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特定少年について

1.特定少年とは

 特定少年とは、令和4年の少年法改正の際に新設された概念で、18歳と19歳の少年を意味します。民法改正によって成年年齢が18歳となり、公職選挙法の改正によって選挙権も18歳以上の方に認められることになりました。

 一方で、18歳や19歳の方は、学生としての身分を有している方も多く、家庭環境に強く影響を受ける立場にある可能性が高いことに加え、民法や公職選挙法が改正されたとしても、成長途上にあることに変わりはありません。

 18歳や19歳の方を少年法の適用範囲から外そうという意見もあったようですが、適切な教育や処遇によって更生に期待することができるという考えから、成年年齢が18歳と定められた後も、少年法を適用することに決まったのです。

 一方で、成年年齢が引き下げられたことによって、18歳や19歳の方々には様々な権利や自由が認められることになりましたので、17歳以下の少年と全く同じに扱うのは不合理だとの考えから、「特定少年」として、通常の少年とは異なる取扱いを定めることになったのです。

個人的には、17歳と18歳の間に大きな差はなく、「特定少年」として特別に取り扱う必要はないと感じていますし、少年事件を担当してきた多くの弁護士も同じ考えだと感じていますが、法改正が行われてしまった以上、特定少年として取り扱われる場合に、通常の少年と何が異なるのかについては、把握しておく必要があるでしょう。

2.特定少年の逆送

 特定少年が通常の少年と異なる扱われ方をする局面として、最も大きいのは逆送される可能性が高いという点です。

 逆送事件については、以下の関連記事を御確認ください。

関連記事:「逆送事件について」

少年事件は家庭裁判所による少年審判によって審理され、その結果、少年院送致や保護観察処分等の保護処分が決定されます。しかしながら、一部の事件については、成年に対して科される刑罰を科すために、検察官によって起訴されるケースがあります。このように、少年であることから家庭裁判所に送致されたものの、成年と同じように刑罰を科すために、検察庁に事件を戻す手続のことを逆送といいます。

少年法

(検察官への送致についての特例)
第62条
 1項 家庭裁判所は、特定少年(18歳以上の少年をいう。以下同じ。)に係る事件についは、第20条の規定にかかわらず、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
 2項 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
 1号 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るもの
 2号 死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であって、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)

 このように、少年法第62条は、逆送について、通常の少年事件よりも逆送の対象となる事件を広く定めているのです。

 通常の少年事件においては、少年を逆送できるケースは極めて限定的に定められていますが、第62条は「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」には逆送しなければならない旨が定められています。したがって、どのような事件であっても逆送される可能性があることになるのです。

 また、原則的に逆送が求められる事件についても、通常の少年であれば、故意に被害者の生命を失わせるような犯罪行為に限られており、極めて重大な犯罪のみが対象となっていました。しかし、第62条は、犯罪行為に及んだ時に18歳以上であり、短期1年以上の懲役に当たる罪の事件についてまで、原則的に逆送するように定めています。短期1年以上の懲役(拘禁刑)が定められている罪としては、建造物等以外放火の事案や有印公文書偽造等、一般的に極めて重罪だと考えられていないような事件も含まれているのです。

 一方で、「刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」には、家庭裁判所における少年審判によって判断することも可能となっていますので、特定少年の事件については、逆送されることがないように付添人としてしっかりと活動を行うことが求められることになるのです。

3.推知報道について

 特定少年の扱いについて、17歳以下の少年と大きく異なる局面として、報道の問題があります。この点は法改正の際に大きく議論されましたし、実際に法改正後に、少年の実名が報道されているケースも存在します。

 まずは、この点についての少年法の定めを確認してみましょう。

少年法

第4章 記事等の掲載の禁止
第61条
 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
第68条
 第61条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない。(以下、略)

