、そこまで厳しい要件が課されているようには読めないかもしれません。
 では、何故正当防衛の成立が極めて限られているかというと、その一つの要因として、「急迫不正の侵害」という要件が、厳しく解釈されている点が挙げられるのではないかと思います。   
 司法試験等でも問われることのある難しい問題ですから、深く掘り下げることはしませんが、実際に自分の身体や財産等が傷つけられている場合や、傷つけられそうな瞬間でなければ「急迫不正の侵害」と認められません。既に、自分が傷つけられてしまった後である場合、その後に行う行為は単なる仕返しに過ぎず、正当防衛ではないのです。
 既に殴られて怪我をしてしまっている場合に、事後的にその行為に対して防衛行為に及ぶことはできません。したがって、このような事案で正当防衛を主張するためには、更なる追撃から身を護るための行為であったと主張する必要があるのです。  
 また、一般的には侵害があるように感じられる事案であっても、急迫不正の侵害がなかったと判断されている一例として、津地方裁判所令和5年11月7日判決などが存在します。この事案では、運転席ドアの窓ガラスを拳で1回殴られたり、車体の下部を1回蹴られたりした上で、ボンネット上に身体を乗せられるなどしたため、ボンネットに相手方を乗せたまま自動車を発進させた行為が問題となりました。
 裁判所は、「被告人と同乗者らは車内におり、ドアは全て閉められて施錠され、窓も閉められていたことからすれば、被告人や同乗者らの身体に対する被害者の攻撃は、現になかったし、間近に迫ってもいなかった」として、急迫不正の侵害はなかったと認定しています。

3.喧嘩両成敗

弁護士
岡本 裕明
喧嘩両成敗という考え方も、正当防衛の成立を否定する一つの要素といえます。どのような考え方なのでしょうか。

 以上のように、「急迫不正の侵害」が認められにくい点が、正当防衛の成立を限定的なものにしている1つの要因といえます。
 もう一つ、正当防衛の成立を認められにくくしている要因として、喧嘩両成敗という考え方があります。両成敗ですので、両者を成敗する訳ですから、両者に対して正当防衛の成立を認めずに、刑罰を科すことになります。
 喧嘩両成敗という単語も、皆様は聞いたことがあるのではないかと思います。では、このような考え方は法律的にはどのように理解されているのでしょうか。
 古い判例ですが、最高裁判所昭和23年7月7日判決は、「互に暴行し合ういわゆる喧嘩は、闘争者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一団の連続的闘争行為であるから、闘争の或る瞬間においては、闘争者の一方がもっぱら防禦に終始し、正当防衛を行う観を呈することがあっても、闘争の全般からみては、刑法第36条の正当防衛の観念を容れる余地がない場合がある」と判示しています。
 この判例をどのように理解するかについても様々な考え方がありますが、喧嘩の場合には、防衛の為の行為ではなく、専ら相手を攻撃するための行為であることが理由となっているものといえるでしょう。

4.正当防衛と弁護活動

弁護士
岡本 裕明
正当防衛が問題となり得る事案において弁護士のサポートが必要な理由は何なのでしょうか。そして、弁護士はどのようにサポートが可能なのか考えてみましょう。

 以上のとおり、正当防衛が認められる範囲は極めて限られていると言わざるを得ません。しかしながら、喧嘩と評価することができないような、一方的に攻撃を受けた場合であっても、相手方に暴行を加える際には、防御するための行為というよりも、攻撃を加えようという意思も併存してしまうはずです。裁判所は、そのような場合にまで正当防衛を否定する訳ではありません。  
 このように正当防衛が成立する範囲については、法的にも非常に複雑な問題が含まれているので、被疑者・被告人の方の主張を前提とした時に、正当防衛を主張できるかどうかについては、専門家である刑事事件の弁護士のアドバイスが非常に重要になってくるのです。弁護士のアドバイスがなければ、御自身の主張を信用してもらえたとしても正当防衛が成立し得ないにもかかわらず、法的に無意味な主張に拘泥してしまうかもしれません。
 また、正当防衛を認めてもらうことが困難な背景には、法律的な難しさ以外の問題もあります。それは、正当防衛が問題となるということは、捜査機関が被害者として扱っている方からも何らかの攻撃を受けたと主張することになるはずですから、被害者の方の供述と食い違うケースがほとんどだからです。そして、被害者の方は、自身に落ち度があるかのような説明を警察官に対して行わないことが多く認められるため、「急迫不正の侵害」があったと捜査機関に認めてもらうことが多いのです。
 正当防衛の成立を否定する裁判例の中で最も多いのは、上述したように法律的に正当防衛を認めることができないというケースではなく、「急迫不正の侵害」があったんだという被疑者・被告人の主張を信じてもらうことができず、被害者からの攻撃の存在を認めてもらえないケースです。  
 正当防衛についても、検察官側に立証責任がありますから、弁護人や被告人が正当防衛について証明するのではなく、検察官側が正当防衛が成立しないことを証明しなくてはいけませんが、弁護人としては、正当防衛が成立する状況であったことについて、被告人の主張を裏付けるような事実を調査した上で、裁判官に対して、正当防衛が成立することを納得させる必要があるのです。

5.まとめ

弁護士
岡本 裕明
本当に簡単にですが正当防衛について解説をさせていただきました。おさらいしてみましょう。

 以上のとおり、正当防衛が成立し難い理由について、「急迫不正の侵害」という内容を中心に解説させていただきました。しかし、冒頭でお伝えさせていただきましたとおり、正当防衛の成立が認められるためには、他にも、「自己又は他人の権利を防衛するため」に、「やむを得ずにした行為」でなければいけません。
 何かを守るための行為である必要があることは当然だとは思いますが、「やむを得ずにした行為」といえるのかという点も、色々な問題があります。防衛行為が必要であることは認められるとしても、防衛行為としてはやりすぎだと評価されてしまうと、「やむを得ずにした行為」とはいえないこととなり、正当防衛は否定されてしまうのです。
 正当防衛が成立した場合には罰しないと定められているように、正当防衛だと感じている方からすれば、悪いことは一切していないという気持ちになっていることが多いように思います。しかし、法的に本当に正当防衛が成立しているのかどうかについては、専門家でも悩むことが多い問題なのです。
 私達は、正当防衛が絡む問題についても、数多く御相談をお受けしております。お気軽にご連絡ください。

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