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コラム

冤罪・誤認逮捕で慰謝料は請求できる?国と相手に求める賠償と手続き

簡単に言うと…
  • 冤罪で請求できるお金は、国からの補償、国への賠償、相手への賠償の3種類に分かれる。
  • 刑事補償や被疑者補償は違法がなくても受けられるが、国家賠償や相手への請求は違法や故意・過失の立証が必要である。
  • 刑事補償は無罪確定から3年、費用補償は6か月など、請求には期限がある。
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 身に覚えのない罪で逮捕され、ようやく疑いが晴れたとき、多くの方が「失った時間や仕事について、何か補償を受けられないのか」と考えます。
 冤罪や誤認逮捕で請求できるお金は、大きく分けて3種類あります。国から受ける補償(違法がなくても受けられる)、国に対する賠償(捜査などの違法を証明する必要がある)、虚偽の申告をした相手に対する賠償(相手の故意・過失を証明する必要がある)です。
 この記事では、どのような場合に、誰に、何を、いくらくらい、いつまでに請求できるのかを整理して解説します。

目次

1.冤罪・誤認逮捕で請求できるお金は3種類:国への補償、国への賠償、相手への賠償

 冤罪で請求できるお金は、国からの補償(違法がなくても受けられる)、国への賠償(違法の立証が必要)、相手への賠償(故意・過失の立証が必要)の3つに分かれます。どれに当てはまるかは、事件がどのように終わったのか、誰に原因があったのかによって決まります。

請求の種類請求先条件金額の目安期限立証の負担
被疑者補償検察官(申出)不起訴となり、罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある身体拘束1日あたり1,000円以上12,500円以下規程上の申出期間内大きい
刑事補償無罪判決をした裁判所無罪判決が確定した身体拘束1日あたり1,000円以上12,500円以下確定から3年以内小さい
費用補償無罪判決をした裁判所無罪判決が確定した裁判に要した費用(基準あり)確定から6か月以内小さい
国家賠償国・都道府県捜査や起訴に違法があった損害の全額(慰謝料を含む)損害と加害者を知ってから3年など大きい
損害賠償虚偽の申告をした相手など相手に故意・過失があった損害の全額(慰謝料を含む)損害と加害者を知ってから3年など大きい

(1)不起訴で釈放された場合:被疑者補償

 逮捕・勾留された後、起訴されずに釈放された場合には、被疑者補償を受けられる可能性があります。ただし、不起訴になれば必ず受けられるわけではありません。

(2)無罪判決が確定した場合:刑事補償と費用補償

 起訴されて無罪判決が確定した場合には、身体を拘束されていた期間について刑事補償を、裁判に要した費用について費用補償を請求できます。

(3)捜査に違法があった場合:国家賠償

 警察や検察の捜査、起訴に違法があった場合には、国や都道府県に対して国家賠償を請求できます。

(4)虚偽の申告をした相手がいる場合:損害賠償・慰謝料

 被害者を名乗る人がわざと嘘の申告をしたような場合には、その人に対して損害賠償を請求できます。

(5)「冤罪の慰謝料」と刑事補償の違い

 「冤罪の慰謝料はいくらか」という疑問を持たれる方は多いのですが、法律上、慰謝料とは精神的な苦痛に対する損害賠償を指します。冤罪の場面で慰謝料を請求できるのは、国家賠償や相手に対する損害賠償の中でのことです。
 刑事補償は、違法がなくても国が一定額を支払う制度で、慰謝料とは別のものです。刑事補償の金額を決める際に精神的な苦痛も考慮されますが、損害をすべて埋め合わせることを目的とした制度ではありません。

2.無罪判決が確定したら:刑事補償の金額と対象

(1)刑事補償は拘束1日あたり1,000円〜12,500円

 無罪判決が確定した場合、逮捕・勾留や刑の執行によって身体を拘束されていた日数に応じて、1日あたり1,000円以上12,500円以下の範囲で補償を受けることができます(刑事補償法4条1項)。死刑が執行された場合には、3,000万円以内の範囲で補償されます(同条3項)。
 例えば、逮捕から起訴までの23日間と、起訴後の勾留100日間の合計123日間身体を拘束されていた場合、補償額は最低で12万3,000円、最高で153万7,500円となります。