 このように少年事件に関しては、犯罪についての報道について、加害者となった少年が特定されるような報道が禁止されているのですが、第68条によって特定少年との関係については、特定少年が起訴されてしまった場合には、少年が特定されてしまうような報道も許容されてしまうことになっています。

 この点、陸上自衛隊射撃場で発生した自動小銃による殺傷事件等においては、起訴される前の段階において少年の実名等が掲載される等、少年法の定めを無視して報道が行われることもあります。ですから、起訴された場合には、より一層、事件の加害者として特定されるような報道がされてしまう可能性が否定できません。

 マスコミによる報道の内容について、法律がその内容を制限することは、報道の自由との関係から難しいものといえます。一方で、実名で報道されてしまうと、少年が将来的に人間関係を構築しようとした際に、大きな足枷が課されることになるのは想像に難くありません。この意味でも、付添人弁護士としては、マスコミによる推知報道を制限できるように、特定少年が起訴されることなく、家庭裁判所の少年審判によって審理されるように、活動することが求められることになるのです。

4.保護処分について

 最後に特定少年に対する保護処分の内容について確認します。

少年法

第64条
 1項 第24条第1項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、第23条の場合を除いて、審判を開始した事件につき、少年が特定少年である場合には、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、決定をもつて、次の各号に掲げる保護処分のいずれかをしなければならない。ただし、罰金以下の刑に当たる罪の事件については、第1号の保護処分に限り、これをすることができる。
 1号 六月の保護観察所の保護観察に付すること。
 2号 二年の保護観察所の保護観察に付すること。
 3号 少年院に送致すること。
 2項 前項第2号の保護観察においては、第66条第1項に規定する場合に、同項の決定により少年院に収容することができるものとし、家庭裁判所は、同号の保護処分をするときは、その決定と同時に、1年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して同項の決定により少年院に収容することができる期間を定めなければならない。
 3項 家庭裁判所は、第1項第3号の保護処分をするときは、その決定と同時に、3年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して少年院に収容する期間を定めなければならない。
 4項 勾留され又は第17条第1項第2号の措置がとられた特定少年については、未決勾留の日数は、その全部又は一部を、前2項の規定により定める期間に算入することができる。
 5項 第1項の保護処分においては、保護観察所の長をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。

 この条文については、一見しただけでは、通常の少年事件と比較して何が違うのかという点が分かり難い内容になっています。第23条の適用が除外されている訳ではありませんから、付添人の活動によって、要保護性が十分に解消されていると判断された場合には、審判不開始によって審判を行うことなく家庭裁判所の手続が終了することはあり得ますし、審判の結果として何らの処分を下さないという可能性もあるのです

 しかし、通常の少年事件との対比で大きく違うのは、少年の処分を決定するにあたって、「犯情の軽重を考慮」することが明文化されているという点です。少年法は、少年の更生を図ることを目的としている法律のはずですから、成年事件であれば重い刑事責任が発生しそうな事案であったとしても、少年の更生にあたって少年院送致等の処分が必要ないと判断される場合(社会内での更生環境が十分に整備されている場合)には、重い処分を下す必要はありませんでした。しかし、「犯罪の軽重」が考慮要素とされることによって、成年事件と同様に、重い刑事責任が認められる場合には、相応の処分が下されることになります。

 また、保護観察処分や少年院に送致される場合に、その期間も具体的に定めることとされていますから、少年院や保護観察期間中の少年の更生具合が、その処分の期間に直結しなくなったのです。4項等で未決勾留期間について定められているのも、成年事件に近い処理をしようという考えが条文化されたものといえるでしょう。

 通常の少年事件として付添人活動を行うだけでは不十分な場合が想定し得るのです。刑事事件と少年事件は異なりますので、刑事事件だけでなく少年事件の経験や知見が付添人に求められることは当然ですが、特定少年の取扱いについては、また別個の経験や知見が求められることになります。

 弊所では、特定少年の事案についても取り扱わせていただいておりますので、まずは御気軽に御相談いただければと思います。

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