(2)金額はどう決まるか

 裁判所は、身体を拘束されていた期間の長さ、その間に受けた財産上の損失、得られるはずだった利益、精神上の苦痛、身体上の損傷、警察・検察・裁判所の各機関の故意過失の有無などを考慮して、1日あたりの金額を決めます(刑事補償法4条2項)。

(3)補償額が低いといわれる理由と、国家賠償との関係

 刑事補償の上限である1日12,500円は、仕事を失ったり、社会的な信用を失ったりした損害に比べて低いと感じられることが多いでしょう。刑事補償は、捜査機関に違法がなくても補償を受けられる代わりに、金額に上限を設けた制度なのです。
 補償額を超える損害については、違法を証明できれば国家賠償で請求することになります。その場合、すでに受けた刑事補償の額は、国家賠償の額から差し引かれる関係にあります(刑事補償法5条)。

(4)袴田事件の補償に見る金額の考え方

 再審で無罪が確定した袴田事件では、約47年間の身体拘束に対して、上限の1日12,500円で計算した約2億1,700万円の刑事補償を認める決定が、2025年3月に静岡地方裁判所で出されたと報道されています。極めて長期間の拘束であったため総額は大きくなっていますが、1日あたりの額は法律の上限にとどまっています。

(5)補償が受けられない場合

 捜査や裁判を誤らせる目的で虚偽の自白をしたり、他の有罪の証拠を作ったりしたことで起訴や拘束を受けたと認められる場合などには、補償の全部又は一部が認められないことがあります(刑事補償法3条)。どのような場合に補償が否定されるのかについては、無罪となったら必ず補償を受けられるのかの記事で詳しく解説しています。

3.不起訴で釈放された場合:被疑者補償を受けられるか

(1)被疑者補償規程の条件

 逮捕・勾留された後に起訴されなかった場合については、刑事補償法の対象になりません。その代わりに、法務省の訓令である被疑者補償規程に基づいて、補償を受けられる場合があります。
 補償の対象になるのは、罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある場合です。不起訴処分の理由が「罪とならず」や「嫌疑なし」である場合が典型ですが、「嫌疑不十分」による不起訴であっても、罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があれば、補償を受けられる可能性があります。これに対し、「起訴猶予」を理由とする不起訴処分は、罪を犯したことを前提とした判断ですので、補償を受けることはできません。
 また、不起訴処分は、起訴するに足りる嫌疑が認められなければ得られますが、補償を受けるためには、逆に「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由」が認められる必要があり、ハードルは非常に高いといえるでしょう。金額は、刑事補償と同じく身体拘束1日あたり1,000円以上12,500円以下です。

(2)不起訴の理由で変わる見通し

 不起訴には、罪を犯していないことが明らかな「嫌疑なし」、証拠が足りない「嫌疑不十分」、罪は認められるものの起訴を見送る「起訴猶予」などの種類があります。
 起訴猶予は罪を犯したことを前提とした判断ですので、通常は補償の対象になりません。また、嫌疑不十分の場合も、罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとまでいえるかが問題になり、補償が認められるのは限られた場合にとどまります。

(3)補償は検察官に申し出る

 被疑者補償は、裁判所に請求する権利として定められているものではなく、検察官が補償するかどうかを判断する仕組みです。補償を求める場合には、不起訴処分をした検察官が所属する検察庁に申し出ることになります。要件や裁判例の詳細は、無罪となったら必ず補償を受けられるのかの「被疑者段階」の項目をご覧ください。
 なお、「嫌疑なし」や「罪とならず」を理由とする不起訴処分であっても、必ず補償を受けられるわけではありません。補償に関する事件として立件された上で、その後の審査を経て、補償の有無が決定されることになります。

4.警察・検察に違法があった場合:国家賠償請求の要件と難しさ

(1)刑事補償と国家賠償の違い

 国家賠償法1条は、公務員が職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えたときは、国や公共団体が賠償すると定めています。刑事補償と違い、捜査や起訴が違法であったこと、公務員に故意又は過失があったことを、請求する側が証明しなければなりません。

(2)「無罪になった」だけでは違法にならない

 判例は、逮捕や起訴の時点で、その時点の証拠から罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があれば、後に無罪となっても逮捕や起訴は違法にならないという考え方をとっています。そのため、無罪判決を受けたというだけで国家賠償が認められるわけではありません。

(3)認められる可能性があるケース

 国家賠償が認められる可能性があるのは、取調べで自白を強要した場合、捜査機関が無罪方向の証拠を隠した場合、通常求められる捜査を尽くさずに逮捕や起訴をした場合などです。
 近年では、大川原化工機事件で、警察と検察の捜査を違法と認め、国と東京都に約1億6,600万円の賠償を命じた東京高等裁判所の判決(2025年5月)が確定しています。
 他方で、国家賠償が認められにくい実情については、国家賠償が認められにくい実例(免田事件)の記事で解説しています。

(4)国家賠償で請求できる損害

 国家賠償では、精神的な苦痛に対する慰謝料のほか、仕事を失ったことによる収入の減少(逸失利益)、弁護士費用の一部など、違法な捜査と関係のある損害を請求できます。

5.虚偽の被害申告をした相手に慰謝料を請求できるか

 痴漢や万引き、盗撮などで犯人だと名指しされ、後に疑いが晴れた場合、申告した相手に責任を問えるのかという相談も多く寄せられます。

(1)相手に故意・過失がなければ請求は難しい

 相手に損害賠償を請求するには、民法709条・710条の不法行為として、相手の故意又は過失によって損害を受けたことを証明する必要があります。
 被害に遭った人が、本当にあなたを犯人だと思い込んで申告した場合、勘違いであったとしても、それだけで不法行為になるとは限りません。突然の被害に遭った人が犯人を取り違えることはあり得るためです。請求が認められやすいのは、相手がわざと嘘の申告をした場合や、確認すべきことをせずに申告した過失が明らかな場合です。

(2)示談金目当ての虚偽申告だった場合

 示談金を得る目的でわざと嘘の申告をしたことが明らかになった場合には、慰謝料を含む損害賠償を請求できる可能性が高くなります。こうした事案では、相手が虚偽告訴罪で処罰されることもあります。

(3)名誉毀損・虚偽告訴罪で相手の責任を問う

 人に刑事処分を受けさせる目的で虚偽の告訴などをした場合には、虚偽告訴罪(刑法172条、3月以上10年以下の拘禁刑)が成立します。相手が虚偽の内容を周囲に言いふらした場合には、名誉毀損罪が問題になることもあります。
 ただし、相手の刑事責任を問うためには、相手が虚偽だと認識していたことを証明する必要があり、ハードルは高いといえます。

(4)店舗の万引き誤認・顔認証による誤認の場合

 店舗で万引き犯と誤認されて警察に引き渡された場合には、店の対応に過失があったかどうかが問題になります。防犯カメラの映像を確認しないまま犯人と決めつけた場合などには、店を運営する事業者に損害賠償を請求できる可能性があります。顔認証システムによる誤認の場合も、事業者がどのように確認を行ったかが判断のポイントになります。
 痴漢を疑われたときの対応は痴漢を疑われたときの対応、万引きを疑われたときの対応は窃盗(万引き)の疑いへの対応のページで解説しています。

相手や国に請求できるか判断に迷ったら、ご相談ください。
お問い合わせフォーム/お電話:0120-845-018(受付時間7時~23時・土日祝日も受付)

6.無罪になった場合の弁護士費用は誰が払う?費用補償制度

(1)無罪判決が確定すると裁判に要した費用の補償を請求できる

 無罪判決が確定した場合、裁判に要した費用の補償を国に請求できます(刑事訴訟法188条の2)。これを費用補償といいます。

(2)補償の対象と限度

 補償の対象は、被告人や弁護人が公判期日に出頭するための旅費・日当・宿泊料や、弁護人の報酬です。ただし、補償額は国選弁護人に支給される報酬の基準などに準じて計算されるため、私選弁護人に支払った費用の全額が戻ってくるわけではありません。

(3)不起訴の場合は費用補償の対象にならない

 費用補償は無罪判決が確定した場合の制度ですので、起訴されずに終わった場合は対象になりません。当事務所の弁護士費用については、弁護士費用のページをご覧ください。

(4)再審請求の費用補償の新設

 2026年7月に成立した改正刑事訴訟法では、再審開始の決定が確定した場合に、再審請求の手続に要した費用を補償する制度が設けられました。施行の時期など詳しい内容は、法務省の公表をご確認ください。

7.補償・賠償を請求する手続きと期限

 どの請求にも期限があり、期限を過ぎると請求できなくなります。

制度請求先期限主な資料
刑事補償無罪判決をした裁判所無罪判決の確定から3年以内(刑事補償法7条)請求書、判決書の謄本、拘束期間が分かる資料
費用補償無罪判決をした裁判所無罪判決の確定から6か月以内(刑事訴訟法188条の3)請求書、出頭や弁護人選任の資料
被疑者補償不起訴処分をした検察官の所属する検察庁規程の定めによる申出書、拘束期間が分かる資料
国家賠償国・都道府県(裁判所に提訴)損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年(国家賠償法4条・民法724条)違法を示す証拠、損害の資料
相手への損害賠償相手方(裁判所に提訴など)損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年(民法724条)故意・過失を示す証拠、損害の資料

(1)釈放直後から残しておくべき記録

 後から請求するときに備えて、次のような記録を残しておくことをお勧めします。

  • 逮捕・勾留されていた期間(日付)
  • 欠勤や解雇、退学など、仕事や学業への影響を示す書類
  • 報道やSNSでの拡散の状況(画面の保存など)
  • 申告した相手とのやり取りの記録
  • 弁護士費用など、事件のために支出した費用の領収書

8.冤罪の補償・賠償請求を弁護士に依頼するメリット

(1)どの制度で請求できるかを見極められる

 刑事補償、被疑者補償、費用補償、国家賠償、相手への損害賠償は、それぞれ条件も期限も異なります。事件の経過を踏まえて、どの制度を使えるかを見極めることが出発点になります。

(2)違法・故意過失の立証に必要な証拠を集められる

 国家賠償や相手への請求は、認められるハードルが高い手続です。刑事事件の記録の中から、違法な捜査や相手の故意を示す証拠を見つけ出して整理する作業は、刑事弁護の経験が生きる場面でもあります。

(3)報道・ネット上の名誉回復にも対応できる

 逮捕が報道された場合には、無罪や不起訴になった後も、インターネット上に記事が残り続けることがあります。記事の削除や訂正を求める対応についても、あわせて検討できます。
 当事務所は刑事事件を専門に扱っており、冤罪を晴らすための弁護活動から、その後の請求まで一貫してご相談いただけます。もっとも、国家賠償や相手への請求は認められにくい手続であることも事実ですので、見通しを率直にお伝えしたうえで方針を決めていきます。

補償・賠償の請求について、ご相談ください。
お問い合わせフォーム/お電話:0120-845-018(受付時間7時~23時・土日祝日も受付)

9.まとめ

 冤罪で請求できるお金は、国からの補償(違法がなくても受けられる)、国への賠償と相手への賠償(違法や故意・過失の立証が必要)に分かれます。
 刑事補償は無罪確定から3年、費用補償は6か月など、それぞれに期限があります。疑いが晴れた後は、早めに記録を整理し、どの請求ができるかを確認することが大切です。

冤罪の補償・賠償についてお困りの方は、お早めにご連絡ください。
お問い合わせフォーム/お電話:0120-845-018(受付時間7時~23時・土日祝日も受付)

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